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電車に乗っていたら、隣のひとが降りて席がひとつだけあいた。
そこに手をつないだカップルが近づいてきて、女性が座った。
花柄の白のストッキングに、淡いグレーのスカート。
コートも白で、ポケット部分はリボンの形。
髪の毛はゆるくウェーブのかかったロング。
きわめつけに、男性にグッチのかばん(ピンク!)を持たせている。
私はわくわくした。
私の周りには、じぶんの小さなかばんを男子に持たせる女子はいない。
念のため断わっておくが、かばんを持たせる女性を非難しているわけではない。
むしろ、いいぞ、と思う。なぜだか分からないけれど、ほんとにそう思う。
こうした女性が、恋人とどんな会話をしているのか知りたい。
私は手にした文庫を読むふりをして、左隣に意識を集中させた。
女性はまるで上野樹里演じる「のだめ」そっくりの話し方をした。
おおよそ10分ほど、男性の頬骨のあたりをさわりながら、
「口角が変なんだよね、口角が」と、愛のこもったダメ出しをしていた。
そこは口角ではない。頬だ。
と何度も思ったけれど、きっとそんなことは彼女にとっては取るに足らないことなのだ。
きっと口角って言葉を言いたいだけなのだ。
だって聞いていたら、私も言いたくなったもの。コウカク。
でも、そんなことより私を驚かせたのは、彼女が男性の「頬をさわっている」ということなのだ。
もう一度言うが、女性は座席に座っていて、男性は立っている。しかもかなりの長身だ。
つまり彼女は腕を上にめいいっぱいのばして、ときには腰をすこし浮かせて、
男性にタッチしていたのである。
頬だけじゃない。背広の胸のあたりなんかをさわりにさわっている。
そう、彼女は、座席に座っていながら立っている恋人にべたべたする、
という離れ業をやってのけたのだ。
「口角」の後は、会社の人たちの話題で私にはさっぱり分からなかった。
それでも私は深く満足して、最寄駅に到着したので電車を降りた。
私はほんの15分ほどの間に、彼女のことをとても好きになった。
余計なお世話だけれど、どうか、このまま年をとっていってほしいと思った。
アイポッドの音楽をかけて顔をあげると、ひとつ前のドアからあのカップルが降りてきた。
おんなじ駅かいっ。
心の中でひとりつっこんで、でもまたいつか会えるといいなと思った。
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女が女を観る目と、男のそれは、かなり違いますね。
電車で、人物観察するの俺も好きですが…
そんなカップルは、観察しないなぁ〜
2010/3/23(火) 午後 7:09 [ Mars_jj_boy ]