『探しもの』は何ですか?

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帰れぬ人びと

『帰れぬ人びと』 鷺沢 萠/著 文春文庫
 
イメージ 1デビュー作『川べりの道』を含む初期の短編集。
 
何と言っても情景描写がすごいです!
巧妙というか精微というか、リアルで・・・
映画を見ているかのように情景が浮かんでくる・・・。
 
生きていても、なにもいいことなんてないよ。
人間関係のやるせなさと喪失感みたいなものが、独特の淡々とした描写で語られます。 
すごく切なくなるけど、それでも何でも、人は前に進まなければならない…
 
 この本に収録されている4つの物語は、どれも読んでいると切なさとやるせなさでいたたまれない気持ちになりますが、そんな中にもどこかに希望の光があるような、そんな筆致に引き込まれます。
 
人間というのは、変わるもの・・・変われるもの。
そこには一種の諦めみたいなものもあるし、成長もある・・・
そんなメッセージが込められているような???
 
中でも、芥川賞候補にもなった表題作『帰れぬ人々』が秀逸です。
帰るべき場所って、なんだろう?
血って、家族って?家族の在り方って何・・・?
これは様々な作品を通して、著者のメインテーマのような気がします。
久々に読み返してみて、なんか心にズシリと響きました。

葉桜の日

『葉桜の日』 鷺沢 萠/著 新潮文庫
 
イメージ 1
表題作『葉桜の日』と、『果実の舟を川に流して』の2編を収録。
 
僕は、ホントは誰なんだろうね?
熱くせつない問いを胸に留めながら、しなやかに現在(いま)を生きてゆく若者たちを映し出す青春小説集。

ナイーブな少年の感性をもちながら裸で大人の世界に一歩を踏みだす青年たちを、生き生きと爽やかに描く。表題作のほか、「果実の舟を川に流して」(三島由紀夫賞候補作)を併せて収録。
 
 
『葉桜の日』
僕は、ホントは誰なんだろうね?
典型的な自分探しの話です。自分の出生も、本当の名前も、親が誰なのかも知らない青年ジョージ。
自分はホントは誰なのか、どこから来たのかわからない・・・漠然とした不安を抱きながら、それでも過去と向き合おうとする青年の姿が描かれています。
他の登場人物も含めて、背景や心情的にはかなり複雑だけど、全然重くなくて、読み終わるとある種の清々しさみたいなものが感じられます。

ジョージや、志賀さんやおじいの、それぞれの想いはそれぞれの中で飲み込むしかないという、哀しいけれど強い生きる姿勢みたいなものが胸を打ちました。
やっぱり周囲の人たちの愛情に支えられてこそ、その強さが生まれるんだと思います。
 
 
『果実の舟を川に流して』
これまで生きてきた世界が一変して、こんなはずじゃなかった…と思いながら、葛藤しながらもそれを受け入れていく青年が主人公。
なぜ、日陰で生きていくのか。日向って、どういうところなのか。
見たくないものは見ないようにして、根源的なものを避けて、漠然と、流されるがごとく日常生活を送っていて、だけど時々咽喉元に引っ掛かる、根源的な問いがこみ上げる・・・そんな心情を巧みに描いた小説。
 
こんなはずじゃなかった・・・誰しもが思う人生の転機。
割り切って日陰の人生を歩みながらも、日向の人生への未練を捨てきれずにいる・・・
どちらにせよ、人生には「もし・・・」「・・・たら」はない。
人生って、そうなんだよなぁ・・・切ない、やるせない気持ちになる本です。
 
 
 
人生の成功とか、うまく生きるって、なんだろうって思います。
生きる覚悟を決めた人が、本当の意味で「人生を生きている」のかもしれません。
たぶん、「生きる」ってそういうこと・・・じゃないかなぁ。
これも印象的な装丁の本で、大好きな1冊♡
 
『スタイリッシュ・キッズ』 鷺沢 萠 著  河出文庫
 
イメージ 1どこにでもある日常の風景。何気なくいつもどおりの生活を送る人たち。
大人でもなく、子供でもない…そんな年齢の不安定さと虚無感みたいなものがそこらじゅうに溢れている小説。
『少年たちの終わらない夜』とも共通する透明感、世界観があります。
 
初めて読んだ時は、すごくカッコイイと思いました。
あっという間に読んで、結末で思わずその切なさに涙して・・・
いちばん好きなうちに、大好きな人と別れる…こういう恋をしたことあります。
理恵の気持ちにすごく共感して。
でも今なら久志の気持ちもがよく分かる。
大好きな人を守りたい、そのために変わりたいって・・・。
 
あの頃は、ホントに年齢とりたくない、このまま時間が止まればいいのに…って思ってた。
真空パックのことなんて、その頃の私も本当にそうしたいと思ってたし、読んだ当時もだったけど、今の方がさらに共感出来る気もするけど・・・。
 
あたしたちカッコ良かったよね――1989年初夏、自由ヶ丘”ノー・ネーム”。はじめて話した夜、二人は19歳だった。そしていま21歳・・・。きらめく恋の時間と突然の別れを、透明な映像感覚で映し出す、恋人たちの80'sグラフィティ。
 
大人になった今、改めて読み返してみると、やっと、この物語の伝えたかったことがわかるような気がします。
何回読んでも心に染みる作品です。
私が鷺沢萠を知り、大好きになるきっかけになった本です。
最初は装丁に惹かれて手に取ったのですが、この本に出会ってすごく衝撃を受けたのを覚えてます。
ガツーンとココロに響いたというか・・・圧倒されました。
 
イメージ 1
透明感はあるのに、ドロドロしたような世界観。
何でもできると思いながら、どこか諦めてしまっている少年たち。
そんな数々の青春(と言ってしまうとチープな感じでイヤだけど…)がさらりと描かれている短編集。
 
どうしてここまで私の心がわかるの???
当時の私と同じような気持ちを持った登場人物に、思わず感情移入してしまいました。
共感というか…、10代独特の焦燥感みたいなものが詰まってます。
環境は全く違うけど、そういう気持ちってあるよね、私はわかるよって言いたくなる。
うん。「わかる」・・・その一言に尽きるかな。
 
大人になった今、読み返してもその頃のピュアな気持ちや、他愛もないことで悩んでいた自分を思い出したり、
切ない気持ちになりました。
この世界観は、やっぱり鷺沢さんにしか出せないものだと思います。
 
終わりかけた僕らの十代最後の夏。愛すべき季節に別れの挨拶をつげ、駆けぬけてゆく少年たちの、愛のきらめき。透明なかげり。ピュアでせつない青春の断片をリリカルに描き、圧倒的な支持をうけた永遠のベストセラー。
 
個人的には鷺沢萠の作品の中で一番だと思う1冊。
中でも『誰かアイダを探して』は、私の中で忘れられない作品です。
そしてこの装丁も、一番のお気に入りです♪

パレード ケータイ投稿記事

『パレード』 吉田 修一 著 幻冬舎文庫
 
イメージ 1ふとしたことで一緒に暮らすようになった男女5人それぞれの語り口で語られる物語。
別に恋人でも親友でもない5人が”ちょうどよい距離”を保ちながら、共同生活をする。いわゆるシェアハウスではなく、2LDKのマンションの一室に居住して、お互いにほとんど干渉せず、ただ話したい時に話したい相手に話す…だけの心地いい”無関心さ”が繋ぎとめているような関係。
最初の登場人物、大学生の良介の語り口から始まる物語は、よくある日常を描写しているようでいながら、軽く読み進んでいくうちに不思議な違和感を覚えました。
 

他人が見ている自分と、本当の自分。
他人に見せている自分と、本当の自分。
そもそも本当の自分って・・・?
相手が見ている自分が本当の自分ではないように、自分が見ている相手も本当の相手ではないかもしれない・・・?
 
気楽でなドタバタした日常の描写の中に、その違和感が少しずつ広がっていくのがたまらなく不気味です。
だからこそ、最終章で物語がガラリと変わる時には、不気味さを通り越してある種の恐怖を感じました。
”無関心さ”は、実は心地いいものなんかじゃなくて、とてつもなく恐ろしいもの・・・
現実感がまったくない感じなのに、妙にリアリティーがある・・・怖い小説です。 
 
 
映画化されて話題になりましたが、そのHPでキャラクター診断もあるので一度試してみては・・・?

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