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水俣病及び油症は、大半の裁判が終わったが、被害はまだ続いている。しかし、油症の補
償体系は、典型的な公害と比べ、制度の根拠、補償金額、補償内容、制度の運用態勢などに おいて不十分である。例えば、水俣病の認定患者には医療費のほか、生活補償として1,600 万〜1,800 万円の慰謝料などが支給されるが、裁判で国の責任が認められなかったカネミ油 症患者は和解した加害企業から医療費と見舞金22 万円が支給されるのみである。さらに、 水俣病や大気汚染は法や補償協定に基づき国や企業から障害補償費なども支給される(迫 田2009)。 さらに、筆者の聞き取り調査により、油症患者が望むのは治療及び補助金よりも社会的な
認知[注43]であった。しかし、治療を無料で受ける被害者たちを、物乞いする者のよう に扱う医者もいた。さらに、政府は社会に対して油症による被害を的確に説明しなかった。 現在でも有効な治療法が確立されていない[注44]。特に、発生初期の頃、皮膚症状が重か った時、油症はエイズのような恐ろしい伝染病であると信じられ、友達でさえ被害者を差別 し、排除しようとした。結婚や就職においても油症を隠し、いつも不安におびえていたと訴 える被害者もいた。このような精神的暴力は彼らの自尊心を傷つけることとなった。 単に医療費だけではなく交通費その他の経費も必要となる。特に台湾の場合、被害者の大 半は貧困な生活を送っている。貧しい者が病気になることはまるで火に油を注がれたよう なものである。日常生活機能の低下は職場、地域、家庭内における役割分担にも変化をもた らし、家庭・地域内阻害要因となり人間関係の悪化をもたらす。身体的な被害だけではなく、 派生的な精神的被害も深刻である。 油症事件においても公害事件の場合と同様に、被害者及びそれに関わる人々はそれぞれ 異なる人生観を持っており、将来に対する考え方も多様である。経済的に余裕のある少数の 被害者たちは、賠償を既に諦め、生きているだけで十分であると考えている。しかし、多く の被害者は生活に困窮し、老齢化しており、様々な症状は悪化し、残りの人生に絶望してい る点を忘れてはなるまい。
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和解内容
鐘淵化学との和解内容は 原告はカネミ油症事件について鐘淵化学に責任がないことを確認し、鐘淵化学に対する訴訟・仮処分申請を直ちに取り下げること、鐘淵化学は原告に見舞金を支払うというものでした。すでに仮払金を受け取った原告は、受け取った額と見舞金を相殺した残額を鐘淵化学に返還するものとされましたが、強制執行等の強制手続きによる履行は求めないこととされました。(事実上返還を請求しない)。また、鐘淵化学はこれ以降に認定された患者については和解に応じないことを表明しました。
カネミ倉庫には原告一人当たり500万円の賠償金を支払う義務が認められ、原告に対して債務があることが確認されましたが、原告はこの債務について強制執行しないこととなっています。またカネミ倉庫は債務とは別に治療費の支払いを続けることを約束しました。
だがしかし、
2018/11/23(金) 午後 3:44 [ 公衆衛生は綺麗にして健康 ]