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○憧憬
それは平成15年秋のことだった。
数年来お遍路をしたくてたまらなかった。
「いつかは四国のお遍路にゆきたい。」
お遍路ブームに触発されたのではないし、特別に理由があるわけでもない。かなり以前からの夢だ。
廻るとすればどうやって廻るか。
歩いて廻ることができればいいのだろうが多分無理だろう。全然自信がない。どうしても歩きたいわけではないが、出来れば遍路道の風に吹かれたいし四国の太陽にも照らされたい。潮の香りと顔にかかる波しぶきも魅力的だ。時には雨に降られるのもそれほど悪くはないだろう。
車というのはあまりに快適すぎる。自然を感じることが出来ないのが最も魅力に欠ける点だ。歩き遍路をやってみたいと思う人はどこか四六時中自然と向き合っていたいという願望があるのではないだろうか。
やってはみたいががどう考えても歩き遍路は無理だ。
車に乗って時々歩く。昔ながらの遍路道は歩き、国道などの舗装路は車を使う。個人的には最も理想に近い方法だ。しかし「歩き」と「歩き」の間の公共交通がとても心配だ。
遍路は田舎が多くバスも列車も便数が非常に少ないので時間調整に苦労するのは確実だ。時にはダイヤの関係から何時間も待たねばならないことも十分予想される。歩くよりもむしろタイムスケジュールがたてにくいだろう。
あるときふと考えついた。それがバイク遍路だった。
移動には体力が必要ないし時間的にも自由に移動できる。そのうえ車と違って遍路道の空気を直接味わえる。太陽も風も雨も体で受けとめられる。炎天下日焼けもするし、夕立でずぶ濡れにもなれる。暑さ寒さを直接肌で感じられる。もうこれしかない。
最大の問題は二輪免許を持ってないことだったが、それも何とか教習所での奮闘の結果手に入れた。そして中古だがバイクも買った。あとは実行あるのみ。
そうはいっても簡単にまとまった休みが取れるわけではない。
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