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○七十番、長勝寺
案内書に従い六十九番を打ち終えてそのまま道を登って行く。相変わらず道は広いとはいえない。後で地図を確認したところ、海岸沿いの県道253号まで戻って行ったほうが道路事情は良いようだ。遍路案内の道順は距離は確かにかなり短そうだが土地鑑のないお遍路が車で廻るのには必ずしも向いてない。
長勝寺でも例によって庫裏に御朱印をお願いに行く。若い奥さんが出てこられた。大抵は納経所にいるのは年配の人なので若奥さんなのは意外に感じる。よく考えれば墨書する必要がなく朱印だけなので誰でもいいわけだ。この後の寺でも若奥さんが御朱印を捺して下さることがたびたびあった。
「オートバイですか。朝は雨が大変だったでしょう。」
先ほどの松林寺でも似たようなことを訊ねられた。小豆島は朝方はひどい土砂降りだったそうだ。その豪雨の中をバイクで廻っていると思われたのだ。幸いなことに島に上陸した時には既に雨は上がっていたので雨に降られることもなかった。
さらにここでも全てのお堂も廻っているのか訊ねられた。お寺だけ廻って納経帳を朱印で埋める人がよほど多いのだろうか。この疑問はここでも聞きそびれて結局謎のまま残ってしまった。確かに庵堂はたった一人でおつとめをして次へ廻るのだけなので張り合いがないのかも。しかし、朱印の頂けない札所は素通りというのは、それはどうなんだろうか。やはり釈然としない。
「全部を廻られているんですね。いままでどこを廻ってこられました?」
困った。島全体を考えずにただ案内書の通りに走っているので廻ってきた地名が分からない。
「さあ・・・。土庄を出てグルッとまわって土庄に戻って。それからこっちへ来ました。」
何とも要領を得ない、情けない答えだ。それでも嫌な顔一つせずに
「それじゃあ、前島のほうから廻られたんですね。そうすると次へは・・・」
丁寧に道を教えて頂く。
最初に打ったところは前島というらしい。出発してから土庄に戻った時にその島を一周していたのだ。迂闊にも海峡を渡ったのに島だったことに気がついていなかったのだ。それもこれも海峡が狭すぎるからだ。しかし、海峡に文句を言っても始まらない。
渡ってきた海峡は前島の土庄と小豆島本島の淵崎の間に横たわるので土淵海峡と名前がつけられている。役場に行けば世界一狭い海峡の横断証明書を発行してもらえるらしい。村おこしの一環だろうがお役所も意外に粋なことをするものだ。
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