同行二輪

いつまでも若葉な中年ライダーの古社寺旧跡紀行

小豆島八十八(修行)

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二十四番、安養寺

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○二十四番、安養寺

「人間とは忘れる動物である」と言ったのは誰だったか。昨晩、あせらずゆっくり巡礼すればいいと決めたのにもうすっかり忘れている。
閉門前にもう一つぜひ打っておきたい。頭のなかはそれだけで占められた。はやく行かねばと心に余裕がなくなっている。これがその後の不幸の原因だった。

案の定、またまたカーブにある案内板を見過ごした。あわてて道端のお店の駐車場でUターンを試みる。一日廻って疲れもあるし注意力も落ちていた。
バイクを回して道路に出ようと一旦停止して足を着こうとしたところ、そこには地面がなかった。正確には地面はあるのだが、足先が着かなかった。前輪と後輪の両方が少し高くなって丁度足元が低く谷状になっていたのだ。

二輪は止まるには足を着かなければ倒れる。この旅で二回目の立ちゴケとなった。やはり焦るとろくなことがない。
右に倒れているしスタンド部分が少し低くなっていて起すのが大変だ。暑さも手伝って疲労は倍増だ。
苦労してやっとバイクを立てて問題はないか見回すが、ショックが重なる。前輪ブレーキである右のレバーが転倒の衝撃で途中から90度曲っている。コンクリートの上に勢い良く倒してしまった結果だ。この状態で運転できるのか。

さいわい少し気になるが握って操作が出来る。レバーを曲げてしまったのは仕方がないがこの先運転できなければどうしようかと心配だっただけに走るのにはさほど支障がなさそうで安心した。運悪くポッキリと折れてしまうこともある。これもお遍路のおかげかもしれないと感謝した。

安養寺に着く頃にはもう閉門時間が近づいていた。駐車場から境内の横に入るがやけに犬がほえる。とてもうるさい。数匹の犬が飼ってある。一匹だけならまだしも皆が鳴きまくる。繋がれていなければ間違いなく足元までやってきて騒ぐだろう。
おつとめが気になるくらいに犬に吠えたてられる。
本堂はまだ開いているようだ。この犬達はひょっとして呼び鈴のかわりだろうか。確かにこれだけ騒がしければブザーの音より良く響きそうだ。しかし、誰も出てくる気配がない。結局はブザーを押す。

犬の鳴き声がうるさくてブザーの音が聞こえないいことがあるのではないだろうか。妙な心配をするが、昨日のことを考えると、この時間もう納経の受付が終了していることのほうを心配するべきだろう。その不安が的中したのか人の出る気配がない。あきらめかけていたところ奥からゆっくりとおばあさんが出てこられた。歩く姿からどうやら足が不自由のようだ。それで早く出てこられなかったのだ。

御朱印を頂いている間も犬は吠えるのを止めない。
「こら。吠えたらいかんので!」
一応叱っているようだが犬のほうは無視して騒ぐ。どんなに好意的に見てもここの犬たちはしつけが出来ていない。しかも飼っている犬全部に吠え癖があるというのは問題があるだろう。

心の中でここは犬の寺と命名した。既に日は西に傾いている。


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