同行二輪

いつまでも若葉な中年ライダーの古社寺旧跡紀行

中国観音霊場(第10回)

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投入堂遥拝所

イメージ 1

○投入堂遥拝所 (平成19年5月26日)

人が多く訪れるのは多分良いことなのだろうと思いながらも、観光客の多くが宗教施設であることを忘れている様な態度にどうしても釈然としないものを感じながら三佛寺(さんぶつじ)の石段を下る。

登山はしないので、せめて投入堂(さげいれどう)を拝んで帰ることにする。そのまま県道をを数百メートル進むと道端に遥拝所が設けられている。

背後の山は標高900mの三徳山(みとくさん)。その中腹470mの所に投入堂は建っている。地形と木々に遮られて県道からは唯一この遥拝所の場所からしか眼にすることは出来ない。
それ程大きくない建物が遥か山の上に周囲の樹木に溶け込むようにあるので、注意して探さないと見落としてしまう。
老人が数人、遥拝所に備え付けの望遠鏡を覗き込み「白く霞んで何も見えない。」と怒っている。確かに季節外れの黄砂の影響もあって少々見づらくなっているが、肉眼でもはっきり鑑賞できる。
多分、もっと大きな建物を想像して、あらぬところを探しているに違いない。

ご老人達は仲間が投入堂まで登ったのを下から待っているらしかった。

国宝投入堂。三佛寺奥の院、蔵王堂(ざおう)が通称そう呼ばれる。
山の中腹の切り立った断崖絶壁の窪みの中にはめ込まれたように建てられている懸崖造(けんがいつくり)のお堂だ。役小角(えんのおづぬ)がその法力で岩屋に投げ入れたとされ投入堂と呼ばれるようになったと伝わっている。近づくことさえ難しそうな崖にあり、とても人の手で建てられたとは信じられないためそのような伝説が生まれたのだろう。
実際、投入堂を見ると、その美しさよりどうやって建てたのかに興味を持つ人が多いと思われる。

建物は寺院というより流造(ながれつくり)の変形の神社建築に近い。崖の急な斜面に長い柱を立ててその上に乗っている。
建てられた時期、当初の姿、発願者など数々の謎に包まれていて、解明されていないことも多い。
唯一つ確実なのはとても美しいということだ。

古寺巡礼で有名な写真家、土門拳(どもんけん)は
「日本第一の名建築は何かと問われれば、わたしは躊躇なく三仏寺投入堂を真先に挙げる。」
と、絶賛している。
「奈良、京都と古寺巡礼をつづけて、数十の名建築を見てきたが、投入堂のような軽快優美な日本的な美しさは、ついに三仏寺投入堂以外には求められなかった。」
「投入堂は本当に美しい。その建築美は日本一だ。」
簡素な素木造の投入堂は見飽きることがない、とも書いている。
もう手放しの賞賛ぶりだ。

確かに、初めてこの眼で見た時には感動した。日本一の建築美と断言できるほどの審美眼は持ってないが、それでも最高の建物だと思う。スッキリと建つその姿は清清しく高潔で、個人的にも日本建築の傑作と信じている。

それ程気に入っていれば登って間近で見ればいいのだが、今日は体力より時間と気力がない。
やはり、土門拳は
「また撮影の必要が起これば兎に角、三徳山の険阻艱難を思うと、二度と行きたいとは思わない。」
とも書いている。

登山口から投入堂まで標高差300m程で距離も700m程度しかないが往復で1時間半はかかる。途中にはやはり懸崖造のお堂が急な崖上に点在しているので、それらをゆっくり見学しながらだと2時間は十分必要だ。
さらに、時間以上に問題なのは難路だということだ。
途中には木の根をつかみながらよじ登る場所や、鎖を頼りする所などあり、両側が崖となった細い場所もある。それなりに覚悟して登らなければいけない。
本格的な登山経験は必要ないが、ちょっと裏山の遊歩道を散歩という訳にはいなかいのだ。靴は底に溝がなければ用意された草履に履き替えさせられる。もちろんスカートでは入山は許可されない。

数年前「日本一危険な国宝鑑賞」というキャッチコピーで投入堂の観光ポスターが作られたが、これは誇張ではない。
毎年とはいわないが数年に一度は滑落事故が起きて、その内の何人かは命を落としている。
前回登った時には、下山すると本堂周辺が慌しくなっていた。男性が滑落したらしいということで救助隊が組織されるところだったのだ。結局そのかたは亡くなられた。
本当に日本一危険な国宝鑑賞なのだ。
もっとも、この刺激的なキャッチコピーのおかげで有名になり登山客が増えたことも確かだ。

多少の危険があっても登って鑑賞する価値は十分にある。
所詮、ここの遥拝所から眺めても投入堂の真の美しさは伝わらないからだ。登って直接見る投入堂と遥拝所から遠望する投入堂は全く別物といってもいい。極端ないいかただが、天と地ほどの差がある。それ程に受ける感動と印象が違うのだ。

登って眺める「投入堂は本当に美しい。」

注)写真ではかんじんの投入堂が見えてません。写真奥の薄く霞んだ山の真ん中あたりにあるのだが。


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