同行二輪

いつまでも若葉な中年ライダーの古社寺旧跡紀行

中国観音霊場(第11回)

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摩尼寺

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..特別霊場、喜見山、摩尼寺 (平成19年5月27日)

県道31号線を鳥取市街(とっとり)へ向かう。この辺りを走るのは久しぶりだったこともあり、うっかり曲がるべき交叉点を通り過ぎて完全に市街地に入ってしまった。
鳥取市の中心商店街道路の若桜街道(わかさ)を走ってビックリ。人通りがない。商店のシャッターが半分閉まっているというのは言い過ぎにせよあまりに閑散としている。とても繁華街とは呼べない。

アーケードや道路が新しく奇麗になっている分、人の姿のいないその通りは無機質で冷たく感じられ、一種廃墟な印象を受ける。主力店舗が郊外の大型店に移行したことを差し引いても、その寂れた様子には驚くばかりだ。
田舎の地方都市の行く末は真っ暗だということを再認識した。

市街の寂れ方に愕然としながら鳥取市内を通り過ぎて、旧国道9号線、現在の県道318号線を東へ曲がる。新しいバイパスとなった国道9号線と合流する交叉点は少々間違えやすいが、そこで、県道224号線を山に向かって谷を入ってゆく。

長閑な里山の合間を走ること3kmほどで摩尼寺(まに)の門前に到着する。
駐車場には中国観音のツアーバスが停まっていた。どうやら行く先にはこの団体が待ち受けていそうだ。いつもながら、巡礼集団に遭遇するのは気が重い。ツアー参加者はそれ程でもないのだが、どうにも好きになれないのがツアコンだ。彼らの行動は傍若無人でお寺が宗教施設であることを忘れているとしか思えない。要するに周囲への気配りが足りないのだ。しかし、考えてみれば先達ではないのだから仕方がないか、と少し諦めた。

両脇の茶屋を過ぎると長い石段が迎えてくれる。中国観音霊場で長い石段を登るのはこれが最後だ。ゆっくりと登る。かなり気温は上昇しているが、杉の老木に囲まれて木陰となっているのでありがたい。
石段途中で足の悪いおばあさんが、一段一段、杖と手すりを頼りに降りてくるのとすれ違う。あの足がでこれを登ったのだ。おかげがありそうだ。いや、是非おかげがあって欲しいと思う。

見上げていた仁王門にようやくたどり着くが、しかし、その先にもまだ石段は続く。下から本堂までは約300段。最後に屋敷の石垣のような石段を登り切るとようやく本堂前の境内に到着する。

境内は山の斜面につくられているので広くない。堂宇も多くない。正面に本堂と向かって右手のほうにある善光寺如来堂の二つが大きな建物だ。本尊は秘仏となっている。

ここは中国観音霊場の特別霊場。本尊が帝釈天(たいしゃくてん)だからだ。
創建は平安時代初期、慈覚大師円仁(じかくだいしえんにん)が唐から帰って来た際に、この山容が八葉の蓮花に似ていて、こここそ仏道の霊場と感じたことから開山したとされる。少し信じ難い。
創建に関しては別の伝説があり、個人的にはそちらの方が興味深い。
鳥取市の西に湖山(こやま)というところがある。昔、そこに湖山長者という富豪が住んでいたが子供がなく、神仏に祈願したところ女子を授かり大切に育てていた。
ところが娘が八歳になったとき突如姿が見えなくなり夫婦は手をつくて探したが見つからなかった。山の上から周囲を探していると海から龍神となった娘が舞い上がり、大岩の上に帝釈天となって降り立ち、「汝等の娘は帝釈天の化身なり、いまよりこの峰に鎮座して衆生を救う。広く国中に仏徳を知らしめよ。」と告げて消えた。
自分たちの娘が帝釈天であったことを知って感激した長者はそこに寺を建てたという。

背後の山の頂上付近に帝釈天出現地とされる立岩と呼ばれる巨岩があり、奥ノ院や本堂跡とされる場所などもあるらしいが、1kmほどの山道トレッキングになるようだ。
さすがに登る気にはならない。その上、どうやら現在は摩尼寺境内と奥の院参道の各所に設置されていた道標が何らかの事情で全て撤去されているとのこと。どうしてもというなら寺務所で尋ねるしかなさそうだが、今日のところは朱印を頂くだけで十分だ。

ところで、湖山長者の物語といえば地元ではもっとよく知られた話がある。
昔、湖山に広大な土地を持っていた長者がいた。長者の家では村人全員でその広大な田圃の田植えを一日で終わらせるしきたりなっていた。 ところがその年は夕方になっても終わらない。自分に出来ないことはないと慢心していた長者は、家宝の金の扇で沈みそうになっている太陽を招き戻したところ、日が戻って再び登り、その日のうちに田植えを終えることが出来た。
その夜、あたりを暴風雨が襲い、一夜明けると長者の田圃は一面全て大きな池に変わっていたという。それが、鳥取市の西にある湖山池だとされる。いわゆる人の傲慢を戒める話だ。
この湖山池の話と摩尼寺帝釈天の話では湖山長者の性格の描かれ方に相当の違いがあるのが面白い。

かなり昔のTVのトラベルミステリーで、鳥取に門跡尼寺を探して来る作品を見た。その時に門跡ではないが摩尼寺というのがあると、ここを訪れる場面があった。しかし、もちろんここは尼寺ではない。それ以前に門跡寺院がこんな田舎にあるはずもない。
多分、摩尼の「尼」という寺から尼寺を連想したのだろうが全然違う。摩尼というのは摩尼宝珠(まにほうじゅ)のことで如意宝珠(にょいほうじゅ)と同じだ。つまり願いを叶える玉という意味だ。知らない人に誤解を与えるかもしれない演出はちょっといただけないと思ったものだ。まあ、所詮安直なTVの2時間ドラマなのだからしょうがないのだが。

地元ではこの寺を摩尼寺と呼ぶ人は少ない。愛着を込めて「まにさん」と呼ぶ。

お勤めの後、境内が白衣の人で一杯にり急に賑やかになった。どうやら、駐車場で見かけた巡礼ツアーバスの団体が来たようだ。昼食が終わって登って来たのだろう。ここの門前の茶屋は精進料理で有名なのだ。
急いで納経所へ向かう。団体の納経が始まるとひどく待たされてしまうのだ。ツアーに参加している人はツアコンに任せてその間にお勤めや境内の散策をすればいいのだが、こちらはそうもいかない。

納経を済ませたがそこの老人はお姿を渡してくれない。お姿というのはそこの御本尊が描かれた小さなお札のことだ。納経とは別に頂ける。
「あのー。すみません。お姿は?」
「あ。お姿いりますか?」
意外そうな表情で渡してくれた。
目の前に積まれたツアーの納経を済ませるのに急いで執りかかろうとしていたようだが、いくらなんでも、それはないだろう。


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