同行二輪

いつまでも若葉な中年ライダーの古社寺旧跡紀行

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伯耆国に二つの倭文神社

伯耆国三宮、倭文神社 (平成19年10月20日)

平成19年10月20日、大山(だいせん)へ登り、県道45号、通称大山環状道路を流す。いつもの休日には家族連れやツーリンググループも多く見られる鏡ヶ成(かがみがなる)にも車が2、3台で閑散として寂しい。空模様も暗いし寒いからだ。十月も下旬になると涼しい日が多くなる。平地でも道沿いの温度計が15度を示していた。曇っていることもあり、走っていると涼しいを通り超して肌寒いくらいだ。家族キャンプには向かない。

そのまま県道45号線を進んで関金(せきがね)へ降りる。中心地から県道50号東伯関金線へ入り3km程進むと道端に案内があり、そこから分かれる道に大きな石の鳥居があるのが眼に入る。

鳥居の傍らには戦争殉職者碑らしい石版がある。これから向かう倭文神社(しどり)の祭神、建葉槌命(たけはづち)は全国平定に功績があったことから武神として崇拝されたことによるのだろう。太平洋戦争までは崇拝が篤かった神様だが、残念ながら現在では人気がない。

曇天の空からぽつぽつと小雨が降り出した。余りのんびりもしていられないかも知れない。

伯耆国(ほうき)、今の鳥取県西部には二つの大きな倭文神社がある。一つはここで、もう一つは中国三十三観音霊場巡りの時に寄り道した東郷湖(とうごう)の東岸山腹にある倭文神社だ。古来より伯耆国一宮は倭文神社であるとされていたが、近年にはどちらがそうだったのか不明となっていた。一時はこちらが一宮とされていた事もあるが、大正になって東郷宮内の倭文神社の裏山にある経塚から発掘された経筒の銘文によって、そちらが一宮であることが判明した。その後、ここは三宮と名乗る事になる。
つまり、古来よりの三宮ではない。因みに、伯耆国二宮は大神山神社(おおがみやま)とされていたが、これもまた最近は倉吉の波波伎神社(ははき)が同じく二宮を称していて混乱している。戦後は神社組織が国家神道から離れて政治的な統制がなくなったため、一宮、二宮、三宮や大社、神宮など、結構自由に名乗っていているので参拝するほうも大変だ。もっとも、何が大変なのかと聞かれても困るが。

県道から離れて水田に囲まれた道を1km足らず走ると小さな集落がある。志津(しづ)と言う。「しず(しづ)」の地に倭文神社、実に分りやすい。

倭文と書いて「しどり」。これは古代の織物に「しず(しづ)」「しつ」と呼ばれるものがあり「倭文」と表記してあることに因る。本来は織られた倭文布を「しどり」と言うようだが、ともかくそれから倭文を「しどり」と読む。そして、倭文を織る技能集団を倭文部という。
地名の志津は倭文部がいたことを窺わせる。倭文部がいたのなら当然倭文神社があっておかしくない。むしろなければおかしい。
しかし逆に、倭文部とは無関係な志津の地名が最初にあって、後世に倭文との連想から神社が出来た可能性もある。倭文部が先か、地名が先か、判断する知識が全くない。

ここでは全然関係ないが、「しづ」というのは、捕らえられた源義経の愛妾の静御前(しずかごぜん)が鎌倉で義経(よしつね)追討を命じた頼朝の前で舞いながら義経を思い詠んだあの歌の「しづ」だ。
「しづやしづ しづのをだまき 繰りかへし 昔を今に なすよしもがな」
おだまき(をだまき)は紡いだ糸を中空状にして玉に巻いたもので、端から糸を繰り出すことから「繰り返し」にかかっている。
倭文の糸を紡いで巻いた玉から糸を繰り出すように昔を今にする方法があればなあ、と言う様な意味で、義経との日々を懐かしむ内容になっていて、それを、敵である頼朝の面前で舞を強要され舞わされながら歌うという涙を誘う場面だ。
「しづやしづ」は倭文のことだが、静御前の「しず」にもかかっているらしいが、「しづ」と「しず」は掛詞として同じでいいのだろうか。
ところで、この歌は、伊勢物語32段の
「古(いにしへ)の しづのをだまき 繰りかへし 昔を今に なすよしもがな」
の本歌取りだ。しかし、本歌取りというより、ほとんど盗作に近い気がする。

志津は小さな集落で中の道は大変狭い。車一台分の幅しかない。入って行って良いのか、少し不安になる。
最後に、軽自動車でなければ曲がり切れないような直角のカーブを折れると正面が神社だった。

一時は伯耆国一宮ではないかと考えられていただけに、集落の大きさにしては立派過ぎる規模の神社だ。
参拝者は他にはいない。拝殿前まで進むと急にライトが付いて驚いた。センサーがあるのだ。
拝殿後ろには、流造(ながれつくり)に千鳥破風(ちどりはふ)と唐破風向拝(からはふこうはい)の付いた本殿がある。組物の他、四方に彫刻が施してあり非常に華麗な造りになっている。霊獣の一つは獏(ばく)だろうか。彩色はないものの一小集落には不釣合いと言っては失礼だが、そう感じさせる手の込んだ社殿だ。

回りを囲む社叢はそれ程大きくないが古木が残り鬱蒼とした印象を受ける。境内にも巨木が聳える。神社の森は倉吉市の保護林となっているとのことだ。歴史を感じさせる。

主な祭神は経津主神(ふつぬし)、建葉槌命(たけはづち)、下照姫命(したてるひめ)。本来の主祭神は建葉槌命のはずだ。

日本書紀によれば、高天原(たかまがはら)の天照大神は孫の瓊瓊杵尊(ににぎ)にこの国である葦原中国(あしはらのなかつくに)を治めさせようと思い、既に出雲にいた大国主命に国譲りを迫り、平定させるため建御雷神(たけみかづち)と経津主神を遣わした。結局、ニ神の前に出雲は国を渡すことになる。その後更に、ニ神は従わない神々などを退治して行くのだが、星の神香香背男神(かがせお)だけが手に余り、倭文神である建葉槌命を遣わして服従させた(2003年、星の降る夜は、那富乃夜神社)、とある。
ここから建葉槌命が倭文の神であることが分る。

しかし、この話を引き合いに出すといつでも思うのは、何故、機織の倭文神であるはずの建葉槌命が、軍神、剣の神であるとされる建御雷神と経津主神が敵わない相手を倒せるのかということだ。最初は倭文神であったがいつの間にか武神と見なされるようになった。あるいは、武神、軍神だったのが、どこかで倭文の神として祀られるようになった。どちらも考えられる。もしかすると、元々倭文神でも軍神でもどちらでもなかったということもありそうだ。

「タケミカヅチ」、「タケ」は雄雄しいといった意味で記紀ではよく使われている。「ミカ」は尊いということで、「ズ」は何々のという所有格、「チ」は霊力を持つものを表すと言う。つまり、非常に力強く尊い霊力を表現した名前だ。そして「イカズチ」もほぼ同じ意味なので建御雷神は雷の神格化であると説明される。
ただ、ここまで言葉を分解すると一語の重要度が大きすぎる気がする。「チ」は一語でキーポイントとなる意味を持つのに、ミカズチとイカズチの「ミ」と「イ」の違いはないのかと疑問が湧くのだ。

むしろ建御雷神はその文字通り「タケ」「ミ」「イカヅチ」が変化したものと考える方が気分的には納得しやすい。
それはともかく、建葉槌命は建御雷神と音が似ているのは果たして偶然だろうか。建葉槌命に尊称の「御」を加えると、建御葉槌命、つまり「タケミハヅチ」だ。「ミハヅチ」と「ミカズチ」あるいは「イカヅチ」。「ミハ」が「ミカ、イカ」に、あるいは逆に音韻変化するのかどうかがポイントになるが、そこには知識がない。
しかし、可能性としては建葉槌命と建御雷神は元来同じ神だったというのはありそうな気がする。

更に、日本書紀の一書には建葉槌命が経津主神と同神ととれるように記されている。これからもどうやら建葉槌命は元々軍神だったとするのが正しいようだ。それがなぜ倭文、つまり機織の神とされるようになったのか。
倭文部が祀っていたからと言うのは単純で分りやすいが、倭文布を織る工人達が武神を崇拝するというのも妙だ。ただ、倭文部は初めは軍事集団だったとすればそれもあるかもしれない。
何の根拠もないが、倭文布は主に戦の時の幡などに使われていたと言う説はどうだろう。もしそうなら、倭文は戦いを勝利に導く道具で軍神と見なされるようになってもおかしくない。単に想像でしかないが、機織と戦が素直に結びつくと思うのだが。

境内左手に小さな社がある。祠の床下に天神のような神像が数体置かれているが、あるものは首が傾き、あるものは首が取れていたりする。小社は天神社なのだろうが、果たして神像の扱いはこれでいいのだろうか。本殿の扱いに比べて少し雑だ。

境内をゆっくり回っていたらいつの間にか小雨が止んだ。もう少し寄り道をして帰れそうだ。

(「ず」と「づ」、「お」と「を」は厳密には区別してない。)

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私の故郷です。ここでかくれんぼをしたり、野球(レフトフライがホームラン)をしたりしていました。19でここを離れ、もう50を過ぎました。子どもたちの高等教育(この地で日本の大学へやるだけの現金収入を稼ぐのはかなり無理があります)が終われば、戻りたいなと思っています。生活をするという意味で。
韓国の人から、神社の歴史を尋ねられ、答えられず彷徨っているうちに、このページに参りました。
ありがとうございました。

2010/2/6(土) 午後 2:11 [ i.i ]

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こんな適当な記事が何かの役に立てたのならうれしい限りです。
ここのところ全くアップできてませんが、暖かくなる頃には再開できそうな気が・・・。
また、気が向いたらおいでください。

2010/2/6(土) 午後 9:33 同行二輪


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