同行二輪

いつまでも若葉な中年ライダーの古社寺旧跡紀行

出雲國神仏霊場(第3回)

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「神」 第九番 大神山神社奥宮

いよいよ出雲国神仏霊場、最後の大神山神社(おおがみやま)へ向かう。
大山寺本堂(だいせんじ)から近道があるが、せっかくなのできちんと参道を通ることにして、山門まで戻った。

駐車場から上ってくると石段手前に大山寺の山門が建っている。その向かって左手に鳥居があり、道が林の中に続いているが、それが大神山神社への参道だ。

両側に杉の巨木が並ぶ長い石畳の参道が鬱蒼とした林の中を続いている。観光パンフレットなどには日本一長い石畳と説明される。一山三院四十二坊、四十三坊という説もあるが、僧兵3000を数えたとされる大山寺の栄華を伝える遺構のように思えるが、実は、昭和になって整えられたものだ。知ってしまうと少々がっかりする。しかし、森林浴の快適な参道なのは確かだ。

本当に日本一長い石畳かどうかは別にして、500m程続くので長いことには違いない。左右には平坦地があり、石垣も残る場所もあり、僧坊跡と思われるが、既に周囲の森と同化して、建物がなくなってから長い時間が経ったことがうかがわれる。

参道の最後、石段の手前にある、通称、後向き門もかつての大山寺を管轄した西楽院の遺構だ。その先にようやく大神山神社奥宮が姿を現す。
毎年、初夏の6月第一日曜日に行なわれる大山夏山開きの前夜祭で、大神山神社からこの参道を観光客の松明行列が駐車場まで下りる。その時の炎の河は山陰の地方行事とは思えないほど美しく壮大で感動する。しかし、それももちろん新しい祭りで、新宮の那智の火祭りのように古い歴史を持つものではない。現在の大山寺には往古をしのぶものが有形無形ともにほとんど残ってないのだ。その中で、残された数少ない遺構が大神山神社奥宮だ。

寺院の名残が神社というのも、非常に複雑な気持ちがするが、日本でも最大級の権現造(ごんげんつくり)とされるだけあって、その社殿は壮大だ。
一見すると権現造には見えない。拝殿に左右翼廊がつながっているためだ。また、一般的には大規模な権現造は華麗な装飾で飾られていることが多いが、外側には彩色もないため、そのことも権現造に見えなくしている。
それに対して内部はかなり装飾が凝らしてある。ここまで来る観光客は少ないのだが、来ても拝殿内を拝観することなく帰る人が多い。それではあまり見所のない、大きいが地味な神社と映ってしまうかも知れない。

ここが奥宮とされるのは、もう一つ大山(だいせん)の麓に大神山神社があるからだ。
大神山神社奥宮は明治まで一山三院と称された大山寺の大智明権現(だいちみょうごんげん)を祀っていた。神仏分離と大山寺の廃寺の過程で、大智明権現は大国主命(おおくにぬし)と同体とされて神社に組み込まれ、大神山神社の奥宮とされた。
大神山神社は大山を御神体とする神社で、元々この地にあったものが遥拝の地の麓に下り、そして後に大山寺によって仏教化された、と神社の由来書には説かれる。神社側としては聖地を奪還したことになるのだろうか。そのためか、ここの神職は話の端々に大山寺を見下すような言葉が多い気がする。
神仏分離で明治以降に寺から離れた神社は多いが、どこも神社サイドの態度が何か頑なな印象を受けてしまう。仏教と一緒にするな、と声高に叫んでいる気がする。しかも、神社の由来などで展開される説は歴史的にかなり疑問のあることが多い事にいつも気が滅入る。
大神山神社も、大山を御神体とする神社として創建されたのは間違いないが、大山寺にあったものが里宮として麓に降りたとする説は神社の主張以外にはほとんど見られない。また、大智明権現は大山寺の歴史を通じて地蔵菩薩と見なされていて、大国主命とする考えもなかった。
ただ、大山寺がこの地にあった大山を御神体と祀る土着信仰を取り込む形で発展してきたのも確かだ。

大山は出雲国風土記に火神岳(ひのかみたけ)と記されるように古くから知られた神の山だった。出雲国神仏霊場で大神山神社が「神」の文字で代表されるのはそのためだ。
個人的には、大山寺との関係は神仏習合で発展してきたと素直に認める寛大な心が、「神」の文字を持つ大神山神社の真摯な態度ではないかと思ってしまう。

最後の朱印を頂いて大山寺集落まで戻り、南光河原(なんこうかわら)にかかる大山寺橋から山頂を仰ぎ見る。良く晴れた空に大山がくっきりと目に眩しい。
その後、気の向くままに大山周辺をツーリングした。どこを走ったのか帰ってみると163kmにもなっていた。


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