同行二輪

いつまでも若葉な中年ライダーの古社寺旧跡紀行

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「守」 第二十番 日御碕神社

出雲大社前の道をそのまま走ると国譲りの舞台である、稲佐の浜(いなさのはま)の海岸に突き当たる。そこから右に曲がり県道29号大社日御碕線(たいしゃひにみさき)で島根半島を北に向かい海岸線に沿って走る。
島根半島の西の突端、日御碕(ひのみさき)、出雲大社から8km程の所にある日御碕神社を目指す。

ここから先、海に沿う断崖に設けられた蛇行した細い道が岬まで続く。センターラインはあるのだが、左手は崖、右手は数十メートル下に日本海の荒磯、そして曲がりの強いブラインドカーブが連続し、所々のトンネルは大型バス同士のすれ違いが困難な少々狭い道だ。

左手に広がる日本海は晴天の下、透き通るような青さが目に飛び込んでくるし、眼下の磯や小島は海のコントラストに映えて風光明媚だ。タイトコーナーもバイクでは気持ちよく流せる。ただし、あまり海の美しさに見とれていると崖にぶつかるか海に落ちる可能性がある。

振り向くと稲佐の浜から長浜の砂丘が弧を描いて伸び、その向こうに三瓶山(さんべ)が見える。古代に砂丘が砂州で細く伸びていた姿を想像する。国引きの綱とそれを止めた杭そのものだ。長浜神社での国引き神話が目の前に展開しているのを実感する。

狭く曲がりくねっているとはいえ、車の通行に支障がある訳ではない。しかし、この道路が今のように整備されるまで、この先の日御碕への通行は大変だったと想像される。
日本全国、多くの海岸線、特に半島では山が海に迫り断崖となっていることが多い。島根半島も例外ではない。狭い場所に高い所では500mを越える山が連なっていて、日本海に面した部分は断崖となり平地は限られた場所しかない。そのため人の往来のできた道は少なかったし、道自体も険阻で獣道よりましいった程度だったと思われる。

現在でさえ日御碕に通じる道は東の猪目(いのめ)からの道が合流した後は最終的にこの県道だけになる。そこから先、もしも不通となったら日御碕は陸の孤島となる。少なくとも戦国時代以後江戸時代を通じて、実際に日御碕は何度も孤立している。それは自然災害ではなく出雲大社によってだ。

集落も小さく住民もそれほ程多くない島根半島の端っこにある日御碕神社が何故大きな力を持っていたのか不思議なのだが、ともかく、日御碕神社と出雲大社は古来より社領で勢力争いを繰り返していた。
しかし、地理的な立地条件から日御碕側は大変分が悪い。大社側は日御碕への道を封鎖して日御碕側を攻撃している。日御碕は困って、その度に当時の守護大名や藩に陳情したりしているが効果のないことも多かった。また、大社は道の直接の通行止めではなく、勝手に関所を作って通行料を徴収して交通を妨害することもやっている。なかなか、陰険なやり方だ。

今でもそうなのかどうかは確認できないのだが、最近まで陰で古老の人たちは「大社と日御碕は神様同士が仲が悪くて・・・。」と、よく言っていたそうだ。
多分、仲が悪かったのは神様ではなく宮司や社家だろうが。

出雲国神仏霊場は20の寺社で宍道湖(しんじこ)と中海(なかうみ)を囲む輪を描くようになっている。松江で宍道湖の輪と中海の輪がつながり、全体で∞の形になり、一巡すると循環と無限大を象徴するらしい。今回は輪の途中から始めているのでようやく半分といった所だが、番号順に廻ると次の日御碕神社で終わる。
円の循環なのでどこをスタートにしても良いのだが一番霊場は出雲大社で、日御碕神社が最後の二十番になっている。ひょっとすると、お互いの仲を考慮して最初と最後に分けたのだろうか。それはさすがに考えすぎか。

岬の手前に近づくと道から左手遥か下に朱色の鮮やかな神社がチラリと見える。宇龍の集落への分岐があるが、真っ直ぐに進むと日御碕灯台だ。何故かバイク乗り、ライダーは突端が好きだ。岬とか灯台とかあると立ち寄ってみたくなるようだ。最果て好きなのかも知れない。
日御碕灯台は観光地でもあるので、普通ならここまで来れば必ず灯台へ寄るのだろうが、今日は車の流れと離れて交叉点を曲がった。
日御碕灯台には何度も行っているということもあるが、今回の出雲国神仏霊場巡りは寄り道をしないことに決めたからだ。途中で思いついた場所に立ち寄っているといつまで経っても終わらないし、寄り道はいつもの宍道湖中海周辺の神社仏閣名所旧跡巡りと変わらなくなってしまう。自分なりのメリハリといった所だ。

県道から離れてループを描くように県道の下をくぐりぬけ海岸まで下ってゆくと、日御碕神社の鳥居だ。小さな港の海のすぐそばに社殿が建っている。

鮮やかな朱塗りの楼門をくぐると、正面にはやはり朱も鮮やかな拝殿。右手の斜面にある社殿への登廊、境内全体も回廊がめぐっていて、それら全ての朱塗りという、田舎には珍しい目に眩しい華麗な神社だ。海辺に建つ竜宮城といった印象を与える。
向かって右側から背後にかけて崖で囲まれた地形になっていてその上には木々が茂り、境内の松の緑と共に、社殿の朱色がいっそう映える。

正面は日沈宮(ひしずみのみや)で天照大神(あまてらす)を祀り、右手の上にあるのは神の宮で素戔嗚尊(しさのお)を祀る。

最初は天照大神はここに祀られていたのではなく、神社の背後、港の数十メートル沖合いにある小島、経島(ふみしま)にあったとされる。
創建は、島の上で瑞光が輝き、「吾は日の神なり。此処に鎮りて天下の人民を恵まん。速やかに吾を祀れ」との天照大御神の御神託があったことに由来するとされる。そして、日の登る伊勢神宮は日の本の昼を守り、日の沈むここは日の本の夜を守る、ということで日沈宮となった。
後に、素戔嗚尊を祀っていた現地に経島から遷座したと伝えられている。

港の浜から眺めると経島は西にあり、日本海に沈む夕陽が拝める場所に位置する。日没の遥拝所として、日沈宮が島にできるのは自然なことだ。しかし、多分それは最初は素朴な夕陽を祀る儀礼信仰で、天照大神というはっきりとした神格を祀ったものではなかっただろう。風土記からも古代出雲に天照大神を祀る信仰は見られない。
天照大神が日本の最高神と考えられるようになって来た後、日の登る伊勢神宮に対して日の沈む日御碕という対応が浮かんだ時に、日沈宮には単なる夕陽の神ではなく天照大神が祀られるようになった。祀られる祭神が変化したわけだ。今まで出雲で馴染みのない神に変わったのだが、信仰する氏子にとって、それは必ずしも不本意なものではなかったはずだ。何しろ日本で一番の神様なのだ。日御碕の主祭神が最高神と見なされることは有利な点があったに違いない。
むしろ出雲の最大勢力出雲大社に対抗するために、天照大神を積極的に迎えたのかも知れない。

同地に祀られている素戔嗚尊と天照大神は、本来同列で扱われることが少ない。
記紀では兄弟との設定になっているが、素戔嗚尊の性格は粗暴に描かれ、そのため天照大神は素戔嗚尊を高天原から追放している。仲良く一緒に祀られるような間柄ではない。長浜神社や出雲大社の時と同じで、大和朝廷対出雲勢力の図は、信仰面では天照大神と高天原(たかまがはら)の天神対素戔嗚尊と子孫の大国主命ら地祇との構図で対比される。

素戔嗚尊が祀られていた神の宮の地に、夕陽を祀る日沈宮が遷座した。その後、日沈宮の祭神は天照大神と見なされる。神の宮と日沈宮が同一境内になっても、当然元からの素戔嗚尊が主だったのだが、その後、皇室の祖先で最高神とされる天照大神を全面に出すほうが様々な点で都合が良くなり、天照大神が主となった。
しかし、最初からの素戔嗚尊をないがしろにもできない。そこで、素戔嗚尊の神の宮を摂社、末社と呼ぶには大きく立派で、しかも天照大神の日沈宮を見下ろすような場所に建てて、面目を保った。そんなところではないのだろうか。それが、高い位置にあり、しかも神の宮の規模が大きい理由だと想像した。

日沈宮も神の宮もどちらも権現造(ごんげんつくり)。出雲地方ではこれ程の規模の権現造はほとんど見られない。大社造でない点も、出雲大社との関係を暗示しているようで興味が湧く。

日沈宮旧社地の経島は、現在、日本でも有数のウミネコの繁殖地となっている。御神託は島の松に光が現れたらしいが、今は草木は一本も生えない、ウミネコの白い糞で覆われた小島だ。

境内にはウミネコではなく鳩がいる。松の木陰に地べたに座ったまま、近づいても動こうとしない。あまりの暑さに日差しを避けているようだ。
日御碕神社の「守」は、夜を守ることから来ている。できればこの厳しい日差しからも守って欲しい。守る意味が違うのは十分承知しているが。

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