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本日はすこぶる快調なので、ブログ更新もどんどん進みます♪
さて、前々から紹介しようと思っていたのですが、
なかなか紹介できなかった書籍を一つ。
A・ドナーティ(監修:小林雅夫 訳:林要一) 『碑文が語る古代ローマ史』
古代ローマにおける碑文は、支配政権の思想や政治的意思を一般にしらしめたり、何十万という公私の出来事を私たちに教えてくれるだけでなく、商店の看板や道路標識のようなささいなものまでを含めて、コミュニケーションの道具として中心的な役割を果たしていました。
(*本書「日本語版序文」より)
この書籍は、元々はイタリアのボローニャ大学碑文学教授ドナーティ女史が
おそらくは教育目的で執筆されたものです。
私も、イタリアにいる間にこの書籍を見つけ、読み進めていった記憶があります。
(*無論、今でも書籍棚にある、というかオネンネしていますが...)
ただ、やはり原著がイタリア語で書かれている性質上、
なかなか日本人には馴染みがなかったのも事実で、
今回、林先生が本書を邦訳化されたのは本当に嬉しい限りです。
内容自体はさほど詳しくはなく、要点をコンパクトにまとめ、
あくまでも碑文学の初学者向けに「ラテン碑文とは何ぞや」
を優しく解説したものです。
その意味でも、「古代ローマ史に興味あるけど、本格的にはなぁ」
といった方々にも、すんなり入っていけるのではないかと思います。
なお、訳者である林先生は元外交官ですが、イタリアでの勤務経験もあり、
退官後、イタリアのヴァティカンにあるローマ教皇庁グレゴリアーナ大学でご研鑽され、
イタリア語は当然として、ラテン語を完全にマスターされたつわもの中のつわものです。
また、邦訳化される前に、自らイタリアの大学に再度赴き、
ラテン碑文を研鑽されたのことですので、
訳語に関しては全く問題ないと思われます。
さて、本書の中で私が特に興味を抱いた箇所があります。
Rubria Ma/ionica vixit / annis LX de/cepta a Clodio Pa/[st]ore marito suo...
訳:ルブリア・マイオニカ、享年60、夫クロディウス・パストルに殺害される
出典:CIL VIII,4621. ヌミディアのディアナ出土(*本書、P92)
とある婦人の墓碑銘ですが、この婦人、なんと夫に殺害されていたのです。
しかし、重要なのは、夫に殺害されたという事実よりも、
この事実が碑文に堂々と刻まれていた!という点です。
他にも、7人の生徒とともに強盗に殺害された夫(CIL VI,20307)、
あるいは、井戸の崩落により事故死した息子のために嘆き悲しむ父が建てた墓碑(CIL V,2417)など、
変死や惨死といった生々しい事実まで古代ローマ時代の墓碑銘に刻まれていました。
墓碑銘というと、一般的なイメージでは故人を追悼し、
場合によっては、多少誇張気味に故人を持ち上げる向きが強いように思われ、
特に古代ローマ時代の墓碑はそういった特徴が顕著に見受けられるものですが、
上記のような、碑文の読み手を思わず戦慄させ恐怖心を抱かせるような墓碑の存在は、
古代ローマ人にとっての墓碑銘(碑文)の持つ意義を再考させてくれる材料ともなりそうです。
それにしても、こうした碑文製作者はどんなことを感じながらこの碑銘を
製作しようと思い立ったのでしょうか...
やはり、古代ローマ時代の碑文はまだまだ我々を飽きさせないですね。
古代ローマ時代に興味のある皆さんは、一度は手に取ってみるのもよいかもしれません。
以上、紹介まで。
追記
先週、本書の出版を記念したミニシンポジウムが某大学で開催されたのですが、
たまたま忙しくしていたこともあって、残念ながら出席できませんでした。
久しぶりに古代ローマにどっぷりつかることのできる貴重な機会だっただけに、
非常に残念な限りです...
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