さくらの結婚は「男はつらいよ」第1作のメインテーマだ。昭和44年、アポロ11号が月面着陸に成功した年に作られた。
さくらは幼くして、両親を亡くし叔父、叔母に引き取られて育ったが、
幼い頃から、賢く、思いやりのある少女だった。
現在はOLとして丸の内で働いている。美人で気が利き、仕事も出来るので、
上司の紹介である会社の社長の息子とのお見合いがすすんでいた。
そのお見合いの直前に行方不明であった寅さんが、突然柴又に帰って来る。
二日酔いのおいちゃんの替わりに寅さんが同行したので見合いはメチャクチャになる。
一方、さくらに3年越しに恋焦がれていたのが、隣の印刷工場で働く博である。
博は3年前、真面目一方の父親と大喧嘩し縁を切られ、家を飛び出し職を転々とし、
タコ社長と知り合い印刷工場で働くことになったのだ。
ところが、博はさくらの前では口が聞けなくなり、悶々としていた。
寅さんが博の気持ちを伝えてやると請合いながら、さくらには何も言わないで、
博に「見込みはないから諦めろ」と言ってしまう。
お先が真っ暗になった博は工場を辞めて、出て行く決心をした。
さくらに「僕は貴方がいたから3年間ここで働いていました。幸せになって下さい。」
それだけ言うと駅に向かった。
さくらは初めてことの重大さに気づき、博を追って行く。
さくらも密かに博に好意をもっていたのだ。
二人はめでたく、結婚することになる。
結婚式は印刷工場の社員達の手作りで、質素ではあるが、暖かさに溢れたものだった。
何よりも縁を切った博の両親が出席し、最後に前に立った父親が長い沈黙の後に、
「私は皆様にお礼を言う資格の無い者ですが、博が出て行ってからは長い冬でした。
ようやく私たちにも春が来ました。さくらさん、どうか博をよろしくお願い致します」
と挨拶して涙を流した。
博は泣いた。寅さんも泣いた。会場全体を感動が包む。
恋愛を表す卦は「沢山咸」。咸は感と同音、同意。感激、感動である。「咸は亨る。貞に利ろし。女を取(めと)るは吉なり」愛し合うことは未来に通じる。正しい心掛けが大切である。そういう結婚は吉である。この卦は男の方からへり下って愛を求め、女が喜んで応じる象を意味する。また、心を虚しくして人の心を受け入れる意味でもある。
いい加減な寅さんにして、しっかり者の妹、さくら。
山田監督は理想の女性としてさくらを存在させている気がする。
|