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Eさんは作曲家。70歳を過ぎているが今も作曲をする時は決まって地方へ行く。誰もが知っているヒット曲もあるので少しは名も知れている。
Eさんの妻がF子さんだ。F子さんは元演歌歌手だったが今はカラオケスタジオを経営している。このスタジオは音響設備が他の店とは段違いに良いので、歌自慢たちが遠くからも集まって来る。中にはプロを目指す人もいるという。
集まるお客さんは歌に関しては人一倍熱心なので、時には音や音楽について互いに譲れない大論争になることがある。F子さんが間に入り両者の話を聞いて収めるのだが、どうしても収まりがつかず手に負えないこともたまにはある。
そんな時、F子さんは夫のEさんに携帯電話をかける。F子さん「もしもしパパ、今忙しい?」Eさん「家に居るよ。いつものバッハを聞いているよ。」F子さん「それ聞いてからで良いからお店に来てくれない。」Eさん「又揉めてるのか?行くだけだぞ。」F子さん「来るだけで良いの。じゃあお願い。」
家と店の距離はわずか100M位。まもなくEさんがやって来る。Eさんは黙ってカウンターに座る。そうするとどう言う訳かさっきまでの喧々諤々の大論争は次第に収まってしまう。そしてEさんの周りに人が集まって来る。
「今晩は。」「しばらくでした。」「お元気そうですね。」Eさんの人気は変わらない。30分も経つ頃にはEさんを中心に和気藹々話が弾んで必ず誰かが「先生、そろそろ一曲お願いしますよ。」となる。
Eさんは快く「じゃあ、やって見ようか。」と言って店にあるギターをとって弾き語りの演奏会が始まるのだ。常連客たちは大喜び。いつまでも続くのだ。
「山天大畜」の卦。陽で一杯の集団を大人君子が治める象である。前に出た「風天小畜」(柔よく剛を制す)の卦と対比してみるとその違いが理解出来るだろう。
大きくは政界。小さくは家庭。どんな集団にも上にあるものが大人君子である場合は安定するものである。
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