さわやか易

いらっしゃいませ。名画を鑑賞するとき、その背景である歴史を考えてみたい。(猶興)

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落葉の絨毯。

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I子さんは才色兼備のお嬢さん。28歳の時、総合病院院長の父の勧めでお見合いをして、大学病院の勤務医と結婚式を挙げた。大勢の出席者に祝福され、「暖かい家庭を造ります。」と誓った。

それから10年、I子さんは悩んでいた。どんなに努力しても夫とうまく行かない。もともと独りで居ることが好きな夫は妻とも会話することさえ避けるようになっている。

気晴らしにI子さんは大好きな花を観にあちこちと出かけた。10月の始め頃、車で20分の距離にある薔薇展を開いている大きな公園に独りで出かけた。

見事な薔薇を鑑賞していた時、ふとしたきっかけでSさんという妻子のいる40代の男性と知り合いになった。大きな池を見下ろすベンチに座り話をする。まるで古くからの友人と錯覚するほど波長が合った。I子さんは閉ざされていた心の窓が久しぶりに開いて、爽やかな風が入って来たような爽快感を感じた。

一時間も経っただろうか、「又、会って戴けませんか。」Sさんに言われて我に返り「いいえお会いすることは出来ません。とても楽しかったわ。さようなら」振り切るように立ち去った。

翌日から元の生活に戻ったI子さんではあるが、日増しに空しさが募って来た。(本当につまらない毎日。いったい夫は何故私と結婚したのかしら。)時々思い出すのがSさんとの会話だ。(どうして断わってしまったのだろう。もう一度会いたい。)

一月以上経った11月末、すっかり憂鬱になってしまったI子さんは気分転換にあの薔薇の公園に来た。人気のまばらな晩秋の公園は銀杏の落葉でいっぱいだった。池の前まで来たI子さんの足が止まる。あのベンチにSさんが独りで座っていた。(SさんもI子さんを思い出す度ここに来ていたのだ)

I子さんは側にある銀杏の樹に身を隠す。心臓が早鐘のように波打った。(いけない、見つかったら大変なことになる)じっと息を殺していた。

やがてSさんは立ち上がり振り向いて歩き出そうとした時、銀杏の樹に人影を見た。黄金色の落葉を踏みながら近づいて来たSさんは「やっと会えましたね。」と言って身動きも出来ず立ちすくんでいるI子さんを優しく抱擁した。

同じ悩みを抱えて真実の愛を求める男と女。二人がようやく手に入れた愛は誰にも祝福されることのない愛。二人はさらに深い悩みの中に陥って行く。

「坎為水」の卦。穴に陥る象である。より深い悩みに陥ることである。しかし悩みは人を深くし、新たな勇気や力を生ぜしむる。信を失わず、努力してゆくことが大切である。

人生には簡単に善悪を判断できないことがある。他人の助言を聞くことも大切だろうが、最後は自分の責任である。心の声に従うことではないだろうか。

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