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月尾嘉男氏。1942〜
「知致」9月号のテーマは「本質を見抜く」である。私が最も印象に残った記事は東京大学名誉教授の月尾嘉男氏と東北大学院教授の安田喜憲氏との対談である。(月尾先生は6月号でも掲載させて頂いた。)
お二人の対談は外交、環境、文化、歴史、経済と幅広く、簡単に照会しきれないが、特に印象に残った部分だけ照会する。
武力、財力に代わる新しい力とは?
月尾氏「経済一筋で発展してきた日本は1980年に世界の金融機関の時価評価総額の順に並べると日本の銀行が1位から5位までを独占し、上位20行のうち11行が日本の銀行でした。それを不快に思ったアメリカやイギリスが85年にプラザ合意を押し付ける。(1ドル240円から3年間で120円の円高になる。)それでも足りないということで、88年にバーゼル合意を成立させ、92年からBIS規制を運用することになる。」
安田氏「銀行の自己資本比率に関する国際統一基準のことですね。」
月尾氏「日本は世界でも例外的に『借りた金は必ず返す』という文化を持つ民族です。そこに目をつけられた。『貸出資産の8%は自己資本として保有しないと国際金融をやらせない』という制度を突然押し付けられた。その結果、銀行は企業から貸し剥がしを行う。中小企業は一気に衰弱し、現在まで続く『失われた20年』へ突入してしまった。」
月尾氏「結局、財力とはそれほど確固たる力ではなく、国際的な仕組みの中では一瞬にして消滅してしまう儚いものだということです。」
月尾氏「明治時代に廃仏毀釈を行い仏教文化を放棄した。外国人がタダ同然に仏教美術品に買い取ってしまった。昨年、国立博物館で『写楽展』が開催されたが、展示された作品は外国から借りたものだった。日本人が日本の文化の素晴らしさに気付かないとこういうことになる。」
安田氏「日本は縄文以来、森を守り、森から流れる栄養分が水田を潤し、水が海に流れて微生物を育て魚を育てる。水の循環系を基本とするライフスタイルを築き上げた。」「里山の棚田も驚きです。西洋人は畑作牧畜型で急傾斜地にヤギや羊を放牧させ、瞬く間に禿山にしてしまった。」「日本の林業も200年先を見ながらやってきた。」
月尾氏「イギリスは日本と同じ島国ですが、産業革命時代に森林のほとんどを伐採してしまった。その結果、哺乳類の生息では日本188種、イギリス41種。植物は日本5500種以上、イギリス1600種。この多様性が日本の特質であり、重要な資源である。」「日本の社会の特徴は老舗が多いことです。韓国銀行の調査によると、200年以上続いている企業は中国9社、インド3社に対し日本3100社以上。」(これは列強の植民地になると、これ程酷いことになるということも意味している。)
月尾氏と安田氏の対談は多岐に渡るが、詰る所、日本は恵まれた国土に世界にも抜きん出た文化を築いている民族である。軍事力も経済力も技術力も大事だが、それにも増して大事なのは文化力である。文化力を活かして新たに国を再生していかなければいけないということだろう。(猶興)
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