さわやか易

いらっしゃいませ。名画を鑑賞するとき、その背景である歴史を考えてみたい。(猶興)

ある夫婦の物語

[ リスト | 詳細 ]

これは易の下経34卦を1卦づつドラマにしたものです。
易の順番には大きな意味と教訓がありますので、連続ドラマに仕立てようと試みました。
しかし作ってみると、力不足で容易ではありませんでした。
無理やり繋げた面もあり、易の解説も稚拙なものです。
それでも一組の夫婦が大きな試練の世の中を懸命に生き抜き、「悔いのない人生」にしようと頑張る姿を感じていただけましたら、幸いです。(猶興)
記事検索
検索

全7ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7]

[ 次のページ ]

あれから、7年が経過した。亨は65歳、利子は63歳になっている。
 
亨は週に一度は講演を頼まれ出かける。サラリーマンから雲水修行、アフガンでの学校創りの体験を話してくれとの依頼があった。最近、頼まれて60歳以上のラグビーチームの主将を務めている。月に一度の試合が楽しみであり、終わった後のビールが堪らなく旨い。
 
利子は通訳を60歳で辞め、今は親友のA子とE財団を兼ねたNPO龍志会の事務所に交代で出勤し、週に一度は2人でコンサート、歌舞伎、野球観戦をする。ワインで盛り上がることも忘れない。
 
ようやくアフガンにも平和が訪れた。国民は水を得た魚のように活動を開始している。NPO龍志会が建てた学校がカブール郊外の丘の上にある。貞と晋は現地採用のスタッフ20人とともに、生徒1000人を相手に奮闘の毎日を送る。2人には長男・渉(わたる)が1歳を迎えたばかりだ。
 イメージ 1
沈む夕陽がエーゲ海に浮かぶ島々を照り染める。サンセットクルージングに参加した日本人観光客の中に亨と利子のカップルがいた。2人はカブールの学校を訪ねたついでに、結婚35周年記念の旅行に来ていた。
 
亨は利子に感謝の気持ちを込めて、「良くここまで、我がままな僕について来てくれたね。本当に有り難う。」利子は答えた。「大変なことばかりだったわ。でも、楽しかった。こちらこそ、有り難うございます。」
 
「E社長が最後に『吾が人生に悔いは無し。』と言ったけど、僕もそんな気持ちでいるよ。」「亨君!まだまだ、貴方にはすることが残っているでしょ。!」「何だっけ」「女房孝行でしょう。苦労かけっ放しの女房にもっともっと孝行しなけりゃ、バチがあたるでしょ。」「その通りでした。失礼しました。」「解ればいいのよ、亨君。」2人は楽しそうに笑っていた。
 
すると夕陽に赤く染まった海の彼方、遠い空から声が聞こえた。「お父〜〜さ〜〜ん。」「お母〜〜さ〜〜ん。」2人には忘れることの出来ない龍の声である。
 
亨は(そうか、お前が付いていてくれたんだ。アフガンの学校もお前が導いてくれたのか。有り難う龍。)利子は(ずっと、私たちを見守ってくれたのね。これからは貞たちも守ってあげてね。有り難う龍。)2人はいつまでも空に手を合わせていた。ー完ー
 
******** 上卦は火。
***  *** 文明、文化を表す。
********
***  *** 下卦は水。
******** 困難、悩みを表す。 
***  ***
 
「火水未済」の卦。未済(びせい)は前項・既済(きせい完成)の後に新たな変化を意味している。世代の交代を表すとも言える。
 
春夏秋冬と季節は廻る。易は絶え間ない変化を説いている。
 
私たちの人生もこれで終わりということは無いのである。
 
 
 

その33ー龍志会ー

イメージ 1
ケイトから利子に電話があった。「シンとゆっくり話をしたが、素晴らしい青年じゃないの。まるで、若いときのトオルのようだわ。アフガン行きは辞めるように言ったが、彼の決意は強いの。私は応援することにしたわ。」
 
「ところで、息子のジュードが今度自分から願い出て日本のJリーグに移籍するので応援してね。」と言ってきた。利子は「ジュードは歓迎するけど、私にはアフガンは恐くて、賛成出来ないの。」と答える。
 
一方、亨のところへは次々と人が集まって来る。元ハイエナ社のOBである3人が訪ねて来て、「パキスタンの海外経験が役に立つことがあれば、手弁当でお手伝いしますから、声をかけて下さい。」
 
大学のラグビー部の仲間も来た。「亨よ、建設で役に立つなら、何でもするぞ。まだまだ引っ込む気になれないからな。友人に測量士も一級建築士もいる。」
 
E元社長の遺産については、利子の親友A子さんが外務省OBの経験から友人の弁護士とともに人肌脱いでくれた。海外経済援助と青少年の育成という目的でE財団設立に向けてがんばっている。
 
亨は何か新しい世界が始まろうとすることを予感した。利子も熊本の肝っ玉母さん・N子さんに負けてはいられない。こうなれば、腹を括るしかないではないか。一緒にがんばろうと決心した。
 
晋は現地の水や食料問題、感染症、宗教、習慣、家族関係、あらゆる問題に対処するために、JICAに入社して勉強する。貞は実践勉強のため、青年海外協力隊としてバングラディッシュに出発した。
 
やがて亨のリーダーシップのもと、かつてのハイエナ社を思い出すような事務所には、20数人の様々な業種の人たちが集まる。連日、「アフガンの子供たちのために何が出来るか。」について熱い討論が繰り広げられる。
 
「子供たちに学校を造ろう。」という結論に漕ぎつけた。造ったあとは、エース晋を中心に若い者たちに任せよう。早速、NPO設立に向けて動き出す。半年かかったが、E財団の設立と同時にNPO[龍志会」が発足した。
 
ケイトに似て長身のイケメン、人気沸騰中であるJリーグのジュードが駆けつけ、「ガンバッテクダサイ。」と激励した。
 
***  *** 上卦は水。
******** 困難、悩みを現す。
***  ***
******** 下卦は火。
***  *** 文化、文明を表す。
********
 
「水火既済」の卦。既済は何かが完成することである。適材が適所を得て、一致協力している象でもある。あらゆる変化はこれから始まるという象でもある。
 
「一隅を照らす。」という言葉がある。
 
その人に出来る範囲を照らせば、それで充分なのだ。
 
 
 
 
 

その32ーアフガンー

イメージ 1
貞が生涯を共にしようと心に決めた晋は、ある堅い志を秘めていた。
 
晋の志とは、大好きだった父の意志を継ぐことである。父のMさんはNPOの一員としてアフガニスタンの農業用灌がい用水路の工事に取り組んだ。しかし、完成を祝った翌日にアメリカに加担する外国人という理由で武装勢力の手で殺害された。
 
亨と利子は貞からその話を聞いた時大きな衝撃を受ける。(そんな危険な処へ娘を行かせる訳にはいかない)利子は反対する。最愛の息子を事故で亡くした経験のある親にすれば当然である。
 
利子は晋の母親は息子の生き方に反対しないのだろうかと思う。亨と一緒に熊本でラーメン店を営んでいる母・N子さんに会いに行くことにする。
 
N子さんは大学生時代、友達と石仏で有名なバーミアンを旅行中、オートバイでシルクロードを踏破してきたMさんと出会った。結婚し二人でラーメン店を経営し二人の子供を育てる。
 
MさんとN子さんは出会いの地であるアフガンを愛していた。しかしアフガンはソ連による軍事侵攻、武装勢力タリバーンの支配、アルカイーダの暗躍、テロリスト国家としてアメリカの空爆。戦乱につぐ戦乱に民衆は彷徨える難民となり、世界中で最も見捨てられた国となっていく。
 
Mさんは平和な日本にいて座視して居るに忍びず、50歳を迎えた日、2年の約束で、自ら志願してNPOに参加したのだった。
 
N子さんは亨と利子に高校生の晋と二人でMさんの墓参りに行った時の体験を話した。
 
NPOの人に連れられて、Mさんが死んだ地に行くと、丸太を立てただけの墓があった。母と子がお参りしていると、子供たちが集まって来た。そして自分の頭をなぜる格好をして、「ガンバレ」「マケルナ」と言いながら何かを訴えている。
 
NPOの人が通訳するには、亡くなったMさんが、いつも子供たちに「頑張るんだよ。」「負けるなよ。」と言って頭をなぜてくれたそうである。それを聞いてN子さんは胸が熱くなり、晋と一緒に一人一人に、「がんばってね。」「負けないでね。」と言って、子供たちの頭をなぜてやった。
 
そのとき子供たちは、目を輝かし、嬉しそうな顔をして「ガンバレ」「マケルナ」と繰り返し連呼する。その光景は今でも忘れられない。晋はそのとき、父の遺志を継ぐことを決めたという。
 
死んだMさんは好きだった白洲次郎が学んだイギリス・K大学に晋を留学させるのが夢だった。N子さんは「晋、K大学で自分に何が出来るか、何をしたら良かかをしっかり学んで来なさい。その上で志が変わらないなら、母さんは何も反対はせんよ。」と言った。
 
そして、「そりゃ、夫にも長生きして貰いたかったばってん、人間はいつかは死によります。信念ば貫いて死んだ夫を私は誇りに思うております。息子には息子の人生がありますばい。男らしく生きてくれたら、それで良か。」
 
***  *** 上卦は雷。
***  *** 活動、行動を表す。
********
******** 下卦は山。
***  *** 動かないものを現す。
***  ***
 
「雷山小過」の卦。動きたいものが、動かない山の上にあり、困難に直面している。少は陰のことであり、陽の光が当たらない。生きるためには、最大限の注意が必要である。
 
地球上には日の当たるところばかりではない。
日の当たらないところが、常に存在することを忘れてはならない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

その31ー再会ー

イメージ 1
貞は利子と同じイギリスのK大学に留学し、主に児童教育学を学んだ。
 
幼い時から絵本作家に成りたいと言っていた貞は、長じて児童の教育に携わりたいと志を立てていた。充実した留学生活を送り、卒業論文に追われていた頃である。
 
広いキャンパスを本を抱えて歩いていると、一人の50代の美しい夫人が貞を呼び止め声を掛けてきた。「貴方はもしかして、テイではありませんか?」貞は誰だか検討が付かなかったが、「はい、私はテイです。」と答える。
 
「やっぱりテイなのね。ママにそっくりね。昔、貴方はママと一緒にカッスルクームに住んでいたでしょ。同じアパートにいたケイトおばさんよ。覚えてるかしら?」貞は直ぐに思い出した。「はい、覚えています。ジュードと良く遊びました。ジュードは元気ですか。」「元気、元気、今ではこんなに背が高くなってプロサッカーの選手をしてるわ。ところで、ママとパパはお元気?」「はい、元気です。ケイトさんに会ったと聞いたらきっと大喜びします。」
 
利子は貞からのメールで一部始終を知る。ケイトは小説家として大成功し、今はK大学の客員教授をしているという。「貞の卒業式に是非会いましょう」との伝言もある。利子は胸が熱くなってきた。
 
ケイトとの出会いは、もう20年前である。龍が亡くなり、絶望の毎日を送る利子は何もかもを忘れる為に、貞一人を連れて旅立った。住むことにしたのが、コッツウォルズの小さな村であるカッスルクームだった。
 
そこで出会ったのが、女優を辞め、離婚して一人息子のジュードを連れて、小説ひとつに再起を賭けていたケイトである。二人は意気投合して共同生活をする。ケイトは小説作り、利子は協力しながら子育てをした。二人にとって夢のような共同生活こそ忘れることの出来ない新しい人生の原点である。
 
卒業式の日、K大学のメモリアルホール。門の外に出て待っていたケイトと利子は感激の再会をする。
 
その夜、亨を交えてホテルのバーで昔話に花を咲かせていた。そこに新しい出会いを創った二人が登場してきた。
 
貞と晋(しん)である。貞は親しく付き合っている友人と言って3人に晋を紹介する。亨は晋の笑顔に亡き龍の面影を見た。利子は会った瞬間に貞の結婚する相手だと感じた。
******** 上卦は風。
******** 巽順、従順を現す。
***  ***
***  *** 下卦は沢。
******** 喜ぶ、楽しむを現す。
********
 
「風沢中孚」の卦。中孚(ちゅうふ)は誠心誠意である。親鳥が卵を暖めて孵化させる象である。誠意をもって取り組んでいけば、どんな困難も克服して志を成就することが出来る。
 
「至誠天に通ず」人が損得を忘れ、無心になって誠意を尽くす時、
 
利害打算では考えられないことが起こるものである。
 
 

その30ー遺産ー

イメージ 1
亨の永平寺での雲水修行は3年間に及んだ。
 
2年目からは知客(しか)という役職にもついていた。賓客の接待係りである。特に外国のお客様の担当は亨に任せられた。商社での海外経験が役に立ち、解り易い説明と落ち着いた応対は評判が良かった。又、雲水入門者への説明も知客の役目である。
 
生まれ変わった様な清清しい心境で、3年間お世話になった永平寺の山門を後にする。福井空港までのバス、窓から見える町並み、行き交う人々、皆新鮮に美しく見える。
 
空港には利子が迎えに来ていた。3年ぶりの再会である。利子はすっかり痩身になった亨に驚いた。「お帰りなさい。」と言った利子に亨は「ただいま、帰りました。」と自然に手を合わせて頭を下げる。
 
東京のマンションに戻ると、懐かしい人から留守番電話が入っていた。E元社長である。E元社長はガンのため、2度目の入院をしていた。あちこちに転移しており、余命半年と言われていた。亨に話をしたいことがあり、是非会いに来て欲しいというのであった。
 
病院で会ったE元社長は余命半年とは思えぬほど、顔色が良かった。
「良く来て呉れた、嬉しいよ。実はな、君は私を超える大社長になると思っていた。ところが、君は4年前に突然辞めると言った。私はショックだった。しかし、君の一言で私も考え直した。仕事の外にも世界があると気付いたのだ。その後、私は社長を退いて相談役になった。」
 
「そして君が雲水修行を始めたと聞いて、1本取られたと思った。私も仏教の勉強を始めた。良寛の魅力に嵌まった君の気持ちが良く解った。私も何度も良寛の足跡を訪ねて新潟へ行ったり、永平寺にも行ったりしたんだ。」
 
「雲水の真似は私には出来ない。君はかつては私の愛する部下だったが、今は私の尊敬する心の友だと思っている。」E元社長は軽く頭を下げた。「勿体無い。私は昔と少しも変わっていませんよ。」「実は君に是非お願いしたいことがあるんだ。」「私に出来ることでしょうか。」
 
「私は君も知ってる通り、仕事人間だった。君の協力も大きかったが、それなりに実績を揚げて来た。財産も築いた。今、それを整理している。家族には保険もあるし、それなりに分配が出来た。」
 
「私は親の教えで節の一文字を貫いて来たのだ。贅沢をする気は無かった。入社以来コツコツと続けて来た持ち株会で貯めた自社株があるのだ。これを何かに役立ててくれないか。条件は付けない、君に任せたいんだ。引き受けてくれないか。」
 
「それは大役ですね。いったいどの位の額なんですか。」「仕事人間が50年かかって貯めた結晶だ。ざっと10億円位かな。」「えっ」亨は絶句した。
 
E元社長は嬉しそうに笑った。「ハハハハ、少しは驚いたか。これで4年前の借りを返せる。1本取り返すことが出来たよ。思い残すことがなくなる。吾が人生に悔いは無しだ。」
 
***  *** 上卦は水。
******** 問題、悩み、苦労を表す。
***  ***
***  *** 下卦は沢。
******** 悦ぶ、楽しむを現す。
********
 
「水沢節」の卦。節度を守ることである。個人の健康から、対人関係、政治も経済も節があってこそ、順調に行われる。しかし、節に固執するのは良くない。
 
無理をしない。無駄をしない。そんな節度を守るだけで、一生の間には偉大なことが出来るものである。
 そんな、簡単なことが出来ないのも人間なのである。
 
 

全7ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7]

[ 次のページ ]


.
kan*u*uuk*u
kan*u*uuk*u
男性 / AB型
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について

幕末の歴史。

ファン登録

標準グループ

ブログ作成

1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

衛生対策製品クレベリンの姉妹ブランド
クレベ&アンドハンドジェルが新登場
今だけ。お試しキャンペーン実施中!
ふるさと納税サイト『さとふる』
最大10万円分旅行クーポンが当たる!
≪10月31日まで≫今すぐ応募!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事