さわやか易

いらっしゃいませ。名画を鑑賞するとき、その背景である歴史を考えてみたい。(猶興)

ある夫婦の物語

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これは易の下経34卦を1卦づつドラマにしたものです。
易の順番には大きな意味と教訓がありますので、連続ドラマに仕立てようと試みました。
しかし作ってみると、力不足で容易ではありませんでした。
無理やり繋げた面もあり、易の解説も稚拙なものです。
それでも一組の夫婦が大きな試練の世の中を懸命に生き抜き、「悔いのない人生」にしようと頑張る姿を感じていただけましたら、幸いです。(猶興)
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その9ー行き詰まりー

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利子のうつ病という噂は貞の通う幼稚園で困ったことになっていた。

ある日、一人の女の子が「うつ病が移るといけないから、貞ちゃんとは手を繋がない。」と言ったので、慌てた先生が「そんなこと、言っちゃだめでしょ。」と叱った。これが反って園児たちの興味を引いたのだ。

その後、この幼稚園では「うつ病」という言葉が流行してしまった。元気のない人を見ると「あなたはうつ病じゃない?」と言ったり、「僕、今日はうつ病だから外には出ないんだ。」という調子でちょっとした流行語になってしまった。

6月の末、利子を幼稚園の園長が訪ねて来た。「誠に申し訳ございません。職員には出来るだけ収まる様に注意しているのですが、実に困ったことになってしまいました。」「一番心配なのは貞ちゃんへのいじめ問題にならないかですが、最も注意しておりますから」という話である。

貞は家ではなにも言わなかった。逆にいつも母を気遣っている。

ある日、貞が「ママ、私は大きくなったらお医者さんになるからね。」と言った。利子「そう、それはすごいね。」貞「お医者さんになるには、うんと勉強すればいいの?」利子「そうね、でもどうしてお医者さんになりたいの?」貞「お医者さんになって、ママのうつ病を治して上げるからね。」

利子は思わず、貞を抱きしめた。「ごめんね、貞。」「ママもっと元気になるからね。」

そんなことがあったことを亨は利子から聞かされた。しばらく考えていた亨は言った。「君のためにも、貞のためにもここに居るのは良くないな。思い切ってしばらくの間、違った環境に身を置くのが良いんじゃないか。」

***  *** 上卦は水。
******** 水は悩み、困難、問題を表す。
***  ***
******** 下卦は山。
***  *** 山は動かないもの。じっとしているものを表す。
***  ***

「水山蹇」の卦。蹇(けん)とは足なえのことで、行き悩みの意味。
八方塞がりでにっちもさっちも行かない状態である。こんな時は、徒に進むことを止め静かにわが身を振り返ることが大切である。

仕事でも生活でも、どうにもこうにもならない時がたまにはあるものだ。

そんな時、一番よくないのがヤケクソになること。ここは一番、静かに落ち着くことだ。そうすれば、適切な対策が見えてくる。

その8ー失意ー

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失意の利子にとって、もう一つやっかいな問題が起きて来た。

幼稚園で龍とも貞とも同学年の園児を持つお母さんであるB子さんがいた。そのB子さんから「ウチの子の誕生日会をするので、宜しかったら貞ちゃんと一緒にいらっしゃいませんか?」と誘いを受けた。

利子にとって龍の友達を見るのはなにより辛い。一日考えた末。「せっかくですけど、遠慮させて下さい。」と断わった。

B子さんにとっては龍君を亡くして以来、明るさを失くしている利子に少しでも元気になってもらいたいとの善意の心算だった。(断わられて少し気を悪くした。)

そのささいな出来事が原因となり園児の母親どうしに気まずい関係が出来る。その人間関係のぎくしゃくが次から次へと広がってしまう。

母親たちの中には同じ社宅の母親もいる。唯でさえ家に閉じこもりがちな利子はいつの間にか重症のうつ病に罹っているということになってしまった。

ある日、亨は同期入社のMさんと昼食をしていた時、Mさんから「奥さんがうつ病だそうだな、無理はないと思うがちゃんとした病院にかかった方がいいぞ。」と言われた。

亨は始めてそんな話を聞いたのだが、改めて妻のことが心配になった。

******** 上卦は火。
***  *** 家族での配当は中女。
********
***  *** 下卦は沢。
******** 家族での配当は少女。
********

「火沢睽(けい)」の卦。睽はそむく。反目すること。
前の「風火家人」の卦とは対称的に人間関係が悪い。矛盾相克を表す。嫁と小姑の睨み合い、家庭や職場での不和。相手を理解するには相手の立場に立って考えることが大切である。

一つボタンを掛け間違うと、どこまで行っても直らないことが時々起こる。

そんな時は、一度「リセット」する方法を考えることだ。

その7ー試練ー

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亨にとっても利子にとって龍の死は余りにも大きなショックであった。

それでも、亨には一時的にも忘れさせてくれる仕事があったが、利子には何もなかった。利子は日本での結婚生活は龍の誕生と成長によって始めて生き方を見つけたものだった。

死んだ日から一週間は狂ったように泣いた。その後は完全に時計が止まったままの仏壇の前で、一日中手を合わせ座っている毎日を送った。

可愛そうなのは4歳の貞である。貞は母を気遣って大人しく母の後ろに座っていた。

時々利子は(死ねば龍を抱きしめることが出来るのなら死んでしまいたい。)とまで考える。

春が来て、貞が幼稚園に通い始めたが家族の笑顔は戻って来ない。利子にとって外で龍と同じ年頃の子供を見ることほど辛いものはなかった。

亨は今更ながら龍の存在の大きさを知る。そして骨に沁みるように心に刻んだことは(当たり前と思っていた家族の幸福は本当は奇跡のような有り難いものだった。)という事実である。

ある日、亨が尊敬し結婚式の仲人を頼んだ人でもある会社のE常務から「たまには食事をしよう。」と声がかかり食事を共にする。そのときE常務から「窮して苦しまず。憂いて心衰えず。」という言葉を頂いた。

******** 上卦は風である。
******** 家族での配当は長女。
***  ***
******** 下卦は火である。
***  *** 家族での配当は中女。
********

「風火家人」の卦。家内安全を表す卦である。上の長女に中女が従っており、万事が治まっているのである。家庭が治まって国も天下も治まるのである。

「窮して苦しまず。憂いて心衰えず。」は孔子と同時代の学者・荀子の言葉である。「君子の学問は出世のためにするのでは無い。逆境に打ち勝つために勉強するのだ。」という意味である。

その6ー絶望ー

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9月の末のことだった。会議を終え、廊下を歩いている時に携帯電話の呼び出し音。利子からである。

電話に出るが、何も聞こえない。「もしもし、どうかしたか?」微かに「・・・龍が・・・」と聞こえたが、後は聞こえない。泣いているようだった。

何か、ただならぬことが起きたような胸騒ぎがした。亨は仕事を部下に任せて急遽帰宅することにした。

タクシーが社宅に着くと、10人程の人たちが外で立ち話をしている。急いで玄関を開けると中は妙にシーンとしている。そのまま部屋に入ると龍の布団が敷かれ、その前で利子と貞が並んでじっと座っている。

5歳の龍が死んだのだ。

前日の台風で増水した近くの川を見に行き、誤って落ちた。1キロ先まで流され、発見された時には既に死んでいたのだ。

「僕は龍馬になるぞォ。」と叫んでいた龍!あんなに元気だった龍!あんなに可愛かった龍!家族の希望であった龍!

亨と利子は幸福の絶頂から突然、奈落の底へと真っ逆さまに突き落とされた。

亨も利子も目の前が真っ暗になってしまった。

***  *** 上卦は地である。
***  *** 暗黒を表すこともある。
***  ***
******** 下卦は火である。
***  *** 火は太陽を表す。文化、文明の意味もある。
********

「地火明夷(めいい)」の卦。明が夷(やぶ)れる。太陽が地下に没し暗黒の世界を表す。
暗君が暴政を布き、国民が塗炭の苦しみに遭う世界とも言える。

その人が何処まで忍耐出来るかを試されるような出来事が、一生に一度は遭遇する。

ひたすらに忍耐をするしか無い。いつかは一条の光が先の方に見えてくるだろう。

その5ー希望ー

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帰国後の亨は自信いっぱい。仕事が面白くて堪らない。まるで学生時代のラグビーで連戦連勝していた頃を思い出すようだった。

利子にとっても、妻として母として希望でいっぱいだった。4歳になった長男・龍はすっかり逞しくなり元気に幼稚園に通っている。龍という名前は亨が生まれる前から考えていた。幕末の志士・坂本龍馬の龍である。将来、日本を動かす程の大きな人物に育って欲しかったのだ。

小学校に入ったら、何かスポーツクラブに入れてやろう。野球でもいい、サッカーでもいい、柔道や剣道もいいな。龍が一番興味をもつものが良い。明るい性格の利子に任せて置けば、間違っても暗い子にはならないだろう。後は自然に成長して行くだろう。

2歳の長女・貞は兄と母親を観察する大人しいが賢さを秘めた女の子になってきた。貞という名は亨の父が易経に「貞ならば吉」とあり、心がけが正しいと道が開けるという意味から名づけた。利子は女の子らしくないと始めは好きになれなかったが、次第に良い名前に思えてきた。

貞には賢い女性になって貰いたい。どんな時代になっても、きちんと自分のするべきことを理解し、明るく生きていける大人になって貰いたい。

利子は二人の子供には予てから準備していた「読み聞かせ」を毎日行った。(いつかきっと役に立つ)日本語と英語両方を使った。子供たちは興味を持って聞いていた。日本、外国を問わず絵本を中心に、童話、民話、小説、詩、百人一首も読んでやった。

忙しい亨も子供は大好きだ。たまの休みには元気な子供の思い出をたくさん残そうと、カメラをもってあちこちに出かけては写真に収めた。

よく亨は龍を肩車にして「いいか、お前は龍馬のようになるんだぞ」と言うと「ようし、僕は龍馬になるぞォ」訳も解らずそう答える龍であった。

希望いっぱいの美しい妻と元気な子供たちは亨にとって何よりも大切な宝である。

******** 上卦は火である。
***  *** 火は太陽を表す。又文化、文明の象でもある。 
********
***  *** 下卦は地である。 
***  *** 苦労した過去と考えてもよい。 
***  ***

「火地晋」の卦。晋は進む。地上から太陽が昇る象である。希望に満ち溢れた姿である。季節で言えば新緑の頃。何事も順調に行く。自身をもってマイペースで行けば好い。

人生の中でもこんな時期が一番である。
何もかもが輝いて見えるときでもある。

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