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冷戦時代の置き土産、ソ連のエージェントが残した『スーツケース』(小型核爆弾)の存在が明らかになった。
(*この作品は1999年に発表されたものです。)そのことを知らせてきたのは、病院で死の床につく老人、牧野。 牧野はかつて東和電機に勤めていたとき、ソ連のスパイを務めていたが、20数年前、赤坂の芸者、久江と恋仲になり、足を洗って九州まで落ち延びてきた。 5年間は何事もなく過ぎたが、牧野の所在を突き止めたソ連のエージェントが『スーツケース』を持ちこんできた。 その後すぐ襲撃されて、ソ連のエージェントは死亡、牧野も怪我を負うが久江の安全の為、身を隠す。 以来20年近く音信を絶ってきたが、自分の死期を悟り、かつ『スーツケース』に内蔵されたコンピューターが西暦2000年問題で誤作動を起す危険をはらんでいるということで当局に手紙を寄越したのだ。 『スーツケース』の在処は今も九州の片田舎で民宿を営む、久江だけが知っているという。 防衛庁情報部員、堤が『スーツケース』の回収に派遣された。 この作品も「軍事サスペンス」と呼ばれる部類に属するのかな。 冷戦時代、ソ連が各国大使館に『スーツケース』を持ちこんでいたという話もありえないことではない。 冷戦時の日本の状況や、諜報機関の暗躍もそれなりに興味をひくものがある。 が、なんといってもこの作品の良さは久江という女性の存在。 20数年田舎に埋もれ、今や年老いた農婦と見間違えるほどに面変わりしたかつての売れっ子芸者。 いかにも偏屈で、人を寄せつけないようなこの老女が、堤が拾った簪(後挿し)を機に心を開いていく様はじんわりくる。 「畳算」のことを知ったとき、作者は随分イメージが膨らんだろうなあ。 以下本文より抜粋。 「畳算ってのはねえ……」 「後挿しをこう、畳の上に倒して、先っぽが畳の何節目に来るかで、何時頃、何日頃に旦那が来るか当てるっていう……。ま、芸者がやる占いみたいなもんだよ」 おしどりの 飛び立つほどに 思えども 飛ばれぬ辛さ 待ち侘びて 無理に合わせた畳算 じれに迷うて じれて煙管に歯のあとが 夜明けの星の 二つ三つ四つ *画像は『畳算』が収録されている「6ステイン」(講談社)
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2007年07月16日
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