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11月2日、新日本フィルハーモニー交響楽団の第439回定期演奏会へ行ってきました。

ジェルジ・クルターク(1926-)
   石碑 op.33(1994)

アルバン・ベルク(1885-1935)
   ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出のために」


      〜休憩〜


武満徹(1930-1996)
   弦楽オーケストラのための「死と再生」〜映画『黒い雨』より

グスタフ・マーラー(1860-1911)
   交響曲第10番 嬰ヘ長調「アダージョ」



指揮    :クリスティアン・アルミンク 
コンマス  :西江辰郎
ヴァイオリン:イザベル・ファウスト 



          〜テーマは「死の神秘」〜



クルタークの「石碑」は、チェレスタ、ツィンバロン、ハープ2台にピアノ、ピアニーノ・・・
舞台に乗らないんじゃないかと思う程、総勢120名以上の超大編成。(この曲だけ登場する助っ人がたくさん)
作曲者によれば、傷つき戦場に倒れた者の音楽とのこと。
「周囲は戦の雄叫びに溢れても、彼の眼に映るのは、澄み切った、真っ青な空です(クルターク)」
全3楽章で計13分の短い作品。
冒頭の炸裂音に始まり、半透明な響き、不協和音。
ぞわぞわ〜っとする不思議な揺れの中で鞭の音が鳴り、最後は息を引き取るかのような終わり方。
さすがアルミンクが強い思い入れを持って暖めてきた曲です。


続いて、ベルクのヴァイオリン協奏曲。
ご存知の方も多いと思いますが、「ある天使」というのはマーラー未亡人アルマの娘マノンのこと。
アルマはマーラーの晩年に建築家のグロピウスと不倫騒動を起こし、マーラー没後にグロピウスと結婚します。
この2人の間に生まれた娘がマノンです。大変な美少女で20歳を目前に急逝してしまいます(1935年)。
マノンを大変可愛がっていたベルクは衝撃を受け、このヴァイオリン協奏曲(レクイエム)を書きました。
ベルクも1935年(同年)後を追うように急逝します。

シルバーのドレスで颯爽と登場したイザベル・ファウスト。
圧倒的な集中力。上手過ぎです。
少女の残像のような夢見るような優雅な第1楽章。第2楽章は、掻き鳴らすような激しい叫び、
コラールの変奏、最後は天に昇っていくような消えゆく音・・・。

アンコールは、バッハ 無伴奏ソナタ3番3楽章から。
すごい、の一言です。ファンになりそう〜〜。


休憩中はロビーでもみなさん無口で・・・まあ、仕方ないです。


休憩後は、武満徹の弦楽オーケストラのための「死と再生」。
井伏鱒二の小説『黒い雨』を原作として、今村昌平(監督・脚本)が映画化。
爆心地から遠くにいた人も、大量の放射能を帯びた黒い雨を浴び被爆しました。
この映画音楽を演奏会用に編曲したもので、実質上の武満徹の絶筆のひとつだそうです。
弦楽5部で、淡々と静けさに満ち、孤独で物悲しく美しい演奏でした。


最後に、マーラーの絶筆「アダージョ」。
ベートーヴェンの9番のジンクスか、はたまた妻アルマの不倫騒動による精神的ダメージか。
第10番は未完。全5楽章の草稿は残っている(マーラー没後に様々に補筆)ものの、ほぼオーケストレーションが終わっていたのは第1楽章のみで、今回はこの第1楽章だけが演奏されました。
これが良かった。徹底した凄みが感じられました。
死に近づいていく恐怖みたいなものまで感じました。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

息苦しくて、気が滅入り、ぼぉーっとしただるさの中で、じわじわと良くなってくる感じでした。
前半は軽いジャブをくらい、後半はじわじわとボディーに効いてきた感じです。
満足です。つ、疲れました・・・・・。

こんな選曲、滅多にお目にかかれません。
マーラー、ベルク(世紀末ウィーン)、武満、クルターク。(すごいなぁ・・・)
こういう品の良さ、センスの良さをさらっと見せてくれるところが、さすがアルミンク。
完璧なまでに美しく壮絶なプログラムでした。ホール全体があの世へいかなくて良かったです。


終演後、イザベル・ファウストにサインをもらってきました。
気取ったところがなく、とてもチャーミングで笑顔の素敵な美人さんでした♪
演奏はほんと凄いですね。次も聴きたい!と思います。
ああ〜、完全にファンになってしまった・・・(^^) 
 

 

閉じる コメント(11)

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私は前から7列目にいました。
音楽は大好きです。ピアノとコントラバスをやりましたが、
いまは何もやらず聞くだけです。あと絵を描きます。

2008/11/6(木) 午後 7:46 [ たけちん ]

たけちんさん、コメントありがとうございます。
前から7列目!いい席ですね!私は3階の遥か遠くからオケを眺めておりました。いつ拍手していいものやらわからないぐらい(苦笑)重た〜いプログラムでしたね。たまには未知の世界もいいな〜と思いましたが。
ピアノとコントラバスですか!弦楽器は憧れです。私はピアノばかりなので、弦楽器のことは全然わかりませんが、イザベル・ファウストは自然体でとても上手いなぁと感じました。
たけちんさんのところにもまたお邪魔させて頂きますね。

2008/11/6(木) 午後 8:32 かおさん

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テーマが死の神秘・・・芸術肌でない一般のファンにはキツイテーマですね^^;;今回は息子さんはお留守番でしたか?
かおさんの文章力で重〜〜い空気が伝わって来ましたよ〜〜

2008/11/6(木) 午後 11:15 [ zora ]

「ホール全体があの世へいかなくて良かった」で、
思わず笑ってしまいました(笑)。
それだけ音楽に引っ張られたということなんですよね。
すごいなぁ。ますます聴いてみたい、アルミンク様…。
躊躇しがちな「死」というテーマを、「神秘」という世界でとらえるなんて、深いですよねぇ。誰にでも平等に死はやってくるけど、そう真剣に考えることは健康な人なら稀ですもんね。作曲家たちはどんなふうに「死」を表現したのかなぁ。アルミンクさんの解釈も興味津々です〜。

2008/11/7(金) 午前 0:20 松次郎

zoraさん、息子も行きましたよ〜。起きてて微動だにしなかったのは初めてです (゜-゜) 暗〜く、特に面白いことも言っていなかったので今回は記事に登場させる余裕がありませんでした(爆)
ヴァイオリンのアンコールが良かったと言っていましたね。至極まともな感想だと思います。(確かにバッハはいいですよ、うん。それに他が暗すぎましたね・・・)

2008/11/7(金) 午前 9:53 かおさん

まつさん、深いテーマですねぇ。
アルミンク氏、楽団員みな顔面蒼白でしたよ。(あ、アルミンク氏は単なる色白かも・・・) お通夜みたいでした。
主席指揮者じゃなきゃこのプログラムはできないですよね。いつもよりぽつぽつ空席は目立ちましたけど、このプログラムでこれだけ人が入れば大したものだなぁと思いました。
アルミンク氏の解釈は、腹の底から響いてくるような人間くささを突き詰めたものではなく、音楽のもつ美しさをそのまま品良く(お姿同様)表現したものでしたね。綺麗なものに囲まれて育ったんだなぁと感じさせる美しい「死の神秘」でした。フランダースの犬の最後のシーンを、今、思い出してしまいましたよ。(ちょっと違いますね。すみません)
作曲家のほうは・・・あ、足りなくなりそう。

2008/11/7(金) 午前 10:17 かおさん

続きです。
クルタークは勿論初めて聴いたのですが、メシアンとミヨーに作曲を習い、「石碑」はベルリンフィル/アバドのために作った曲みたいです。記事に書いたように第3者的な発想のようです。
武満は映画音楽が基なので、映像を邪魔しないメロディの綺麗な言葉少なな曲でした。
ベルクとマーラーは・・・・アルマ抜きには語れないようですね(爆)。すんごい女性ですね。世紀末のウィーンは超狭〜い世界でみんなお知り合いだったそうです。マーラーは指揮者として成功するものの体調を崩し家庭はぐっちゃぐちゃ。相当奥さんのことが好きだったみたいですね。作曲が手につかないほどだったようです。苦悩が滲み出ている感じですかね・・・・?
ベルクは、レクイエムとしてマノンの生涯を描いたという曲でしたよ。

2008/11/7(金) 午前 10:43 かおさん

これはマラ10をやるときのオーソドックスなプログラムですね。
ベルクのヴァイオリン協奏曲とマラ10はよくセットになりますね。
マーラーで初めて不協和音が顕在化するのと、ベルクの無調でありながら継続性のある旋律をセットと考える事が多いです。
武満のこの「死と再生」も曲の流れではとても継続性のある音楽です。一昨日東フィルで「弦楽のためのレクイエム」を聴いたのですがこちらは継続性がない、断片的な旋律が目立つものです。アルミンクは曲の選択を相当吟味したようですね。

アルマとグスタフの関係(10番を作ったときはもう修復が不可能な状況でしたよね)をこれらの曲を通して一連のコンサートプログラムにしたんじゃないかと推測されます。

ちょっと異なりますが、以前こんなプログラムもありましたということでTBさせて下さいね。

2008/11/9(日) 午後 9:01 NCC-1701-T

たかしさん、
TBの記事見ました。ベルクのヴァイオリン協奏曲とマーラーの10番はよくセットになるんですか!人間関係のつながりかと思っていました (^^ゞ。音楽の作りにも関連があるんですね。初めて聴いて全然わからなかったので、聴きこみたいです!
武満は、舞台音楽や映画音楽をたくさん作っているんですね。死と再生にも継続性があるんですか。たかしさん何でも知ってて凄いです。そういう視点でCDとか聴いてみますね!
アルミンクはこのプログラムに相当思い入れ(特にクルターク)があったようです。新日での指揮はこれが今年の締めになるんですよ。
そこにこれを持ってくる勇気?に感心しました。素人耳なので何とも言えませんが、管は良かったように思います。
全曲通して気分は浮上できず、マーラーで放置されたにもかかわらず、お腹いっぱいという不思議な気分でした(^^)。

2008/11/10(月) 午前 8:56 かおさん

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このブログラム、現代音楽の流れに自然に入っていけるのでとっても良かったですね。^^

<ああ〜、完全にファンになってしまった・
本当にファウスト良かったです。それくらいにいつまでも心に残るスリービング・ビューティでした。こちらもトラバさせてくださいね。ヨロシクです♪

2009/3/18(水) 午前 6:34 [ ひろmahler=^・^= ]

ひろさん、このプログラム凄かったですよね。これをやりきるアルミンク氏のセンスと知性に脱帽です。
聴いていて息苦しくなるくらいでした。ひろさんの記事を読んで、また「うんうん」と思ってしまいました(笑)
ファウストさん、また聴きたいです。アンコールのバッハが素晴らしかったじゃないですか。教えて頂いてありがとうございます。6月が楽しみですね。

2009/3/18(水) 午後 0:23 かおさん

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