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ブラジル社会問題について考えました。ちょっと固い話しだけど読んでくださいませ〜
ブラジルの貧民街、ファベーラは斜面にあることが多い。奴隷解放時に都市周辺部の余っている土地にバラックを建て始めたという歴史に起因する。このファベーラが麻薬取引の温床になっていることは、フェルナンド・メイレレス監督の “シティ・オブ・ゴッド” で世界的に有名になった。また、昨年ブラジルで公開されて話題になったJos?? Padilha監督の “Tropa de Elite” も同じ題材を扱っており、麻薬取引の中上流階級の関与を明白にして、賄賂が日常化している警察と、それを暴力によって取り締まる軍のエリート集団の存在を描いている。
2006年3月19日にTV公開され視聴率54%を記録したドキュメンタリー “Falc??o - Meninos do Tr??fico” は、ファベーラ出身のラップ歌手MV BillとCelso Athayde監督の共同作品で10代の少年達の麻薬販売の関与について赤裸々に取材している。ブラジル各地のファベーラで少年が武器を持って見張り役や売人として夜中ファベーラの中で身を潜め暗躍する様子をインタビューを交えて紹介している。
インタビューの中で、ある少年は母親を楽にさせたいという思いでこの世界に入り、18歳以降は罪が重くなるので足を洗いたいと思いも吐露するなど、熱い血が通っていることを私たちに伝える。同時に彼らが身を置いているのは「自分が死んだら他の子が見張り役をやるだろうし、それは自分よりよくもないだろうし悪くもない(誰がやっても同じ)、死んだらやっと休める」と言わしめるほど暴力的な世界である。実際に、取材した14人の少年のうち、数年後には13人が亡くなり1人は拘留されている。取引に関与しない住民にとっても暴力の脅威が生活の中にあり、例えば10代未満の子供達は日常的に見ている世界を模倣する遊び(ままごとなど)をするものだが、ここでは警察への密告役を売人グループが見つけ凄惨にリンチするシチュエーションを真似して遊んでおり、その瞬間にすぐ近くで銃声が鳴り実際の殺人が起きたという生々しい事実を映像化している。
麻薬密売の組織は階級社会になっており、末端の少年達からファベーラ全体を牛耳るボス、更に国際的な密売ルートまで支配するボスといった具合に規模は大きい。取引品目はマリファナとコカインが主流で、マリファナはバイーア州やペルナンブッコ州などを中心にブラジル全土で栽培されており、コカインはボリビアなどから国境を越えて入ってくる。国境線が長く、ジャングルや乾燥地で警察の取り締まりは行き渡らないからだ。コカインはファベーラ内の隠れ家でふくらし粉で増量させたり重曹と混ぜてクラックにするといった加工をして、マイアミ経由でヨーロッパやアフリカなど世界中に広がる。頻繁にアメリカに出張する医者が実は密輸に携わっていたり、政治家の自家用飛行機が密輸目的でチャーターされていたりするなど、表ざたにはされないが中上流階級の関与がある。
動物賭博 (Jogo de bicho)
動物賭博とは、宝くじのように街中の販売所で番号とグループ(25種類の動物の名前で分類)を選ぶもので、毎日14時半と18時過ぎにリオから全土に結果を発信し当日または翌日に現金を受け取れる。掛け金はR$1.00(約50円)で、R$5.00~R$3,000.00の賞金が手に入る。
そもそもの始まりは共和政時代1892年上流社会の社交場であった動物園の再建の資金集めの為に合法的に開始したが、麻薬取引、暴力、資金洗浄など違法活動の温床になり1941年には違法になった。4ヶ月以上1ヶ月未満の拘留、罰金、財産没収といった罪に問われる。動物賭博からの税収入、抽選の透明化、暴力行為の払拭を目的に何度か合法化が図られたが、実現はしておらず、寧ろ民衆の間ではすっかり定着している。暴力事件としては、例えば、1997年リオの有力ボスAndrade一族の中で息子と婿との間で遺産相続のトラブルで数十人が亡くなってバイーア州など他の地域にも争いが飛び火している。警察も麻薬取引同様賄賂によって買収されており、例えば2007年6月に一斉摘発されたリオのボス達は警察に月額R$3,000〜R$30,000の賄賂を渡していたことが分かっている。
販売所はファベーラの近隣の地区で各ボス(ビシェーロ)が支配地域の範囲内で活動をしており、リオではサンパウロに比べてボス同士の力が均衡しており、いつ争いが起きてもおかしくない。実はビシェーロはサンバ学校やサッカーチームの会長を兼任するなどして資金面で密接に結びついており、間接的に政治家からの援助もある。サンバ学校へは80年代後半からファベーラ内で力をつけてきた麻薬密売人も資金援助している。学校の会長としてはダンサーや演奏者にコカインを供給する必要があり密売人がファベーラの実力者として無視できない存在である以上、援助を受け入れざるをえないが、この均衡が崩れ密売人の力が凌駕するとき各地で新たな暴力事件がおきると予想される。
リオのサンバ学校と異なり、サルバドルでのパーカッショングループは黒人子弟の生活改善を目指して設立された学校の活動の一部にあたる。有名なグループとしてはリベルダージ地区のIl?? Aye とペルウリーニョ地区のOlodumがあり、其々地区の子供達を参加させている。普段は路上等で演奏(ensaio:「練習」のこと)しているが、カーニバルの数ヶ月前から本番の衣装や燃料費などの資金を集めることを目的に、入場料(約R$10)をとった形のライブを開始する。特にIl?? Ayeはカーニバル本番の参加資格は黒人であることだったり、直前の美人コンクールでは、黒人の歴史やIl?? Ayeの歴史などについて話せることも審査基準になるなど、美しく賢い象徴となるべき女性が選出されることによって、ファベーラの住民に黒人であることに誇りを持たせるような影響力がある。
このような社会政策的な目的を持つプロジェクトは企業や政府からの援助が大きく、生徒の授業料は無料であることが多い。同じ目的でバイーア音楽やクラシック音楽の学校もファベーラ内に存在する。
Olodum の練習風景↓
昨年のIl?? Aye ミスコンクールで選出されたAdriana Santos Silva(24才) ↓
サルバドルの若者達にマリファナは当たり前のように蔓延しており、身近なところでもコカインで命を落としたり、国際密売で摘発されて拘留されていたり、麻薬に関する悲しい事件は日常茶飯事である。音楽を通してファベーラの子供達に夢と希望を与えるという試みは素晴らしいが、プロジェクトのリーダーが麻薬常習していたり、援助を集めることが目的に摩り替わるなど、本人達は全く意識していない矛盾が至るところに存在する。
ファベーラの現状はを改善するのは困難を極める。この国の階級差別は職業機会の不平等として存在し、下級階級の仕事としての家政婦や建設業等の労働に対して当たり前のように蔑視する社会は、制度的に変化しただけで実質的に奴隷制の社会構造と全く変わらない。限られた教育機会、劣悪な居住地域、違法商売に関与する暴力事件なども、結局「蔑視」される職業に就くしか生きるすべがないという状況が生み出したのでは無いだろうか。そうなると、奴隷制が培養した偏見や先入観といったメンタル面での問題が法整備や経済論理を超えた根底にあることになる。中上流階級が無意識に蔑視していることは払拭し難い問題だが、下流階級の人自身がその生活から抜け出す努力を諦めて「自分はこのファベーラの人間だからいい職があるわけがない」とか「蔑視された雇用環境は仕方が無い」と無意識に卑下することもまた問題である。このメンタリティが「生きるためには盗みをしてもいい」、「いい職がないんだから麻薬取引して何が悪い」という開き直りを生むからだ。但し、卑下したり諦めたりすることは彼らの生来的な特徴ではなく、歴史的な経緯を経ており、努力が報われないことで発生するアイデンティティの破壊を避けて、生きていくことを受け入れる為の常套手段が習慣化したものと考えるべきである。のんびりした風土と相まって北東部の人は「怠け者」というなんとも無邪気な特徴付けがされるが、根底にある悲しい社会構造を忘れてはならない。
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このような社会構造はブラジルだけに限ったことではないですよね。
それにしても、解決策はあるのだろうか?
2008/12/2(火) 午前 2:45
ハードなネタ、読ませてもらいました。
関西では山沿い(芦屋)の地価が高いのに、
ブラジルでは逆に海沿いの方が高いのにびっくりしたことを思い出しました。
ブラジルといい、ラテンアメリカでは身分の差を失くそうという動きは活発ではないと感じています。陽気な国民性の裏には根深い社会の闇があるんですなー。
2008/12/2(火) 午後 0:48
うーーーん。深く考えさせられました。
この街に住み、社会の不平等の複雑さを目の当たりにすると、もう本当にわけがわからなくなるよね。
どうしたら変わるのか。誰が何をどうすることから変えればいいのか。
構造が複雑すぎてもう頭が回りません!!!
それにしても、こんなハードなネタ、いつの間に仕込んでいたの?!
素晴らしいっ。
ところで、街角で「ジョーゴ」って言って売られてる紙切れ、あれが動物賭博なんだね。時々見かけては、何だろう???って疑問だったのよ。疑問が晴れてうれしい!ありがとう。
2008/12/6(土) 午前 10:55 [ qua*li* ]
今回も勉強させてもらったよ。ありがとう。相変わらずネタがバラエティに富んでいるね。前回のキスのネタとはうって変わって、貧富の差、麻薬、ブラジルの歴史的問題。どこの国も深い問題が多いんだろうね。日本は格差の問題が顕著になってきたけど、ストリートチルドレン出るほど厳しい状況じゃないよね。一方で生活に余裕はないし、皆いつも忙しいし、変な殺人とかあるしね〜。幸せに生活するのは難しいな。とほほ。
話は変わるけど、くれぐれも楽しいクリスマスを過ごしてね。日本から祈ってます。FELIZ NAVIDAD!!
2008/12/6(土) 午後 2:28 [ mktn ]
日本はとっても平和なんですね
日本人で良かった・・・って思うのは平和ボケしている証拠でしょうね
半年暮らしたサルバドールを何も分かっちゃいなかった
まあそれが普通だろうけどね
2008/12/8(月) 午後 8:33
(24才) って書くLuluさんが好き〜♪
2008/12/13(土) 午後 5:00
解決策を考えると気が遠くなりますね。
「行政が何かするべき」だという人任せに考えがちですけど、
私たち自身は何か出来るんでしょうね。。。
2008/12/17(水) 午前 10:18
RICADROさん、こっちでは歴史的な要因で格差が当たり前と思っている感覚があるみたいです。
ちょっと日本人には理解し難いとこです・・・
でも日本にだって可視的か否かの違いで五十歩百歩なのではと考えさせられます。
2008/12/17(水) 午前 10:27
quaolinさん、ブラジル人にとっては「何がわからないの?この国は貧富の格差の理由は明確でしょ」と言いますが、私たちにはどうも納得しがたいんですよね。経済的な格差とは一言で片付けにくい尊厳の格差があるような気がします。。。
2008/12/17(水) 午前 10:45
mktn、メキシコとはまた違った格差なのよ。
恒例のクリスマスパーティに参加できなくて本当に残念!楽しんでね〜☆ 皆さんに宜しく!
2008/12/17(水) 午前 10:48
五ェ門さん、「日本は平和ボケ」とよく言いますが、犯罪面では本当にその通りだと思います・・・。そういえば私バスに乗ってたときに外から子供が私のカバンを取ろうとしたんですよ〜友達に助けられたけど実害なくてよかったです。
半年なんですね。私もちょうど半年目の今月この街を去ります。色々あったけど寂しいです〜涙
2008/12/17(水) 午前 10:52
Kるさん、そこを突きましたか!さすが!笑
2008/12/17(水) 午前 10:56
え〜
終わっちゃうんだ
同じ半年間でブログの内容の濃さが自分と段違い
帰国ですか今月?
よき旅?でしたね
2008/12/17(水) 午後 10:20
とんでもないです!!五ェ門さん=月、Lulu=すっぽんです!!
実は帰国じゃなくてサンパウロへ引越しなんです。この半年書ききれなかったことをちょっとづつ書いていこうと思っているので引き続き宜しくお願いします!
2008/12/19(金) 午後 11:11
確かに、何度もこの国の人に詰め寄られた事があります
生まれてから本当に1度も麻薬をしたことないのかと驚かれたのは
こういった背景が本当に根強いんですね
日本でも建設業に入った同胞を卑下しているのを見ました
2009/1/10(土) 午前 0:09 [ - ]
BRAULIOさん、はじめまして!
一言で「建設」といってしましましたが、職人さんや技術者もいますから、語弊がありましたね。すみません。
本当に社会背景とは恐ろしいもので、麻薬(特にマリファナ)はそこらじゅうで吸っていますもん。合法なの?と、つい思ってしまうほどです。
また訪問してくださいね。
2009/1/27(火) 午前 8:24