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うつ小説?最終回

さて、そして次に語る事が話しの終わりで、肝心の懺悔だ。


僕の人生を変えた悪魔は、僕の幸せの絶頂が終わり、余韻を楽しんでいた時、再び僕の前に現れたんだ。
息子たちが正月に帰ってきた時だ。
長男はビールを呑みながら野球を見ていて、長女は千紗と食事の後片付けをしていた。次男は部屋でゲームでもしていたと思う。
孫はまだ小さく、早々と寝室で寝ていた。
僕は書斎で本を読んでいた。
ふいにチャイムが鳴った。誰だろう、と思ったが、千紗が出ると思ってほうっておいた。
だが、二度三度と鳴っても出る気配がない。
不思議に思い、書斎から出ると、まるで家に誰もいなくなったように静かだった。
「千紗?」
声をかけるが、反応はない。
再び、チャイムが鳴った。
部屋を覗いてみたが、家族全員の姿がなかった。
テレビはつけっぱなし、コップに半分以上残っているビールも机の上で泡だったままだ。
流しでは食器を洗う途中で放置されていた。
…………
僕は寒気がした。
まだチャイムは鳴り続けている。
誘われるように、玄関に向かった。だが、扉の向こうにいる存在がまるで恐ろしい者のように感じ、立ちすくんでしまった。
すると、向こうもこちらの気配を感じたのか、声をかけてきた。
『あなた、いますか?荷物で両手がふさがってしまったので開けて貰えませんか?』
ドアの向こうから聞こえてきたのは千紗の声だった。
聞き違えるはずがない。三十年以上一緒にいるんだぞ。
そう、もう一度言うぞ。あれは千紗の声だった。絶対に聞き間違えるはずがない。
断言できる。
それを踏まえて、聞いてくれ。
「……仕方ない奴だな」
僕はほっとしてドアを開けた。
開けるまで扉の前に立っているのは千紗だと信じて疑わなかった。
なぜドアの外にいるのか、それは考えなかった。考えないようにしていた。
しかし、ドアを開けた先に立っていたのは、二十七歳の時、僕に取引をもちかけたあの青年だった。
三十年以上の年月が経っているはずなのに、あの時とまったく同じ姿をしていた。
僕の顔を見ると、口元がほころんだのか、にぃっと笑いながら言った。
『お久しぶりです』
愕然としたよ。足の力が抜けるのが自分でわかるんだ。
そして、思い出した。まだ僕は変えてくれた人生に対する報酬を払っていない事を。
僕は逃げられない、と思った。開けてはいけない扉を自らが開けてしまったのだから。
「何の用だ。千紗を連れ戻しに来たのか?僕を殺しにきたのか?」
『なんのために?』
あの時と同じように、問いに対して問いで答える。
「僕がお前と取引をしたからだ。報酬は僕の“未来の一部”だったはず。僕を殺せば寿命という未来を得るだろうし、千紗はもはや僕にとってかけがえない存在だ。連れて行くということは未来を支払うのと同じ意味だ」
『よく覚えてましたね。その通りです。私は貴方から代金の回収に伺いました』
「だから、何をとっていくつもりだ?」
『誤解しないでください。私は“未来の一部”と言いましたが、貴方のではありませんよ。というか、もうすでに頂きました』
「なんだと」
『貴方、幸せを手に入れたでしょう?』
「…………」
相変わらず心を見透かすように彼は言った。
沈黙は肯定と同じだ。
『実は、貴方のその幸せ、『前借分』なんです』
「なんだと?」
これには僕も心底理解できなかった。
『つまり、貴方の子供、孫、ひ孫さんが得る「幸福になる未来」を貴方に回したのです。日本が国債を発行して、孫の世代に借金を残すように。
どうせ、取引しなければ子供は産まれてこなかったのですから構わないでしょう?』
いやらしい笑みを浮かべながら言う。
「ふざけるな!」
これまでの人生が、他人、それも自分以上に大切な存在から奪った幸せだったなんて。
『返せというのはもう無理ですよ。すでに報酬としてお孫さんの未来の一部を頂きました。
これは実験なんです。日本という島国をひとつの世界と仮定して行った実験。
貴方のお孫さんは全員、生涯異性と結婚することはない。興味をもつこともない。結婚できる安定した収入の職業にも就けません』
僕は殴りかかった。
そろそろ六十になろうかという年だったし、肉体には自信がなかったが、耐えられずに男の顔を殴ろうとしたんだ。
すると、また、彼は僕の目の前から一瞬で姿を消した。
夢なんかじゃない。
僕は体勢を崩し、花壇に倒れこんでしまった。
「オヤジ、何してるんだ?」
さっきまで誰もいなかったはずの家で、時が動き出したのか、息子が心配そうにやってきて僕を起こしてくれた。
「いや、ちょっとな……」
どうせ言っても信じてもらえないと、その場は黙っていたよ。
僕はその日から孫のために何ができるか考えたよ。
金にものを言わせて異性に好かれるように自分を磨かせたり、古い時代と言われようが何回も見合いをさせたりもした。
だが、付き合うまでいたらないし、付き合えても半年ももたなかった。
懺悔とはこれだ。
僕は、僕のせいで孫たちの人生に大きな傷を与えてしまった。
君達はこの部屋をでたら、笑うだろうね。覚悟しているよ。
こんな与太話に、長々と聞いてくれてありがとう。

ずっと彼の話を黙って聞いていた、同じ年の老人たちは互いに顔を見合わせていた。
その場にいるのは、語り部をいれて五人。
ばつが悪そうにしていた。
それはどう聞いても作り話にしか思えない話にどう反応していいのかわからない、といった表情でもあり、されど自分も仲間に何か隠していた事柄をこの機会に話しをしたいといった表情にも見える。
「……俺はその話信じるよ」
ひとりが意を決したように、真剣な表情で周りを見渡した。
「実は……俺も取引したんだ。俺は女の悪魔だったけどな」
「お、俺もだ」
「実は……僕も」
「ええっ!」
語り部が驚きの声をあげる。
そして、全員が再び顔を見合わせた。
「まさか……日本のバブルとは……まさかな」
「そ、そうだよ。は、はは……」
全員複雑そうな顔をしながら、乾いた声で笑う。
そこへ、誰がつけたのか、TVのスイッチが入り、ニュースが流れた。
『続いては少子化問題です。データによれば、五十年前の出生率と比べておよそ三十%も減っている計算になります。これについて、政府は少子化対策に力をいれると宣言をしていますが、まったく効果がありません。このままでは日本の人口は……』
「…………」
それを聞いて、その場にいた者は全員絶句した。




あとがく

ようやく最終回。というか、とびとびで内容忘れてるって人もいるかと思います。
でも、まとめて発表するにはちょっとなあ・・・って感じでついつい放置してます^^;
最初、この小説は「日本経済が衰退しているわけ」みたいなタイトルでだしました。
要は、未来の孫とかが稼ぐ力、とか富とか、未来に対する希望を前借りして、バブルがおきたというような内容です。
あながち間違いではないですが。
1970年代は高度経済成長期であったのは確かなのですが、「庶民」と呼ばれる人たちでさえ、「就職して、結婚して子供を産んで…と言うのが当たり前(できて当然)」と言う中流家庭が大量に出た背景には給料がよかったのもありますが(バイトでさえ、ボーナスも保障がないかわりに、6〜8時間労働なら1万円は最低賃金といわれていた)、大手を中心に、金がある庶民(中級以上の会社員たちが主に)が投機目的で土地や株を買った。

現代でこそ、株価=日経平均は外国人資本のギャンブル場になっているため、経済指標としてはなりたっていませんが(現在、日本株をかってる人は外国人投資家が7割ですよ?)、バブル期は200円強の円安ということもあり、株を買えばあがっていたし、輸出黒字を溜め込みすぎて海外から嫉妬されているほど輸出が強かった。

都心の土地を買えば上がっていく時代だったため、投機目的でもうまく選択すれば十分に儲けがでたし、会社員も年功序列で給料があがったのでマイホームなんていう言葉もはやりました。
銀行も中小企業に勤めている人でさえ、ローンをいくらでも組ませてくれたので、借金とはいえ、こころゆくままに家や車、テレビなど家電を買うことができ、将来に対してなんの不安もなかった。
いまは、マイホームどころか、地方の空き家問題とか、若年層のホームレス(ネカフェや24時間営業の店を転転とする)なんて言葉もでて、マイホームなんていう言葉はもはや死語どころか、バカにする言葉とも言える。
いまの若者は一度新卒に失敗すると一生派遣のため、(正社員になったとしても、中小なんて時給1100円の正社員なんて当たり前だし)家どころか車もきつい、さらにいえば子供なんてとんでもない。結婚なんてなにそれ状態。
非正規の未婚率はものすごい高いです。正規ですら高いですが。

話を戻します。
つまり、あのバブル期は、はぶりがよくなった大衆が月収以上に、将来必ず払わないといけない借金で「消費」し、その、多く買ってもらった企業が社員に給料を払いーという循環でなりたっていた。
地価があがりすぎたため、大企業が「土地の値段をあがらなくしてほしい」とか政治家に頼んだんですかね。
土地の売買に制限をかけたため、大規模な不良債権をうみだしてしまい、(土地を持っているだけでも税とか借金の利息がつきますからね)バブルがはじけた原因と言われています。

ちなみに、リーマンショックと呼ばれた現象もこれとほぼ同じ理屈です
※車をローンで購入したアメリカ人の労働者の賃金があがらなくなり、ローンの返済ができなくなり、回収できなくなった額が一気にふくれあがったと言われています。

最近でいうとチャイナショック、こちらはほとんど日本のバブル崩壊とほぼ一緒です。
中国国民が急激にお金が入ってきたので、そのお金で株を買う。
日本と違って、中国株の購入者のほとんどが個人投資家です。
しかも、現物買いではなく、信用買い(入金額の3倍購入できる。借金。)で買ったため、一気に株価が急上昇しました。半年から1年でほぼ倍に。
加熱した株価はもちろん、実体経済とかけ離れた額になったため、必ずどこかで急上昇は止まり、停滞します。
株価が停滞すると損がないように思われますが、信用買いをしている人は借金のため、追証金を支払うか、とりあえず株を売ったりして整理をしなくてはなりません。
そうなると、まあ、じょじょに株価が下がってきますよね。
すると、売り側が強くなり、株価がますます下がる。利益確定してる人は損をしたくないし、もうこれ以上あがらなくてもいいと思う人もでてくる、となるとますます売られる。
この負のスパイラルがいま中国株の下落の原因です。
日本の場合は円高になってきているからですね。海外投資家は円高だと損なので撤退していくため。
年金ぶっこんでるからこの程度で済んでるという説も。
日本はもういい加減、海外投資家メインの日経平均最優先にした政策はやめるべきです。
そして、消費税も諸悪の根源なんだから撤廃するべき。

また話が脱線しました。
要するに、未来の子供たち(自分の、というわけではない)が得る富を、前借りして、日本のバブルはなりたっていたんじゃないか、という点においては、悪魔と取引をして子供たちの「やる気」や「気力」、もしくは「魂」などを生贄にささげて幸福を得ていたのではないか、という発想で書いてみました。
というか、仕事していて、なんでこんなに毎日つらいんだろう、という気持ちでうつうつとしていたときに思いついたので、そこまで経済的にというか、物語的にも思慮深く考えてはいませんでしたが(^^;)
でも、逆に、こういう「気持ち」というか、「心のホンネ」をメインにした話をまたかけるか?っていわれたら、多分かけないんじゃないかなと思います。そういう意味ではこの作品は人にすすめられないし、自慢もできませんが、個人的には嫌いじゃない作品です。


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