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で、内容は、「学芸員の穴を目指せ!」=ホンマもんのキュレイター(学芸員)になれ! キュレイター(curator)は、日本語では「学芸員」ということになっている。 学芸員なら、どの水族館にもいるし、実際には学芸員になるためには大学で教員課程に近い履修をした上で資格試験に合格しなくちゃならない。 でも、日本の水族館(博物館や美術館も)の学芸員には、欧米でいうところのキュレイターの仕事をしている人は驚くほど少ないのだ。 ボクはこれを、「学芸員の穴」と呼んでいる。 つまり、学芸員資格などなくても、ホンマもんのキュレイターがいないのだから、誰だってそこに納まることはできるのだ。 用語としての「学芸員」とは、博物館法に基づいた博物館の専門員のことだ。 ざっくり言えば、普及活動や、展示物の管理、調査研究などを専門的に行う知識技能を持った職。 水族館での展示物は生物だから、普及活動に、生物の飼育、生物の研究などのことだ。 そして水族館の本分は「展示」そのものにある。 だから、本来、学芸員なるものは、展示のために、飼育し、研究するべきなのである。 ところが、ほとんどの学芸員は、本分たる展示による「普及活動」がなんたるものかを知らないように思える。(あくまでも「ほとんどの」であって、まっとうな学芸員も何人か知っていますよ) 普及活動の専門職とは、水族館にやってくるごく一般的な大衆に、何を伝え、どうやれば伝えられるかを研究し、それを実行する職だ。 これが、ちゃんと機能していないから、水族館の魅力は半減してしまっている。 この傾向は美術館にとても顕著だ。 例えば、美術館の解説の難解なこと。これはホントに現代日本語か?と思うくらいに、専門用語をちりばめ着飾り、意味不明で滑稽でさえある。 例えば、美術館の敷居の高さ。あまねく人々に、芸術の素晴らしさを広めるのが美術館の大きな使命ではないのか?まるで大衆は来るな!と宣言しているようだ。 芸術を鑑賞するのがとても好きなボクだが、こんなことじゃ、日本に美術文化は根付かないだろうと心配している。 そしてこの責任のかなりの部分が、館長と学芸員にあると思うのだ。 そして、それと同じことが水族館にも起こっている。 たいていの場合において、解説などが学芸員が書くのだけど、たいていの場合において、その解説の面白くないことといったらない。 それは、自然科学のことしか勉強していない学芸員の知識で、大衆の興味を引こうという努力をせずに書かれているからだ。 (何度も言うけれど、全ての学芸員ではないですよ。あくまでも「たいていの」ですから) 水槽の作り方もそうだ。 学芸員の仕事の一つである「展示物の管理」は、水族館では生物の飼育だから、飼育の方法にばかりに目が行く。 すると、その水槽で何を伝えようとするのかが、おろそかになってしまっていることが多い。 調査や研究をしても、数少ない水族館関係者が読む論文を書くことには、たいへんな時間と労力をかけるのに、その成果を大衆に伝える努力は忘れてしまっている。 ボクが(大衆が)学芸員に望むのは、展示の質を高め、展示の手法を開発することだ。 そのために、研究をしてもらいたいのである。 例えば、米国の水族館では、擬岩をつくるのが専門のキュレイターがいてびっくりした。 彼は、水槽が表そうとしている環境や生物の生態を、客にいかにリアルに伝えるかどうかを研究して、それを実現していたのだ。なるほど理にかなっている。 ところが日本では、その水槽の造作を、設計士や擬岩デザイン専門の会社に委託してしまっていることが多い。おかげで、どの水族館のアマゾン水槽も、同じつくりになっている。 ボクの水族館プロデューサーという職は、日本でもそんなことは水族館のスタッフでしようよという気持ちから始まっている。 実は今年から、新江ノ島水族館では肩書きを改め「展示監督」となっているのだが、本来のキュレイターの意味には「監督」という意味合いがとても強い。 (※展示監督の話はまた別の機会に) このような仕事をする人がいない日本の水族館の現状が「学芸員の穴」なのだ。 あぁそうか、ある意味ボクの仕事は、隙間産業だったんだ・・・・。 そしてこの仕事は、別に学芸員の資格などなくてもできるのだ。 いや、おそらく、学芸員の資格がない方が、いろんな展示手法を考えやすいのかもだ。 現実に、いい展示を行っている水族館の中心人物は、学芸員の資格を持っていないスタッフに多いのだ。ちなみにボクは学芸員の資格を持っていない。 やる気と努力と、ちょっとしたセンスさえあれば、誰にでもなれるホンマもんの学芸員。 学芸員の資格を持っている人も含め、ぜひ水族館のすべてのスタッフに目指してもらいたいものです。 この2日間特別講義をしてきたTCAの卒業生から、そんな未来の水族館スタッフが育てば嬉しいものだと期待しているところです。
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ところで、ボクは学芸員が能無しだとか言いたいのではないので勘違いをされないように。美術館学芸員は「一人でなんでもさせられるからね、ボクたちは雑芸員」と言っていた。ようするに、大衆の好奇心を起こす方法など考えたり実行したりする暇がないということ。学芸員も実は悩んでいるのである。また、水族館では学芸員ヒエラルキーみたいなのがあって、それが本来の使命を果たしたいスタッフの能力を封じ込めていることが多い。もったいないと思う。
2007/1/26(金) 午後 3:13
私も以前昆虫館と博物館にいまして、学芸員の資格がないんで給料ひくかった(笑)逆にないから自由な発想で面白いことできるのかな〜なんて開き直ってます。
2007/1/26(金) 午後 5:56
この考えを真剣に受け止めて、頑張る若い人(ボクもだけど)が増えているようで、うれしいです。将来水族館がどんどん楽しくていいものになる予感♪カタイ頑固な自己中心オヤジが支配する水族館がどんどん無くなり、地域の人やファンの人が作る水族館が増えれば、それを楽しんでやる職員が埋もれていた力を発揮して、さらに水族館は良くなると思います。
2007/1/26(金) 午後 9:26 [ アピスト ]
梅華さん、昆虫館とかにいたんや!同業ですな。学芸員の資格ってあった方がいいし、正直言って欲しいけれど、資格取れる大学が少ないのね。特に水族館関係で取ろうと思ったら数えるくらいしかないものね〜。で、思うのだけど、教員資格持って水族館や博物館に勤めるというのもいいと思う。学芸員より大変だけどね。そして、やっぱり資格がなくても、夢がある人になら、キュレイターはできるのです。
2007/1/27(土) 午前 0:04
あはは!アピストくん、言い切っちゃったね〜。大丈夫、水族館はこれからますます良くなっていくし、ファンも増えて、ちゃんとした水族館文化が育っていくはず。だから頑張ってね。
2007/1/27(土) 午前 0:12
先日のテレビ局の納豆捏造データにしても、孫受けの製作会社におまかせでしたものね。企業・行政のイベントでも広告代理店丸抱えとか、下手なコピーライターの真似みたいな感じになるか、こけおどしの専門用語の羅列ですもの。日本人には四季の変化や借景を生かした造園技術があるので、生態に関する知識を生かした展示の能力はあるはずですよね。このまえのアンコウでしたら、体がぷよぷよ変形しながら泳ぐ様をよく観察できるような展示ができたら、面白いですね。
2007/1/27(土) 午前 1:16
そうねー、なんでこんなに他人任せというか、ヘンな専門分業制になっちゃったんでしょうね〜。さらに専門用語って、実は専門職の地位を守るために大切にされているという現状もあります。法律用語なんて最たるもので、わざと一般の人に分からなくしているというきらいもあるそうな(これは、けっこう有名な知りあいの弁護士に聞いた話)。大衆に「知らしむべからず、寄らしむべからず」というお上の風潮に準じたものです。
2007/1/27(土) 午前 1:45
僕は水族館に行くときに「人間観察」もしています。マンネリ化した生き物もそうですが、ココが難しいトコロで生き物の珍しさと観賞的なものとはかみ合わないというモノ、深海のハオリムシ類や浅瀬のナメクジウオなんかは珍しいですが地味で多くの人が素通りしていってます。
2007/1/27(土) 午前 1:53 [ たまちゃん ]
ハリイバラガニ(やけにこだわってますが)とか僕の研修のときに世界初展示したクリスマス島のアカガニ「とヤシガニ」とか(あっ・・どこの水族館かばれちゃう)は結構人気です。そんなこと考えている矢先葛西でミツクリザメを採集したとのこと、死んだのは戸田の漁船にあがって死んだものはみたことあるが生きている姿ははじめて!。日本の水族館の飛躍を感じました。
2007/1/27(土) 午前 1:54 [ たまちゃん ]
深海コーナーでしたら例えば刺し網や底引き網とか漁師さんの生活や漁村の祭りや造船の歴史、所謂民俗学的なものも同時に紹介するのも「見せ方」の一つです。千葉の博物館で標本の深海展やったり戸田にわけのわからんホルマリン屋敷があったけど、あれじゃ〜「ガロ」や「バウ」とかにネタにされて終わり、僕も持ってるチマキボラとかは標本でも面白いけど、やっぱり生きている姿をみるから感動すると思います♪
2007/1/27(土) 午前 2:10 [ たまちゃん ]
僕も専門学校でても中々水族館に就職できないから「スーパー在野人」として在野での付き合いばかりです。これは「自分が楽しむため・自分の勉強のため・自分の成長のため」です、これは仏教で云う所の密教・日々是好日です。僕の尊敬する植物学者の南方熊楠先生も在野人で密教徒でした、水族館は「展示」目的の顕教場で、密教的な珍奇生物を好む人はむしろ在野の方が楽しいかもしれません。難しいトコロです。
2007/1/27(土) 午後 9:00 [ たまちゃん ]
世の中では、たまちゃんみたいな人を、マニアックとかオタク系とかのひとくくりに入れちゃいます。でも、単に「好きなことが好き」で、その対象がイルカやセイウチとかじゃなく、一般の人が魅力を見いだせない生き物だったりするのですね。それは観察力のある人の宿命。南方先生も、観察力が鋭かったから、探求心や想像力が養われたのだと思います。
2007/1/28(日) 午前 0:08
僕は確かにマニアな人間ですが、なぜか腐るほど図鑑をもっているが例の東海大の図鑑や絵や標本の図鑑は一冊も持っていません。生態図鑑ばかりです。以前はベニワモンヤドカリを自宅で20匹位飼ってました図鑑よりやはり本物がいい(お店やっていたので問屋から安く買えたので示談で一匹30円くらい)これが密教です。だから動く「粘菌」なんですネ、まぁ南方熊楠研究会代表が僕の本業ですから。
2007/1/28(日) 午前 0:55 [ たまちゃん ]
密教は悪く云ったら自己中・我・エゴです、良く云ったら「霊魂の探究」。僕は顕教人でないので研修時やお店やってるときもなれない接客で大変でしたが大変勉強になりました。水族館キュレイターはまさに密教・顕教両方必要と思います。
2007/1/28(日) 午前 0:58 [ たまちゃん ]
マニアックですけど僕は秋葉系ではないですヨ♪暇さえあれば合気道をしています、合気道で食っていますから。 珍しさと鑑賞性、密教と顕教はともあれ日本は水産島国です。水族館の発展をお祈りします。
2007/1/28(日) 午前 1:19 [ たまちゃん ]
もしカンチョさんの講演会等ありましたらその折はお知らせくださいませ、首都圏内でしたら是非足をお運びしたく思います。 メール shobux@aol.com です。
2007/1/28(日) 午前 1:33 [ たまちゃん ]
神道には顕教的要素はなく、アニミズムは顕教でも密教でもなく、あるがまま感じるままが世の中です。でも、アニミズムを引き合いにして、だからこれからの生き方考え方をこうしていきましょう、なんて説教臭く説いているボクは、顕教な人ということか。そんな風に自分を考えたことなかったけれど、人ひとり一人にも、実は、密教的な部分と顕教的な部分が偏在しているのでしょうね。
2007/1/28(日) 午後 3:18
都内での講演はほとんど無いのだけど、2月18日の午後に北千住の足立区生涯学習センター「学びピア」であります。「あらかわ学会」の主催だけど、まだHPにはUPされてないみたいですね。ただ、TCAで行ったような講義は水族館とか博物館の研修用で、一般の方への講演は、もっといわゆる顕教的でw、しかも俗っぽい講話のようなお話しになります。
2007/1/28(日) 午後 3:42
はじめまして。最後の特別講義クラスにて、ラッコの質問をさせて頂きました、ヤナイアヤコと申します。90分間楽しく受講させて頂きました。憧れの存在である中村さんとお会いでき、又お話を伺う事ができ、大変嬉しかったです。私は卒業を控え、本当にやりたいことを見失いかけていましたが、あの日思い出しました。私の目指したい水族館スタッフは、もう見失う事はありません。またいつか、中村さんにお会いできる日を自ら作っていきたいと思います。忘れられない90分を本当にありがとうございました。乱文大変失礼致しました。
2007/2/1(木) 午前 1:56 [ TCA学生 ]
うひょっ!憧れとかって言われると照れちゃうやん!もっと言ってw。ヤナイさん、ついに今年から水族館スタッフになるのね。すごいスタッフを目指して下さい。夢とやる気が人を大きくします。今年はまた、全国水族館巡りをしなくちゃならない予定なので、見かけたら声かけてね〜。
2007/2/1(木) 午前 4:41