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前回紹介したロンドンの水族館。水族館に来ている人たちの反応を見ていると、日本人と変わることなく水槽の動物たちに大騒ぎしているから、ロンドン子にとって水族が特別興味の対象になっていないということでもない筈だ。 しかし、外を歩いている人はめちゃくちゃ多いのに、水族館の中にはほとんど人がいないというのが寂しかった。 いくら水族館の中にいる人の反応がよかったとしても、たくさんの人に見てもらえなかったら意味がない。ガラガラの観客の前でやったファインプレーみたいなものではないか。 しかしこんなとき、展示提供者は思うのだ。 「入館した人は喜んでいるのだから内容はいいはず。いい内容なのだから、入らない人が悪いか、この良さを伝えられない広報の担当者がダメなんだ。。。」と。 実は、このあたりが、水族館が陥りやすいあぁ勘違い!なのですね。 水族館なんて、どんな水族館でもある程度は期待通りにきまっている。生きている動物がいれば、そりゃ子どもなら誰でも驚くし大騒ぎもするだろう。 そもそも、水族館の中で見かける人たちは、入館する前からその水族館に入る価値を見いだしていた人たちなのである。反応がいいのは当たり前なのだ。 さてさて、水族館ではアンケートを採ることが多い。アンケートの内容はたいてい、満足度に関することや、水族館に来たきっかけ(何で知ったか?)、好きな動物は?、といったところだろう。 そのアンケートの回答は、どの水族館でも、満足度はかなり高く出るはずだし、水族館を何で知ったか?なんて問いには、「すでに知っていた」が圧倒的に多い。好きな動物には、その水族館のスター動物がハートマークまで付けられて書かれていたりする。 そして、館長はじめアンケートの実施者は、アンケートの回答にちょっとした安心感と満足感を得るのだ。 しかし!そう、これこそあぁ勘違い! 先に言ったように、入館してくれた人というのは、もともと水族館に入館せずにはいられなかった人たちなのである。それもけっして安いとは言えない入館料を支払ってさえもだ。 さらに、その水族館を訪れたきっかけなど、その水族館を知っていたからという他にはない。 もちろん、好きな動物は?と尋ねられたら、見てきたばかりの動物しか頭に浮かんでは来ないだろう。 広島球場でカープの試合を観戦にきた人にアンケートしているみたいなもので、ほとんどが赤ヘルファンだということは最初から分かっているのだ。 実は本当に明らかにすべきなのは、入館してくれない人たちの気持ちだ。 なぜ、目の前までやって来たのに入館しないのか?なぜやってこようともしないのか? 来てくれた人よりはるかに多い、来てくれなかった人たちの理由を知ることが入館者の増加に繋がる。これは、水族館だけでなく全ての観光産業や集客産業にも通じることである。 ボクは伊勢志摩の観光再生に携わっていたときにそれに気付き、発地街頭アンケートなるものを提案し、東京・名古屋・大阪での街頭アンケートを実施してみた。 その結果は散々なものだった。伊勢志摩に訪れてくれた人たちへのアンケートとはまったく逆の結果だったのだ。このアンケートに参加したメンバーの気落ちのしようといったらなかった。 しかし、マーケットの状態を正確に知ることができれば、その対応も考えることができる。 本当のことを知らずにいると対応どころか、偽物の満足感を掴まされることになってしまうのである。 水族館に来てくれない人たちに目を向ければ、その理由のほとんどは、「そんな水族館知らない」あるいは「水族館の面白さを知らない」からだ。 だったら、広告をバンバン打ったり、パブリシティー活動をいっぱいすればいいか?といえば、それだけではぜんぜん無理。 その水族館の面白さ、その水族館の魅力、その水族館に行かなくちゃならない理由、というものがなかったら、やっぱり誰も来てくれないし、そもそもパブリシティーで扱ってももらえない。 コトは広報担当者だけの責任ではなく、展示に満足してしまっている人たちの責任なのだ。 だから、館内アンケートに、安心感や満足感を得たりしないで、館内にいない人たちをどうやって誘うか、それを常日頃から考えている水族館はいい水族館に成長する。 もちろん、館内アンケートそのものがダメだと言っているのではない。それは常々するべきなのだ。ただ、その結果に満足したり安心したりしてはならないと言いたいのである。 そもそも、安心しないアンケートの設問をすることが大切だろう。例えば「当館でダメだと思うことを上げてください」とかね。 あるいは、思い切って、ライバル館の前で出てくる人にアンケートするなんてどうだろう。そこで、なぜうちの水族館に来ずにその水族館に行ったのかを聞けば、自分の館の弱点がよくわかるはずだ。 しかし、そういうことをやってみようとする水族館はあまりない。 おそらく、水族館の多くが、行政の下部組織であったり、企業の系列であったりするので、体質的に「いいこと探し」をして報告する傾向が強いからだと思う。そして、その傾向はなぜかしら水族館業界全体が持っている体質ともなっている。 じゃあ、いい水族館でもっと楽しみたいと思っているみなさんとしては、どうすればいいのだろう?
お気に入りの水族館や近所の水族館には、どんどん注文をしてあげて欲しい。アンケートなど採られていなくても、手紙やメールで、あるいは新聞の投書にでもかまわない。 「不満なところはココ!」「こうしてくれたら水族館に興味ない友だちも連れていけるのに・・・」なんてことを、じゃかじゃか表明しよう。 そういうファンが水族館にとってホントにいいファンだ。 ファンが水族館を育てる時代が、そろそろ来てもいいんじゃないかなーと思っているこの頃であります。 |
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2006年07月30日
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