ブログ水族館/中村 元

次回『中村元の超水族館ナイト』は2019年2月24日(日)の開催。前売り発売は1/24です

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昨夜のNHK「プラネットアース」はすごかった!
わりといつも期待しながら見ているのだけど、今回の「ひしめく生命」は特別にびっくり。

実はボク、20年も前に、NHKと日テレにしか水中撮影班がなかった頃、水族館で水中撮影(ビデオ)の機材を揃えて水中撮影班をつくり、テレビ局の撮影を請け負えるようにしていたのですよ。
水中撮影班の最初のカメラマンは自分でやったし、屈強な撮影スタッフを育ててからも、スタッフ不調のときや一人取材の時には自分で潜っていた。
だから、水中での撮影の限界や、海での困難さはよ〜く知っているつもり。
でも、昨日の映像を見て、ヒトのやることに限界なんてないと知りました。

実はボク自身も、昨夜の撮影現場になっていたシャークベイのジュゴンの撮影に行ったし、南アフリカのホホジロザメだって檻の中水中も含め5日くらい海の上で待った。
でもその結果は、ジュゴンは2週間で1カット撮れただけ。
ホホジロザメは、その年だけサメのやってくるのが遅れているとのことで会うこともできなかった。

番組では最後に、ホホジロザメのジャンプを撮ったハイスピードカメラの威力と、チャンスをものにする苦労を紹介していたけれど、撮影機材の開発と、撮影成功までの経緯は、きっとそれだけで感動の番組が1本できてしまうほどのことだと思う。

ところで、フィールドで動物を撮影するときに大切なのは、1に事前情報、2に現地コーディネーター、3に粘りと時間。
これは、フィールドの話しだけでなく、水族館や動物園で撮影するときにも必要なことなのですね。
とにかく、動物たちはモデルでもヒトでもないから、撮影者との阿吽の呼吸もなければ、お願いも交渉もできない。思った通りになってくれないのが野生生物なのだ。

さて水族館において・・・。
1の事前情報は、水族館のことなら今はインターネットでけっこう集められるようになった。
ショータイムだとかエサの時間だとかはもちろんだけど、まずどんな動物がいるかを知っておくことが大切だ。
一眼レフなら、それによって持っていくレンズも違ってくるし、フィルムカメラならフィルムの感度も対応しておかねばならない。

2の現地コーディネーター。フィールドの撮影で一般人がコーディネーターを探すのは大変だけど、水族館でなら水族館のスタッフを見つければいい。
特に水槽を観察している飼育係がいたら、その飼育係に情報を聞き出そう。動物たちの行動パターンがわかるだけでなく、運良く撮影もする飼育係だったりすれば(実は飼育係には撮影が好きな人が多い)、その水槽や動物に特別の撮影のコツを教えてくれたりする。

3の粘りと時間は、とにかく時間を多く取ることが基本なのはもちろんだ。一般の方なら3時間以上はとることをオススメする。
さらに、これと決めた動物がいたらそこに重点を置いて粘る。粘り方には2通りある。

まず泳ぎ回っている動物が被写体の場合は、撮影よりもまず観察。数分観察していれば、水槽内での行動のパターンが分かってくる。動物の行動を先読みできたら撮影の戦略を立てやすい。
限りない広さと変化のあるフィールドと違って、一定の広さと環境の変わらない水槽では、このパターンを見つける観察は、とても有利に働く。

ついで、あまり動かない動物が被写体の場合は、粘って待っていても思った場所に来てくれなかったりポーズがイマイチのことがある。
こんなときには、さっさとあきらめて別の動物を見に行くなり撮影するなりする。そして、何度も何度も繰り返し、狙っている動物のところに戻ってくるのだ。普通、1時間以上も動かないということはあまりない。
こちらも、他になんのすることもないフィールドと違って、水族館はすぐ隣に別の動物がいるのだからとてもありがたい。
とにかくフィールドでは、カメラを担いだままただ待つだけという時間が9割以上で、オレはこんな無為な時間を費やしていていいのだろうか・・・・と精神的な不安にも陥るほどなのだ。

とまあ、そんなわけで、テレビの撮影クルーやプロの野生生物写真家のことを考えたら、水族館での撮影はインスタントラーメンほどにお手軽なものなのです。
そして、そのお手軽な苦労を、まるでフィールドで撮影しているみたいな気持ちになって撮影してみれば、それはまたお手軽にフィールドカメラマンの気分も味わえるというワケなのですね。

写真撮影が趣味ではなかったという方も、ぜひ水族館にはカメラを持って出かけてみてください。
きっと、水族館の水槽が、世界の海にまで広がっていくはずです。

photo:鴨川シーワールドのオスシャチ
この写真、別になんでもない写真に見えるだろうが、実はけっこう苦労してる。シャチの迫力を出すために、巨体のオスを広角で間近に捉えたかったのだけど、このオスは背ビレが曲がってしまっているのだ。
それで、背ビレが見えず、かつお腹の白色だけにならない画角になる場所とタイミングを探すため、事前に何度もショーを見た。
ところがちょうどいい場所がスプラッシュゾーンだったので、今度はギリギリ水しぶきが届く場所で、撮影後すぐ、前に座った客の背中にカメラを隠せる位置に早くから陣取って撮影した。
そんなことを聞けば、このなんでもない一枚が、ちょっといい写真っぽく思えるでしょw。
釣り師の自慢とおんなじようなものですけどねw。

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