ブログ水族館/中村 元

次回『中村元の超水族館ナイト』は2019年2月24日(日)の開催。前売り発売は1/24です

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モンテレーペンギン

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種名:モンテレー ペンギン
体長:65mm
生息地:モンテレー湾水族館(アメリカ合衆国)
特徴:見上げる目が愛おしい。何でできているのだろう?金属風だけどセラミックっぽい。
モデル:コウテイペンギンの雛
発見日:2002年7月

合衆国の西海岸モンテレーのまちは、バブル景気で再開発ブームの頃、日本のデベロッパーや視察団たちが海のリゾート再開発のモデルとしてこぞって訪れては紹介したため、一般日本人観光客までもが急増したまちだ。
ボクが初めて訪れたのも1986年、前回展示したジョンペリーペンギンを買ったときの初の訪米の時だった。
つーことは、恥ずかしいことにボクも、いつもバカにしている視察の人そのもの、というかハシリの人だったのである。ニャハ!

でも、そのモンテレーでボクは、デベロッパーたちが見落としていた、水族館の、いや観光地のあるべき姿の真の姿を発見することになった。
視察なるものが、いかに意味のないバカげた行為かということも知ることになった。
その発見を検証するために、というか正直に言えばその後どうなっていくかがとても気になったために、いや実はもっと正直に言えば気づきを与えてくれたこのまちをとても気に入ってしまったために、その後も合衆国に訪れたり経由するたびに、モンテレーのまちを訪れるようになった。

モンテレーのまちは、再開発の計画がバッチリ決まったまちとしてよく紹介されるのだが、実は、そうではない。
少し滞在してみれば分かるのだが、再開発の場所はてんでバラバラ、特に、超有名なモンテレー湾水族館は、再開発の中心地から数キロ離れた場所にあるのだ。
さらに、初めて訪れた当時は、再開発の中心地と水族館の間には、朽ち果てた駅舎や倉庫が点在する寂れた道があるだけだった。
その道の道中で海を見れば、野生のラッコがいたり、アシカのコロニーがあったりするのだが、彼らを見ようとするような観光客さえもいなかった。

でも、そんな田舎まちの住民たちは、いやに元気があってフレンドリーだった。
マリーナで網を繕う漁師のおじさんは、真っ白なフィッシャーマンズセーターにポパイみたいな帽子とパイプで、金髪のリゾート客をからかっている。
フィッシャーマンズワーフのおばちゃんは、英語かなにかも分からないようなひどいなまりで、うちの料理は美味いよ!と満面の笑みで話しかける。いや方言じゃなくても意味はわからないのだけどね。
水族館の人は一生懸命に、水族館の話ではなく、モンテレー湾の素晴らしさを説く。
住民がみんな、モンテレーのまちや海、そして観光に来る人々のことが大好きなのだ。
これこそが、本当に魅力のある観光地の姿だ。

さてそんなモンテレーをはじめとする西海岸の町々には、芸術家たちが好んで住んでいたのだけれど、当時はそれに憧れて、芸術家の卵たちも集まり始めていた。
それで、フィッシャーマンズワーフなどのショップに行けば、芸術家の卵たちが生計を立てるために制作した、手作りの土産物がたくさん並んでいたのだ。
さすが芸術家の卵らしく、どれも素晴らしい出来で、特にこのあたりでホエールウオッチングをやっていたクジラやイルカなど鯨類系や、スポーツフィッシングの対象として有名なカジキ系の造形物や絵画は、生き生きとして目を見張るものがあった。

ボクも、訪れるたびに、いくつものイルカやクジラを買ってしまったものだ。
でもどういうわけか、ずっとペンギンを買うことはなかった。もしかすると、ペンギンの置物自体がなかったのかもしれない。だって、モンテレーとはぜんぜん関係ないものね。

ところが、最後にモンテレーに訪れた2002年に、水族館の売店で見つけたのが、このペンギンだった。
実はモンテレー水族館でもペンギンは飼育していないし、もちろん北半球の合衆国にペンギンがいるわけもない。
だから、もしかしたらモンテレーの作家がつくったものではないのかもしれない。
そう思ったから特に魅力も感じずに、でもペンギンを見つけたからには買わなくちゃな〜と思いながら、しょうがなく眺めていた。

そしたら、こいつと目が合っちゃたのです。
な〜んか求めるような目でボクを見つめ、「ボク、おじちゃんのこと好きだよ。だからね、ボクのこと連れてってよ。ね。」なんて訴えかけるわけ。
いや、参りましたよ。この見上げる目に。
もちろん、連れて帰って来ちゃった。

モントレーの住民が、自分自身の暮らしやまちを楽しみ、そして観光客に「ほら、このまちって素敵でしょ!」と言っている、そんな気持ちを、このペンギンに見つめられるたびに思い出してしまう。

擬人化した可愛らしさを全面に打ち出している作品だけど、でも本当にペンギンの子たちは、こんな仕草をする。
そして、色つけもないたった一色の素材と、ごつごつしたナイフの跡にもかかわらず、柔らかさとぬくもりを感じる。

母親を見上げる純粋そのものの雛の仕草が、けっして観光客にこびを売るわけではないけれど、観光地として訴える力のあるモンテレーの人々の精神と重なって、この小さな雛ペンギンの目にはつくづく参ってしまうのです。

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