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今回の男鹿半島は、GAOが目的ではなく、男鹿の観光再生のお手伝いで、講演をするだけじゃなく、男鹿半島の魅力を地元のボランティアの人たちと再確認しながら回った。 すごいね、男鹿。 自然がいっぱい。自然がいっぱいすぎて、足腰がガクガクになるくらい歩いたのだけど、自然の豊かさがこんなに残っている観光地は、日本にはもうそれほどない。 こんなふうに、大木の根っことか、石の脇とかに穴があって、ボゴッボゴボゴッと音を立てながら冷たくて美味しい清水がわき出しているのだ。 男鹿半島の付け根に、寒風山という火山があって、その火山岩の間を20年かけて通ってきた水なのだとか。 付近の上水は、この一帯「滝の頭水源」からの湧水を集めて使っているのだそうだ。 でも、このいただきます食堂では、水はメニューではない。 今回は「しょっつる」、しょっつる鍋のしょっつるだ。 しょっつるは塩汁が語源とかで、魚を塩につけて発酵させた醤油、つまり魚醤である。 実はボク、しょっつる鍋とか秋田料理とか味の濃さがちょっと苦手だったのね。ナンプラーなんかもやっぱり苦手だったので、きっと海のない田舎育ちだったから、魚醤が苦手なんだと思いこんでいた。 ところが、今回の1泊目の宿で出てきた、あまりにも美味しいしゃぶしゃぶの汁でガビーンと来た。 昆布ダシなの、でもただもんの昆布ダシではない、なんかじわっとくるコクが素晴らしい。それで、これいったい何が入っているの?と聞いたら、「しょっつる」だったのです。 しょっつるは、調味料として使うと、とっても上品なコクが醸し出されると、旅館の主に教えてもらった。 しかも、最近すごくいいしょっつるがあって、それが、ハタハタだけで作られたしょっつるだとのこと。 その旅館では、それを使っている。 すげーなー、ハタハタのしょっつる、どうやってつくるんだろー?と思っていたら、これがまた天啓のように、次の日の男鹿半島の魅力のツアーの中に、唯一ハタハタのしょっつるを造っている「諸井醸造所」が入っていた。 ハタハタは漢字で「鰰」神の魚、今回の旅は、ハタハタ神の導きによる旅だったのではないか?と思ったカンチョなのでした。 さてさてここが、諸井醸造所のしょっつるづくりの現場。 諸井醸造所では、かつての伝統的なハタハタのしょっつるが途絶えようとしていたのを、試行錯誤の上で復刻し、より完成度の高いものにまでしたのだそうだ。 イワシやアジでつくったしょっつるは、魚臭さや癖が強いのが、ハタハタでつくるととても上品なしょっつるに仕上がる。それが、前夜にいただいたしゃぶしゃぶのダシ汁の隠し味だったというわけ。 ここでのしょっつる造りは、実にシンプルで美しい。 原料はなんと、ハタハタに天然塩だけ! 工場には機械らしい機械もない。 見せてもらったのがこれ、左が半年前の12月に漬けたハタハタ。右は8年貯蔵もの。 ハタハタは発酵しながら溶けて液体になり、3年目に漉して熱を加えればしょっつるになる。 8年醸造したこの味噌みたいなのを舐めさせてもらったら、ぜんぜん魚の匂いもしなくて、そのまま野菜とかに付けて食べたら美味しそうなお味でした。 (尚、8年醸造は、味の変遷やいつまでもつかなどの実験のためだそうで、しょっつるは3年で美味しくいただけます) さてところが、原料のハタハタ、まったく獲れなくなってきていたのですね。 それを、3年間のハタハタの禁漁という大技で、なんとか取り戻したのが、漁業者や関係者たちの偉いところ。 漁獲高を数字で表すと、数10年前までは毎年1〜2万トン→1991年にはなんと70トン!→禁漁後3千トンと、絶滅が奇跡的に止まったことが分かる。 魚の禁漁は世界的にも例がないのだそうで、そのことが評価されるとともに、諸井醸造所の努力によってしょっつるの伝統の味が途絶えなかったということで、このハタハタしょっつるは、イタリアに本部のある世界スローフード協会が、世界的に希少価値がある食品として指定する『味の箱船』という栄誉ある認定を受けたのだそうだ。 さてハタハタの減少、ボクはなんとな〜く過剰漁獲によるものだろうと思っていたのだけど、地元ボランティアの方々の話を聞けば、どうやらそれは違うらしい。 港に建つハタハタの供養碑が、それを物語る。「供養費は獲れすぎたからですか?」と聞いたら、なんと「いえ、本当はこのあたり一帯がハタハタのブリコ(卵)が大量に流れ着く場所だったのを、大規模な港湾整備で潰してしまったからです」という答え。 港湾整備、国と建設系資本による巨額な無駄遣い行政施策の一つとされているけれど、漁港を整備するために、漁獲物の産卵場所を根絶やしにしてしまうなんておバカなこと、いったいどんな仕組みでできちゃったのだろう? 地元の有識者は猛反対したらしいのだけど、地元の人には見えている本当のことが、世の中を動かしている人たちには、どうやっても届かない・・・。そんな悲しい日本の現実です。 きっと、建設省の役人も、県の役人も、政治家たちも、ハタハタが神の魚だってことを知らなかったのだろうね。 でも、神罰は下っちゃうのです、それも地元の庶民にだけに。 この日、先の「滝の頭水源」の源となっている寒風山に、ヒーヒー言いながら登った。 そして、男鹿半島の付け根の方を望んだのがこの写真。左上に見えているいびつな形の池は、あの八郎潟の残骸だ。 八郎潟の干拓は、国家事業として巨額の干拓費を使った、生態と国土の破壊、そして事業目的の不完遂と、将来に渡って取り返しのつかない失敗の記念碑であることは、たいていの人の見方だ。 それを横に見ながら、再び港湾整備で、ハタハタを絶滅に追いやってしまいかけたことに、ボクはちょっと悲しくなった。 男鹿の自然豊かな土地には、国から落ちる程度の補助金や建設の仕事よりも、将来にまで残せる財産がいっぱいあるのだもの。 ショウブの花を摘んで帰ろうとする人に、ボランティアの人たちは「とっていいのは写真だけですよ〜」と諭していた。 そんな風に、花一本を、後からくる人に見せるためだけにでも、残しておきたいと考える人もいる。 この人たちが、まちの将来を提案していくことができれば、たぶん、八郎潟もハタハタもなくならなかったのだろうと思う。 と、なんだか「命をいただきます食堂」らしくなく社会的なことになってしまったけれど、もちろん今回のお土産はハタハタしょっつるでした。 ●諸井醸造所は通販もしてるみたいです→諸井醸造所のHP(広告料をもらってるワケじゃありませんw) ●生きているハタハタの写真はこちら→「ハタハタがいっぱい」でGAOのハタハタ展示 ※この書庫「命をいただきます食堂」の説明はこちら。 |
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2007年06月30日
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