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『知っとこ!』ご覧になりましたか? サンシャイン水族館、近頃じわじわと出てきてますねえ。 あっ! そうか、ごめんなさい! 『知っとこ!』に今日出ること、ツイッターでしか告知しなかったんや。(実はボクも忘れてて見のがしたw) しか〜し!見のがしたみなさんのために、超スクープな画像をお贈りしますぜ。 おそらく『知っとこ!』でのボクのコメント、「サンシャイン水族館は進化系水族館」というコメントはカットされてなかっただろうと思う。ていうか、カットされてたら怒る! さあ今日の超スクープな話題は、「進化系水族館」の話題でもありますぞ。 先日の超水族館ナイトでは、擬岩づくりの大変さと面白さを、バイカルアザラシの水槽の擬氷の原型づくりの写真を見てもらいながら話したのだけど、あの原型がその後どうなったのかをご覧いただこう。 これが、擬氷の原型。 まずは、発泡スチロールを削って、実物大の擬氷原型を作る。 バイカルアザラシの水槽に浮かべるため、同じ高さに吊してもらったところだ。 氷の雰囲気を出すために、青い光を当てている。 この工場で、この擬氷の原型を検討したのは3回。 発泡スチロールの原型は、作り始めるとどんどん進んでしまうので、そのくらいが精一杯。 他の擬岩もあるしね。 でも、最近の擬岩づくりのディレクターや職人さんたちは、一を言えば十を分かってくれる。 いやそれどころか、多くの場合は、飼育に関わること以外はクライアント側から口を出さない方がいいくらい。 水族館によっては、スタッフが工場まで行かないことの方が多かったりするのだけど、これはカンチョ感心しないね、だって擬岩は展示物やもん。 しかし! ボクは必ず工場に何度も出かける。 もちろん展示スタッフも伴う。 それは、常に新しくてリアリティーの高い擬岩を目指しているからであり、 常に新しい試みを実現しようとしているからであり、 とにかく擬岩は展示物で、展示物を作れない展示スタッフはただの飼育係と考えているからだ。 そのために、擬岩づくりのプロと、原型の時点から現場で検討する。 そもそも、この原型にたどり着くまでが、スタッフとのすごく長い道のりなのだ。 まず、水族館の担当スタッフと、絵を描いて検討する。 そして次に、スタッフに模型を作ってもらい、再度検討する。 そして納得がいったところで、設計図に落とし、擬岩業者に模型を作ってもらう。 バイカルアザラシのほぼ最終的な水槽模型はコレだ。 この場所は、天井の低いビルの最上階で、床部分にも出っ張りがある。 そんな場所で、アザラシの展示は陸上も水面下も見える半水面で、という常識を信じていたら、「天空のオアシス」の水族館として最も大切にしている『水塊による水中感』は出すことができない。 ボクが「進化系水族館」と言うのはそこだ。 生き物の進化は優位で余裕のある者には起こらない。 環境の悪化や強敵の出現によって、困った状況に置かれた者にこそ、進化は起こる。 サンシャイン水族館は、日本一不利な条件にある水族館だからこそ、生き残るための進化を実現しなくてはならないのだ。 それで、バイカルアザラシ水槽での進化の方向性は、思い切って、視線のメインを水中に持っていくということにした。 アザラシは水面上も見せるものという常識は捨て、水位を高くして、水中感と浮遊感そして涼感を感じる「水塊」部分を中心に見せるのである。 バイカルアザラシの展示を検討する一番最初の会議で、彼らが他のアザラシとは違って、昼間はほとんど上陸しないことが頭の中にあったカンチョは、「水中だけ見せるんでええやん」と、いきなり切り出したのだ。 しかしそれだけでは、やっぱり浅い水深が気になる。 世界一深いバイカル湖が浅い水槽では困るではないか。 そこで、観客の注意が底に行かないように、水面を氷で覆うことにしたのだ。 一面に張り渡った氷には、水槽の奥行きを広く見せる効果もある。 さらにボクは、氷の裏側に、奥の中心部に集約するようなクラック(割れ目)を入れてもらうことにした。 いわゆる「遠近法」である。 奥を暗くして、奥に向かって収斂するラインを引いておけば、人の頭には勝手に遠近法の経験則が立ち上がって、なんだか広く見えてしまうものなのだ。 もちろん、バイカル湖が冬には分厚い氷が張り、バイカルアザラシたちはその氷に穴を空けて潜っていることを、一目で理解してもらうための環境展示でもある。 優れた展示とは、解説を読まなくても理解でき、知的好奇心がわき出す展示のことである。 しかし、ここに難問が横たわる。 擬氷をいかに本物の氷らしく見せるか?。 実は今まで、どこの水族館でも動物園でも、水中の擬氷をいかにも本物っぽく作られたことはないのだ。 水中で本物に見える擬氷。 こいつを実現させなくては、この模型の雰囲気は永久に実現しない。そして進化も実現しない。 氷らしい条件は、おそらく光を通す透明感と青と白のコントラストによるものだと、ボクたちは話し合った。 そこで、原型づくりと並行して、最終サンプルの制作に取りかかってもらった。 これが、FRP擬岩の最終形を取り出すところ。 発泡スチロールの原型から牝型をつくり、そこにFRPを流して牡型を取り出すのだ。 FRPはもともと透明なのだけど、それを固める凝固剤で薄く濁る。 真っ白にしたければ、白い顔料を入れるのだが、絵に描いた白では氷の透明感が無くなる。 それで、色は青を基調に入れることにした。 いくつも試作品をつくり、ようやく納得したものを、照明の下に持ってきて雰囲気を見る。 おお! なんとなく氷っぽいぞ! しかし、ここで次の難問にぶち当たった。 凝固剤の薄い色は、どうも黄色っぽい色が付いているようで、半透明の場所が氷の寒色系の色にならないのだ。 ならば、照明だ! ボクは、擬氷のサンプルを、照明器具の展示場に持ち込んだ。 なんだか、涼しげな氷のオブジェに見えるけどねw。 これがけっこう暑い作業なんよ。 青くても照明やもんね。 しかも、ずっと青色の照明を見ていると、普通の白色の照明が黄色に見えてきてしまったりする。 いくつもの照明を試し、やっと照明器具と、擬氷の最終的な色付けの方向性が決まった。 さて、さて、これでできることはやり尽くした。 後は、水槽に完成した擬氷を吊して、水を張って、照明を着けるとき。 そのときの一発勝負なのだ。 この時期のボクの心は、実は相当にドキドキ恐怖におののいている。 擬岩や照明がひどい失敗だった夢を見て、何度うなされたことか。 もちろん、このバイカルアザラシ水槽だけでなく、いくつもの水槽を進化系にしているのだ。 不安で、眠れない毎日。 その不安を解消するために、また擬岩工場へ行き、さらなる心配を発見してくる。 いくら、条件の厳しい者が進化すると言っても、進化に失敗して絶滅した連中もいる。 いや、進化に失敗して絶滅した生物は、成功した生物よりもはるかに多いはずなのだ。 よお考えたら、進化って恐いやんw。 さあ、バイカルアザラシ水槽は、「進化系水族館」になれるのか「絶滅系水族館」になってしまうのか…。 そして… 運命のその日が来た。 うひょー!やったー! 水槽に近づきながら、ボクはもうすでに声を上げていた。 ほぼ思いどおり。 色も悪くない。 心配していた、擬氷の継ぎ目もあまり気にならない。 エアが溜まっているのが気になるが、それはなんとか工夫できそうだ。 何よりも、意図していた「水槽を広く深く見せる」という効果は、思っていたよりもはるかに大きかった。 バイカルアザラシ水槽は、進化したのだ! 困難な条件に合わせて常識をひねくるだけでは、余裕ある水族館に及ばない中途半端な展示になる。 困難な条件を克服する方法を考え実現の努力をすれば、余裕ある水族館が真似をしたくなる展示ができる。 ぼくはそうやって、後々「サンシャイン方式」と呼ばれるような展示を開発したかったのだ。 残りの心配は、バイカルアザラシたちが、この擬氷の下を怖がらずに泳いでくれるかどうかだったが、すでにこの水槽に入居したバイカルアザラシたちは、擬氷の下から出てこないくらいに気に入ってくれている。 まぁそれも、今までの展示で、彼らが陸地のオーバーハングした水中が好きだということは、展示スタッフとも確認しあっていたのやけど、とにかくホッと一息なのである。 とまあこんな風に、逆境を逆手にとって進化した水槽は、他にもいっぱいあるよ〜。 もちろん水族館そのものも「進化系水族館」、サンシャイン方式がいっぱいです。 ●8月4日オープン! 中村元はサンシャイン水族館の展示プロデューサーです ⇒天空のアシカ/サンシャイン水族館アクアリング(2011/8/1) ⇒天空のクラゲトンネル(2011/7/20) ⇒進化系水族館:バイカルアザラシ水槽(2011/7/3) ⇒こんなに変わるサンシャイン水族館(2011/6/1) ⇒サンシャイン水族館オープン日決定! ★東京カルチャーカルチャー『中村元の超水族館ナイト』が、オープン直後のサンシャイン水族館に3夜連続やってくる!⇒『中村元のサンシャイン水族館ナイト』8月8,9,10日夜19:00〜 |
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