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サンシャイン水族館のことは、まだまだ書きたいのだけど、9月になったことだし、ちょっと別の進化系水族館の話題も。 ボクのサンシャイン水族館リニューアルの展示プロデューサーとしての仕事は、実はオープンをもって終了している。 だから、ボクの仕事のことをよく知ってる人は、「中村元は今はヒマだろう。きっとまたNPO道楽三昧始めるんだろうなあ」と思っているに違いない。 まあ確かにね、それは言えないこともない。今日だって、三重県に行って新しい事業のプレゼンをしてきたしw。 しかしだ! 中村元は水族館人なのである! 水族館の仕事をしてなかったら、水槽を上がった河童になってしまうのである! …と言うワケで、もう一つ、昨年からやってる水族館プロデュースがありますぞ。 ほら、前にもちらっと明かした、北海道は北見市の温根湯(元留辺蕊町)にある「山の水族館」の建て替え。 この工事がもう始まっているのだ。 もちろん、工事が始まるというからには、すでに設計図は出来ている。 そのいくつかを、ご披露しちゃおう。 まずは「北の大地の水槽」 うん? サンシャイン水族館では、極力減らそうとした半水面の水槽ではないか? 『水塊』が好きな中村がどうした?と思われるかもしれない。 でもさ、よ〜く見て欲しい。 雪が積もってる。 そして、水面下に分厚い氷が張ってるでしょうよ。 しかも、これ、本物の氷、本物の雪ですぞ。 日本初いやおそらく世界初の、水面下の氷結を横から見ることのできる水槽なのだ〜! 実は、この新水族館の工事費は3億円ちょっとという、ハンパなく超低予算。 水族館新設には数十億〜100億越えというのが当たり前の世の中、名古屋港水族館なんか400億円ばかしかかってる…というのに、たった3億円。ビンボー! 白バイ一台で盗める金額(古いか)、ちょっとした豪邸を建てる金額、それで新しい水族館を建物から造らなくちゃならんってどうよ!まいったか! しかもね、この温根湯(おんね湯)というところ、北海道の中でも最も寒い町の一つなのだそうで、この温暖化の時代にも毎年しっかりマイナス20℃以下を何度も記録している。 なのに、なのにそんな真冬にも開館したいって言い出すってどうよ。まいったか! いやはや、水族館プロデューサー中村元、かなりていうか超まいったですよ。 しかし、超まいったんなら、超水族館プロデューサーに変身してやっつけてやろうと考えた。 ⇒でっかい水槽をいくつも作る金はないから、庭を掘って水槽にしちゃおう。 ⇒その水槽では、河岸林が美しくて四季折々の表情を見せる北海道の川の風景を見せよう。 ⇒そして、北海道の四季といえば冬。そんなに寒いんなら、川が凍り付くのを見せられるようにしよう。 と、そんなことをデデデデーと発想して計画したのがこの、氷結する川の展示。 こんな水槽ができたら、みんな冬にこそ見に来たくなるだろう。マスコミは毎年取材に来るだろう。 どうだまいったか! まいったか! まいったか!!! 幸いにも、濾過の必要のないきれいな地下水が、バッカバッカと湧く井戸を掘り当てた。 これはね、北海道の淡水魚を展示するのであれば、濾過循環の設備はまったく必要ないということなの。 つまり、どんなに水量の必要な水槽を作っても、コストにはほとんど響かない。 これぞ、「金はない」+「目玉生物はいない」+「寒すぎる」の三重苦の逆境を、たった一つの小さな取り柄「地下水」でもって、他の水族館ではできない進化を遂げた『超進化系展示』『超進化系水族館』なのだ!なのだ!なのだ! さてしかし、ちょっと問題がある。 このあたりはあまりに寒いので、氷はどんどん分厚くなり、水底まで届いたりガラスを割ってしまう可能性があるというではないか。 そこでだ、すごいポンプの登場。 「ハイドロウィザード」なるドイツ製の起流ポンプ。 日本の水族館ではまだどこも使っていない。 このうねりを見よ! (海響館のペンギン水槽にて実演したときの写真) これ一台で、最大1秒間に3.3メートルの流れを作り、しかもそれが優れた整流機能によって5メートル以上もまっすぐ届くという、水の粘性を知っていればウソでしょ!というような超起流ポンプなのだ。 さらに、コンピューター制御で、無段階に強弱を付けられるので、様々な波も作れる。(バカ高い造波装置はもういらない!) この優れもの起流ポンプを使ってですな。 ・氷の張らない春から秋にかけては、このポンプので怒濤の川の流れを演出する。 ・そして、気温が0℃を下回るようになったら、いったんポンプを止めて氷を張らせ始める。 ・氷が張ってきたところで、ガラス面と底面に沿わせて、ポンプで緩い流れを作り出す。 これで、氷の厚さや幅を調節できる!(…はずやと思う) さらに、このポンプはこちらの水槽でも活躍する。 『滝壺水槽』 こちらは、滝なのに半水面ではない水槽。 超水族館ナイトでもお話したことがあるが、日本の淡水魚のコーナーはお客さんが止まってくれないので、半水面にして陸上の景観とりわけ滝を付けるのが流行っている。 しかしカンチョ、最初にプロデュースした某水族館で、水族館最大の滝水槽を企画してちょっとマイッタことに気がついたのだ。 観覧者は、見事な滝に本物みたいだと感心してくれるのだけど、肝心の魚はほとんど見てくれないではないか。 (これ、どこの水族館の滝水槽でも同じ現象が起こってるw) でもね、中村元という奴はけっこう執念深い。 いつか滝の水槽でリベンジを果たしたかったんよw。 そのリベンジが、この滝壺水槽。 滝壺の下から滝を仰ぎ見る展示だ。 この中に、オショロコマとかイワナとかが必死で泳いでいれば、そりゃもうみなさん銀鱗の踊り輝く姿に見とれてくれるだろう。 これもまた、豊富な地下水あっての発想なのだが、いくら水量が豊富だからと言って、さすがにこのパース絵ほどに気泡を含んだ激流をつくれるほどではない。 そこで登場するのが、またまたハイドロウィザードさん。 ポンプを水面近くに置けば、水面から空気を渦のように引き込んで、こんななんちゅうか波動砲発射!みたいな泡の炎を吐くことができるのである。 こういう泡が暴れる水。そこを遡る銀鱗。 これこそ、カンチョの言う『水塊』なのである。 この起流ポンプ「ハイドロウィザード」、発売と同時に欧米の水族館では続々と導入されて、進化系水槽をいくつも実現させているが、日本では販売代理店ができたばかり。 実はカンチョ、このハイドロウィザードを紹介されたとき即座に、「このポンプは水族館の展示に革命を起こす!」と確信し、水族館文化を考える水族館プロデューサーとして国内で普及させなくてはと決意したのだ。 そしてそれと同時に、ビンボーなこの水族館でも秘密兵器として使えることに気付いたのだ。 だって、いろんな効果が生み出せるのに、めちゃくちゃ安いんやもん。 展示を進化させるには、巨額のお金があればいいというものではない。 弱点だらけの苦しい環境を、豊富な井戸水とか、新しいポンプとかいった、ちょこっとしたもので、弱点を強みに変えればいいのだ。 というわけで、超進化系展示をいくつも持った、超進化系水族館。 ほらほら、来年の完成の暁には、きっと見に行く!と思ってきたでしょ? さらに、冬にもいかなくちゃなあ…と思ってきたでしょ? 実は、この他にも、まだまだ秘密兵器がてんこ盛り。 超ビンボー水族館を、いかに超モテモテ水族館にするか、これから10ヵ月ばかり楽しみにしててね〜。 そういや9月と言えば、映画「LIFE=ライフ」が公開されてるのでしたね。 この映画はネイチャーモノとしては最高です。 「ディープブルー」から始まって「皇帝ペンギン」「オーシャンズ」と、どの試写会でも見事にウトウトしてしまったボクが、ウオーと唸って魅入った映画でした。 実は、この映画の試写会の一つで、ボクは上映前のトークというのをやったのですよ。 映画好きな人が、映画の前に水族館プロデューサーくんだりの話しなんか聞いてくれるわけないよなーと思いながらやったのだけど、いやけっこうウケておりました。 生き物たちの凄さ、自然の奥深さを、いかにして見せようかと死力を尽くしているネイチャー映画の制作者に刺激され、ボクも展示の進化を追求する心に再び火をつけられた次第です。 生き物に感動したい人も、水族館の展示を感動の展示へと進化させたい業界の人も、ぜひ映画館に足を運ぶよろしですぞ。 ★トークライブ『中村元の超水族館ナイト』は次回で10回目。2011年10月に開催! |
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