ブログ水族館/中村 元

次回『中村元の超水族館ナイト』は2019年2月24日(日)の開催。前売り発売は1/24です

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こんにちは。久しぶりの告知でないブログ更新です!
今年は、広島に新設のマリホ水族館が6月24日に、サンシャイン水族館の「天空のオアシス第2章」が7月12日にオープンと、水族館プロデューサー史初のダブルオープンとなりました。
今まで手掛けた水族館では、オープン前からブログでチラ見せすることでプロモーションに繋げてたんだけど、2つが同時期に重なったこと、それぞれプロモーションがうまくいったことで取材に追われて余裕もなくなって、今頃になっての発表です。すみません。

さて、まずは広島に新設となったマリホ水族館のことから。
マリホ水族館は、延べ床面積600峩/総水量155tonという小さな水族館。同じ都市型の海遊館と比べると延べ床面積で1/45、水量では1/70というプラモ型かい!という極小さ。まぁ、建設費も25倍の海遊館と比べることがあかんのやけどね。

さらに小さいだけでなく、イルカやアザラシと言った海獣もペンギンもいない。
それどころか、同規模の北の大地の水族館のイトウのようなそこそこ名の通った大物もおらず、北の大地という特殊な地理的特徴もないという、無い無い尽くしな水族館。
でも、正面には大きなクジラのオブジェだけがある(笑)。

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このザトウクジラ、マリーナホップが再生したときのシンボルだったとかなので、今回クジラにもドラえもん色に生まれ変わってもらって、水族館誕生のシンボルになってもらった。

そしてマリホ水族館の展示テーマは『生きている水塊』。
水族館プロデューサー中村元の信念「多くの利用者は水族館に『水塊』を求めてやってくる」……をさらに進化させて、躍動する水中世界を展示のテーマにしようと考えた。
水塊が美しければ、観覧者のみなさんの水中世界を見る時間は格段に長くなり、そこに住む魚や顔のない無脊椎動物のそれぞれの特徴を発見したり、好奇心を持ったりしてもらえる。水族館の果たす社会教育においても必須なのが『水塊』なのだ。

さてしかし、生きている水塊、躍動する水中世界……。そんなもん水族館の水槽で作れるんか?

その最初の答えが、こちら『波の向こうのエントランス』の波の向こうへ水槽。
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シーンは、サンゴ礁のリーフの端。こっから先はどこまでも青い大海原という場所設定にした。
空からは燦々と太陽の光。白いサンゴ砂が輝いている。
外海からリーフに打ち付ける波が複雑に干渉し合って、水中に白い気泡の渦が巻き起こっている。
渦と共にリーフ内入ってくるうねりに、ソフトコーラルたちがたなびきながら育ち、サンゴ礁魚類たちが波に翻弄されながらも活き活きと暮らす。

海も生物も常に動いている、そんな本当の海の世界の景観を水塊にして持ってきた、それが『生きている水塊』。
もちろん世界初の水槽ですぞ! 実験を繰り返し、実地検証を繰り返し、やっと生まれた世界初の展示方法。
左右の擬岩の高さと幅、そして、特殊ポンプ「ハイドロウィザード」の贅沢2本使いがミソ。
さらに、ボクの常用得意技の奥行きのある背景づくりでも、もう一歩進化させたホリゾント効果を開発した。
そして、波の音の効果音と、観覧通路に落とす青い揺らめきの光にもこだわった。

実は今はまだ、ポンプの出力をかなりセーブしてる。
ホントはね、こんなくらいの渦が数秒ごとに現れるようにできるの。↓
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すごいっす!開発した本人が驚くほどの躍動感と迫力ある美しさ。

設備完成から開業までの時間がほとんどない状況で開業したため、水質や生物の体調がなかなか落ち着かず、ソフトコーラルが岩から剥がれて転げていってしまったり、魚の体力を奪ったりするため現在のところはやむなくギリギリの出力で運転中。
でも、これからだんだん豪快な光景、生きている水塊と、活き活きと動き回る生物たちをご覧いただけるようになる。


さて、エントランスから最初のゾーンは、『あふれる瀬戸内の命』のゾーン。
広島なんじゃけえ、瀬戸内海をまず展示せなあかんわいのお。…みたいな。
展示生物にはできる限り、広島の人たちがふだん「美味しい!」といただいている海の命の、生きている姿に会っていただくことを意識した。
『水塊』と共に、水中世界の生物たちに興味を持ち、発見や好奇心を誘発する展示は、ふだんの生活の延長線上にある展示だからだ。とりわけ「食」との関連は、日本人にはとてもポイントの高い興味を起こすきっかけとなる。

もちろん、広島県民(というか山陽のみなさん)おなじみの美味しい海の幸、蛸(マダコ)と穴子(マアナゴ)は常駐。
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そして中でも、このゾーンの「生きている水塊」となる砂地と岩礁の水槽が大人気だ。
ここで水塊を躍動させているのは、小鰯(カタクチイワシ)の群れ。水中感たっぷりの立体的な造形がキラキラと美しい。
さらに、小鰯の群を複雑に躍動させているのが、捕食圧となってる鯛(マダイ)と高級魚あこう(キジハタ)。

カタクチイワシ(小鰯)の群とマダイ
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キジハタ(あこう)は、岩礁の岩穴から出たり入ったり。
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魚の群の変化と、大型魚の動きは、視覚に躍動感をもたらして、水槽を立体的な水塊にしてくれる。
マリホ水族館では、水そのものによる躍動感だけでなく、群れによる躍動感を重視することで「生きている水塊」を感じていただけるように計画した。
まあ、ボクは計画しただけで、それをきっちり実現してくれたのは館長やけど……。

ふだんは美味しくいただいている海の幸=海の命たちの、活き活きと泳いでいる美しい姿を目に焼き付けてもらえると、明日からの食事で命に「いただきます」と感謝する気持ちが必ずや生まれることと信じている。


……と、マリホ水族館の展示紹介の第1部はここまで。
ここで、全国初となるオープンモールでの小規模水族館の計画が、どのように形になったかをご紹介したい。

実はマリホ水族館、ボクの水族館プロデューサー史上で初めてとなる新設水族館だった。
そのため、規模を想定するところから、基本計画、館長探しなど、設計に至までのことまで全部考えて提案しなくちゃならんという超一大事ミッション。

でも、クライアントから与えられたミッションの目的がとてもはっきりしていたのが、迷い無い指針になった。
その目的とは、『再生した商業施設(モール)マリーナホップを、水族館でさらに発展させること』
現在のマリーナホップは、過去に破綻したアウトレットモールを、地元の経済人たちが買い取って再生にこぎ着けた商業施設だ。それをさらに発展させるアイテムとして水族館に白羽の矢が立ち、ボクに依頼が来たというわけ。
そこでまず、個人消費が中心の商業施設にコミュニティー集客の得意な水族館を設置することで、新たなマーケットを獲得するというストーリーをつくった。

そして、水族館は海のイメージに繋がりやすい施設の代表格なのだ。
マリーナホップの目の前には、その名の通りとても立派なマリーナ(広島観音マリーナ)が目の前にあり、その向こうには瀬戸内海の多島美が望めた。
その光景は、ちょっとだけ妄想を膨らませれば「これって、モナコの港と一緒やん!」。さすが妄想力ハンパない水族館プロデューサー。

小さくとも魅力的な水塊のある水族館ができれば、マリーナホップの臨む美しい海と連動して、立地そのものがアーバンリゾート地になる!というのがボクの戦略だった。
広島市民県民にとって「ちょっと海にでもいこか!」と思えば「海ちゅうたらやっぱりマリーナホップじゃの」という場所にできると考えたのだ。
「海ちゅうたらやっぱりマリーナホップじゃの」の核となる水族館であれば、みなさんに末永く愛される水族館となり、マリーナホップ全体のまちづくりによって集客力も永続するだろう。その理念を柱にして、全ての計画を発進させたのだった。

おかげさまで、オープン1ヶ月目には入館者数10万人目を達成。ボクは自信満々な水族館プロデューサーとして常に大口叩きな予想をして、今回は年間50万人を超えるかも……とか言ってたのだけど、その大口をも超えたスタートダッシュに、本人もちょっとオタオタしとるという状況です。



●マリホ水族館のWEB水族館紹介記事はコチラ ⇒マリホ水族館|WEB水族館 全国水族館ガイド

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