ブログ水族館/中村 元

次回『中村元の超水族館ナイト』は2019年2月24日(日)の開催。前売り発売は1/24です

命をいただきます食堂

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8品目 マンボウ
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うっかり忘れるところでした。
志摩のお祝いの席での3品目。それはマンボウ。 
マンボウは、けっこう全国各地で食べられていて、コラーゲンがたっぷりの魚として有名らしい。
だけど、ボクがマンボウをいただいたのはこの時が始めてだった。

この日にいただいた部位は、弾力のある白い身と、大きな肝。
その身の弾力といったらかなりのもので、ちょうど刺身コンニャクの食感。
さらに、それにはほとんど味がなくて、酢味噌でいただくので、ますます刺身コンニャク。
でも不思議なのが、こちらがお魚というのに、コンニャクのあの生臭さがなく、むしろあっさりしていたことだ。
とてもよく冷えていた記憶があるので、もしかしたら、水で晒したり、氷でしめたりしているのかも。

そして感動的だったのが肝。
マンボウはフグの仲間だから、美味いけど毒があっても食えないというフグの肝がいただけるようなものなのね。
それが、ウシのレバーより大きな固まりなのだから、これはちょっとスゴイ。
そしてそのお味は、これがなんとカニ味噌の味なのでした。
いやあ、びっくりしたな〜もう!

さて、食感もお味もびっくりなマンボウなのだが、マンボウそのものも規格外の魚類だ。
それはもう見た目からしてずいぶんヘン。
例えば、あの途中でぶった切れたみたいな姿。実はマンボウには尾ビレがないのだ。
縦長の尾ビレが付いてんやん!と思われるだろうが、尾ビレのように見えるのは、上下に長く突き出た背ビレと尻ビレの後ろの方が変化して、上下から繋がったヒレなのだ。
これを梶ビレという。

他に尾ビレのない魚なんて、ボクにはタツノオトシゴしか思いつかない。
でもタツノオトシゴは、すごい勢いで泳ぐこともないし、尾ビレの代わりにテナガザルの尻尾みたいな尾で、海草やサンゴに巻き付くことを大切にしている。

マンボウのように巨大になって、しかも外洋を泳ぐ魚に、魚類の脚とも言える尾ビレがないって、とても不思議じゃない?
そして、その尾ビレのない体で、この巨体を海面上にジャンプさせるのだから驚きなのだ。
深くて広いマンボウ水槽を持っているアクアワールド大洗では、マンボウが水面上1mもジャンプしているのが何度も観察されている。

とはいうものの、水中ではやっぱりなんだかノロマな風情で、これでどうやってエサを獲るのか心配になる。
そこで主食は、クラゲというわけだ。
なるほど、クラゲはコラーゲン多そうだし、そんなのばかり食ってたらマンボウもコラーゲンたっぷりになるだろう。

でも、最近の研究では、マンボウはふだん水深100〜300mあたりで生活していることが判明したのだそうだ。そこでは、深海性の甲殻類などもエサにしているらしい。
つまり、マンボウをいただくということは、クラゲをいただくことでもあるし、深海の生物をいただくことでもあるのですね。

●photo↑:アクアワールド大洗のマンボウ
日本で一番、おそらく世界でも一番、広くて深いマンボウの水槽。
だから、ジャンプも頻繁に見られるのではないかと思う。マンボウの状態もいい。
たくさんのマンボウがいる写真は、アクアワールド大洗をクリックして、Web水族館にて。

●photo↓マンボウのお顔。マリンピア日本海
マンボウを正面から見ると、言っちゃ悪いが間が抜けた感じ。
たぶんこの口って、閉じないんじゃないかな〜。これでクラゲを吸い込むのだ。
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●photo↓志摩マリンランドのマンボウ。
Web水族館の写真と重なってしまってごめんなさい。
この写真しかなかったのだけど、志摩の宴席でのお話なのに、地元志摩マリンランドの写真がないのもよくないな〜と・・・。
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ところで、マンボウは壁によく激突するので、水槽の中に透明のビニールシートが張られている。
もちろん、ここでもそう。なので、写真撮るのはけっこうタイヘンです。

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さてさて、志摩でのお祝いの席の続き。
ビールのあてに最高の、ウツボの干物に続いて目の前に持ってこられたのが、白っぽいお刺身だった。
これが、志摩の名物中の名物「鮫なます」だ。
サメの身を湯引きして、水にさらして、サメ特有のアンモニア臭を飛ばすのらしい。

しかし、この鮫なますに使われるサメとは、なんと写真のナヌカザメ。
それを聞いたときには、かなりビックリした。
ナヌカザメと言えば、サメの中でもかなり見てくれの悪いサメではないか。なにもわざわざこんなサメをつかって、なますをつくることないやん!と。。。
しかも、ナヌカザメの代わりにネコザメを使うこともあるとか。。。えー!

まあでもね、もし水族館に勤めていなければ、ナヌカザメもネコザメも、どんなサメなのか分からなかっただろうし、それ以前にきっと、「鮫なます?はぁそうですか・・・」と、何を考えることもなくいただいていたのでしょうね。
そんなこと考えると、生き物と接する職業に就いたことに、ちょっとばかり感謝する。
たいていの食材の、生きているときの姿を、リアルに偲ぶことができる人って、そうはたくさんいないでしょ。

ところで、志摩と一口に言っているけれど、鮫なますは、志摩の中でも和具(=わぐ)というまちにだけ伝わってきた料理だ。
和具でのお祝いの席には、欠かせない料理とされている。
黒潮文化圏というのは、岬ひとつ回ると、まったく別の文化があるのが面白い。
おそらく、祖先がその地に流れ着いたのが、それぞれ違う土地からであったり違う時代であったりしたからなのだろう。

●photo上:ナヌカザメ(和歌山県立自然博物館
ナヌカザメは漢字で書くと七日鮫。陸に上げてからも7日間は生きているという意味らしい。
お腹の中に水をいっぱいに溜めるからなんていう説もあるけれど、そうれはどうだか・・・。
しかし、ちょっと湿らせておけば生きているという魚や、腐りにくいという魚は、かつて冷蔵庫も輸送手段もなかった時代においては、とても重要だった。
サメは肉にアンモニアが含まれているので、他の魚よりは腐りにくい。だから、7日間たっても食べられるという意味なのかも・・・。(あくまでも想像の説です)

●photo中:ナヌカザメのお母さんと卵(京都大学白浜水族館
ナヌカザメの卵といえばこれ「人魚の財布」。人魚の財布のこと、以前に書いたように思うのだけどログが見つからなかった。
書いてなかったら、また別の機会に詳しく紹介します。

●photo下:再び、和歌山県立自然博物館のナヌカザメ
海底に住むので、普通はちょっと暗めの水槽にいて恐ろしい感じだけれど、明るいところで見ればなかなか可愛いですね。



6品目ウツボ

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さ〜て、久々の命をいただきます食堂開店。

昨日、広末涼子さんは、ウツボ顔美人と書いて思い出したんだけど、冬のいただきますと言えばそりゃなんと言ってもウツボやんね〜。
ひぇ〜!そんなもん、冬も夏も知らん!とおっしゃる方が多いでしょう。
実はカンチョも、20年ほど前まではそうでした。

水族館で働くことになってから、ウツボがめちゃくちゃ可愛いことは発見したけれど、ウツボが死んだら、めちゃくちゃ臭いことも、よ〜く知っていたから。
いやホント、あれは強烈。たぶん粘液が分解したニオイなのでしょうね。
お亡くなりになったウツボのニオイは匂いではなくまさしく臭い(ニオイ)。

実は、三重県では、志摩地方から南紀にかけての地域で、ウツボ料理を食べる。
そんな南紀の人が、伊勢にウツボ料理を出す店を出したと同僚から聞いたのだけど、もう聞いただけでおぞけてしまって、ぜったいに行くもんかと、そのゲテモノ好きな同僚に誘われないように身構えていた。

ところが、志摩地方でのとあるお祝い、しかもボクが主賓の一人という立場の宴席に招かれたら、なんといきなりウツボ料理が出て来ちゃったのです。
正直、心臓がドクンとしました。背中の毛がザワッとしました。2個の●●がキュッとなりました。
でも、フィリピンの先住民とのおつき合いで、お家に行って出されたものは、それがなんであっても美味しそうに食べるのが礼儀だということは経験あったワケ。
志摩の友人たちは先住民じゃないけれど、なんだかそんな気分になった。ご接待されている立場だしね、これはとても断れないでしょ。
で、ウツボの干物をぶつ切りにして焼いたのを、バリっといったワケです。

おぉ!そしたらその絶妙な歯触り。パリッと感と、歯ごたえと、脂のジューシーさに、びっくり!
さらに、塩味と香りがちょっと強めの、パンチの効いたお味でございます。
とにかく、ぜ〜んぜん臭くないの。いい香りなの! そいで、美味しいの。歯触りも肉質もワイルドなの。
これはね〜、ビールには最高のおつまみですぞ。

いやはや、あのウツボの死んだニオイが、ちょっとしたトラウマのように記憶から消えてくれないにもかかわらず、ウツボが美味しいと感じることができるなんて、思いもよらなかった。
ウツボさんのいかにも粘り強そうな命、しっかりとかみしめてたくさんいただきました。

ところで、その後長いこと、ウツボを食べるのは志摩と南紀だけだと思っていたのだけど、実は土佐では、ウツボは普通にいただいているらしく、いくつものウツボ料理があるのね。
九州でも食べる地域はあるらしいし、東南アジアではわりあい食材になっているみたい。
どうやら、黒潮文化圏では、ウツボはいただきますの対象になっているようです。
魚類には困らないはずの黒潮文化圏で料理になっているということは、食材としてかなり優れていると評価されてるんだろうなあ。

それにしても志摩地方の食材あなどれず。
実は、この時、ウツボの干物に続いて、初めていただくものがまだまだ出た。
続けてまたご紹介しますので、お楽しみに!

●photo上 ウツボの大群(竹島水族館)
ウツボってけっこう仲がいいのですね。こういう細い連中は、穴とかに潜り込むのが好きなために、体が何かにくっついているのが大好き症候群(いやホントは、好触性とかなんか言うのだけど)なんで、お互いにもヌ〜ルヌ〜ルと押しくらまんじゅうしてるんですね。

●photo下 まあまあ可愛いウツボ(新江ノ島水族館)
ウツボ料理に使うのは、このいわゆるウツボたちらしい。確か、漁師さんがウツボのことを「虎」って呼んでたのだけど、トラウツボではなくウツボでした。

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有名なアマエビ(甘エビ)を、図鑑で探しても出てこない。
なぜなら、標準和名において、アマエビというエビは存在せず、その本名はホッコクアカエビだからだ。

ホッコクアカエビは北国の赤いエビの意味で、よく説明の行き届いた種名であるとは言える。
とは思うのだけれど、やっぱり「甘エビ」がぴったりくる。
お刺身にして食べる甲殻類というのは、あんがい少ないのだが、このアマエビだけは、生で食べてこそ、コクがあり、甘さがあり、とろけるような触感がまた素晴らしいのだ。

以前テレビでやっていたのだが、甘さの秘密は、エサを消化するための分解酵素が多いからなのだそうだ。
そして、その理由がなかなか興味深かった。
ホッコクアカエビが住んでいるのは、冷水域のさらに深海(水深200〜500m)。水温が低いのでタンパク質の分解がなかなか進まないから、分解酵素が多いということなのである。
なんかすごく科学的ではないか。
近頃、テレビ局の納豆事件があって、テレビの言うことはなかなか信じられなくなっているけれど、これにはなんとなく納得できる。

北海道でたくさん獲れるのだけど、どうしてだか生息地南限の富山湾のが有名で、最も美味しいなんて言われる。
それは、日本海側の漁法が、生かして捕る方法だからなのだそうだが、おそらくそれにも分解酵素が多いことが関わっているのではないかと思う。
というのも、分解酵素が多いと、死んだとたんに自分の身まで分解してしまうからだ。つまり痛むのが早いということ。(サバも分解酵素が多いために生き腐れと称される)

初めてお頭付きの「甘エビ」なるものをいただいたのは、20代の頃、金沢の旅館でだった。
頭をちぎっては、尻尾を「うまいうまい」といただいている、太平洋側文化のボクたちに、仲居さんがみかねて言った。
ちぎって捨てた頭の中の味噌をチューと吸ってみなさい、と。
ウソでしょ!と思いながらやってみたら、これがなんとも美味しいこと美味しいこと。

しかし、これ、やっぱりさっきまで生きていた新鮮な甘エビだったから美味かったのだ。
その後、太平洋側で同じコトをやっても、美味いどころか生臭いばかりだった。きっとこれも分解酵素のせいだと思う。

もちろん、北信越の水族館取材に訪れたときには、超新鮮な「甘エビ」を毎晩いただいた。
それはそれは甘くて大きかった、しかもお腹に青い卵を抱いていた。
青い色というのは、どうにも食欲をそそらないのだけれど、色とは関係なくこれがまた絶品のお味。

実は卵を抱いている甘エビは、みんな大きい。
生まれてから5,6年の間は全てオスなのだ。それが交尾するとメスに性転換する。
ボクたちからは見えない深海底で、そんな楽しそうなこと、いや不思議なことが行われていたのだ。
分解酵素のことといい、性転換のことといい、深海で生きる生き物は、実に興味深い。

そうそう、食用になっているエビの中で、このホッコクアカエビは最も深海に住むエビなんですって。
つくづく我々は、いろんなところに住んでいらっしゃる命をいただいているものなのですね。

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先日から、手乗りペンギン展示室をオープンして、最初にチリのプンタアレナスのペンギンを紹介してたら、写真撮りながらいろんなことを思い出しました。
なるほど、お土産とは、こうしてその地の記憶を思い出すキーワードなのですね。

チリでは、ホント死ぬかと思った007みたいな思い出がいっぱいあるのだけれど、ペンギンののんびりした顔を眺めていたら、思い出されるのは食べ物が美味しかったことばかり。
※007話は、こちら「旅の手帖」に連載していた1996年の5〜8月のエッセイを読んでいただけばと思う。

チリにはピスコという強い蒸留酒があって、食事の時にはまず、ピスコを卵白とレモンとソーダで割ったピスコサワーをいただく。
そして、今日のオントレは何にしよ〜かな〜?・・・なんてメニューを眺めるのだ。

お気に入りの前菜は生ウニだった。なんと、10個分くらいの生ウニがボールに一杯出てきて1人前。それに半切りのレモンをジャーと搾った贅沢でワイルドな一品。
そんなもったいない、生ウニには醤油とワサビでしょ!と思うだろうが、こんな大量のウニを醤油で食べたらエグくてしょうがない。レモンが一番なのだ。

でも、そんな贅沢生ウニを差し置いて、ボクが特別気になっていたのは、子どもの拳くらいもある巨大なフジツボを茹でた料理だ。名前をピコロコという。
フジツボの富士山の噴火口のところから、これまたでっかい爪が覗いていて、そいつを引っ張り出すと、カニコロッケの中身を小ぶりにしたみたいなのが出てくる。
うげ〜!これってまるでカニみたいやん!
いや、カニみたいなのではなく、フジツボはカニやエビと同じ甲殻類、カニの仲間そのものなのだ。
よって、お味の方もエビカニ系。とても美味しい。

店主に生きているのを見たいと言ったら、市場にいけばいくらでも売ってるというので出かけた。
そしたら、大量のウニやイカ、ホヤなどといっしょに、この巨大フジツボ「ピコロコ」がたくさんいた。
そっとのぞき込むと、生きている奴の爪は、ちょっと毒々しいようなカラフルさで猛々しい。
そして、3cmもあるその爪がニューっと出てきてひっかくそぶりをした。突然、まわりのフジツボまでもが同じように騒ぎ始める。
うわっ!こいつらフジツボのくせに、明らかにオレを攻撃しようとしている。
それ以上近寄ったらこいつでザクッとやってやる!という彼らの意志をありありと感じた。
味が似てるからというよりも、この瞬間、フジツボがカニの仲間なんだと強烈に印象づけられた。

チリを離れてから、ピコロコの名前は、ピスコの名前と共に忘れてしまっていたのだけど、一昨年、葛西臨海水族園のチリ沿岸の水槽で再会した。
魚名板には「ピコロコ」と書かれていた。あぁそうだったそんな名前だった。しかも料理名でもなかったらしい。
ボクは、水槽の中のピコロコに見入ってつぶやいた。「美味かったよな〜おまえ。」
不思議なことに、すっかり忘れていたピスコの名前も思い出していた。
ピスコサワー、久々に呑みたいな〜。ピコロコをいただきながら・・・w。

ところで、フジツボ、日本でも食べられます。
1年前の冬、雪の青森県で、ふらりと入った郷土料理のお店にありました。
ピコロコにはおよばないけれど、西の海ではみかけないほどの大ぶりのフジツボ。ミネフジツボという種類だそうです。
爪もけっこう大きくて、美味しくいただきました。

●photo上:ピコロコ(葛西臨海水族園)
フジツボはカメノテなども含めて、蔓脚目=まんきゃく目。まつげのような脚をだしてエサを捕るのだけど、こいつはこんなでっかい爪も持っている。
チリの市場には、大人の拳に近いくらい大きいのもいました。

●photo下:青森県でいただいたミネフジツボ。
スープがまた、すごく美味しいのですよ。
でも古くかららの郷土料理ではなく、かつては船底や漁具に着くやっかいものだったのを、ある料亭の主人が、カニの仲間だったら食えるかも?と考えて調理したのが始まりだとのこと。
今じゃ養殖もしてるとかw。


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