ブログ水族館/中村 元

次回『中村元の超水族館ナイト』は2019年2月24日(日)の開催。前売り発売は1/24です

いい水族館

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旭川の街は、「旭山動物園がプロジェクトXになる」のポスターにあふれていた。
なんというか、現代の伝説となった感のある旭山動物園である。
多くの展示方法に「行動展示」と称する手法を取り入れているのが、人気の秘密だが、
実は、ブレイクした直接の展示は、アザラシ、ペンギン、ホッキョクグマの水族館手法だ。

こんなこと言うのはなんだけれど、これって、
今まで動物園が、水族館以上に展示に対する努力をしてこなかった、という証明でもある。
さらに、それぞれの展示は、すでに他の水族館で実現されていた展示。つまり、
マスコミも大衆も、今まで水族館や動物園の優れた展示を知らなかった、という証明でもある。

でも、そこで旭山動物園は、最も努力をしていない代表格といえる公立動物園でありながら、
(実際つぶれそうな地方動物園だったのに)大改革を成し遂げたこと。
そして、今までにあった展示方法に、旭山動物園ならではの工夫を取り入れたというところ。
さらになんと言っても、それをやり遂げたのが、園長をはじめとする職員のグループであること。
そんなドラマが、旭山動物園伝説を作り上げたのである。

実は、ボクも努力をしなかった一人であることを痛感している。
十数年も前、ペンギンが海中を飛ぶということに気づきながら(→空飛ぶペンギン)、
それを水槽で見せようと考えなかった。水族館人として、客を無視した怠慢。
こういう反省しなくちゃいけないこと、日本の水族館、動物園にはいっぱいあると思うのですよ。

旭山動物園の成功が刺激となって、日本の動物園、水族館にも新たな努力の波が起きるといいのだけど。
と思っていたら、まるっきり同じ展示方法を真似するという、努力も反省もない現象がすでに・・・。
あぁ、たまらんですな〜。。。

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昨日、鴨川シーワールドに。
ボクはこの水族館すごく好きで、東京に出てきてからすでに3度目の訪問。

実は鴨川シーワールド、開館以来35年間、集客数をずっと年間100万人前後に保っている。
これは、日本の水族館の常識では考えられないことで、ボクはかなり昔からそれをスゴイと思っていた。
その理由は、もちろん鴨川と言えばシャチというほどに大型海獣を前面に押し出したスタイルだが、
それだけではなく、常に新しい展示にチャレンジしている姿勢だ。

今では全国でブレイクしているシロイルカ(ベルーガ)の飼育を始めたのも、
彼らのエコーロケーション能力を紹介する水中パフォーマンスを始めたのも鴨川。
海獣だけではない、近ごろでは当たり前のようなジオラマによる景観再現水槽のはしりもここ鴨川で、
若き日のカンチョは、それを見て刺激され「もっとすごい地球環境を再現するんだ!」と、
あの河童の棲む水槽につながったのだ。

最近では、そのジオラマ水槽もさらにリアルな自然景観展示に改装されたし、
ラグーンのサンゴ砂浜を再現した「トロピカルアイランド」の水槽は、今までにない臨場感だ。

そして、実はもっと大切なのが、チャレンジの精神が展示のハード施設だけではないことである。
昨日は鴨川シーワールドの祖一館長に、久しぶりにお会いしたのだが、
飼育係に実に明確なチャレンジ目標を与えておられるのがよく分かった。

まあ、企業秘密でもあるだろうから、全てをここで明かすのははばかられるが、
見る側として楽しい挑戦の一部を紹介すれば、パフォーマンスの内容を毎年変更してることとか、
難しい生物の飼育展示に挑戦することとか。
その中で、成功すればきっと長期的に大ブレイクするだろうと、ボクが目を付けたのが写真。
トビウオの周年展示!

「水族館でトビウオの飛んでいるところを見せられたらすごい」と何かに書いたことがあるけど、
えらいこっちゃ!昨日すでに、幼魚ではあるけれど、飛んでいるのを見ちゃったのである。
100mも飛ぶ成魚はいったいどうするんだろ?とも思うが、やってみなくては分からない。
追いかけるマグロが入っていなかったら、そんなに飛んだりはしないかもしれないし。
いや、実は、成魚のトビウオもすでに入っていたが、今のところ問題ないそうな。

挑戦する水族館は、挑戦する飼育係だけでは実現できない。
挑戦にはリスクもあるし、経費もかかるし、ビジョンや信念にも沿っていなくてはならない。
だから、それらをプロデュースして挑戦させる館長がいてはじめて実現する。
鴨川シーワールドは、その形がうまく回っている水族館の一つで、
それは、観客を、本当にワクワクドキドキとさせてくれる、いい水族館ということでもある。

photo上:ラグーンの浅瀬にやってきたトビウオ。ラグーンのエメラルドグリーンにこだわっているとか。
photo下:目の前で飛んで見せてくれたトビウオの幼魚。裏で繁殖させ最近展示されたとのこと。

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日本の水族館には、だいたいにおいて常識的な決まりというものがある。
海獣ショーには、プールとステージがあるとか、
どこでも「海は生物のふるさと」と書いてあるとか。w

飼育や展示の仕方も、基本的にはどこもだいたい同じ。
それは、飼育技術を共有しようとする全体的な力が働いていることもあるが、
行政水族館が中心となっていた時代から、「前例」を大切にする傾向にあるからだ。
あるいは、水族館の常識を守ることが、自分の職場を守ることと考えている飼育係も多いから。

ボクが、超水族館をプロデュースしたとき、館内の順路を無くしてしまったら、
そんなバカな水族館はない!と、館長を含む関係者の9割の反対を食った。(でもやったけどw)

アシカの水中姿を見せる、造波装置つきの巨大プールを企画したら、
ショーをしないアシカを見せるのに、そんな立派な水槽は必要ないときた。(でもつくったけどw)
当時は、そんな水槽、どこにもなかったのですね。

そんな風に、それまでに前例のないことをするのは、まあなかなか大変なこと。
超水族館の順路無くした問題は、完成してからも、ことあるごとに順路作れと言われたけれど、
開館後5年も経って、アメリカの館長たちが来て「順路ガナイノガ素晴ラシイデース!」と評され、
それでやっと、順路必要と思っている人たちから認めてもらえた。(なんて日本人らしい反応w)

で、大分マリーンパレス水族館「うみたまご」は、そんな前例や常識を吹き飛ばしている水族館だ。
なんせ名前からして、規格外れ「うみたまご」ときたよ。
みんなが使っている「海は母」ではなく「海は卵」だというのだ。コレいい!
表現が新しいだけでも、すべてが新鮮に映るが、それだけでなく展示も常識破りが多い。

中でも常識破りなのが、海獣パフォーマンス。
ショープールもショーステージもなく、
セイウチやアザラシが、とことこと観客フロアに出てきてパフォーマンスする。
発想は、二見シーパラダイスの方式からなのだそうだが、
世界中の水族館を見て回り、その中から日本の二見シーパラダイスをお手本にしたというのもいい。

ラッコに貝殻拾いやダンクシュートを覚えさせたのも、この水族館が初めてである。
それを始めたのが現館長の田中館長。田中館長には、面白い話しを伺った。
この水族館では、動物に無理をさせないけれど、過度に神経を使うこともしないのだそうだ。
合図なども使わず、言葉でコミュニケーションをとれるようにしているという。スゴイ!
セイウチは50種類の言葉を聞き分けているとか!
ラッコは客が多いときの方が、興奮してパフォーマンスに張り切るとのこと。

ただし、彼らがやりたがらなかったら、それはそれでしょうがない。無理強いはしない。
「だからショーとしてはキレはないですよ、うちは・・・」とは、田中館長の弁。
それでも、観客は十分に楽しい。
なぜなら、海獣たちとヒトの距離がまったくなく、
それでも彼らは、大勢の観客を嫌がることもなく、安心した顔でパフォーマンスしているから。
いや、中には、途中で帰ってしまうアザラシもいたけれど、それが「うみたまご」らしさ。
だいたい、その「気が乗らねー」と帰っていく様子が笑いをとっていた。

この水族館では、飼育係の担当動物も、次々に変わっていくのだそうだ。
それが前例にとらわれない、飼育や展示方法を生んでいる大きな秘訣なのだろう。
一つの動物1本に人生をかける飼育係がいると、動物にとってもその飼育係がヒトの全てである。
そして、観客にとっても、その飼育係が展示の全てとなりがちになる。

うみたまごの、人気の秘密は、今までの水族館の前例にとらわれない姿にある。
水族館の常識を破って、動物たちの新たな姿を見せてくれるうみたまご、
これからも、ちょっと目が離せない。

※写真は、なんと観客席のうしろから、どどどどどっとやってきたゴマフアザラシたち。
 トレーナーの後ろについて、ただやってきただけだが、すごく感激!

いい水族館【5】で、閉じていない水族館の一番に上げた、「展示が進化している水族館」
ようするに、行くたび見るたびに、水槽が進化している水族館なのだが、
本来こんなこと当たり前なのですね。
なぜなら、世の中にあふれているすべてのロングセラー商品は、必ず進化をしているから。

小ささがウリの商品は、より小さく薄く軽く、しかも品質はよりよいものへと。
美しさがウリの商品は、時代に合わせて常にセンス良く、しかもより使いよいものへと。
そうしなければ、他の競合商品との競争に勝てないし、飽きられてしまうにきまっているから。

でも、水族館では、あまりそんなことを気にしない風潮が強い。
まあねー、今までは水族館は地域での独占企業でもあったから。
でも、今は遠く離れた水族館でも、比べられてしまう時代だから、それはちょっとまずいでしょう。

じゃあ、水族館の進化を可能にする条件は?といえば、これがたった一つだけなのだ。
それは、展示(水槽)に満足しない飼育係がいるかどうか。

展示や水槽の進化は、それを管理する人によってのみなされる。
いくら進化させることを前提で水槽の設計製作をしたとしても、進化させる人がいなければダメ。
いくら例えば館長が進化させろ!と言っても、飼育係がすっかり満足してしまっていたら、
進化は限りなく遅くなる。

これは、生物の進化とまったく同じだ。
この暮らしが満足。と思った時点で、生きている化石への道が始まる。
もっとたくさん餌を食べたい、もっと子孫を残したい、あるいは、死に絶えたくない!
そんなふうに、今の状況に満足していない生物だけが、進化をするのだ。

だから、展示を進化させたければ、そのまず一歩は、
展示に満足していない飼育係をトップに据えるだけでいい。
ただまあ、どんな風に進化するかは、その飼育係のセンスによるから、
例えばアンモナイトのように、あまりに進化しすぎて巨大化したり巻きを変化させすぎて、
結局、生き残れなかったということになるかもしれないのだけど。。。

でも、どんなに展示センスがよくても、展示に満足をしていたらそこまでのこと。
それはもう、進化しないのと同じなのだから、いい水族館への一つの扉は閉ざされることになる。

さてさて、明日から九州入り、ついに今年の新たな取材が始まる。
1年経った水族館が、どんな進化をしているのか、ちょっと楽しみである。

三重県の伊勢人という雑誌に、「この人に会いたい」という連載がある。
何を隠そう、ボクが三重県出身の著名人と対談をするという、カンチョ連載なのだ。
そして、先日対談をしたのが、株式会社ポケモン社長の石原恒和さん。
(ボクと同世代だけど、伊勢志摩出身者としては、御木本幸吉以来の世界的人物だと目している)

ゲームプロデューサーとして石原さんが大切にしているのが「閉じていない」こと。
例えばポケモンは、通信で友だちのゲーム機とつながっているから、閉じていない。
プレイヤーが自分の世界を勝手に作っていけるから、閉じていない。
ビジネスとしても、次々と映画やアニメにフィールドを広げ、カードにまでなるのが、閉じていない。
というようなことで、その「閉じていないゲーム」ポケモンの世界は、世界中の子どもをとりこにし、
今や世界で3兆円市場を築いたとか。うへー!

じゃあいったい、閉じていない水族館とは、どんな水族館なのだろう。
そいつが実現できれば、もしかしたら3兆円市場の水族館も可能か・・・?
と、ゲームプロデューサーの巨星に刺激された水族館プロデューサーは、浅ましくも考えたのである。

例えば
展示の方法が進化して、訪れるたびに水槽が変化している水族館。 閉じてない!
テレビや出版物など、さまざまなメディアを使って、展示の場所を広げている水族館。 閉じてない!
動物や展示に物語があって、それがいつまでも終わりなく続く水族館。 これは閉じてない!
さらに、動物のキャラクターが一人歩きする水族館。 うん閉じてない。
情報を発信するだけでなく、情報が入ってくるしかけのある水族館。 閉じてない!これいいね。
客が水族館を媒体として、他の客と交流をもてるような水族館。 閉じてない!

ふむふむ、こうしてみると、カンチョけっこう「閉じてない」系のことに取り組んでいるではないか。
まあそこそこ成功もしてきたとも思っている。
ところがなのに、ポケモンのような結果を残せないのはなぜなんだろう。

おそらく、一度もまだ、それらのことを、展示以上に大切にしたことがないからなのですね。
水族館の展示の基本はこうあるべきもの!という既成概念を、どこかで壊すことができなくて、
閉じていない方向へ、ちょっとずつ、おそるおそる向かっているという、
中途半端な取り組みでやっているせいなのでしょう。
いや、ボクはおそらくかなり既成概念を覆す性格なのだけど、それでも壊すことはできないのですね。

石原さんは「閉じてないためには改革が必要で、それはある意味まず壊すこと」と明言していた。
う〜ん、ボクもいつか壊せるプロデューサーになりたいものである。

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kapaguy
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