|
読売新聞2019年5月6日(月)
俳壇
正木ゆう子 選
朧月昭和を語る歳となり (深谷市) 三上 通而
・31年まで続いた平成も終わり、その前の昭和はさらに遠くに離れていきます。作者は、それだけの歳月を生きてきた感慨を朧月の下でかみしめています。
小澤實 選
ぼんぼりに令和としるす花月夜 (神戸市) 山上 陽太郎
・花月夜の美しさに令和となっためでたさが加わりました。
歌壇
岡野弘彦 選
信濃路は春いまだ浅し雪残るかの嶺 に月はかたぶく
(町田市) 小堀 正伸
・山に囲まれた信濃路の春の月。こういう歌を読むとなぜか安心します。
短歌あれこれ 木村雅子(歌人) 自分の眼で見て感じて
雨風に猫背となりたる大仏か金箔 すつかり星に吸はれて
春日 いづみ
鎌倉の大仏を詠んだ近年の歌。鎌倉の大仏は露座の大仏。もともとは大仏殿の中にいらしたが、台風や大津波のためお堂は失われた。十メートルを超える露座大仏の様子を、上句がよく表す。また金箔も剥げているのだが、「星に吸はれて」と発想するところがすてきだ。鎌倉に生まれ育った私には新鮮な歌であった。・・・
毎日新聞2019年5月6日(月)
詩歌の森へ 『塩の行進』に思う 酒井 佐忠
春日いづみ歌集『塩の行進』(現代短歌社)が今年の日本歌人クラブ賞に決まった。
ひとすぢに海に生れたる月の道一本しかないわたくしの道
この歌が巻末のページに一首だけ置かれている。一本の月の道は歌人としての道だけではなく、一人の人間としての生き方の覚悟を示しているものと思いたい。・・・
春日は日本聖書協会による聖書翻訳の日本語担当の仕事をし、昨年末一冊にまとまったばかり。
朝日新聞2019年5月5日(日)
俳壇
高山れおな 選
春夜空ブラックホールより便り (東京都) 三笠 比呂史
・選者評:ニュースの素直な感想。それが自ずとブラックユーモアめいた、しかしどこか甘美な句に。
・ブラックホールの俳句は(短歌を含めても)初めて見るように思います。凄いと思いますが、甘美でしょうかね。
萌え初めし林にレモンのごとき月 (稲城市) 坂田 篤義
・「レモンのごとき月」とは上弦の半月を過ぎて太りつつある頃と考えれば、月齢11の4月16日前後かと。
短歌
永田和宏 選
わたくしが先に死すともかまはない猫飼ひました電池で鳴く猫
(仙台市) 坂本 捷子
・生き物を飼うときは最後まで責任をもつ覚悟が必要ですが、電池で動くのであればその点は大丈夫ではありますが。
|