宇宙とブラックホールのQ&A

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・星の重元素が語る天の川銀河の合体史
アストロアーツ5月8日付記事、元はすばるです。
http://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/10611_milkyway

概要>重元素を多量に含む年老いた星が天の川銀河内で初めて発見された。この星の起源は、かつて天の川銀河と合体し、現在では天の川銀河の一部となっている矮小銀河だと考えられる。

銀河系のような大きな銀河は、小さな銀河(矮小銀河)をいくつも吸収・合併して大きくなってきたものと考えられます。
今回の研究は、その経過を示すものです。

>天の川銀河の円盤構造の周りは、恒星がまばらに存在するハローと呼ばれる構造で取り囲まれている。ハロー内の恒星は、ガスが天の川銀河に集まる過程で誕生してきたものと、恒星の小さな集団である矮小銀河で生まれた後に天の川銀河に取り込まれたものとの2種類が考えられており、このプロセスは暗黒物質の存在を仮定した銀河形成の計算機シミュレーションで予測されている。

銀河系のような渦巻銀河は、いくつかの渦状腕を含む円盤部(disc)、その中央の膨らみであるバルジ(bulge)、円盤部を球状に取り巻くハロー(halo)から構成されます。
今回発見された恒星は、ハローに属するのですね。
なお、ハローは、もともとは聖像などの背後の円光、光輪、後光を意味します。

ハロー内の恒星には次の2種類があるというのは初めて知りました。
a.ガスが天の川銀河に集まる過程で誕生してきたもの
b.恒星の小さな集団である矮小銀河で生まれた後に天の川銀河に取り込まれたもの

ここで、アストロアーツ掲載の上の動画をご覧ください。
渦巻銀河形成のシミュレーションを描いています。
矮小銀河の衝突合体が渦巻銀河の姿の維持に果たしている役割は大きいのだと思います。

>天の川銀河に取り込まれた矮小銀河はすでにその形を崩してしまっているため、矮小銀河に由来する恒星はばらばらに存在しているが、恒星の軌道運動や化学組成(元素組成)は取り込まれる前の状態をとどめていると考えられている。矮小銀河では恒星の誕生が比較的ゆっくり進むと考えられ、このことは恒星の元素組成に影響する。観測からも、天の川銀河の周囲に見られる矮小銀河の恒星では、天の川銀河の多くの恒星と異なる元素組成比の特徴があることが知られている。こうした情報を元にして、銀河形成のプロセスを裏付けようとする研究が近年活発となってきている。

恒星の軌道運動や化学組成(元素組成)を調べることにより、恒星の起源となった矮小銀河のことが分かるのですね。
人間のDNA鑑定のようなものでしょうか(^_^

>中国国家天文台のQian-Fan Xing(邢千帆)さんたちの研究チームは、中国の分光探査望遠鏡「LAMOST」による探査で観測された恒星から金属元素量の比較的少ない恒星を選び出し、すばる望遠鏡に搭載された高分散分光器(HDS)を用いて詳しい観測を行ってきた。そして、そのなかの一天体である、おおぐま座の恒星「J1124+4535」が際立った特徴を持つことを突き止めた。

中国の分光探査望遠鏡「LAMOST」については、SciencePortalChinaによると次の通りです。
https://spc.jst.go.jp/hottopics/1211/r1211_tsujino.html
>>中国は1993年以来、多数の恒星や銀河のスペクトルを効率よく観測できるユニークな全天観測用大型光学望遠鏡の開発を国家プロジェクトとして実施してきた。中国語では「大天区面積 多目標 光繊 光譜 天文望遠鏡」と表記され、英語名(Large Sky Area Multi-Object Fiber Spectroscopic Telescope)の頭文字をとって「LAMOST」と称されている。また2009年の完成後は、中世の天文学者の名前にちなんで「郭守敬(Guo Shoujing)望遠鏡」とも呼ばれている。
>>LAMOSTの光学的な口径は約4m相当で、我が国の「すばる」(口径8.3m)や米国の大双眼望遠鏡(口径11.9m)には及ばないが、全天観測の視野角が5度と世界最大であり、1回の観測で4000個の恒星のスペクトルを同時に取得できる。一夜で最大5回観測でき、観測効率が世界最高であることがこの望遠鏡の最大の特徴である。全天サーベイを効率よく行うことができる天文台として注目に値する。

郭守敬(かく・しゅけい、1231〜1316年)は、元朝に仕えた天文学者、歴学者で、授時暦の作成で知られています。

>観測からは、この恒星のマグネシウムに対する鉄の比が低いこと、鉄より重い元素が相対的に多いことが示された。また、これらの重い元素は、連星中性子星の合体由来のような爆発的元素合成によって形成されることもわかった。J1124+4535の鉄組成は太陽の約20分の1、マグネシウム組成は約40分の1であるのに対し、重い元素を代表する元素ユーロピウムは太陽組成に匹敵している。

ユーロピウム(europium)は原子番号63の元素で、元素記号はEu、希土類元素、ランタノイド元素に属します。
名称は「ヨーロッパ」に因んでいます。

ここで、アストロアーツ掲載の下の画像をご覧ください。
マグネシウム/鉄の存在比、ユーロピウム/鉄の存在比、ユーロピウム/マグネシウムの存在比を表す3つの散布図です。
横軸はいずれも金属量(鉄組成)で、両対数グラフです。

>このような極端な組成を持つ恒星が見つかったのは、天の川銀河では初めてのことだ。一方、これと極めてよく似た組成を持つ恒星は、天の川銀河をとりまく矮小銀河のなかに数例見つかっている。今回の結果は、J1124+4535が矮小銀河の中で誕生し、それが銀河形成の過程で天の川銀河に取り込まれてきたことを明瞭に示すものであり、元素組成によるはっきりした証拠が個別の恒星に対して初めて得られたものとなる。
>J1124+4535は、現在生き残っている矮小銀河の星のなかでも、金属元素量の比較的多い恒星とよく似ている。これは、矮小銀河がある程度時間をかけて進化した後に、天の川銀河に合体したことを示唆している。天の川銀河のハロー構造の形成過程では、矮小銀河の衝突・合体がある程度の期間継続していたことを意味するデータであり、現在想定されている銀河形成のシナリオを裏付けている。

銀河考古学の成果です。


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