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アストロアーツ5月14日付記事、元は海洋研究開発機構と神戸大です。
http://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/10625_moon
海洋研究開発機構は、理化学研究所やJAXA(宇宙航空研究開発機構)などと同じ国立研究開発法人の一つ。
英訳はJapan Agency for Marine-Earth Science and Technology、略称はJAMSTECです。
天文学の研究で海洋研究開発機構の名前が出てくるのは不思議に感じられますが、後で理由が分かります。
概要>月の形成理論の一つ「ジャイアントインパクト説」の数値シミュレーションにより、月が原始地球のマグマオーシャンから作られた可能性が示された。
「可能性が示された」というと、わずかな可能性かもしれないという印象を受けますがそうではなく、まだ有力とまではいかないけれどきちんと検討するだけの根拠はあるというレベルの主張です。
>私たちにとって最も身近な天体の一つである月が、太陽系の歴史の中でいつごろどのように地球の衛星となったのかは、はっきりとはわかっていない。偶然地球の近くを通りかかったときに地球にとらえられた、地球とほぼ同時に形成されたといった説があるなか、最も有力と考えられているのが「ジャイアントインパクト(巨大衝突)説」だ。この説によると、46億年ほど前の地球に火星サイズの天体が衝突して岩石が蒸発し、地球の周りにばら撒かれた。その岩石の蒸気が円盤状に原始地球を取り巻き、それらが重力によって集まり、月になったとされている。
ジャイアントインパクト説の前に検討されていたのは、次の3つの説です。
・兄弟説:月は、地球と同時に形成された。
・親子説:月は、地球から分離した。
・他人説:月はもともと地球とは別々に形成された天体で、後から地球の重力に捕らわれて衛星となった。
しかし、いずれも難点があって、ジャイアントインパクト説にとって代わられたわけです。
>ジャイアントインパクト説は地球と月の様々な特徴を説明できるが、説明できない観測結果も報告されている。この説によると、月の材料は地球ではなく、ぶつかってきた側の天体とされているが、アポロ計画で月から持ち帰られた岩石中の元素の同位体比が地球のものとほぼ一致したのだ。つまり、月を構成する岩石がもともと地球のものだったということを示している。
月を構成する岩石が地球と一緒ならば、いったんは否定された親子説が正しいのではないか、と考えたくもなりますね。
>海洋研究開発機構(JAMSTEC)の細野七月さんの研究チームは、理論と観測の矛盾を解決する要素として、地球の「マグマオーシャン」を提案した。マグマオーシャンとは、大昔の地球の表面を覆っていたとされるマグマの海のことである。液体の岩石は、固体の岩石と性質が大きく異なるため、これまでのシミュレーションとは違った結果が予想される。
マグマは、岩石が高温のために溶けて液体となっている状態です。
オーシャンは単なる海ではなく大洋ですから、マグマオーシャンは地球表面の岩石全体が溶けている状況です。
>細野さんたちは理化学研究所のスーパーコンピューター「京」を用いて大規模な数値シミュレーションを行い、巨大衝突の直後に形成される月の材料となる円盤において、原始地球由来の物質がどの程度の割合になるか、またその割合がマグマオーシャンの有無によりどの程度変わるかを調べた。
ここで、アストロアーツ掲載の上の動画をご覧ください。
「数値シミュレーションの結果を可視化した」ものとのことですが、結局全部地球に飲み込まれるように見えるのですが、私の見方が悪いのですかね。
>その結果、マグマオーシャンが衝突時の地球に存在していれば、そのマグマオーシャンが円盤の形成に大きく寄与していることが示された。衝突後、地球のマグマオーシャンからマグマが噴出して、原始地球由来の物質の割合が多い円盤構造を形成する。この円盤から月が形成されるので、月には原始地球由来の物質が多くなる。
ここでアストロアーツ掲載の真ん中の画像をご覧ください。
「月の材料になる物質の質量とその起源の時間進化」を表したグラフということです。
40時間を過ぎるところまで円盤質量の減少が続きますが、減少分は地球に落下したのか宇宙空間に飛んで行ったのかのいずれかでしょう。
当初は衝突した天体由来の成分の方が多いのに、40時間を過ぎたところで急にそちらの方が円盤から離れて、原始地球のマグマオーシャン由来の成分が残るということですね。
その理由がよく分からないのですが、最初の動画を何度か見直せば理解できるのでしょうか。
>さらに、天体が地球に衝突する際の角度と速度を様々に変化させたシミュレーションの結果から、マグマオーシャンが存在していれば、円盤中における原始地球由来の物質の割合が約7割以上にもなることも示された。
ここで、アストロアーツ掲載の下の画像をご覧ください。
衝突角度と衝突速度を変えたさまざまなシミュレーションの比較グラフです。
横軸が円盤質量、縦軸が原始地球からの物質の割合を表し、赤い点がマグマオーシャンの存在する場合、青は存在しない場合で、赤が青の上に位置しています。
>これらの結果は、原始地球に巨大衝突が起こった際、原始地球にマグマオーシャンが存在していれば、地球と月の同位体比問題の解決が可能であることを示唆するものである。
>ジャイアントインパクト説は、現在の地球と月を考える上で極めて重要な仮説であり、それを元に地球のその後の熱進化などが考えられてきた。今回の計算結果は、これまで考えられてきた初期地球とは異なる結果をもたらすことから、現在の地球がどのように形成されたかを知る上で大きな手がかりとなると考えられる。また、巨大衝突は原始地球だけでなく太陽系内の他の惑星でも起こったと考えられているため、惑星の多様性を説明する上でも、今回の研究成果が示唆を与えると期待されている。
たとえば、水星は地球型岩石惑星の中では金属核が相対的に大きいのですが、これも巨大衝突によって岩石あるいはマントルに相当する部分が吹き飛ばされたためとする説が有力です。
今回のシミュレーションと同様の研究が他の惑星についても行われれば、各惑星の成立ちの解明につながるものと期待されます。
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