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・月は現在も冷えて縮み続けている
アストロアーツ5月20日付記事、元はNASAジェット推進研究所(JPL)です。
http://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/10633_moon
概要>アポロ計画で得られた月の地震のデータや「ルナー・リコナサンス・オービター」の画像から、月が現在も収縮を続け、表面で断層活動を引き起こしているという証拠が相次いで見つかった。
>月には火山やプレート運動などは存在せず、地質学的には死んだ天体のように見える。しかし、アポロ計画で設置された地震計のデータから、月でも地震(月震)が発生していることが知られている。また、月面には断層地形が数多く存在していて、これらは月の内部が冷えることで月全体が収縮したために生じたものだと考えられている。
>こうした月の冷却と収縮が現在も続いていることを示す、新たな研究成果が相次いで発表された。
というわけで、今回は月面地形に関する2つの研究を同時に紹介しています。
>・現在も断層で月震が発生している
>月が冷えて収縮すると、地殻の一部が他の部分の上に乗り上げる「衝上断層」と呼ばれる地形が現れることがある。こうした断層はしばしば、高さ数十km、幅数kmにわたる階段状の断層崖を形成する。
衝上断層(しょうじょうだんそう、thrust fault)とは、上位の地層が下位の地層に対して緩い角度でずり上がった断層で、底角逆断層ともいいます。
>米・スミソニアン協会地球惑星研究センターのThomas Wattersさんたちの研究チームは、アポロ12号から16号までのミッションで月面に設置された4台の地震計のデータを新たな手法で解析し、月震の震源をこれまでよりも正確に求めた。この4台の地震計は1969年から1977年までの間に、震源の浅い月震を計28回観測しており、その規模はマグニチュード2から5の範囲にわたっている。Wattersさんたちはこれらの月震の震源位置を、月探査機「ルナー・リコナサンス・オービター(LRO)」でこれまでに発見されている3500か所以上の断層崖の位置と比較した。
ルナー・リコナサンス・オービターは、2009年6月にNASAが打ち上げた月周回衛星です。
英語名はLunar Reconnaissance Orbiterで、頭文字をとるとLROになります。
ただ、日本語ではルナー・リコ「ネ」サンス・オービターと表記するのが普通です。
Lunarは「月の」、reconnaissanceは「調査」、orbiterは「周回衛星」という意味です。
ここで、アストロアーツ掲載の上の画像をご覧ください。
「LROで撮影された断層崖の例」です。
画面上下方向に断層が走っており、左側が崖の上なので高く、右側が崖の下なので低くなっています。
>その結果、28回の浅発地震のうち8回は、LROの画像に写っている断層から30km以内の位置で発生していることが明らかになった。これは、浅発月震が断層と関係していることをうかがわせる強い証拠だ。
>「月が現在も徐々に冷えて縮み続けているために、こうした断層が現在も活動していて月震を引き起こしているという証拠が初めて得られました」(Wattersさん)。
内部が冷えて縮むと、すでに固まっている表面は同じように縮むことができないために断層が生じるのですね。
>さらに、この8回の地震のうち6回は月が遠地点(地球から最も遠い点)付近にある時期に発生していた。遠地点では月が地球から受ける潮汐力に由来する応力が最も強くなるため、断層が動く現象が起こりやすいと考えられる。
遠地点で月が地球から受ける潮汐力が最も強くなるのなら、楕円軌道の正反対の位置である近地点(地球から最も近い点)でも同じくらい強くなりそうに思うのですが、違うようですね。
それと、地球の潮汐を考えると、位置関係が太陽−地球−月の順となる満月のときと太陽−月−地球の順となる新月のときに大潮になるので、作用反作用の法則により月でも同じときに潮汐力が最も強くなりそうなものですが、満月・新月と月の遠地点・近地点は必ずしも一致しません。
基本的なところの理解が欠けているのかな?
>月の断層が現在も活動しているという証拠は他にもある。LROが撮影した画像には、断層崖の斜面やその近くに比較的明るい色の領域があり、そこに地すべりや岩塊が写っている例がみられる。月面の物質は太陽風や宇宙線によって風化を受け、次第に暗い色になっていくため、明るい色の領域は最近新たに表面に露出した場所であることを示している。ごく最近に月震が起こって表面の物質が地すべりを起こしたとすれば、こうした地形ができるはずだ。
月面などの物質が太陽風や宇宙線によって風化することを宇宙風化といいますが、雨風の影響が大きい地球上の風化とはだいぶ異なります。
特に、明るい色から暗い色に変化していく点が特徴です。
>また、断層崖の近くで岩塊が転がり落ちた跡もしばしば撮影されている。これも断層で発生した月震によって岩が谷底へ転がったものと考えられる。月面にはたくさんの微小隕石が衝突し続けているので、こうした転石の跡は地質学的な時間スケールで見ると比較的短期間で消えてしまうはずだ。にもかかわらずこうした地形が残っていることは、断層で現在も月震が起こっている証拠となる。
>「50年近く前のアポロ計画のデータとLROのデータとを組み合わせることで月についての理解が深まり、月内部の研究が将来進むべき方向が示されるのを目の当たりにできるのは本当に素晴らしいことです」(LROプロジェクトサイエンティスト John Kellerさん)。
「50年近く前のアポロ計画のデータ」が役立ったというのは意外でした。
科学というものはさまざまな努力の積み重ねで進歩していくのだと改めて感じます。
>・若いリンクルリッジを月の海で発見
>衝上断層による断層崖と同じく、月が冷えて収縮することで生じる地形として、「リンクルリッジ」と呼ばれる曲がりくねった尾根と浅い地溝からなる地形がある。リンクルリッジは長いものでは400kmに及び、高さは300mを超える。リンクルリッジはこれまで月の高地でしか発見されておらず、海には存在しないと考えられてきた。
リンクルリッジはwrinkle ridgeで、wrinkleはしわ、ひだ、ridgeは山の背、尾根のことです。
長さ400km、高さ300mというのは相当大きな地形ですね。
>NASAジェット推進研究所のNathan Williamsさんたちの研究チームは、月の北極付近にある「氷の海」と呼ばれる領域に着目し、この地域をLROが撮影した1万2000枚以上の画像を詳細に調べた。その結果、リンクルリッジのような地殻変動に由来する地形が、氷の海に数千か所も存在することを発見した。この数は月の高地に地殻変動地形が存在する割合とほぼ同じだ。
ここで、アストロアーツの下の画像をご覧ください。
「LROの画像から「氷の海」で新たに発見されたリンクルリッジの例」です。
右上方向から光が当たっています。
>こうした地形の年代はクレーターを利用することで推定できる。Wattersさんたちのチームが転石の痕跡の年代推定で使ったのと同じ手法だ。
>月面には絶えず微小な隕石が衝突しているため、衝突で飛散した物質が周囲に降り積もる「インパクト・ガーデニング」という過程によって次第に地形が変わっていく。クレーターなどの凹地が時代とともに飛散物質によって埋められていくのだ。サッカー場くらいのサイズのクレーター、典型的には10億年程度で埋まる。
>Williamsさんたちの研究チームはLROの画像から、まだ埋まっていない小さなクレーターを横切るようにしてリンクルリッジができている例を見つけた。このことから、「氷の海」に見られるリッジは10億年前よりも新しい時代に作られ、中には4000万年前より新しいものもあると推定される。これは地質学的には比較的新しい地形といえる。これまでの研究では、月の海は数十億年前に形成され、12億年前には冷却に伴う収縮は止まったと考えられてきた。
>「月の内部では現在も地震が起こっています。数十億年にわたって熱を失い続けることで、収縮し、より高密度になるという変形が続いているのです」(Williamsさん)。
地球のようにマントルの対流でプレートテクトニクスが起るわけではありませんが、単純な冷却による収縮でも天体の表面を40数億年経った現在も変化させ続けているというのは、興味深い発見だと思います。
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