|
アストロアーツ5月28日付記事、元は北海道大学です。
http://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/10640_pluto
概要>冥王星の内部海が凍結しない理由として、地下にメタンハイドレートが存在していれば説明可能であることが数値シミュレーションで示された。巨大な盆地や窒素の大気の存在も説明できるという。
地球上でも新たなエネルギー資源として注目されているメタンハイドレートですが、これは太陽系の最果てを回っている冥王星での話題です。
ちなみに、英語の綴りはmethane hydrateです。
>木星の衛星エウロパや土星の衛星エンケラドスなど、氷を主成分とする氷衛星のいくつかには地下に厚い氷があり、その下に「内部海」と呼ばれる凍らない海を持つことが、惑星探査機やハッブル宇宙望遠鏡の観測などから明らかになっている。
この氷というのは、水H2Oの氷のことです。(地上では当たり前だけど、宇宙では当たり前のことではありません。)
水H2Oは常圧下では 0℃≒273Kで凍り、この温度つまり水の融点(氷点という)は圧力が相当低下してもほとんど変わりません。
ちなみに、水の三重点の圧力は 0.006 気圧で、同じ温度でこれより圧力が低くなると気体の水蒸気になり、同じ圧力でより温度が低くなると氷になります。
宇宙空間では、液体の水は存在しないのです。
内部海が凍らない理由としては、素直に考えると熱源の存在を思い付きますが、巨大衛星のエウロパでは木星重力による潮汐熱が考えられるけど、エンケラドスは小さいのでどうなんでしょうね。
なお、予告しておくと、今回の冥王星に関する研究で発見されたのは、熱源ではなく「断熱材」の方です。
>巨大ガス惑星の衛星だけでなく、地表温度がマイナス220℃と極寒の氷天体である冥王星にも内部海が存在していることが、NASAの探査機「ニューホライズンズ」の観測データから示されている。冥王星の、ハート型模様に見える地域の左半分は、窒素の氷河で覆われた白い巨大な盆地となっているが、この盆地が赤道付近に存在するという事実は、盆地の地下の氷が薄く内部海が厚いことを示している。もし厚い内部海が存在していなければ、この盆地が極に向かうように冥王星が回転してしまうはずだ。
マイナス220℃は、絶対温度では53Kです。
まさに「極寒の氷天体」ですが、そんな天体に「内部海が存在している」ことは驚き以外の何物でもありません。
冥王星のハート形模様は太陽系名所?の一つとして有名ですが、その左半分が巨大な盆地となっているというのは初めて知りました。
組成が一様で比較的球に近い天体であれば、自転に対して安定的になるためには、出っ張った部分は赤道付近に、くぼんだ部分は極付近に位置するようになるはずです。
それなのに巨大盆地が赤道付近にあってなぜ不安定にならないのかというと、氷よりも液体の水の密度の方が高いからだと思います。
ちなみに、普通の物質であれば固体の方が液体よりも密度が高いので、水はその意味でかなり特異な物質といえます。
>氷衛星よりも冷たく熱源にも乏しい冥王星の内部海がなぜ凍結していないのかという謎について、北海道大学の鎌田俊一さんたちの研究グループは、主にメタンを閉じ込めたガスハイドレートが内部海と氷地殻の間に存在するという新たなアイディアを提唱し、数値シミュレーションを行った。
冥王星の内部海が凍結していないという謎を解明するために、新たなアイディアでシミュレーションを行ったのですね。
>ガスハイドレートとは、水分子でできた「かご」の中に気体分子を閉じ込めた氷のような物質だ。とくに、メタンを閉じ込めたメタンハイドレートは地球の海底にもあり、天然資源として近年注目されている物質でもある。鎌田さんたちはメタンハイドレートが通常の氷と比べて、熱伝導性が悪く高い粘性をもつことに着目した。
メタンハイドレートはいわば「燃える氷」で、人工的につくったものは白いということですが、地球上に自然に存在しているものは土のような外見だそうです。
「熱伝導性が悪く高い粘性をもつ」ということは、天然の断熱材ですね。
ここで、アストロアーツ掲載の真ん中の画像をご覧ください。
「今回のシミュレーションで用いた冥王星の内部構造のモデル」です。
巨大盆地の下では氷の地殻が薄く、その分、内部海が厚くなっていることが分かります。
>まず、太陽系が形成されてから現在までの約46億年間に及ぶ冥王星内部の熱・構造進化シミュレーションを行ったところ、メタンハイドレートが存在しない場合は何億年も前に内部海は完全に凍結するが、メタンハイドレードが存在する場合には断熱材として機能し、表面は極寒でも内部海はほとんど凍結しないことがわかった。
46億年も凍結を防いだ断熱材ですか。恐れ入りました(^_^
また、46億年分のシミュレーションを行えるというのも、凄いと思います。
ここで、アストロアーツ掲載の下の画像をご覧ください。
冥王星内部の熱・構造シミュレーションが、メタンハイドレートの有無でどう違ってくるかを表しています。
>また、氷地殻の厚さが均一化するのにかかる時間を算出したところ、メタンハイドレートが存在しない場合には100万年程度だが、存在する場合には10億年以上かかることがわかった。
ハート形左半分の巨大盆地が存続しているのも、メタンハイドレートのおかげというわけです。
>地下にガスハイドレート層が存在すると考えると、冥王星の大気に窒素が多く一酸化炭素が少ないことも説明がつく。メタンや一酸化炭素はガスハイドレート層に取り込まれやすく地表にあまり出てこないが、窒素分子は取り込まれにくいので表面に出てくることができる。ガスハイドレート層がいわば分子吸着フィルターのような役割を果たすということだ。
断熱材だけでなく、分子吸着フィルターの役割も果たすのですか。
ただ、メタンや一酸化炭素が取り込まれるのに窒素分子が取り込まれない理由が分かりません。
>今回の研究成果は内部海の長期維持メカニズムを新たに提唱するものであり、内部海を持つ氷天体が想定以上に多く存在する可能性を示すものである。また、内部海の存在は特徴的な大気組成として観測されうることも示している。宇宙における海や生命の研究において重要な示唆を与える結果であり、地球外生命の探査という点でも大きな意義がある
冥王星なんて太陽系に7つある巨大衛星のどれと比べても大きさも質量も小さくて、準惑星に格下げになったし、いいとこなしの天体だと思っていたのですが、凍らない内部海の存在というのは面白い事実です。
系外惑星でも同様の惑星、衛星があるに違いなく、今回の研究は重要だと思います。
|