宇宙とブラックホールのQ&A

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Q 潮汐力というのは相対論でも出てくるのでしょうか?
出てくるとすれば、どのような役割を果たすのでしょうか?


A 潮汐力は重力に伴う二次的な力なので、特殊相対論ではなく一般相対論に関係します。
潮汐力という言葉自体はあまり使いませんが、一般相対論でも潮汐力に相当するものは重要です。

1.一般相対論では、まず座標系とともに「計量」という空間・時間の両方に使える物差し(兼時計)を設定します。
計量は2階テンソルという量の一種で、4次元時空に対して10個の独立な成分をもち、時空点ごとに定義されます。
一般相対論では物差しが場所と時間によりすべて異なることがあり得るというのがミソです。

ベクトルが座標変換に対して1回変換される量であるのに対し、テンソルは2回以上変換される量で、ベクトルは1階のテンソルということができます。
3次元ベクトル同士の掛け算の一種としてベクトル積というのがありますが、あれは実は2階テンソルです(3次元2階反対称テンソル=軸性ベクトル)。

2.計量から「接続係数」(クリストッフェルの記号)というものを(微分により)計算します。
これも時空点ごとに定義され、複数の成分をもちます(テンソルに似ていますがテンソルではありません)。
おおざっぱにいうと、接続係数は重力加速度に対応します。
時空上のどの点についても、その点で接続係数(のすべての成分)がゼロになるように座標系を選ぶことができます。
これは「自由落下状態では重力を感じない」ことの一般相対論的表現です。
このような座標系は局所慣性系になります。
局所慣性系とは、ある時空点の近傍(ごく近く)では慣性系とみなせる座標系です。
逆に、局所慣性系ではある点での接続係数(のすべての成分)がゼロになります。

一般相対論では、時空を無限小の局所慣性系が無数に連なったものとして捉えることができます。

3.接続係数からさらに「リーマンの曲率テンソル」というものを(微分により)計算します。
曲率テンソルは、接続の1階微分なので計量の2階微分になります。
曲率テンソルがゼロなら時空は平坦(ミンコフスキー時空)であり、その逆も成り立ちます。この場合は当然、大域的な慣性系を設定できます。
接続の場合と異なり、曲率は座標変換によりゼロにすることはできません(時空が平坦でなければ)。

さて、重力場の中で接近して存在する2つの粒子が自由落下しているとします。
それらの世界線(時空の中の軌跡)を計算すると、その差の係数として曲率が現れます(測地線偏差)。
したがって、一般相対論においてはこのリーマンの曲率テンソルが潮汐力を表すと考えることができます。

4.なお、一般相対論から導かれる重力波の物質に対する影響は潮汐作用ですが、この説明は他稿に譲ります。


★潮汐力シリーズの第4弾ですが、数式なしで一般相対論を説明しようという無謀な試みでもあります(^^;
まあ、素人にわかったような気になってもらうというのが狙いなんですが、いかがでしょうか?

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わかりやすかったです。

質点でのご説明かと思いますが、質点ではないロケットのような場合にはどうなるのでしよう。昔からの疑問ですが…

潮汐力、
場所毎に異なる力として測地線偏差として曲率の値を計算しえる宇宙船の本体のようなものの場合は崩壊しませんか。宇宙船内のそれぞれの異なる位置における偏差の差の増大によって。

相対性理論では、時差発生を時間旅行に例えます。そのタイムマシンや、その登場者は、微妙な位置の違いにより、崩壊しませんか。

ブラックホールの場合には臨界線、地平?、から先は潰れるということのようです。宇宙船が、臨界をまたがった場合にはどうなるのでしょう。

その影響は、小さな機械の範囲内なら測定不能な歪みしか生まないということかもしれませんが、そのオダーは遺伝子レベルでも誤差範囲内でしようか。臨界線では甚大な影響がありそうですが、それ以外ではどの程度でしよう。体がちぎれなくとも、細胞分裂不能になるとか。

相対性理論の意味でのタイムマシンは、ほんとうに人を生きまま運ぶことはできるのでしようか。誤差範囲の変域があつて、その範囲内という前提が確定される

2019/1/5(土) 午前 7:07 [ nan***** ]

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> nan*****さん

ありがとうございます。
この記事も、書いたときは相当の時間と手間をかけたのですが、評価していただいたのは初めてなので、嬉しいです。

マクロの物体、つまりロケットやそれに載っている人間の体は、多数の質点から構成されているものと近似できます。
ロケットが頭からブラックホールに突っ込み、乗っている人間も頭をBH方向に向けているとき、潮汐力により上下方向には引っ張る力が働き、前後左右方向には圧縮する力が働きます。
その力が十分大きければ、物体は当然上下方向に引き伸ばされて千切れてしまいます。

BHの事象の地平面自体は、「潰れる」こととはまったく無関係です。
ロケットが絶対に戻れず、遠方からの観測も理論的に不可能になる、という境界であって、地平面を通って落ち込んでいく物体にとっては潮汐力が重要です。
もちろん、BHの中心ではすべてが潰れてしまいますが、それは中心に到達した場合です。
(シュヴァルツシルトBHを前提としています。)

続く

2019/1/6(日) 午前 9:27 karaokegurui

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銀河中心に存在する巨大BHであれば、事象の地平面まではロケットが壊れたり人間が死んだりすることはなく、事象の地平面を無傷で通過できます。(もちろん後戻りはできませんが。)
恒星質量BHだと、事象の地平面に到達する前に、潮汐力によって死んでしまいます。

タイムマシンについては、今のところ実現可能性のあるものはないと思います。
私が知っている範囲で素人向けに分かりやすく書かれたものとしては、少し古いですが次の本があります。
書評『タイムマシン』:https://blogs.yahoo.co.jp/karaokegurui/47359926.html

2019/1/6(日) 午前 9:28 karaokegurui


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