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Q 重力波の観測に成功したと聞きましたが、重力波とは一体どういうものなのでしょうか?
A 一般相対論によると、天体が存在するとき、その質量(エネルギー)により時空が曲がります。
天体が運動すれば、時空の曲がり方も変化します。
曲がり方に変化が生じると、それが微小な時空歪みのさざ波として光速度で周りに伝わります。
それが重力波(gravitational wave)です。
いったん発生した重力波は物質と反応しにくいため、距離による減衰を伴いつつ宇宙空間を遠方までずっと伝わっていきます。
重力波は、進行方向に垂直な方向に働く横波の一種です。
薄い円盤を垂直に貫く重力波は、円を縦に引っ張り横に押しつぶして縦長の楕円にし、次には逆に横に引っ張り縦に押しつぶして横長の楕円にし、また縦長の楕円にし、という変化を繰り返させます。
すなわち、重力波とは潮汐力の変動の伝搬です。
縦長・横長の変化というモードを+で表すことにすると、重力波には+以外にそれと角度が45°斜めにズレた×で表されるモードも存在します。
このことを、重力波には2つの自由度がある、と表現します。
一般相対論によれば重力波には2つの自由度しかないため、それら以外の自由度が発見されれば、一般相対論が否定されて他の重力理論が正しいことになります。
しかし、これまでのところデータは一般相対論の正しさを裏付けています。
重力波を検知するにはどうしたらよいでしょうか?
1点を観測していても、重力波による時空の変化は分かりません。
2点間の距離を測定することが必要です。
ただ、重力波は大変微弱なため、大規模でかつ極めて精度の高い観測を行う必要があります。
たとえば、銀河系の中心で質量が太陽の10倍の星がブラックホールに重力崩壊してうまく重力波が発生しても、地球で観測できるのは長さ1kmの棒が10−12cm程度伸縮するだけであり、これは原子半径よりはるかに小さく、原子核半径の10倍程度です。
重力波を検知するためには、「レーザー干渉計型重力波望遠鏡」というものを使います。
2018年時点で本格稼働しているのは、アメリカのAdvanced LIGOと伊仏共同のAdvanced Virgoで、2015年9月14日に最初の重力波を検知して以降、後でみるように実績を積み重ねています。
日本でも、岐阜県神岡鉱山跡の地下に建設されたKAGRAが2019年から本格稼働する予定です。
今後は、宇宙空間、具体的には地球軌道上に3台の衛星を打ち上げて、それらからなるレーザー干渉計型重力波望遠鏡を構築するというLISA計画も実現に向けて進められています。
宇宙には地面振動による雑音が存在せず、また地上では実現不可能な水準の真空が実現されているため、レーザー干渉計を構成するのに都合がよいのです。
天体の運動が重力波を発生させるといっても、天体が球対称の変動を行うのでは、重力波は発生しません。
また、重力波は極めて微弱なので、遠方で検知できるためには、大質量の天体が激しく運動する必要があります。
検出可能な重力波を放射する「重力波源」となりうるのは、以下の3条件を満足する限られた天体現象だけです。
(1) 大量の重力波を放射すること。多くの重力波源の場合、重力波のエネルギー放射量は電磁波の放射量より多い。
(2) 与えられた検出器で十分な頻度の検出が期待できること。具体的には、1年に数回程度は検出可能である。
(3) 発生する重力波の波形が理論的に予測できること。これは重力波があまりに微弱なため、目的とする波形があらかじめ分かっていないと、背景雑音と区別できないから。
これらをみたす重力波を検知できる天体現象として、
・ブラックホールや中性子星などがつくる連星系の合体
が挙げられます。
ブラックホールや中性子星からなる連星の合体により生じる重力波の変動は、次の3つの段階に区分されます。
a.連星は相互の周りを回転しながら、重力波を放射し、それにより回転エネルギーを失って相互の距離が短くなるとともに、周期が徐々に短くなっていきます。
この段階では、チャープ波形と呼ばれる準周期的な重力波が放射されます。
準周期的というのは、連星周期の短縮とともに重力波の周波数が徐々に高くなっていくからです。
合体直前には振幅も大きくなります。
b.合体時には、両星の種類と質量に応じて特有の高周波数で高振幅の重力波が数サイクル放射されます。
c.新たに形成されたブラックホールの事象の地平面の歪みが減り、定常状態に近づくと、ブラックホールの準固有振動に由来する減衰振動の重力波が放射され、最終的には重力波放射が止みます。
30太陽質量のブラックホール2つからなる連星ブラックホールが誕生してから合体するまでの概略と重力波の特徴的な周波数に関する計算例を挙げます。
. 軌道半径 周波数 .
誕生時 1千万km程度 0.1mHz
円軌道になる 2,000km程度 10Hz
軌道が不安定化 450km程度 90Hz
合体 バースト的重力波放射 300Hz
カーブラックホール
以下、表の補足です。
誕生時の軌道半径がおよそ3,300万km以内であれば、宇宙年齢(約138億年)以内に合体可能です。
離心率は軌道長半径の約19/12乗に比例して減少し、軌道半径が2,000km程度でほぼ円軌道になります。
現在稼働中の重力波検出器は約10Hz〜1kHzの範囲で感度が良いので、上の例では軌道半径が2,000kmになった時点で観測可能になります。
それから合体するまでの時間はわずか約6秒です。
別の計算例として、1.35太陽質量の中性子星2つからなる連星中性子星では、軌道半径が約710kmになったときに重力波の周波数が10Hzになり、それから合体までの時間は約18分間です。
2018年3月までに実際に重力波により検知された天体現象は次の通りです。
・連星ブラックホールの合体(5例):
GW150914,GW151226,GW170104,GW170608,GW170814
・連星中性子星の合体(1例):
GW170817
ここで、GWは重力波イベントを意味し、後の数字は2桁ずつ分かれて年、月、日を表します。
今後検知数が増えて、1日に何度も検知されれば、さらに桁が増えるのでしょうね。
ブラックホールと中性子星の連星もあるはずで、今のところ発見されていませんが、いずれはその重力波も検知できると期待されます。
★ 柴田大、久徳浩太郎著『重力波の源』(朝倉書店)の該当する箇所を私なりに要約しました。
★★ われわれ日本人としてはKAGRAに期待しましょう(^_^
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