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重粒子と中間子のクォーク模型1:https://blogs.yahoo.co.jp/karaokegurui/70859949.html
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3.クォークの質量
次は、クォークの質量です。
クォークは後で説明するように自由粒子としては取り出せないので、慣性質量は定義できません。
そこで、クォークの質量を定義するためには、何らかの形で理論の助けが必要になります。
二つの方法があります。
一つは、クォークとグルオンの相互作用を記述する量子色力学(QCD)から導く方法です。
この方法によるuとdの質量は、下の表にある通り核子の質量 940MeVと比べて2桁も小さい値です。
sの質量は、uとdの質量より1桁〜2桁大きく、cの質量はsの質量よりさらに1桁大きい値です。
bの質量はcの3.5倍程度ですが、t の質量はそれらより2桁も大きい値となっています。
クォークの質量
種類 QCD(理論) 非相対論的模型(現象論)
u 2.2+0.5-0.4MeV 〜 300MeV
d 4.7+0.5-0.3MeV 〜 300MeV
s 95+9-3MeV 〜 500MeV
c 1.275+0.025-0.035GeV 〜 1.25GeV
b 4.18+0.04-0.03GeV 〜 4.5GeV
. t 173±0.4GeV 〜 170GeV .
(注)1 上3つの単位がMeV(メガ電子ボルト)、下3つの単位がGeV(ギガ電子ボルト)である点に注意。
2 QCDによる質量の小さい順に並べたもの。
もう一つはより現象論的な方法で、グルオンは考慮せずにクォークや反クォークの間にポテンシャルによる力が働くと仮定して、実験と整合的なようにポテンシャルを決めるものであり、非相対論的模型と呼ばれます。
この模型ではuとdの質量は 300MeV程度と重く、またsの質量は 500MeV程度です。
一方、c,b,t の質量は、QCDによる場合と大差ありません。
u,d,s,c,bの質量は、1桁程度の範囲に収まっていますが、t の質量だけはやはりとびぬけて大きいものとなっています。
QCDによる質量順に並べた6種類のクォークはuとd、sとc、bと t のように2つずつ対になっているのですが、
電荷をみるとuとdの対は+,−の順なのに対し、sとc、bと t の対は−,+の順になっています。
なぜ逆転しているのか、その理由は不明です。
『今度こそわかる素粒子の標準模型』p.89,90によると、陽子、中性子、Λ粒子の磁気モーメントから現象論的なクォーク質量を求めると、次のようになるということです。
u 〜 340MeV
d 〜 320MeV
s 〜 510MeV
QCDによる質量とは、uとdの順序が逆になっていますね。
普通はQCDによる質量だけが書いてあって、確かに現象論的な質量では本当に分かったことにならないでしょ!ということだとは思うのですが、納得いかないよなー・・・
閑話休題。
反クォークの質量は、対応するクォークの質量に等しくなります。
量子数とは異なり、負の値にはなりません。
4.クォークが重粒子と中間子をつくる理由
さて、クォークは単独で存在することはできません。
クォークはカラー(色)という量子数をもっています。
カラーには、光の3原色になぞらえて赤、緑、青の3種類があります。
一方、反クォークのカラーは反赤、反緑、反青の3種類です。
(カラーもフレーバーと同様に名前だけを借りてきたものですが、すぐ後で説明するようにうまく考えられています。)
量子色力学QCDによると、クォークたちの組合せはカラーが消えて無色になるものしかあり得ません。
それは、次の3つの場合です。
・赤・緑・青の組合せ
・反赤・反緑・反青の組合せ
・赤・反赤、緑・反緑、青・反青の組合せ
最初の組合せはクォーク3個であり、これは重粒子(baryon、バリオン)です。
2番目の組合せは反クォーク3個であり、これは反重粒子です
3番目の組合せはクォークと反クォーク1個ずつであり、これは中間子(meson、メソン)です。
したがって、ハドロンには重粒子、反重粒子、中間子があるわけです。
(重粒子は日本語でもバリオンと呼ぶことが多いです。それと比べると、中間子をメソンと呼ぶことは少ないように思います。)
クォークは重粒子数1/3、反クォークは同−1/3をもつので、
・重粒子の重粒子数は 1
・反重粒子の重粒子数は−1
・中間子の重粒子数は 0
となります。
(もともと重粒子の重粒子数が 1 になるように定義しているわけです。)
なお、カラーは、クォークたちの間でグルオンをやり取りするため始終変化しているので、以下の説明では表に出てきません。
5.構成クォークに基づく中間子の分類
中間子は、質量によって2つに分類できます。
u,d,sとそれらの反粒子だけからなる中間子を、軽い中間子といいます。
それに対し、cかbかそれらの反粒子を少なくとも1つ含む中間子を、重い中間子といいます。
6番目のクォークである t クォークは他のクォークに比べて桁外れに重く、寿命が非常に短いため、t クォークを含む中間子は存在しません。
軽い中間子
・light unflavored mesons(S=C=B=0)軽くてフレーバーなしの中間子
・strange mesons(I=1/2,S=±1,C=B=0)ストレンジ中間子
重い中間子
・charmed mesons(C=±1,S=B=0)チャーム中間子
・charmed strange mesons(C=S=±1,,B=0)チャームストレンジ中間子。
必ず C=S となる。
・bottom mesons(B=±1,S=C=0)ボトム中間子
・bottom strange mesons(B=−S=±1,C=0)ボトムストレンジ中間子
必ず B=−S となる。
・bottom charmed mesons(B=C=±1,S=0)ボトムチャーム中間子
必ず B=C となる。
. .
・c c 中間子(S=C=B=0)
. .
・b b 中間子(S=C=B=0)
以下本稿で扱うのは軽い中間子で、8で説明を行います。
6.ハイパーチャージ
ここで、クォーク模型によりハイパーチャージ(超電荷)という量子数を導入します。
問題とするハドロンが、Nq(q=u, d, s, c, b, t)個のフレーバーqのクォークから構成されるものとします。
反クォークの場合には負号が付きます。
ハドロンの電荷Qは、Nqを使って次のように表されます。
Q = 2/3 (Nu+Nc+Nt) −1/3 (Nd+Ns+Nb)
= 1/2 (Nu−Nd) +1/6 (Nu+Nd+Ns+Nc+Nb+Nt)
+1/2 (−Ns+Nc−Nb+Nt)
右辺第1項の( )内はアイソスピンのz成分 I zの2倍に等しく、第2項の( )内は重粒子数Bの3倍に等しく、第3項の( )内はS+C+B+Tに等しいので、
Q = I z +1/2 B +1/2 (S+C+B+T)
= I z +1/2 (B+S+C+B+T)
右辺第2項の( )内をYと置くと
Y =: B+S+C+B+T
結局、電荷Qはアイソスピンのz成分 I zとYの1/2の合計に等しくなります。
Q = I z +1/2 Y
この式を、「ゲルマン・中野・西島の公式」といいます。
また、Yをハイパーチャージ(hypercharge、超電荷)といいます。
ハイパーチャージは、強い相互作用の下では保存されます。
ハドロン(重粒子と中間子)の分類は、縦軸にアイソスピンのz成分 I z、横軸にハイパーチャージYをとった平面に各ハドロンをプロットしたグラフが役に立ちます。
7.中間子と重粒子の角運動量
「回転のいきおい」を表す角運動量という物理量があります。
回転には自転と公転があります。
素粒子論では、それぞれの角運動量をスピンと軌道角運動量といいます。
スピン、軌道角運動量とも量子化されているので、非負の整数と半奇数(1/2の奇数倍)で表されます。
0,1/2,1,3/2,・・・
角運動量はベクトル(軸性ベクトル)ですが、非負になるのはその絶対値をとっているから、とお考え下さい。
ベクトルの向きまで入れたものが、そのz成分です。
(x成分、y成分はどうしたの?と思うかもしれませんが、2つの成分を同時に確定することは量子論によりできないので、z成分を求める慣例です。なお、第3成分という言い方をすることもあります。)
たとえば、スピンが 1 のとき、そのz成分は 1,0,−1 という3つの値があり得ます。
スピンが1/2のとき、そのz成分は1/2かー1/2のどちらかです。
ハドロン(中間子と重粒子)は、クォーク(と反クォーク)からできている複合粒子です。
そのスピンは、構成要素であるクォークたちのスピンと軌道角運動量の合成です。
以下、固有スピンというときはハドロンのスピンのことで、Jで表します。
ハドロンを構成するクォークのスピンの合計を全スピンと呼び、Sで表します。
ハドロンを構成するクォークたちの軌道角運動量をLで表します。
JをSとLで表すと、
J = L+S,・・・,|L−S|
のようになります。
クォークのスピンは、1/2です。
中間子はクォークと反クォーク1個ずつからなるので、全スピンSの値は
S = 1/2 −1/2 = 0
か
S = 1/2 +1/2 = 1
のどちらかです。
重粒子はクォーク3個からなるので、全スピンSの値は
S = 1/2 +1/2 −1/2 = 1/2
か
S = 1/2 ×3 = 3/2
のどちらかです。
一方、軌道角運動量Lは非負の整数値
L = 0,1,2,・・・
をとります。
(原子だと、「原子核の周りを電子が回っている」という素人なりの“描像”を思い浮かべることができて、いやL=0のS波の状態では軌道角運動量がゼロなんだから、「回っている」というのは正確ではないということになるのですが、中間子はともかく、重粒子に関してはどう思い描いたらよいのか、分かりません。)
L=0 のハドロンを基底状態(ground state)にあるといい、L≧1 のハドロンを励起(れいき)状態(excited state)にあるといいます。
励起状態のハドロンは、強い相互作用により短時間で崩壊します。
8.重粒子と中間子の崩壊とパリティ
一般に、不安定粒子(寿命が有限の粒子)は、より軽い粒子に崩壊していきます。
励起状態のハドロンはもちろん不安定粒子ですが、基底状態でもすべての中間子と大部分の重粒子は不安定粒子です。
崩壊を含め反応の前後では、どの量子数が保存するかが重要です。
重粒子数は強い相互作用、電磁的相互作用、弱い相互作用のいずれの下でも保存するので、不安定な重粒子は崩壊を逐次繰り返して、最終的には核子(単独の場合は陽子)に落ち着きます。
一方、中間子は、最も軽いπ中間子(もちろん基底状態)でも電磁的相互作用か弱い相互作用で崩壊するので、すべて不安定です。
一方、クォークの表でみた I z,S,C,B,Tという量子数は、強い相互作用の下でのみ保存します。
ここで、次の節で出てくるパリティという量子数について簡単に説明しておきます。
パリティは空間反転に関する量子数です。
空間反転 : (x,y,z) → (−x,−y,−z)
これだけでは個々の粒子のパリティは決まらないため、陽子と中性子のパリティを+1 と定義して、他の粒子はそれに合わせて+1 と−1 のどちらかの値に決めます。
±1 の値しかとらないので、+と−で表すことも多いです。
パリティは強い相互作用と電磁的相互作用の下で保存されます。
反陽子と反中性子のパリティは−1 となります。
中間子のパリティは、軌道角運動量が偶数(0を含む)のとき−1、奇数のとき+1 となります。
---------------------- 続 く ---------------------
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