宇宙とブラックホールのQ&A

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宇宙、天文、素粒子関係の科学ニュースの紹介です。
以前は天文一般に入れていましたが、△Q&Aが埋もれてしまうので、こちらを新設して移しました。
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アストロアーツ5月28日付記事、元は北海道大学です。
http://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/10640_pluto

概要>冥王星の内部海が凍結しない理由として、地下にメタンハイドレートが存在していれば説明可能であることが数値シミュレーションで示された。巨大な盆地や窒素の大気の存在も説明できるという。

地球上でも新たなエネルギー資源として注目されているメタンハイドレートですが、これは太陽系の最果てを回っている冥王星での話題です。
ちなみに、英語の綴りはmethane hydrateです。

>木星の衛星エウロパや土星の衛星エンケラドスなど、氷を主成分とする氷衛星のいくつかには地下に厚い氷があり、その下に「内部海」と呼ばれる凍らない海を持つことが、惑星探査機やハッブル宇宙望遠鏡の観測などから明らかになっている。

この氷というのは、水H2Oの氷のことです。(地上では当たり前だけど、宇宙では当たり前のことではありません。)
水H2Oは常圧下では 0℃≒273Kで凍り、この温度つまり水の融点(氷点という)は圧力が相当低下してもほとんど変わりません。
ちなみに、水の三重点の圧力は 0.006 気圧で、同じ温度でこれより圧力が低くなると気体の水蒸気になり、同じ圧力でより温度が低くなると氷になります。
宇宙空間では、液体の水は存在しないのです。

内部海が凍らない理由としては、素直に考えると熱源の存在を思い付きますが、巨大衛星のエウロパでは木星重力による潮汐熱が考えられるけど、エンケラドスは小さいのでどうなんでしょうね。
なお、予告しておくと、今回の冥王星に関する研究で発見されたのは、熱源ではなく「断熱材」の方です。

>巨大ガス惑星の衛星だけでなく、地表温度がマイナス220℃と極寒の氷天体である冥王星にも内部海が存在していることが、NASAの探査機「ニューホライズンズ」の観測データから示されている。冥王星の、ハート型模様に見える地域の左半分は、窒素の氷河で覆われた白い巨大な盆地となっているが、この盆地が赤道付近に存在するという事実は、盆地の地下の氷が薄く内部海が厚いことを示している。もし厚い内部海が存在していなければ、この盆地が極に向かうように冥王星が回転してしまうはずだ。

マイナス220℃は、絶対温度では53Kです。
まさに「極寒の氷天体」ですが、そんな天体に「内部海が存在している」ことは驚き以外の何物でもありません。

冥王星のハート形模様は太陽系名所?の一つとして有名ですが、その左半分が巨大な盆地となっているというのは初めて知りました。
組成が一様で比較的球に近い天体であれば、自転に対して安定的になるためには、出っ張った部分は赤道付近に、くぼんだ部分は極付近に位置するようになるはずです。
それなのに巨大盆地が赤道付近にあってなぜ不安定にならないのかというと、氷よりも液体の水の密度の方が高いからだと思います。
ちなみに、普通の物質であれば固体の方が液体よりも密度が高いので、水はその意味でかなり特異な物質といえます。

>氷衛星よりも冷たく熱源にも乏しい冥王星の内部海がなぜ凍結していないのかという謎について、北海道大学の鎌田俊一さんたちの研究グループは、主にメタンを閉じ込めたガスハイドレートが内部海と氷地殻の間に存在するという新たなアイディアを提唱し、数値シミュレーションを行った。

冥王星の内部海が凍結していないという謎を解明するために、新たなアイディアでシミュレーションを行ったのですね。

>ガスハイドレートとは、水分子でできた「かご」の中に気体分子を閉じ込めた氷のような物質だ。とくに、メタンを閉じ込めたメタンハイドレートは地球の海底にもあり、天然資源として近年注目されている物質でもある。鎌田さんたちはメタンハイドレートが通常の氷と比べて、熱伝導性が悪く高い粘性をもつことに着目した。

メタンハイドレートはいわば「燃える氷」で、人工的につくったものは白いということですが、地球上に自然に存在しているものは土のような外見だそうです。
「熱伝導性が悪く高い粘性をもつ」ということは、天然の断熱材ですね。

ここで、アストロアーツ掲載の真ん中の画像をご覧ください。
「今回のシミュレーションで用いた冥王星の内部構造のモデル」です。
巨大盆地の下では氷の地殻が薄く、その分、内部海が厚くなっていることが分かります。

>まず、太陽系が形成されてから現在までの約46億年間に及ぶ冥王星内部の熱・構造進化シミュレーションを行ったところ、メタンハイドレートが存在しない場合は何億年も前に内部海は完全に凍結するが、メタンハイドレードが存在する場合には断熱材として機能し、表面は極寒でも内部海はほとんど凍結しないことがわかった。

46億年も凍結を防いだ断熱材ですか。恐れ入りました(^_^
また、46億年分のシミュレーションを行えるというのも、凄いと思います。

ここで、アストロアーツ掲載の下の画像をご覧ください。
冥王星内部の熱・構造シミュレーションが、メタンハイドレートの有無でどう違ってくるかを表しています。

>また、氷地殻の厚さが均一化するのにかかる時間を算出したところ、メタンハイドレートが存在しない場合には100万年程度だが、存在する場合には10億年以上かかることがわかった。

ハート形左半分の巨大盆地が存続しているのも、メタンハイドレートのおかげというわけです。

>地下にガスハイドレート層が存在すると考えると、冥王星の大気に窒素が多く一酸化炭素が少ないことも説明がつく。メタンや一酸化炭素はガスハイドレート層に取り込まれやすく地表にあまり出てこないが、窒素分子は取り込まれにくいので表面に出てくることができる。ガスハイドレート層がいわば分子吸着フィルターのような役割を果たすということだ。

断熱材だけでなく、分子吸着フィルターの役割も果たすのですか。
ただ、メタンや一酸化炭素が取り込まれるのに窒素分子が取り込まれない理由が分かりません。

>今回の研究成果は内部海の長期維持メカニズムを新たに提唱するものであり、内部海を持つ氷天体が想定以上に多く存在する可能性を示すものである。また、内部海の存在は特徴的な大気組成として観測されうることも示している。宇宙における海や生命の研究において重要な示唆を与える結果であり、地球外生命の探査という点でも大きな意義がある

冥王星なんて太陽系に7つある巨大衛星のどれと比べても大きさも質量も小さくて、準惑星に格下げになったし、いいとこなしの天体だと思っていたのですが、凍らない内部海の存在というのは面白い事実です。
系外惑星でも同様の惑星、衛星があるに違いなく、今回の研究は重要だと思います。

・60年前の扇形オーロラと巨大磁気嵐の関連
アストロアーツ5月23日付記事、元は国立極地研究所です。
http://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/10641_aurora

概要>1958年に日本各地で目撃されたオーロラのスケッチや連続写真などの分析から、扇形に広がったオーロラの実態や大規模な磁気嵐との関連性が明らかにされた。

>オーロラを描いたと思われる絵や図のなかには、大きく広がった扇形の描写が見られるものがある。1770年9月に京都から見えたオーロラを記録した絵図や、1872年3月に出現したオーロラを描いた絵画には、北の空に放射状にのびる白い光の筋が大きく広がった様子が表されている。

というわけで、アストロアーツ掲載の上の画像をご覧ください。
2枚の絵図ですが、特に左の京都のものは恐竜の背びれ?にこんなのがあったような(^_^

>1770年9月のオーロラについては史上最大規模の磁気嵐に伴うものであることが研究で明らかになっており、こうした扇形オーロラは巨大磁気嵐の際に見られるものと考えることができるが、印象風景として実際よりも大げさに描かれた可能性も否定できない。また、実際に関連があるとしても、白い筋は通常のオーロラに見られる緑のものと同じ発光なのかどうかなど、他の謎も残されている。

今のように写真で撮っているのであれば実物通りですが、絵図なので大げさに描かれた可能性を否定できないわけです。

>巨大磁気嵐そのものが100年に1回程度しか起こらない珍しい現象であることから、扇形という形態に着目した研究はほとんど行われてこなかった。国立極地研究所の片岡龍峰さんたちは、巨大磁気嵐と扇形オーロラの関連を検証する手掛かりを求めて、他の出現例や記録を探した。

巨大磁気嵐が100年に1回程度の珍しい現象ならばそれだけ興味深いわけですが、データ不足では研究はできません。

>片岡さんたちは、1958年2月11日に発生した記録的な巨大磁気嵐に着目した。この際には日本各地でオーロラが観測されたことから、扇形オーロラの記録も残されているのではないかと考えて調査を進めたところ、北海道にある気象庁地磁気観測所の女満別出張所で職員が描いた手書きスケッチの中に扇形オーロラが見つかった。

その手書きスケッチについては、アストロアーツ掲載の2番目の画像をご覧ください。
なお、女満別は「めまんべつ」と読み、女満別空港で知られていますが、かつての女満別町は2006年3月に合併して今は大空町となっています。

>当夜、女満別では日本で初めて、オーロラの分光観測と連続全天写真観測も行われており、片岡さんたちはその連続写真も分析を行った。さらに新潟県の気象庁相川測候所から見たオーロラの手描きスケッチも加えた研究から、オーロラの色や動き、位置、時間帯を解明した。
・色:分光データによれば、扇形オーロラの白い筋に当たる部分は主に酸素原子の緑色発光、扇面に当たる背景は酸素原子の赤色発光である
・動き:連続写真の分析によると、扇形オーロラは磁気嵐が最も激しくなる時間帯、かつ発光強度が最も明るくなるタイミングで10分間ほど出現し、全体の形状を大きく変えずに西へ移動していく
・位置:新潟と女満別のスケッチで描かれたオーロラの仰角の違いをもとに判断すると、扇形オーロラは磁気緯度が約38度の磁力線に沿って高度約400kmまで伸びている
・時間帯:1770年、1872年、1958年のいずれも、扇形オーロラは真夜中より前に発生するという共通点がある

酸素原子の緑色発光は波長557.7nm、同赤色発光は波長630.0nmの輝線スペクトルです。
それも含め、オーロラについては次のサイトに丁寧な説明があります。
オーロラと低緯度オーロラの解説:
http://stdb2.stelab.nagoya-u.ac.jp/member/shiokawa/aurora_kaisetu.htm

目に見えるオーロラの分析によって、直接は目に見えない磁力線のことが分かるのですね。

>これらの観測事実はすべて、近年の磁気圏物理学で整合的に理解することができ、宇宙空間において真夜中前の激しいプラズマの流れが作る不安定構造の発達が可視化された結果だと解釈できる。扇形オーロラは大規模な磁気嵐における基本的な特徴と考えられることが、古典籍や絵画、60年前のマイクロフィルムなどから解き明かされた。

60年前のマイクロフィルムですか。
その頃は、「将来はすべてマイクロフィルムに収められるので、紙の本はなくなる」という予測がありました。
半分当たって半分外れ、くらいでしょうかね。

>今回の研究は、過去の限られたデータを探し出して見直すことで、まれにしか起こらない巨大磁気嵐中の磁気圏や電離圏で発生するプラズマ現象の安定性や複雑さを理解するための重要なヒントを得たという、興味深い成果である。また、古い記録を保存しておくことの意義も強く示すものでもある。巨大磁気嵐は電力網や通信など現代インフラへの障害を引き起こすものであり、今回の研究はこうした現象等の正確な予測に貢献することも期待される。

藤原定家の明月記が超新星爆発を記録していた例もありますしね。
地球科学にとっても天文学にとっても古い記録は大事です。


★ 梅雨入り前から真夏の暑さというのは、本当に参ります。冷房の効いた部屋に閉じ籠もってばかりでは運動不足になるので、スポーツクラブに通うくらいはしようと思っているのですが。

・高解像度で解剖、遠方宇宙で成長中の銀河
アストロアーツ5月22日付記事、元はすばるです。
http://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/10639_uss1558

概要>すばる望遠鏡による観測で、110億年前の宇宙に存在する成長中の銀河の内部が高解像度でとらえられ、銀河の星形成領域が星の分布よりも外側まで広がっていることが明らかになった。

>東北大学の鈴木智子さんたちの研究チームが、約110億年前の宇宙に存在する、へび座の方向の原始銀河団USS 1558-003をすばる望遠鏡で観測し、銀河の内部の様子を明らかにする研究を行った。

「東北大学の鈴木智子さん」は東北大学天文学教室の研究員の一人で、次のメンバー表の下から6番目です(笑顔の写真付き)。
https://www.astr.tohoku.ac.jp/member/index.html
ご専門は「銀河形成・進化の光赤外線(と電波)による観測的研究」。
「光赤外線」の光とは可視光のことですね。
より詳しくは、ホームページ(英文)によると、赤方偏移z=2〜4(特にz=3〜4)の銀河形成・進化をすばる望遠鏡などの観測データを使って研究しているとのこと。
https://sites.google.com/view/tlsuzuki

百聞は一見にしかずというわけで、ここでアストロアーツ掲載の一番上の画像「原始銀河団USS 1558-003の全体像」をご覧ください。
個々の銀河の拡大図は高解像度です。

>観測では地球大気の影響による像のボケを補正する補償光学装置と、一部の波長のみを透過する狭帯域フィルターとを組み合わせた新しい手法が用いられ、すばる望遠鏡の大口径と合わせることによって高解像度を達成することに成功した。遠方宇宙に存在する銀河内部の星の分布だけではなく、星形成領域の分布も0.2秒角(視力300相当)という解像度でとらえられている。

遠方銀河の「星の分布」と「星形成領域の分布」を同時に捉えたという点が成果なのですね。

ここで、アストロアーツ掲載の真ん中の画像をご覧ください。
補償光学装置と狭帯域フィルターとを組み合わせるとどのくらい解像度が上がるか、よく分かる対比となっています。

>今回の観測では一度に11個の星形成銀河について、星と星形成領域の分布が明らかになった。このうち、星質量の大きい星形成銀河では、星形成領域が星の分布に対してより広がっていることがわかった。この結果は、外側に新しい星を作ることによって銀河の構造(星の分布)は内側から外側へと広がっていき、銀河のサイズが大きくなっていくということを示唆している。

星の分布よりもこれから星ができる領域の方がより広いというのは、星が外側に向かってどんどん増えていくことを意味するわけです。

>この傾向は、銀河同士の相互作用や銀河外縁部のガスの剥ぎ取りといった周辺環境からの影響を受けない、孤立した同時代の銀河にも見られる。つまり、約110億年前の宇宙では、銀河が高密度で存在する原始銀河団領域であっても、大質量の星形成銀河は周囲から何らかの影響を受けて進化しているというよりは、むしろ自身の星形成によって主にその構造を成長させていることを示唆するものである。

星どうしの距離は、同時に形成された連星以外は、互いに遠く離れていて相互作用しませんが、銀河どうしの距離は銀河の大きさに比べてかなり近くて、いったん形成された銀河どうしが相互作用する例はいくらでもあります。
今回の研究は、「約110億年前の宇宙では、銀河が高密度で存在する原始銀河団領域であっても、大質量の星形成銀河は周囲から何らかの影響を受けて進化しているというよりは、むしろ自身の星形成によって主にその構造を成長させていることを示唆」しているということです。

それを示しているのが、アストロアーツ掲載の一番下のグラフです。
「太陽の100〜1000億倍の質量を持つ星形成銀河内部における星質量密度(破線)と星形成率密度(実線)の平均的な半径方向の分布」です。
銀河中心からの距離が10kpcあたりだと、星の分布密度は低いが、星形成率はかなり高いことが分かります。
なお、1kpc(キロパーセク)=約3 260光年、10kpcだと約3万3千光年なので、わが銀河系だと太陽あたりになりますかね。

>「銀河内部の星形成領域の分布は、銀河に働く物理過程を理解する上で鍵となる情報です。より詳細な研究のためには、銀河の平均的な構造を調べるだけではなく、個々の銀河について星形成領域の構造を調べる必要があります。次世代広視野近赤外線装置『ULTIMATE-Subaru』が完成すれば、様々な環境に属するより多くの銀河について個々の構造成長の様子を詳細にとらえることが可能になるでしょう」(鈴木さん)。

次世代広視野近赤外線装置の名称は「究極のすばる」ですか。
かっこいいですね。
宇宙初期の銀河形成・進化のさらなる解明が進展することを期待します。

月は今も縮んでいる

・月は現在も冷えて縮み続けている
アストロアーツ5月20日付記事、元はNASAジェット推進研究所(JPL)です。
http://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/10633_moon

概要>アポロ計画で得られた月の地震のデータや「ルナー・リコナサンス・オービター」の画像から、月が現在も収縮を続け、表面で断層活動を引き起こしているという証拠が相次いで見つかった。

>月には火山やプレート運動などは存在せず、地質学的には死んだ天体のように見える。しかし、アポロ計画で設置された地震計のデータから、月でも地震(月震)が発生していることが知られている。また、月面には断層地形が数多く存在していて、これらは月の内部が冷えることで月全体が収縮したために生じたものだと考えられている。
>こうした月の冷却と収縮が現在も続いていることを示す、新たな研究成果が相次いで発表された。

というわけで、今回は月面地形に関する2つの研究を同時に紹介しています。

>・現在も断層で月震が発生している
>月が冷えて収縮すると、地殻の一部が他の部分の上に乗り上げる「衝上断層」と呼ばれる地形が現れることがある。こうした断層はしばしば、高さ数十km、幅数kmにわたる階段状の断層崖を形成する。

衝上断層(しょうじょうだんそう、thrust fault)とは、上位の地層が下位の地層に対して緩い角度でずり上がった断層で、底角逆断層ともいいます。

>米・スミソニアン協会地球惑星研究センターのThomas Wattersさんたちの研究チームは、アポロ12号から16号までのミッションで月面に設置された4台の地震計のデータを新たな手法で解析し、月震の震源をこれまでよりも正確に求めた。この4台の地震計は1969年から1977年までの間に、震源の浅い月震を計28回観測しており、その規模はマグニチュード2から5の範囲にわたっている。Wattersさんたちはこれらの月震の震源位置を、月探査機「ルナー・リコナサンス・オービター(LRO)」でこれまでに発見されている3500か所以上の断層崖の位置と比較した。

ルナー・リコナサンス・オービターは、2009年6月にNASAが打ち上げた月周回衛星です。
英語名はLunar Reconnaissance Orbiterで、頭文字をとるとLROになります。
ただ、日本語ではルナー・リコ「ネ」サンス・オービターと表記するのが普通です。
Lunarは「月の」、reconnaissanceは「調査」、orbiterは「周回衛星」という意味です。

ここで、アストロアーツ掲載の上の画像をご覧ください。
「LROで撮影された断層崖の例」です。
画面上下方向に断層が走っており、左側が崖の上なので高く、右側が崖の下なので低くなっています。

>その結果、28回の浅発地震のうち8回は、LROの画像に写っている断層から30km以内の位置で発生していることが明らかになった。これは、浅発月震が断層と関係していることをうかがわせる強い証拠だ。
>「月が現在も徐々に冷えて縮み続けているために、こうした断層が現在も活動していて月震を引き起こしているという証拠が初めて得られました」(Wattersさん)。

内部が冷えて縮むと、すでに固まっている表面は同じように縮むことができないために断層が生じるのですね。

>さらに、この8回の地震のうち6回は月が遠地点(地球から最も遠い点)付近にある時期に発生していた。遠地点では月が地球から受ける潮汐力に由来する応力が最も強くなるため、断層が動く現象が起こりやすいと考えられる。

遠地点で月が地球から受ける潮汐力が最も強くなるのなら、楕円軌道の正反対の位置である近地点(地球から最も近い点)でも同じくらい強くなりそうに思うのですが、違うようですね。
それと、地球の潮汐を考えると、位置関係が太陽−地球−月の順となる満月のときと太陽−月−地球の順となる新月のときに大潮になるので、作用反作用の法則により月でも同じときに潮汐力が最も強くなりそうなものですが、満月・新月と月の遠地点・近地点は必ずしも一致しません。
基本的なところの理解が欠けているのかな?

>月の断層が現在も活動しているという証拠は他にもある。LROが撮影した画像には、断層崖の斜面やその近くに比較的明るい色の領域があり、そこに地すべりや岩塊が写っている例がみられる。月面の物質は太陽風や宇宙線によって風化を受け、次第に暗い色になっていくため、明るい色の領域は最近新たに表面に露出した場所であることを示している。ごく最近に月震が起こって表面の物質が地すべりを起こしたとすれば、こうした地形ができるはずだ。

月面などの物質が太陽風や宇宙線によって風化することを宇宙風化といいますが、雨風の影響が大きい地球上の風化とはだいぶ異なります。
特に、明るい色から暗い色に変化していく点が特徴です。

>また、断層崖の近くで岩塊が転がり落ちた跡もしばしば撮影されている。これも断層で発生した月震によって岩が谷底へ転がったものと考えられる。月面にはたくさんの微小隕石が衝突し続けているので、こうした転石の跡は地質学的な時間スケールで見ると比較的短期間で消えてしまうはずだ。にもかかわらずこうした地形が残っていることは、断層で現在も月震が起こっている証拠となる。
>「50年近く前のアポロ計画のデータとLROのデータとを組み合わせることで月についての理解が深まり、月内部の研究が将来進むべき方向が示されるのを目の当たりにできるのは本当に素晴らしいことです」(LROプロジェクトサイエンティスト John Kellerさん)。

「50年近く前のアポロ計画のデータ」が役立ったというのは意外でした。
科学というものはさまざまな努力の積み重ねで進歩していくのだと改めて感じます。

>・若いリンクルリッジを月の海で発見
>衝上断層による断層崖と同じく、月が冷えて収縮することで生じる地形として、「リンクルリッジ」と呼ばれる曲がりくねった尾根と浅い地溝からなる地形がある。リンクルリッジは長いものでは400kmに及び、高さは300mを超える。リンクルリッジはこれまで月の高地でしか発見されておらず、海には存在しないと考えられてきた。

リンクルリッジはwrinkle ridgeで、wrinkleはしわ、ひだ、ridgeは山の背、尾根のことです。
長さ400km、高さ300mというのは相当大きな地形ですね。

>NASAジェット推進研究所のNathan Williamsさんたちの研究チームは、月の北極付近にある「氷の海」と呼ばれる領域に着目し、この地域をLROが撮影した1万2000枚以上の画像を詳細に調べた。その結果、リンクルリッジのような地殻変動に由来する地形が、氷の海に数千か所も存在することを発見した。この数は月の高地に地殻変動地形が存在する割合とほぼ同じだ。

ここで、アストロアーツの下の画像をご覧ください。
「LROの画像から「氷の海」で新たに発見されたリンクルリッジの例」です。
右上方向から光が当たっています。

>こうした地形の年代はクレーターを利用することで推定できる。Wattersさんたちのチームが転石の痕跡の年代推定で使ったのと同じ手法だ。
>月面には絶えず微小な隕石が衝突しているため、衝突で飛散した物質が周囲に降り積もる「インパクト・ガーデニング」という過程によって次第に地形が変わっていく。クレーターなどの凹地が時代とともに飛散物質によって埋められていくのだ。サッカー場くらいのサイズのクレーター、典型的には10億年程度で埋まる。
>Williamsさんたちの研究チームはLROの画像から、まだ埋まっていない小さなクレーターを横切るようにしてリンクルリッジができている例を見つけた。このことから、「氷の海」に見られるリッジは10億年前よりも新しい時代に作られ、中には4000万年前より新しいものもあると推定される。これは地質学的には比較的新しい地形といえる。これまでの研究では、月の海は数十億年前に形成され、12億年前には冷却に伴う収縮は止まったと考えられてきた。
>「月の内部では現在も地震が起こっています。数十億年にわたって熱を失い続けることで、収縮し、より高密度になるという変形が続いているのです」(Williamsさん)。

地球のようにマントルの対流でプレートテクトニクスが起るわけではありませんが、単純な冷却による収縮でも天体の表面を40数億年経った現在も変化させ続けているというのは、興味深い発見だと思います。

・CALET、10テラ電子ボルトまでの宇宙線陽子スペクトルを単独高精度測定
アストロアーツ5月15日付記事、元は早稲田大学とJAXAです。
http://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/10628_cosmicray

概要>国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟に設置されている宇宙線電子望遠鏡「CALET」が、単一測定器としては初めて50ギガ電子ボルトから10テラ電子ボルトまでのエネルギー領域における宇宙線陽子スペクトルの高精度直接観測に成功した。

>高エネルギーの陽子や電子の流れである宇宙線は、太陽や天の川銀河など様々なところからやってきて地球に大量に降り注いでいる。そのなかで銀河宇宙線の起源については、「超新星残骸の衝撃波によって加速されて高エネルギーとなり、銀河磁場による拡散的伝播で銀河外へ漏れ出す」という標準モデルが考えられている。

銀河宇宙線の起源の前半「超新星残骸の衝撃波によって加速されて」ですが、衝撃波面の内側と外側で弾かれて何度も面を行き来するうちに加速されるということです。
後半ですが、銀河系には全体を渦状に貫く大きな磁場があり、磁力線の向きは隣どうしの渦状腕で反転していて、全体として磁力線が1本の腕から流れ込み隣の腕から流れ出すような渦巻形となっています。
そうすると、「銀河磁場による拡散的伝播で銀河外へ漏れ出す」というのは、円盤部で渦状腕に沿って外側に漏れ出すということなのだと思います。

>大気に衝突する前の宇宙線はこれまで、気球や人工衛星などによって観測されてきた。2015年8月に国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟に設置された宇宙線電子望遠鏡「CALET」もそうした装置の一つで、広いエネルギー測定範囲と確実な装置較正を備えているという特長を持つ。

CALETは、高エネルギー電子・ガンマ線観測装置(Calorimetric Electron Telescope)の略です。
「きぼう」の船外実験プラットフォームに設置され、非常に高いエネルギーの電子やガンマ線、陽子・原子核成分を高精度で観測できるとのことです。
http://iss.jaxa.jp/kiboexp/equipment/ef/calet/

>早稲田大学の浅岡陽一さんたちの研究チームは「CALET」が3年間で取得したデータから、50ギガ電子ボルトから10テラ電子ボルトでの宇宙線陽子スペクトルを調べた。従来は複数の測定方法によって得られていた、比較的大きなばらつきがあったデータを、単一測定器によって高精度に測定することに初めて成功した結果となる。

1電子ボルト(electron volt)は、エネルギーの単位で、記号はeVです。
電子が1Vの電位差により得るエネルギーが、1電子ボルトとなります。
この際、SI接頭辞の復習をしておくと、1000倍がキロkilo、100万倍がメガmega、10億倍がギガgiga、1兆倍がテラtera、1000兆倍がペタpetaです。
ちなみに、電子の質量はエネルギー換算で約0.5MeV(メガ電子ボルト)、陽子の質量は約938MeVです。

ここで、アストロアーツ掲載の「宇宙線陽子スペクトル」のグラフをご覧ください。
横軸が運動エネルギー(ギガ電子ボルト)で、目盛は10ギガ電子ボルトから100テラ電子ボルトまでありますが、範囲を示す灰色の帯は50ギガ電子ボルト〜10テラ電子ボルトとなっています。
縦軸は流束を表しますが、「エネルギーが大きくなるにつれ急激に小さくなる流束のスペクトル構造を詳細に調べるため、縦軸にはエネルギーの2.7乗が積算されてい」ます。

>近年の観測研究により、陽子スペクトルには、エネルギーに対する流束の減少割合が減っていく「スペクトル硬化」という変化が見られることが知られている。今回の結果はその現象を幅広い範囲で高精度に裏付けるものとなっている。

「縦軸にはエネルギーの2.7乗が積算されて」いるので、グラフがほぼ水平となっているのは「スペクトル硬化」を意味しています。

>今後はさらに高エネルギー側の宇宙線スペクトルの決定が進められ、超新星残骸による加速モデルの検証や限界の見積もりが研究されていく。また、CALETが取得した信頼性の高い宇宙線陽子スペクトルは、暗黒物質の間接探索や大気および宇宙ニュートリノ、ガンマ線天文学にも使用される重要なデータとして活用されることも期待される。

天文学の多くの分野でCALETのデータが活用されることを期待します。


★ 体調の悪い日があって投稿できなかったのですが、復調後もズルズルとサボリが続いてしまいました。

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