宇宙とブラックホールのQ&A

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数学

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数学関係の記事が多くなってきたので、「天文・物理」から独立させることにしました。読んでくれる人がどの程度いるか分かりませんけど(^^
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位相の初歩4

位相の初歩1:https://blogs.yahoo.co.jp/karaokegurui/70874772.html
位相の初歩3:https://blogs.yahoo.co.jp/karaokegurui/70879893.html
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 7.連結と弧状連結
連結というのは、「つながっている」ということです。
ここでは、連結とそれより強い弧状連結という2種類の概念をご紹介します。

・連結の定義 :
m次元空間mの部分集合Aについて、
  A = A1∪A2, A1 ≠ φ, A2 ≠ φ,
  Cl(A1)∩A2 = φ, A1∩Cl(A2) = φ
をみたす部分集合A1 とA2 がとれるならば、Aを不連結(disconnected)という。
不連結でない集合を連結(connected)という。

定理7-1 : 実数直線から 0 を取り除いてできる部分集合∖{0}は、不連結。
証明 : A1 = 〕−∞, 0〔, A2 = 〕0, +∞〔 ととればよい。//

孤立点をもつ集合は不連結です。
したがって、これまで見てきた例2、例3、例4はいずれも不連結です。

定理7-2 : 実数直線は連結である。
証明 : を部分集合AとBに2分割し、Aから1点a、Bから1点bをとる。
a<bとする。(a>bの場合はAとB、aとbを入れ替える。)
Aと右半開区間〔a,b〔 の共通部分をCとする。
  C =: A ∩〔a,b〔
Cは上に有界なので、実数の連続性(ワイエルシュトラスの定理)から上限(上界の最小値)が存在する。
それをcとすると、c ≦ b となる。
cは c∈A か c∈B のいずれか。
c∈A のとき、 〕c,b〔 ⊂ B なので、c∈ A∩Cl(B) であり、A∩Cl(B)≠φ.
c∈B のとき、c∈Cl(A) なので、c∈ Cl(A)∩B であり、Cl(A)∩B≠φ.
AとBのとり方は任意だったので、は連結である。//
(正直言ってお世辞にも分かりやすいとはいえませんが、改善できるようなら改善します。ただ、何年後になるかは不明(^_^)
(注) このブログでは順序構造を本格的に扱ったことはないため、有界、上界といった概念は初出なので、最低限紹介しておきます。
半順序集合Aにおいて、Aの元aがAの部分集合Bの上界であるとは、Bの任意の元x∈Bに対して、x≦aとなることです。
部分集合Bが上に有界であるとは、Bが少なくとも1つの上界をもつことです。
Bの上界全体の集合に最小値があるとき、それをBの上限といいます。
Bの上限は、Bに含まれる場合と含まれない場合とがあり、含まれる場合にはBの最大値となります。

定理7-3 : 開区間 〕a, b〔,閉区間〔a, b〕,左半開区間 〕a, b〕,右半開区間〔a, b〔,各種半直線〔a,+∞〔, 〕a,+∞〔, 〕−∞,a〕, 〕−∞,a〔 はいずれも連結である。
証明 : 前定理と同様。

定理7-4 : 連結集合の連続写像による像は、連結である。
証明 : n次元空間n の連結な部分集合をAとし、n からm次元空間m への連続写像を f とする。
f (A)の2分割をB,Cとする。
  f−1(B)∩ f−1(C) = φ, f−1(B)∪ f−1(C) = A
Aは連結なので、
  Cl( f−1(B))∩ f−1(C) ≠ φ または f−1(B)∩Cl( f−1(C)) ≠ φ
∴ f (Cl( f−1(B))∩ f−1(C)) ≠ φ または f ( f−1(B)∩Cl(f−1(C))) ≠ φ
f ( f−1(B))=B,f ( f−1(C))=C,任意の部分集合XについてCl( f−1(X))⊂ f−1(Cl(X))なので、
  Cl(B))∩C ≠ φ または B∩Cl(C) ≠ φ
となり、f (A)も連結となる。//

・道の定義 : 閉区間〔0,1〕からm次元空間mの部分集合Aへの連続写像 f が存在するとき、f の像 f (〔0,1〕)をA内の(path)といい、f (0)をその道の始点、f (1)を終点という。

・弧状連結の定義 : m次元空間m の部分集合Aについて、Aに属す2つの点pとqをどのように選んでも、pを始点、qを終点とするA内の道が存在するとき、Xは弧状連結(path-connected)であるという。

定理7-5 : 弧状連結な集合は、連結である。
証明 : m次元空間m の弧状連結な部分集合Aにおいて、2分割B,Cを考える。
  A=B∪C,B∩C=φ,B≠φ,C≠φ
Bに属す点pとCに属す点qをとる。
Aは弧状連結なので、pを始点としqを終点とする道Tが存在する。
道Tを次のように2分割する。
  TB = T∩B, TC = T∩C
道Tは連結集合〔0,1〕の連続写像による像なので、連結。したがって、
  Cl(TB)∩TC ≠ φ あるいは TB∩Cl(TC) ≠ φ
のいずれかが成り立つ。
BとCのとり方は任意だったので、Aは連結。//

この定理の逆は必ずしも成り立ちません。
2次元平面2において「トポロジストのサインカーブ」と呼ばれる次の部分集合Aは連結ですが、弧状連結ではありません。
  A = B∪C, B = {(x,y)|x=0,−1≦y≦1},
           C = {(x,y)|0<x,y=sin(1/x)}
Bは原点を中心に上下に延びる長さ2の線分です。
Cは、xが正の範囲で定義され、x=2/π≒0.637 で 1 をとり、それより右側では正の値をとりながら緩やかに減少してx軸に漸近し、x=2/πより左側では 1 と−1 の間を振動し、x=0 に近づくにつれて振動がどんどん激しくなる曲線です。
BとCはいずれも弧状連結ですが、Aは弧状連結ではありません。

本節でこれまでみてきたや各種区間は、いずれも連結であるだけでなく、弧状連結でもあります。

定理7-6 : 弧状連結集合の連続写像による像は、弧状連結である。
証明 : n次元空間n の弧状連結な部分集合をAとし、n からm次元空間m への連続写像を f とする。
Aの f による像 f (A)の任意の2点x,yについて逆像 f−1(x) と f−1(y) のうちからそれぞれ1点をとり、それをaとbとする。
  a∈ f−1(x), b∈ f−1(y)
Aは弧状連結なので、〔0,1〕からAへの連続写像g:〔0,1〕→A が存在する。
gは〔0,1〕から f (A)への連続写像となるので、f (A)も弧状連結である。//

定理7-7 : 平面2 と、2 から1点aを除いた集合2∖{a}はいずれも弧状連結であり、したがって連結である。
証明 : 平面2 上の2点は必ず線分で結ぶことができるので、弧状連結である。
また、2∖{a}上の2点xとyは、その中間にちょうど点aがあると線分で結べないが、その場合には中間にない別の1点zをとり、xとz、zとyをそれぞれ線分で結ぶことができるので、弧状連結である。//

さて、連結という概念がどのように役に立つのか示したいと思います。
集合論によれば、直線と平面2 の間には1対1対応(全単射)が存在し、両者は同じ濃度(連続体濃度 2^ℵ0 )です。
それなら、両者はどのように異なるのでしょうか?

定理7-8 : 直線と平面とは同相でない
証明 : 平面2 から直線への全単射 f : 2 が連続であると仮定する。
連続写像は、連結集合を連結集合に写す。
2∖{a}は連結。
その像 f (2∖{a})は、から1点 f (a)を除いた集合∖{f (a)}になるが、後者は不連結であり、矛盾。
連続な全単射が存在しないので、直線と平面2 は同相ではない。//

同様に、
・n≠mの場合、n次元ユークリッド空間n とm次元ユークリッド空間m とは同相でない。
証明としては、たとえばm=2のとき、2 は平面なので、平面を2分する直線や円周を上の証明の1点の代わりとすればよいように思えます。
しかし、全単射により点は必ず点に写されますが、直線などの像は必ずしも直線などにならないため、証明はそれほど容易ではないとのことです。


 8.今後の展望
以上で、位相の初歩についてはご紹介できたと思います。
この後、続編で次のテーマを取り上げたいと考えていますが、例によっていつになるかは分かりません。
・ 一般的な位相空間の定義
・ 有限位相空間の例(元の数が4まで)
・ 可算無限位相空間の例
・ 位相の順序
・ 分離の諸公理
・ コンパクトと局所コンパクト
・ 一様空間


★ 位相の初歩1〜3のナイスボタンを押していただいた方、ありがとうございました。このブログの数学関係の記事を読んでくださる方はそもそも少ないので、大変励みになりました。

位相の続編の前に順序構造をちゃんと取り上げるべきかとも思い、迷っています。
ちなみに、元の数が4の位相空間は354個あり、同型の違いを除くと32種類です。
また、元の数が4の半順序集合は205個あり、同型の違いを除くと13種類です。
百均で買ってきた小さいノートにリストアップし勘定しているときは楽しいのですが、終わるとブログに載せなくてもいいかな、という気分になってしまいます(^_^

位相の初歩3

位相の初歩1:https://blogs.yahoo.co.jp/karaokegurui/70874772.html
位相の初歩2:https://blogs.yahoo.co.jp/karaokegurui/70875782.html
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 5.開集合と閉集合
本稿ではε-近傍により位相空間を定義していますが、一般的な位相空間は開集合により定義します。
そこで、ε-近傍による開集合と閉集合の定義を示すこととします。

・ 開集合の定義 :
ある集合Aが自らの内部と一致するとき、Aを開集合(open set)という。
「開集合とは、縁なし集合のこと」。

Int(Int(A))=Int(A) なので、mにおけるどんな部分集合の内部も開集合となります。

実数直線において、すべての開区間は開集合です。
  〕a, b〔 =: {x∈R|a<x<b}

m次元空間mにおいて、点pのε-近傍とはpから距離a未満の点の集合
  U(q;ε) = {x∈m||x−p|<a}
のことでした。
本節以降では、これを半径aの開球(open ball)ともいうことにします。
m次元空間mにおいて、すべての開球は開集合です。
開区間は、1次元における開球です。

・ 閉集合の定義 :
ある集合Aが自らの閉包と一致するとき、Aを閉集合(closed set)という。
「閉集合とは、縁付き集合のこと」。

Cl(Cl(A))=Cl(A) なので、mにおけるどんな部分集合の閉包も閉集合となります。

定理5-1 : 開集合の補集合は、閉集合である。
       閉集合の補集合は、開集合である。

実数直線において、すべての閉区間は閉集合です。
  [a, b] =: {x∈|a≦x≦b}

m次元空間mにおいて、ある点pから距離a以下の点の集合
  U(q;ε) =: {x∈m||x−p|≦a}
を半径aの閉球(closed ball)といいます。
m次元空間mにおいて、すべての閉球は閉集合です。
閉区間は、1次元における閉球です。

それでは、開集合と閉集合の例を挙げていきましょう。
ただし、εは正の定数で、xは変数です。

定理5-2 : m次元空間mにおいて、
・ 全空間と空集合は、ともに開集合である。
・ 2つの開集合AとBについて、共通部分A∩Bは開集合である。
2つの集合に関する演算を繰り返せば、有限個に関する演算についても同じことがいえるので、
・ 有限個の開集合たちの共通部分は、開集合である。
・ 開集合たちの合併は、開集合である。
  0≦x<ε U(q;x) = U(q;ε)

しかし、
・ 開集合たちの共通部分は、開集合にならず、閉集合になる場合がある。
  0≦x<ε U(q;x) = C(q;ε)

定理5-3 : m次元空間mにおいて、
・ 全空間と空集合は、ともに閉集合である。
・ 2つの閉集合AとBについて、合併A∪Bは開集合である。
2つの集合に関する演算を繰り返せば、有限個に関する演算についても同じことがいえるので、
・ 有限個の閉集合たちの合併は、閉集合である。
・ 閉集合たちの共通部分は、閉集合である。
  0≦x<ε C(q;x) = C(q;ε)

しかし、
・ 閉集合たちの合併は、閉集合にならず、開集合になる場合がある。
  0≦x<ε C(q;x) = U(q;ε)

以上から、開集合と閉集合は、有限個の合併と共通部分の演算について同じ性質をもっていますが、無限個ある場合には違いが出てくることが分かります。

また、
集合Aに含まれる開集合すべての合併は開集合であり、
集合Aを含む閉集合すべての共通部分は閉集合なので、
定理5-4 :
・ 集合Aの内部 Int(A) は、Aに含まれる開集合の中で最大である。
・ 集合Aの閉包 Cl(A) は、Aを含む閉集合の中で最小である。


 6.連続写像と同相写像
連続写像は、位相空間の圏における射として重要です。

・ 連続写像の定義 :
Aをn次元空間nの部分集合、Bをm次元空間mの部分集合、点pをAに含まれる点とする。
AからBへの写像 f :A→Bが次の条件をみたすとき、f は点pで連続であるという。
すべてのεに対して少なくとも1つのδが存在して、Aにおける点pのδ-近傍の f による像がBにおける f (p)のε-近傍に含まれる。
  f (UA(p;δ)) ⊂ UB( f (p);ε)
意味は「Bで f (x)が f (p)にいくらでも近くなるよう、Aで点xを選ぶことができる」。
AからBへの写像 f :A→BがAに含まれるすべての点で連続であるとき、f を連続写像(continuous mapping)という。

悪名高きε-δ(エプシロン・デルタ)論法です(^_^
(『ε-δに泣く』という本も出ています。石谷茂著、現代数学社)
少しでも理解しやすくするために、工学的な表現も紹介しましょう。
「x∈Aを制御変数、y∈Bを被制御変数とする。
xをうまく制御することにより、誤差 f (p)− f (x) をいくらでも小さくすることができる。」

AもBも実数直線かその区間であるとき、関数 f は平面グラフで表示できますが、f が連続ならばグラフはつながった線になります。

定理6-1 :
A,B,Cをそれぞれ実空間nmlの部分集合とする。
写像 f :A→B,g:B→Cがいずれも連続ならば、合成写像gfも連続である。
標語「連続写像の合成は連続写像」。

定理6-2 :
・ 開集合の連続写像による逆像は、開集合である。
・ 閉集合の連続写像による逆像は、閉集合である。

しかし、
・ 開集合の連続写像による像は、必ずしも開集合でない。
・ 閉集合の連続写像による像は、必ずしも閉集合でない。

例を挙げます。
実数直線からへの2乗関数 f (x)=x2は、連続です。
開集合 〕1,4〔 の f による逆像は、 〕−2,−1〔 ∪ 〕1,2〔 で、開集合です。
しかし、開集合 〕−1,1〔 の f による像は、〔0,1〔 であり、開区間(開集合)ではなく右半開区間です。

定理6-3 : A,Bをそれぞれn次元空間n,m次元空間mの部分集合とし、f をnからmへの連続写像とすると、次の関係が成り立つ。
(1) f (Int(A)) ⊃ Int( f (A))
(2) f (Cl(A)) ⊂ Cl( f (A))
(3) f−1(Int(B)) ⊂ Int( f−1(B))
(4) f−1(Cl(B)) ⊃ Cl( f−1(B))

例を挙げます。
(1)において、f として2乗関数 f (x)=x2、Aとして閉区間〔−1,1〕をとります。
Int(A)= 〕−1,1〔,f (Int(A))=〔0,1〔,f (A)=〔0,1〕,Int( f (A))= 〕0,1〔.
(3)において、f として2乗関数 f (x)=x2、Bとして閉区間〔0,1〕をとります。
Int(B)= 〕0,1〔,f−1(Int(B))= 〕−1,1〔−{0},f−1 (B)=〔−1,1〕,
Int( f−1(B))= 〕−1,1〔

・ 同相写像の定義 : Aをn次元空間nの部分集合、Bをm次元空間mの部分集合とする。
AからBへの写像 f :A→Bは次のa〜cをみたすとき、位相同型写像あるいは同相写像(homeomorphism)であるという。
 a.f は連続
 b.f は全単射
 c.f の逆写像f−1も連続
また、このときAとBは同相であるという。
意味は「AとBは位相的に同型である」。

定理6-4 : 開区間 〕−1,1〔 と実数直線は同相である。
証明 : −1<x<1 に対して関数 f : 〕−1,1〔 →Rを
  f (x) =: x/(1−x2)
と定義すると、f は連続関数。
また、−1<x1<x2<1 のとき、f (x1) < f (x2) となるから、単射である。
さらに、任意の実数yに対して
  y≠0 のとき、x= (−1+√(4y2+1))/2y
  y=0 のとき、x=0
となるから、全射である。
逆写像f−1は、y≠0 においては明らかに連続である。
また、0 の近傍において
  x = (−1+√(4y2+1))/2y = (4y2+1−1)/2y(1+√(4y2+1))
    = 4y2/2y(1+√(4y2+1)) = 2y/(1+√(4y2+1))
∴ yが正のとき0<x<y、yが負のときy<x<0 となり、yが 0 に近づくにつれてxも 0 に近づくので、0 においても連続であることが分かる。//証明終わり

この定理は、前後に無限に伸びる無限直線と任意の有限開区間がトポロジー的には同じだということを示しています。
こういう点がトポロジーの醍醐味ですが、ちゃんと証明するのはやっぱり面倒ですね(^^;

--------------------- 続 く ---------------------

★ あと少しで終わりなのですが、くたびれたので、今回はここまでにします。

位相の初歩2

位相の初歩1:https://blogs.yahoo.co.jp/karaokegurui/70874772.html
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 3.内部、外部、境界、閉包――位相の諸概念1
位相の性質はどの空間で考えられているかで変わってくるので、その点に注意しながら議論を進める必要があります。

・ 内点と内部の定義 :
空間mの部分集合Aと点pについて、ある正の数εがあって
  U(p;ε) ⊂ A
となるならば、pはAの内点(interior point)であるという。
意味は「pに十分近い点がAに含まれる」。
Aの内点全体の集合をAの内部(interior)あるいは開核といい、Int(A) と書く。
「Aの内部とは、Aから縁を取り去った残りのこと」

内部の双対概念は後で出てくる閉包であり、「閉」という字が含まれているので、「開」という字を含む開核という訳語もありますが、日常的に使われていて直感的に分かりやすい内部の方が適切だと思います。

Aの内部は、Aに含まれます。
  Int(A) ⊂ A.

例1 : 実数直線において、左半開区間 〕0, 1〕 の内部は開区間 〕0, 1〔 ={x∈R|0<x<1}.
例2 : 実数直線において、数列1/nの内部は空集合φ.
例3 : 実数直線において、有理数集合の内部は空集合φ.
例4 : 実平面2において、該当集合の内部は半径1の円の内部から原点を除いたもの。
  {(x, y)|0<√(x2+y2)<1}.

・ 外点と外部の定義 :
空間mの部分集合Aと点pについて、ある正の数εがあって
  U(p;ε)∩A = φ
となるならば、pはAの外点(exterior point)であるという。
(意味は「pはAと離れている」)
Aの外点全体の集合をAの外部(exterior)といい、Ext(A) と書く。

Aの外部は、Aの補集合の内部。
  Ext(A) = Int(¬A)
Aの外部は、Aの補集合に含まれます。
  Ext(A) ⊂ ¬A.
Aの内部は、Aの補集合の外部。
  Int(A) = Ext(¬A)

例1 : 実数直線において、左半開区間 〕0, 1〕 の外部は 〕−∞, 0〔 ∪ 〕1, ∞〔.
例3 : 実数直線において、有理数集合の外部は空集合φ.

・ 境界点と境界の定義 :
空間mの部分集合Aと点pについて、pがAの内点でも外点でもないとき、pはAの境界点(boundary point)であるという。
どんな正の数εに対しても、
  U(p;ε)∩A ≠ φ,U(p;ε)∩¬A ≠ φ
意味は「pはAにも¬Aにも十分近い」。
Aの境界点全体の集合をAの境界(boundary)といい、Bd(A) と書く。

Aの境界点は、Aに含まれる場合も含まれない場合もあります。
Aの点は、内点であるか境界点であるかのどちらかです。
¬Aの点は、外点であるか境界点であるかのどちらかです。

例1 : 実数直線における左半開区間 〕0, 1〕 の境界は、2点集合{0, 1}.
例2 : 実数直線における数列1/nの境界は、数列自身∪{0}.
例3 : 実数直線において、の境界は自身.
例4 : 実平面2において、該当集合の境界は、原点を中心とする半径1の円周∪{原点,(2, 0)}.

・ 空間の3分割と4分割
空間mは、部分集合Aを基準にして内部 Int(A),境界Bd(A),外部Ext(A)に3分割されます。
Bd(A)は、さらにAに含まれる部分と¬Aに含まれる部分とに分かれるので、
空間は、Int(A),Bd(A)∩A,Bd(A)∩¬A,Ext(A)に4分割されます。

・ 閉包の定義:
空間mの部分集合Aについて、すべてのε近傍がAの点を少なくとも1つ含むような点の集合をAの閉包(closure)といい、Cl(A)と書く。
  Cl(A) =: {x|U(p;ε)∩A ≠ φ}
意味は「Aに十分近い点の集合」。

Aの閉包はAを含みます。
  A ⊂ Cl(A)

閉包は、これまで出てきた他の概念と次のような関係にあります。
  Cl(A) = A∪Bd(A) = Int(A)∪Bd(A) = ¬Int(¬A) = ¬Ext(A).
つまり、全空間mは、Aの閉包Cl(A)と外部Ext(A)に2分割されます。

また、部分集合の関数として、内部と閉包は双対的な関係にあります。
ただし、包含関係⊂は向きを逆転する必要があります。
(なお、代数学でも、部分集合Aを含み問題とする演算について閉じている最小の集合をその演算に関するAの閉包と呼ぶ場合があります。)

例1 : 実数直線における左半開区間 〕0, 1〕 の閉包は、閉区間[0, 1].
例3 : 実数直線において、の閉包は自身.


 4.集積点、孤立点――位相の諸概念2
点列(数列)の収束・極限という概念を一般化したものが、集積点です。

・ 集積点と導集合の定義:
空間mの部分集合Aと点pについて、どんな正の数εをとっても、pのε-近傍がAに属す点を無数に含むならば、点pをAの集積点(accumulation point)という。
意味は「pの近くにはAの無数の点がある」。
無理やり記号で書くと、
  |U(p;ε)∩A| ≧ ℵ0
ただし、|A|は集合Aの濃度とする。
Aの集積点全体の集合をAの導集合(derived set)といい、A’と書く。

Aの集積点は、Aに含まれる場合も含まれない場合もあります。
Aの内点は、すべてAの集積点です。
Aの境界点は、Aの集積点である場合もそうでない場合もあります。
Aの導集合は、Aの内部を含みAの閉包に含まれます。
  Int(A) ⊂ A’⊂ Cl(A)

例2 : 実数直線において、1/n数列の集積点は 0 だけ。
数列のどの点も自らの集積点ではありません。
例3 : 実数直線において、の導集合は自身。

・ 孤立点の定義:
空間mの部分集合Aと点pについて、ある正の数εがあって
  U(p;ε)∩A = {p}
となるならば、pはAの孤立点(isolated point)であるという。
意味は「pの十分近くにはp以外のAの点は存在しない」。

Aの孤立点は当然Aに属しますが、内点ではなく、境界点です。

例1 : 実数直線において、左半開区間 〕0, 1〕 は孤立点をもたない。
例2 : 実数直線において、数列1/nのすべての点は孤立点。
例4 : 実平面2において、該当集合の孤立点は(2, 0)。補集合の孤立点は原点(0, 0)。

・ 空間の3分割と6分割
mにおいて、ある点pが集合Aの集積点でも孤立点でも外点でもないと仮定します。
このときあるεについて、U(p;ε)∩Aは有限個の要素を含みますが、そのうち最も近いものとの距離をあらためてεと置けば、孤立点ではないからε≠0なのでU(p;ε)∩A=φとなり、これは矛盾。
∴ 空間のどの点もAの集積点か孤立点か外点のいずれか。
したがって、空間mは、部分集合Aを基準として導集合A’、Aの孤立点の集合、外部Ext(A)に3分割されます。

これまで出てきた諸概念を組み合わせると、
空間mは、集合Aを基準として6分割することができます。
     B
───┬───
   C │ D  
───┼───
   E │ F 
───┴───
     G

A     : B∪C∪D
¬A    : E∪F∪G
Aの内部  : B
Aの境界  : C∪D∪E∪F
Aの外部  : G
Aの孤立点 : D
Aの導集合 : B∪C∪E∪F
¬Aの孤立点 : F
Aの閉包  : B∪C∪D∪E∪F

例4 : B={x|0<|x|<1} (円の内部),
  C={x|x=(cost,sint),0≦t<π}(円周の上半分。ただし右端の点を含み、左端の点を除く),
  D={(2, 0)} (孤立点),
  E={x|x=(cost,sint),π≦t<2π}(円周の下半分。ただし左端の点を含み、右端の点を除く)、
  F={(0, 0)} (補集合の孤立点)
実は、この6分割の例示を出したくて、例4を考えたのです(^_^

-------------------- 続 く -------------------

位相の初歩1

目次
 0.はじめに
 1.距離と距離空間
 2.近傍
 3.内部、外部、境界、閉包――位相の諸概念1
 4.集積点、孤立点――位相の諸概念2
 5.開集合と閉集合
 6.連続写像と同相写像
 7.連結と弧状連結
 8.今後の展望


 0.はじめに
数学のうちでも位相という分野は、日常用語として使う
・近い、遠い
・内、外、端・境目・縁(ふち、へり)
・つながっている・接している、切れている・離れている
・どんどん近づく、
といった概念を厳密化したものと考えることができます。
幾何ではこういった概念が不可欠ですし、解析学での極限・収束も「どんどん近づく」ことなので,位相に属します。
これまでこのブログでは、抽象的な数学のうち代数系は有限群、有限環などについてかなり取り上げたものの、位相はほとんど触れていませんでした。
位相は有限空間どころか可算無限空間でも議論する意味はほとんどないし、開集合による位相空間の抽象的定義を書いてもイメージがさっぱり湧かないだろうと思ったからです。
ところが、最近次の本を読むと位相の入り口的な部分について書いてあったので、それを参考にして自分なりにまとめてみました。
・藤田 博司 著 『「集合と位相」をなぜ学ぶのか』 技術評論社 A5判224頁 2018年3月発行
ただ、あくまで一部参考にしただけで同書の紹介ではありません。

なお、数学でいう位相は、物理の波動でいう位相とはたまたま日本語訳が同じですが、全く無縁です。
波動の位相はphaseフェイズですが、数学の位相はtopologyトポロジーです。

ここで集合論の復習をしておきます。
空集合φとは、元(要素)を1つももたない集合のことです。
  φ = { }
一番基本的で大事な集合の1つなので、中身が空っぽだからといって「このピーマン野郎め!」とバカにしないでくださいね(^_^
2つの集合の合併とは、両者の少なくともどちらかに含まれる元を含む集合です。
  A∪B = {x|x∈Aまたはx∈B}
2つの集合の共通部分とは、両者のいずれにも含まれる元を含む集合です。
  A∩B = {x|x∈Aかつx∈B}
合併を和集合と呼び、共通部分を積集合と呼ぶ流儀もありますが、圏論的には集合圏の和は直和、積は直積となるので、本ブログでは紛れのないよう、合併と共通部分という用語を採用します。

集合Aの分割を、Aの部分集合の族Ai (i∈I) で、次の性質a〜cをもつものと定義します。
a.A = ∪i∈ I Ai
b.i,j ∈ I ,i ≠ j ならば、Ai ∩Aj =φ
c.すべての i ∈ I について、Ai ≠φ

開区間は(a,b)で表すことが多いのですが、順序対と区別できず混乱するので、ここでは ]a,b[ で表すことにします。


 1.距離と距離空間
実数直線上の2点p,qの距離d(p, q)は次のように定義されます。
  d(p, q) = |p−q|
ただし、|x|は数xの絶対値を意味します。

次に2次元平面2上の2点pとqを
  p = (x1, x2),q = (y1, y2
とするとき、pとqの距離d(p, q)は次のように定義されます。
  d(p, q) = √((x1−y1)2 +(x2−y2)2)
これはピタゴラスの定理と同じことで、小学校以来習ってきた距離です。
この式を使えば、方眼紙にプロットした2点間の距離を、実際に測ることなく、マス目を勘定して計算するだけで求めることができます。

これを一般化して、m次元空間m上の2点pとqを
  p = (x1 , ・・・, xm),q = (y1, ・・・, ym
とするとき、pとqの距離d(p, q)は次のように定義されます。
  d(p, q) = √((x1−y1)2 +・・・+(xm−ym)2)
       = √(Σi=1→n(xi−yi)2)

m=2のときは当然2次元平面のときと一致します。
m=1のときは一見最初の実数直線のときと形が違うように見えますが、
  √((x1−y1)2) = |x1−y1| = |p−q|
となるので、一致します。

以上のように定義された関数d(p, q)は次のような性質をもっています。
a’.d(p, p) = 0           自分自身までの距離はゼロ
b’.p≠q ならば d(p, q) > 0  異なる点までの距離は正の実数
c.d(p, q) = d(p, q)        行きと帰りの距離は同じ
d.d(p, q) ≦ d(p, r) +d(r, q)  寄り道すると距離は増える

通常、数学では不等号として > より ≧ を好むので、1’と2’を合わせ言い換えて次のように整理します。
a.非負性 :   d(p, q) ≧ 0         (距離は零か正)
b.非退化性 :  p = q ⇔ d(p, q) = 0  (⇔は論理的同値を意味する)
              (自分自身までの距離は零、かつ距離が零の相手は自分だけ)
c.対称性 :   d(p, q) = d(p, q)
d.三角不等式 : d(p, q) ≦ d(p, r) +d(r, q)
逆に、一般の集合Xにおいて2変数の実数値関数d(p, q)が定義されて、上のa〜dの公理を満たすとき、Xを距離空間(metric space)といい、d(p, q)を距離関数といいます。

ここで、上のa〜dの公理をみたす、m次元空間mにおけるさまざまな距離の定義を見ていこうと思います。
これまでみてきた普通の距離は、次の式で定義されました。
  d2(p, q) = √(Σi=1→m(xi−yi)2)
これを、この後出てくる他の距離と区別するため、m次元ユークリッド距離といいます。
m次元ユークリッド空間というときは、mにユークリッド距離を入れたものを意味します。
2乗をk乗に一般化したものが、k-乗平均距離
  dk(p, q) = (Σi=1→n(xi−yi))1/k
です。
k=1の場合はどうなるかというと、
  d1(p, q) = Σi=1→n|xi−yi
となり、マンハッタン距離、都市ブロック距離、市街地距離などと呼ばれ、これを使った幾何学をタクシーの幾何といいます(^_^
ただし、|x|はxの絶対値を表します。
逆に、kを大きくした極限では
  dmax(p, q) = maxi=1→n|xi−yi
となり、これはチェビシェフ距離と呼ばれます。
これらの距離の間には、kが小さい距離ほど大きい値となるという関係があります。
  dmax(p, q) ≦ dk(p, q) ≦ d2(p, q) ≦ d1(p, q) ≦ ndmax(p, q)
ただし、k≧3。

これまで次のように一般化を進めてきました。
  実数直線と2次元平面の距離 → m次元空間の距離 → 一般的な距離空間
さらに、一般的な位相空間に進みたいのですが、あまりにも抽象的すぎて実感が伴わないと思うので、その前に具体的な例示を使いながら位相に関する諸概念に馴染んでいきたいと思います。
以下、本稿ではm次元ユークリッド空間で考えます。
例としては、次の4つを主に使います。

例1 : 実数直線における左半開区間 〕0, 1〕 = {x∈|0<x≦1}.
半閉区間と呼んでもよいように思うのですが、半開区間と呼ぶのが通例です。
日常用語でも、半開きとは言うけど、半閉まりとは言いませんからね(^_^
例2 : 実数直線における数列 xn = 1/n(n=1,2,・・・).
この数列は、x1=1,x2=1/2,x3=1/3,・・・と、どんどん小さくなって0に近づいていきます。
例3 : 実数直線における有理数全体の集合
例4 : 平面2における次の点集合
  {(x, y)|0<√(x2+y2)<1} ∪ {(cos(t), sin(t))|0≦t<π} ∪ {(2, 0)}.
原点を中心とする半径1の円の内部と円周の上半分。ただし、右端(1, 0)は含むが左端(−1, 0)は含まない。また、原点(0, 0)は含まず、円から離れた1点(2, 0)を含む。
わざと変な集合にして、後で出てくる諸概念をうまく識別できるようにしてあります。

・全空間の2分割
m次元空間mにおいて集合Aを考えます。
mにおいてAに含まれない点の集合をAの補集合といいます。
mにおけるAの補集合は通常 m∖A あるいは m−A と書きますが、ここでは短く
  ¬A
と書くことにします。
すると、全空間は、Aと¬Aに2分割されます。
この2分割自体は位相とは無関係ですが、3節以降で出てくる分割との対比のために取り上げました。


 2.近傍と連続写像、同相写像
位相の基礎的な諸概念のうちで、私が最も重要だと思うのは近傍です。
近傍(きんぼう)とは、ある点(や集合)の「近く」という日常用語を抽象化・厳密化したものです。
単に「点xの近く」といっても、どのくらい近くかははっきりしませんが、距離が定義されていれば「点xから距離ε未満の距離にある」と明確化することができます。

・ε-近傍の定義:
m次元空間mの点qと正の数εに対して、qからε未満の距離にある点の集合
  {x∈m|d(x, q)<ε}
を、mにおける点qのε-近傍と呼び、U(q;ε)と書く。
点qの近傍とは「qに十分近い点の集合」を意味し、近さの程度を示すために「ε-」が付いています。

いくつか注意点を述べておきます。
a.εが正の実数なので、ε-近傍はεに対応して無数にあります。
特定のε-近傍を取り上げることはほとんどなく、「どんなε-近傍に対しても」か「あるε-近傍に対して」という形で現れるのが普通です。
b.実は、近傍の定義にとって距離は不可欠ではありませんが、距離が定義されているmでは近傍の定義としてε-近傍は自然です。
一般的な近傍の定義は、別稿でご紹介します。
c.日常用語では「点qの近く」にq自身は含まれませんが、上の定義では含まれます。
qに最も近いのはq自身です。
順序で「<」より「≦」を好むのと同様で、その方が論理的には自然なのです。
d.日常用語では「近く」と「遠く」は反対概念なのだから、「近く」ではなく「遠く」¬U(q;ε)を基本にしても同じように思えますが、「遠く」は自然とはいえません。
なお、イメージでいうと、後でみるように「十分近い」の反対は「離れている」となります。

----------------------- 続 く ---------------------

以前、このブログでジョンソン立体のご紹介をしました。
https://blogs.yahoo.co.jp/karaokegurui/68080663.html
ジョンソン立体とは、正多角形の面だけからなる立体のうち正多面体、半正多面体、正角柱、反正角柱以外のもので、J1〜J92まで全部で92種類あります。
次の多面体ギャラリーのn01〜n92がそれに当たります。
http://flashs.goraikou.com/gallery/polyhedron3d/polyhedronFrame.html

92種類のジョンソン立体のうち、私が第3グループに分類したJ84〜J92の9種類は基本的に他の多面体とは無関係であり、とりわけ分かりづらく、またその分興味を引く立体です。
そのうち6種類の和名に「球形屋根」という用語が含まれています。
私の以前の理解は、スティーブン・ダッチさんのサイトの解説に基づいており、球形屋根とは英名のCoronaのことだと理解していました。(ダッチさんのサイトは今は削除されています。)

しかし、J86球形屋根以降の英名についてよく考えてみると、どうも違うと思うようになりました。
番号 和名            英名           ダッチさんの記号  .
J86:球形屋根         Sphenocorona          V2N2
J87:側錐球形屋根      Augmented sphenocorona   
J88:長球形屋根       Sphenomegacorona       V2M2
J89:広底長球形屋根    Hebesphenomegacorona     U2M2
J90:5角錐球形屋根     Disphenocingulum        (V2)2G2
J92:3角広底球形屋根丸塔 Triangular hebesphenorotunda U3R3

英名をみると、J86球形屋根は、 sphenoとcoronaという2つの部分から構成されています。
Sphenoは、ギリシャ語起源の接頭辞で、英語ではスフィーノウと読み、「楔(くさび)(形、状)の」という意味です。
一方、coronaは、ラテン語起源で、英語ではコウナと読み、この場合は「冠(かんむり)状のもの」という意味だと思います。
Sphenoの頭にはhebe(ービ)が付きます(J89, J92)。
これはギリシャ語起源で「思春期、青春期」の意味の接頭辞と辞書には載っていますが、それがなぜ広底という意味になるのかは不明です。
Coronaの頭にはmega(ガ)が付きます(J88, J89)。
これもギリシャ語起源で、よく知られている通り一般的には「大きな、巨大な」を意味しますが、この場合は「大」よりも従来からの訳語「長」の方が適当だと思います。

一方、立体の形をみると、J86球形屋根はV2とN2という2つの部分から構成されています。
ジョンソン立体のうち第1グループと第2グループでは2つあるいは3つの単位立体からなるものも多かったのですが、この場合はJ86自体が単位立体なのでそういう分解はできません。
V2は、互いに1辺で接する正方形2枚とそれらの脇に挟まれた正3角形片側2枚、両側合わせて4枚を組み合せた“部品”です。
閉じていないので立体とはいえず、また価数4以上の頂点があるので形もそれだけでは確定しません。
N2は、残りの正3角形8枚からなる同様の“部品”です。
V2、N2とも2という添字が付いていますが、これは対称性を表し、「1/2回転すると元に戻る」ことを意味します。
これら以外のM2,G2,N2,U2,U3,R2,R3,L2も、“部品”である点と回転対称性については同様です。

sphenoとcoronaはV2とN2に対応しているはずですが、どっちがどっちかでしょうか?
J86とJ88を比べると、共通するsphenoに対応するのはV2です。
一方、J88とJ89を比べると、共通するmegacoronaに対応するのはM2です。
M2は、正3角形12枚からなる“部品”です。
したがって、coronaに対応するのはN2であることが分かります。
また、U2は、□□□のように並んだ正方形3枚とそれらの脇に挟まれた正3角形片側3枚、両側合わせて6枚からなる“部品”です。

“部品”の名前の付け方を考えてみます。
V2とU2は、VとUという文字の形が正方形の並び方に似ていることから付けられていると思います。
一方、N2とM2はどちらも正3角形だけからなりますが、正3角形たちのなす稜の一部がつくる形を表しているのではないかと思います。当然、正3角形8枚のN2より同12枚のM2の方が複雑になっています。

J90 5角錐球形屋根は、和名と英名が対応していません。
英名のdisphenocingulumのdi-はダイと読み、「2つの」を意味するギリシャ語起源の接頭辞で、この場合はV2が2つ向かい合っていることを意味します。
それらの間に挟まれた正3角形12枚は、いびつな帯をつくっており、これがG2です。
(正6角反柱の側面と似ていますが、こちらはいびつな点が違います。)
Cingulum(スィンギュラム)は、帯状のものを意味します。
全部で4つある5角錐は確かにこの立体の特徴の一つではありますが、それよりもsphenoが2つあることの方が重要だと思います。

J92 3角広底球形屋根丸塔では、丸塔部分(rotundaロンダ)R3を取り除いたものがU3で、triangular hebesphenoです。
U3は、中央に正6角形1枚があり、その辺1つおきに正方形が全部で3枚付いています。
U2の真ん中の正方形を正6角形に置き換えたものを考えると、U3という記号も納得できます。
R3とU3の下添字3は、どちらも3回回転対称性を表します。

さて、球形屋根という訳語の問題に戻ると、sphenocoronaという英名がV2N2という部品からなることを意味していたのと比べ、球形屋根という和名は球形と屋根に分かれるわけでもなく、部品に対応していません。
また、何を意味するのかも不明です。
そこで、大変僭越ではありますが、私から新たな訳語を提案したいと思います。

一番基本となるJ86 sphenocoronaの和名として「冠舟」を提案します。
「冠」はcorona、「舟」はsphenoに対応します。

Coronaの訳語「冠」は本来の意味でもあり、あまり抵抗はないかと思います。
正3角形8枚からなる“部品”です。
J88のmegacoronaは、正3角形12枚からなる“部品”で、訳語は「長冠」とします。

Sphenoは本来の意味は「楔(くさび)」ですが、J86の正方形2つがつくる二面角はかなり大きく楔らしくありません。
また、楔という訳語を採用した場合にhebesphenoの訳となる広底楔あるいは類似の訳語は日本語として意味不明ですし、正方形が3つ並んだ形を楔というのはいかにも無理があります。
なお、英語で楔を意味する通常の単語はwedge(ウェッジ)で、こちらはいかにも楔っぽいニアミス立体などで出てきます。

Sphenoの訳語候補として「屋根」も検討してみました。
これだと、今までの訳語である球形屋根の一部を残したことにもなりますし。
ただそうすると、J86は冠と屋根となり、どちらも上にかぶさる物で、競合感があります。
また、hebeを広底ないしその類語に訳すと、屋根に底という形容が付いて形容矛盾になります。

「舟」にすれば、下に来るので、冠との競合感はありません。
「船」だと豪華客船とか大型タンカーなど立派すぎる印象のものもある(^_^ので、簡易な「舟」にしました。
Sphenocoronaは英名の順番なら「舟冠」となりますが、上下が逆さまになるので、ひっくり返して「冠舟」とします。
また、hebesphenoは、広底舟ではなく平底舟とします。
これは、舟を下にしたときJ90の真ん中の正方形やJ92の真ん中の正6角形が“水平”になることを意味します。

以上に基づき、J86〜J90、J92の新訳語を列挙します。(参考までにJ91も最後に載せておきます。)
番号  英名                新和名      旧和名           記号 .
J86 sphenocorona            冠舟       球形屋根        V2N2
J87 augmented sphenocorona     側錐冠舟    側錐球形屋根     J86+Y4
J88 sphenomegacorona         長冠舟      長球形屋根       V2M2
J89 hebesphenomegacorona      長冠平底舟   広底長球形屋根    U2M2
J90 disphenocingulum         双舟帯       5角錐球形屋根    (V2)2G2
J92 triangular hebesphenorotunda 3角平底舟丸塔 3角広底球形屋根丸塔 U3R3
(J91 bilunabirotunda             双三日月双丸塔            (L2)2(R2)2  )

いずれも意味が明確になるだけでなく、漢字表記でだいぶ短くなるというのも、自画自賛の一つです(^_^
なお、ジョンソン立体の読み方は、私は全部訓読みにしています(側錐、双、角、塔を除く)
たとえば、J89は「ながかんむりひらぞこふね」、J92は「そうふねおび」となります。
ただ、それでは数学用語らしくないというのであれば、一部あるいは全部音読みしてもよいと思います(聞いただけでは意味不明になりますが)。

“部品”の名称と面の数は、次の通りです。(こちらも、今回の和名変更で影響のないものも取り上げています。)
記号 英名           新和名    F3 F4 F5 F6 .
V2 spheno          舟       4  2  − −
U2 hebespheno       平底舟    6  3 − −
U3 triangular hebespheno 3角平底舟  9  3  −  1
N2 corona           冠       8  −  − −
M2 megacorona       長冠      12  − −  −
G2 cingulum          帯       12  −  − −
(L2 luna           三日月     2  1  − − )
(R2 rotunda         丸塔      2  −  2  − )
(R3 rotunda         丸塔      4  −  3  − )
(注) Fnは、正n角形の面の枚数。

以上のように整理したとき、一つだけ気になる立体があります。
同じ第3グループに属すJ84 変形双5角錐の英名は、 snub disphenoid です。
J84とJ90は、名称をみると、英名ではdisphenoが共通であり、従来の和名では「5角錐」が共通です。
しかし、J84は正3角形の面だけからなるデルタ多面体の1つであり、sphenoが正方形の面の連なりを意味するというこれまでの解釈と矛盾するように思えます。
これに関する私の考えは、J84についてだけ例外的に正3角形のつくる二面角2カ所(長軸が貫く稜)を楔とみなしている、というものです。
なお、J84とJ90は、それぞれデルタ多面体の一族と球形屋根(冠舟)の一族に属し全然違うように思えます。
しかし、両者には、対称性がD2dであること、正3角形5枚からなるいびつな5角錐が4つあること、という2つの共通点があり、ひょんなところで仲間となっています。
(D2d対称性は、主軸(長軸)が2回回転軸、主軸を含む鏡映面が2枚で、主軸に直交する副軸(2回回転軸)が鏡映面の間にあるものです。)


ジョンソン立体の名称と並べ方は、大変よく考えられていると思うのですが、第3グループの和名だけはこれまで納得できませんでした。
ど素人の提案ではありますが、できれば専門家の方々にご検討願えれば幸いです。

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