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韓国映画界の鬼才キム・ギドク監督の「弓」を観た。監督は「春夏秋冬、そして春」あたりから作風が穏やかになってきた気がします。特にこの作品はいつもの痛々しさがなく、韓国二胡ののんびりした音楽とゆったりした海や青空の風景があり、どことなくいつもよりも呑気な風情です。監督の願望を描いたようなおとぎ話のような作品でした。 船の上で生活する老人と少女。少女は6歳の時に、老人にどこからか連れてこられてから、一歩も船から降りたことがないんです。もうすぐ17歳の少女。17歳になったら結婚しようと思っている老人は、カレンダーに印を付けて、心待ちにしている・・・。 この時点で、ちょっとついていけない感じが。これは誘拐という犯罪では?少女の世話を焼く老人がちょっと気持ち悪かったんですが。孫ほどの女の子とよく結婚する気になる・・・と言ったら話しが続かないんだけれど・・・。 釣り客たちも老人と少女の関係に興味深々で、少女にいやらしいいたずらをしようとする。そのたびに、老人が弓を放ち、客を威嚇します。少女は微笑んでそれを見ている。「サマリア」でも主演していたハン・ソルムは、またまた魔性の無邪気な微笑みをみせてくれます。全編老人も少女も言葉を発しません。でも、ふたりとも表情で語っています。ふたりには長年の信頼関係があるみたい。 でも、そこに、ある会社の社長とその息子が釣りにやってきます。若く優しげなその青年に心奪われる少女。老人は嫉妬し、青年が少女に贈った音楽プレーヤーをむしりとります。初めて反抗的になる少女。青年も10年も船上にいる少女を心配し、彼女を解放してあげようとするのです。 青年は若くて優しくて、また育ちのせいか、無理やり連れ帰ることはせず(けっこう呑気なんです)老人に「船上に10年も居たこの子のことを考えたことがあるのか!」と訴えます。老人に少女が残るか、船を降りるかを弓占いで占ってほしいといいます。客相手に、海の上でブランコで揺れる少女を避けて船に三本の矢を放って占っていた弓占い。少し逸れれば少女に当たってしまう危険な占いです。またまた呑気なこと言ってますが、この青年。そして結果が。しかし占いの結果は相手に耳打ちなので、観客側には全くわかりません。どんな結果かは本人しかわからないんです。どうだったんでしょう? しかし、老人のことを気持ち悪いし自分勝手な人だと不愉快に思いましたが、ラストはこの老人の行動に何故か涙してしまいました!とても非常識な人なんですが、少女がいないそれまでの孤独(過去は一切語られないけれど。孤独感は伝わります。)老いの切なさ、少女への愛が伝わって、とても非常識で非道徳的なんだけれど、胸を打つんです。 どうしてだろう?キム・ギドクの作る、人の一途な感情は、痛いものも哀しいものも悪くても狂っていても滑稽でも、こちらの胸を打つのです。 チャン・ソンベクの撮影で、とても美しい映像。だからか、痛々しさよりも呑気さや不思議さが美しく映画に漂うようになったのでしょうか。揺れる波間に漂う漁船も、もう古くてボロボロなんだけれど、なんだかとてもノスタルジックで美しく見えました・・・。
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この手の「御伽噺」系に弱いので、惹かれますねえ。。これも要チェック。。と。。ここに来ると観たい作品が増えて困ります。。^^;
2007/4/19(木) 午後 2:46
不思議な話ですが、恋さんはどう思うのでしょう?私はキム・ギドクは「悪い男」(これは強烈です。。。)観てから、全部観ようと思ってるんですが、観て惹かれる人、拒絶する人と別れる監督ですね〜。韓国でも異端児です。
2007/4/19(木) 午後 6:02
かりおかさんのレヴューを読むだけで濃厚な感じがします・・・これで本当に恨み怒りが薄れてきているんですか(泣)この人,人の嫌なところ,醜いところをぐいぐい抉ってきますよね・・・おっさん結構嫌な奴だろ,と思います。元気になったら(いつも元気じゃん,とよく言われますが)観てみます。【うつせみ】は笑えますか・・・本当に?信じちゃいますよ。
2007/4/20(金) 午前 0:14 [ wxrfd775 ]
初期作品の「魚と寝る女」に釣船と言う点で似てますが、魚の方は痛すぎてもう耐えられない!という感じでしたので、これはもう全然。老人の執着には引くけれど、わからなくもないというのがギドクでしょうか。映像は綺麗でのんびりしてますよ。青年が良く韓国映画やドラマに出てくる君のすべてを受け入れて好きだ・・・という感じだったので、ちょっと柔らかく感じたのかもしれません。「うつせみ」も無言なんですが、ラストはなんだか可笑しいと思うけれど・・・。感想楽しみにしてますね。元気になったらどうぞ。
2007/4/20(金) 午前 10:08
書き込み&TBありがとうございました(^^)ギドク監督作品にハン・ヨルムさんは凄く合っていると思わせる作品でしたね。ヨルムさんの表情だけの演技は凄いと思いましたし、とても魅力的でした。青年とふざけた時に笑った声がとても可愛くて印象に残ってます(*^_^*)
2007/4/21(土) 午前 3:14 [ あっきー ]
ご訪問ありがとうございます、あっきーさん。ハン・ヨルムさんは実際は26歳くらいだそうですが、とても幼く見えますよね〜。「サマリア」の頃のインタビューを読むと女優魂のある人みたいだなと思いました。笑い声も幼くて可愛かったですね。
2007/4/22(日) 午前 0:27
雰囲気だけ気にはなっていた作品で、まだ観てなかったんですが、そういう話だったんですね・・・知りませんでした。女の子がかわいいですね・・やはり観てみようかな♪
2007/4/22(日) 午前 2:45
この老人の頑固さはなんなんだ!とも思いましたが、この子を本当に大切に育ててきたのでしょうね。複雑な気持ちになる映画でした。主演のハン・ヨルムは、無邪気な笑顔ですが大胆な演技でした。「サマリア」でもとても可愛かったですよ。映画は重く暗いですが〜、ozbrogさん。
2007/4/22(日) 午後 3:54
これ文化村で上映されていたのですが、逃しました。DVDになっているのですね。見ようっと・・
2007/4/23(月) 午前 9:46
私も文化村に行きたかったんですが、DVD待ちになってしまいましたよ、カルさん。今、ユーロスペースでキム・ギドク監督の「絶対の愛」を上映中ですが、またDVD待ちだと思います。ギドクマンダラとして全作品上映もしていたみたいですね。
2007/4/23(月) 午後 2:42
この作品は彼流のオリエンタリズムを全開にして、その主題をなんとなくいいようにぼやかしたかな〜という感じは多少します。ただ、やはり作品の純粋性は健在で、なかなかいい気分になりました。「魚と寝た女」+「春夏秋冬〜」なかんじで結構楽しめました!
2007/4/25(水) 午前 2:05 [ the**sal*_of_t ]
初期作品ほど、痛さや怒りを前面に押し出してこなくなりましたね。冷静に考えると、とても酷い話なんですが、御伽噺風にしてあります。他のギドク作品は観れるんですが「魚と寝た女」はさすがに引きました。もう観たくないです・・・。
2007/4/26(木) 午後 4:31
不思議な映画でしたねえ。。いやらしさと柔らかさと美しさと。。色々なものが渾然一体となってひとつの映画に。。でも興味深い監督さんめっけ、という感じです。トラバさせてくださいませ。。^^
2007/5/18(金) 午前 8:17
最近の作品はこれでも落ち着いた映画になっているのかも。コンプレックスが強い人のようで、初期ほど痛さや怒りが激しいです。最近のから観ていったほうがいいと思いますよ。でもお嫌いかもですが「悪い男」が一番でした。一番新しい「絶対の愛」も整形を扱っていて、未見ですが興味深いです。
2007/5/18(金) 午後 6:10
キム・ギドク監督作品『弓』を見ました。
はじめてのギドク作品ですが、大衆に媚びない、迎合しない、
自分が描きたいように描く。という点では、画家のような感じ
がします。TBさせていただきます。
2008/3/22(土) 午前 4:05
画家としてヨーロッパを放浪していた時期もあったようです。鋭いですね、サランヘヨさん。
老人に随分引くところがありましたが、他の作品も極端な人物が登場しますが、その人物に共感できるところが少しでもあったりすると、そのギドク映画に嵌ってしまうのかもしれないです。TBありがとうございました。
2008/3/26(水) 午後 4:17
かりおかさん、私もようやく見ました。全部納得はできなかったけれど、やはり美しく心に食い入る映画でしたね。
私ももはやギドク中毒です!
TBさせてくださいね。
2008/4/12(土) 午前 10:35 [ パリは恋人 ]
この老人の思いにドン引きでもありましたが、でもギドク作品のこの切実さは、胸にささります。ゆったりのんびりした美しさもありましたが、そこはやはりギドクでした。TBありがとうございました。
2008/4/15(火) 午前 8:59