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ずっと観たいと思っていた韓国のパク・チャヌク監督の最新作「サイボーグでも大丈夫」を観賞。
パク・チャヌク監督は「復讐者に憐れみを」「オールドボーイ」「親切なクムジャさん」と復讐三部作を完結させたが、どれも圧倒的な迫力の映画で、ヴィジュアル面も精神面も痛々しい辛い映画でしたが、この「サイボーグでも大丈夫」は、一転、監督の中学生の娘さんでも観に行けるような作品を作ろうと撮ったものなので、前三作のように、凄惨な映画ではないです。
それどころか、ファンタジーのような仕上がりに!でも、チャヌク監督なので、普通のファンタジーではない。とっても、変わった映画になってます。
そして、その変わったこの映画に、私は心をわしづかみにされてしまいました!!!大好き!この映画。
観客が笑っているようなところでさえ、タオルハンカチで涙を抑え続けたほど!大好きな映画になってしまいました。。。凄い映画だなー、パク・チャヌクは凄いなーと改めて感心しましたよ♪
見た目に痛いのが苦手で、復讐三部作は、斧で斬り、ナイフで裂きなど凄惨なシーンが続くのが辛かったんですが、この映画は、サイボーグとして充電しなければならないという暗示を空想ラジオから受けるところで、手首をカッターで切りつけるシーンがお約束の痛いシーンだっただけだったので(それでもかなり痛そうだったけど。)いつもよりは、観やすかったです。
大好きな祖母が療養所に入れられて以来、どこかおかしくなったヨングン。自分のことをサイボーグだと信じる彼女は、新世界精神クリニックに入院させられた。そんなヨングンに、同じ年頃の青年イルスンが目を留める。彼は人のものならモノでも特徴でもなんでも盗むことができた。イルスンの特技を知ったヨングンは、ある日、彼に突拍子もないお願いをする。「私の同情心を盗んでください」と――。(goo映画より)
精神クリニックが舞台のラブストーリーというと、岩井俊二監督の「ピクニック」のような映画なのかなーと思っていたんですが、「ピクニック」が「世界を終わらせるにはどうすればいいの?世界の果てはどこにあるの?」と病院を脱走して、どこまでも続く塀の上を歩き続ける、彼らの孤独感や切迫感が漂う映画だったのに対して、この映画は「私の存在価値はどこにあるの?」という問いかけを主人公がし、その答えがみつかっていくような微笑ましいところもある映画になっていたので、全体的な雰囲気は随分違うものになっていました。
「17歳のカルテ」「カッコーの巣の上で」「K−PAX 光の旅人」精神クリニックが舞台の名作はありましたが、どの映画にも似ていない、パク・チャヌクカラーの不可思議だけれど、いとおしいような、また何回も観たくなるような映画になっていると思います。どちらかというと、演劇的な映画なんじゃないでしょうか。昔、私が観ていた野田秀樹の夢の遊民社の舞台にも似ているような・・・。美術も衣装も、写真でもわかるように独特のものでした。リアルさよりも、よりポップでファンタジックなパステルカラーで彩られて、でも毒もあって。
自分を大根を齧るネズミだと思ってるおばあちゃん、おばあちゃんやヨングンを無理やり入院させたホワイトマンたち、自分のことをサイボーグだと信じ蛍光灯を叱り自動販売機にご苦労さんと声をかけるヨングン、おばあちゃんの入れ歯、ご飯を食べないで電池を舐める、電気ショックで記憶が消えるため作り話をする女、丁寧すぎて前向きに歩けない男、腰紐が生まれつきあると信じる男、ヨーデルを歌いアルプスの少女といつも思っている女、ヨングンにだけ放送される空想ラジオ放送、飛行靴下、点となって消滅してしまう危機感からか盗みを繰り返す男、ご飯をサイボーグのためのエネルギーにかえる装置ライス・メガトロン、サイボーグとして七つの悪を断つこと、「同情心、悲しむ、ときめき、ためらい、余計な空想、罪悪感、感謝する心」を・・・。
狂気の話ではありますが、どの設定にも、心動かされるような不思議なところがあり・・・。
そして、やはり、この映画を忘れられなくしているのは、主演のふたりによるところが大きいんです!
イム・スジョンは、サイボーグと思い込んでいるヨングン役に嵌りすぎるほど嵌っていました!こんな役ができるのは、彼女か、日本だったら蒼井優しかいないんじゃないか!と。
PURE過ぎる故に、優しすぎるが故に、自分を感情のないサイボーグとして考え、相手(敵のホワイトマンたち)のことを考えすぎずに、おばあちゃん奪還のために、同情心を失くして攻撃したいと思っているヨングン。彼女が泣く時は、本当に観ている私も哀しくなって、泣かずにはいられなくなるんですよね〜。素っ頓狂なことをしているようでも、そのひとつひとつに理由があり、哀しみがある。。。説得力を持って演じられる奇跡のような女優さんだなーと、またまた大好きになりました。ドラマ「ごめん、愛してる」、映画「アメノナカノ青空」「サッド・ムービー」・・・彼女の演技で泣かないことはなかったくらいです。私は、彼女を見ると反射的に泣いちゃうのかも(笑)
そんな彼女に、盗みの天才と思われ、同情心を盗んで!と依頼されるイルスンをRAINことピが、演じてます。これが映画初出演とは思えないほどの自然な感じ。ドラマ「サンドゥ、学校へ行こう!」「フルハウス」での演技が、高く評価されていて、次回作は「マトリックス」の監督作、「スピードレーサー」に真田広之らとアジア人俳優として出演が決まっているそうです。
「サンドゥ、学校へ行こう!」は、たまたま体調悪く寝込んでいた時期に、偶然テレビで観ましたが、最初は軽い学園もの?と思っていたら、とんでもない!笑いながら号泣してしまう奇跡のようなドラマでのめり込んで観てしまいました!ピを観てるだけで、こちらももう泣けてしまうようなドラマでした。奇しくも、イム・スジョンの「ごめん、愛してる」とピの「サンドゥ、学校へ行こう!」は、同じ脚本家の作品で、私はこの人の作品が、きっと大好きなんでしょうね〜。
「盗んでください、同情心を。殺したいのに殺せない気持ち。」
「僕に盗み心が生まれた時、嫌がる相手から盗んでこそ盗みが完成する。それでもいい?」
「必ず嫌がります。心からのお願いです。」
彼女をしばらく観察して、同情心を盗むことに成功。イルスンは母親が電動ハブラシを持って家を出て行ったことに傷ついて、点となって消滅しないように簡単に同情心なく人から盗みをし続ける男でしたが、盗んだ同情心が働き、ヨングンにとても同情してしまうのです!!!これは、恋?なのかな?
「故障したら電話して!即出張修理!保障期間一生!」のくだりは、もう涙が止まらなくなってしまいました・・・。失笑している観客も多かったけれど、私は笑えなかった。泣いてしまったなー、この映画で。本当に胸が締め付けられるけれど、とてもいい映画でしたよ。。。
破滅したり破壊されたりしちゃいたい時もあるけど、ご飯を食べて元気だして、生き続けようよ!とも言っているようなところもあり。そして、存在の理由はね・・・。。。
残念だったのは、他の入院患者の演技トーンが、ベタな笑いを表現してしまったこと。みんなが笑いを誘うように演じなければ、もっと重い雰囲気になってしまったかもしれないけれど、それならそれでいいじゃない!と思いました。興行のことを考えてるのかもしれないけど、チャヌク監督、時々ベタな笑いを映画の感じに合わないのに、持ち込む気がします。監督の照れなのかもしれないけれど・・・。(キスシーンもラブロマンスだからと主演のふたりから、提案されたそうですが、監督は甘い雰囲気のラブシーンが苦手で、あのような大人なキスシーンになってしまったようですよ(笑)これも照れなんでしょうね。)
あと、ピの韓ドラや歌のファンがたくさん来ていたけれど、映画の内容が理解しにくいからって、映画の最中に、普通の声で、わからないとかなんとか、隣の人たちと喋るのはやめてくれないかなーと思いました。ビニルガサガサも多かったし。普段なら気になって、キレル寸前なんですが(笑)、映画が良すぎて、気にならないくらいだったので、仕方ないなーで我慢できました・・・。
2007年ベルリン国際映画祭でアルフレッド・バウアー賞を獲得しているそうですよ。
またまた変なわけわからない映画を気に入ってるみたいに思われるかもしれませんが(笑)
私には、忘れがたい、大好きな映画のひとつになった気がします。
私にとって映画が良すぎたので、まとまらない感想になってごめんなさいね〜。
ピが盗んだヨーデルを糸電話で聴かせるシーンは良かったですね。歌、やはり、かなり巧いです、ピ。
顔立ちとか好みじゃないけど、センスいいんですよね〜、ピ。憎めない笑顔だし、ファンが多いのもわかるような気がしましたよ!(ただ、映画の中ではクリニックの患者になるようにはちょっと見えなかったんですが。。。でも、頼りになる、憎めない可愛い男の子でした♪)
しかし、韓国のパク・チャヌク、ポン・ジュノ、キム・ギドク、イ・チャンドンたちの映画はまだまだ凄いですね〜。この四人の監督作品は、いつでも注目していきたい!と思ってます!!!
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