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今年6月にアメリカで亡くなった台湾の巨匠、エドワード・ヤン監督の名作「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」を観賞。もう何年も観たくて観たくて、レンタル店に行くと探していたが、ようやく新しくみなとみらいに出来たツタヤでビデオの上下巻で発見!!!観ることができました。計4時間の映画でした! 主演は活躍がめざましいチャン・チェン。彼が主演の少年だったのは後から気がつきました。 同じエドワード・ヤン監督の「カップルズ」で少年のひとりとして観たのが最初。一番ハンサムで軽い役柄だったけれど、あの目は一度見たら忘れられないインパクト。 その後「グリーン・デスティニー」「ブエノスアイレス」「2046」「愛の神 エロス」「百年恋歌」「天堂口」・・・と観るたびに男前度がUPし、演技派へと成長しています。 キム・ギドクの「ブレス」ジョン・ウーの「赤壁」ウォン・カーウァイの「マイ・ブルーベリーナイト」と、これから公開の話題作にも出演。日本が舞台の田壮壮監督の「呉清源〜極みの棋譜」も現在公開中、日本映画にも行定勲監督の「遠くの空に消えた」に出演していたらしい。(更に次回もホウ・シャオシェン映画にスー・チーと共に出演決定したようです。武侠映画らしいです。) 大活躍の原点の映画がこの「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」だったのです!!!有名俳優の息子である彼が、撮影に遊びに来ていたのがこのデヴューのきっかけだそうです。でも、彼の顔つきはいい!演技はほとんどしてないんだけれど、彼があの意思の強そうな鋭い顔つきで状況の混沌の中で戸惑っているのは、それだけで絵になるのです。そして、このクーリンチェあったからこそのチャン・チェンなんだなーとあらためて思いました! '61年夏、台北で実際に起こった14歳の少年の、同い年の少女殺人をもとにした青春叙事詩。戦後あらたに生まれ変わろうとする国情を視野に入れて、出口の見えない迷路の中でもがくような少年たちの日々を描いている。不良少年同士の抗争を叙述することが、革命を語ることと同等な世界。大陸からの移住組の一家がこうむる圧力は、さらに露骨なものとなって少年スーを巻き込んでいく。彼の恋した少女ミンは、彼らのボスの情婦という噂がある。そのボスは、敵グループのボスと一騎討ちの最中、車にはねられて死んでしまう。やがてスーはミンとの交際を注意され、怒って中学を退学する。だがミンは、スーの親友で軍人の息子マーと付き合いはじめていた……。4時間版では、スーの家族の挿話が描き込まれ、少年の性格造形をより細かにしている。ヤン自身がスカウトしたミン役のリサ・ヤンは7歳の時にLAに移住した米国育ち。(all cinemaより) エドワード・ヤン監督にとっても代表作といえる作品。長くて淡々としていて、前編ではうっかり眠ってしまったりもしたのですが(疲れていた時に観たので。また画面が暗く、スー、モー、マーなどおなじような名前で同じような少年たちなので、最初誰が誰だかわかりにくかった。)もう一度見直して後半に続くと、目が離せない展開になり、ラストの衝撃に繋がりました。 エドワード・ヤンがちょうど同じ中学生だった頃に実際に起こった事件を基にしているそうです。 衝撃的だったので、いつか自分の手で映画化をと思っていたらしい。。。 戦後、共産党に破れた国民党が逃れた台湾の政情の不安定さ、大人たちの不安定さが、子供の学校生活にも影響を与え、苛立ちが抑えられない様子が、リアルに描かれていきます。けっしてドラマチックじゃないんですが、激しくならざるおえない時代背景があって、どっきりするような描写がところどころに彼らの生活とともにあるのです。日本占領下に建てられた日本家屋に住み、天井裏を探してみれば旧日本軍が隠し持っていた日本刀がゴロゴロでてくる物騒さ。小公園グループと軍人村グループの不良少年たちの対立。母と二人暮らしの薄幸な少女を巡っての少年たちの争い。殺された仲間の仕返しに真っ暗な中を日本刀を持って集団で斬り付けていく姿は恐怖を感じるほどの描写でした。物騒な日本刀があったから、殺すまではいかなくてもよかったような争いが、集団殺人になってしまう恐怖がありました。 まっすぐ正直に自分の思うとおりに生きようともがけばもがくほど、生き難い世の中。チャン・チェン演じるスー少年は、勉強が上手くいかずに中学の夜間部に入り、そこでの理不尽さに異を唱えると、学校から訓告処分を受けたり、理不尽な友人に逆らうと仕返しが待っていたり、あの鋭い目付きで自分を通そうとするのは困難で・・・。家族も父親が共産党との関係を疑われ、秘密警察の尋問を何日も受けたり、母親も教員免許を持っていたのに台湾で役にたたないという苛立ちがあり。家族も生き難さを感じている。その家でもスーは落ちこぼれているかのように押入れに閉じこもってひとりで過ごしている・・・。学歴社会の中、優秀な兄や姉を持ったスーは、家でもいたたまれないところがあったのでしょうね。 そんな生活の中で、小公園のボスのハニーの彼女だったミンという少女への恋にスーはどんどんのめり込んでいくのです。少女をずっと自分が守ってあげる!と誓うのですが、ミンはそのまっすぐな思いを信じることができない現実への諦観を持ち続けている少女だったのです。寂しいけれど、結局のところ誰も信じられない少女。それゆえの奔放さはスーを傷つけます。 「僕だけが君のこと 助けてあげられる!」 「私はこの世界と同じ。誰にも変えることなど出来ないわ…。」 どうしようもない気持ちのずれが、悲劇的な結末へと結びついて。この映画全体に、やりきれなさが漂っていました。他の少年たちも、多かれ少なかれ、苛立ちを抱え込んでいるし・・・。 不安定な少年を更に不安定にしていた当時の台湾とリンクさせているような。そんな映画でした。 エドワード・ヤン監督を尊敬している岩井俊二監督の「リリィ・シュシュのすべて」は企画が岩井監督とエドワード・ヤン監督だったようで、そういえば、リリィ・シュシュはこのクーリンチェとどこか似ている殺伐とした空気がありました・・・。 観れて良かったです。長くて一見地味な映画なのですが、この少年たちの焦燥感、孤独感を描かせると、エドワード・ヤンはさすがでした。刹那なお話は観てると堪らないのですが、忘れられない映画となりますね。もっと大きく高校生くらいになった「カップルズ」も、同じように忘れがたい映画。主役の少年も「クーリンチェ」でチャン・チェンの友人役で出演していますね。 エドワード・ヤン監督の子供時代の思い出が元になっている「ヤンヤン 夏の思い出」、おとなたちの「恐怖分子」も観たくなりました。世代世代を描きながら、その時の台湾そのものも描いているんだろうなーと思います。
この映画は時間が経つにつれて自分の中で大きくなって、また何回も観たくなるかも知れないです。 |

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