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「小さな中国のお針子」を観たことがあるダイ・シージエ監督の「中国の植物学者の娘たち」を観賞。
中国が舞台だが、監督はフランス在住なので、フランス・カナダの合作映画。題材が同性愛を扱っているということもあり、中国当局から撮影の許可が下りず、ロケはベトナムで行ったそうです。
主演女優も「小さな中国のお針子」でお針子役で魅力的だったジョウ・シュンにオファーしていたのですが、中国当局にそんないかがわしい映画には出演するな!といわれ、出演できなかったようです。
そこで、フランスと中国のハーフで、不思議な深い灰色の目をしているミレーヌ・ジャンパイノをキャスティング。更に、ヨーロッパから見たエキゾティックなアジア映画に仕上がりました。
相手役は「かちこみ!ドラゴン・タイガー・ゲート」の哀しい悪女役で印象深かったリー・シャオラン。
彼女は中国の女優さんです。この出演は勇気がありました!「ラスト・コーション」のタン・ウェイも、素晴らしい演技だったのに、中国当局から目をつけられ、彼女の出演した化粧品のCMは放送禁止になったりもしているのです。この映画は実際に中国であった事件を参考にしていて、同性愛について中国ではタブー視されているため、出演するだけで、活動規制される可能性があるのではないでしょうか。
ダイ・シージエ監督自身も、文化大革命で下放の経験があって、フランスに渡ってから、その経験を元に「小さな中国のお針子」を撮ったようです。あからさまには、権力批判している内容の映画ではないのですが、体制よりの内容ではないですし、だから今回の撮影は、特に中国政府に嫌がられたようです。
フランスを拠点に活動を続ける中国出身監督ダイ・シージエが、「小さな中国のお針子」に続いて再び中国を舞台に撮り上げた美しく官能的な2人の女性の物語。封建的な男性上位社会で辛苦を分かち合う若い2人の女性の友情が、いつしか恋愛感情へと発展していくさまを、エキゾチックかつ繊細に綴る。中国政府の許可が下りず、隣国ベトナムでロケが行われた。主演はフランス人の母と中国人の父を持つフランスの新星ミレーヌ・ジャンパノイと「かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート」のリー・シャオラン。
幼くして両親を亡くし孤児院で育てられたリー・ミンは、昆林医科大学の植物学者、チェン教授の実習生となる機会を得、湖の小島にある彼の植物園へとやって来る。しかし、チェン教授は極端なまでに厳格な人物で、実習生のミンにも何かと辛く当たる。そんなチェン教授には、ミンと同じ年頃の娘アンがいた。アンもまた少女期に母を亡くし、厳しい父の下で孤独な暮らしを送っていた。似た境遇にあったミンとアンは、すぐに打ち解け、心を通わせていく。そして、それは次第に愛へと形を変えていく。そんなある日、軍人であるアンの兄タンが戻ってきた。そこでチェン教授は、ミンをタンの嫁にしようと思いつくのだったが…。(allcinema ONLINEより)
ヨーロッパから観たエキゾティックでノスタルジックな美しい中国を描く・・・というスタンスは、前作から引き継がれていて、特にベトナムロケのせいか、むせ返るような湿度と濃い緑の風景は、とても素敵でした。植物園もボートでしかいけない離れ小島にあり、同じアジアで世界の映画祭で注目されているキム・ギドクの「春夏秋冬、そして春」の離れ小島にあるお寺と似たシチュエーション!世間とは隔絶された場所でのお話というのが良かったです。
厳格な植物学者の父に、母がいないため身の回りの世話から助手としての仕事まで細かく支持され、ずっと手伝いをしてきた娘アン。優しく性質の良い彼女は、厳しい父に不平も言わずに、共に暮らしてきたのだが、心を開くような関係の親しい友人もいない孤独さがずっとあったようで、早寝の父が寝静まった後、自分で幻覚症状が出る薬草をたいた上に寝そべって、孤独を埋めるように、妄想の世界で癒されてきたようでした。
そこに、大地震で両親を亡くし、孤児院で育ったリー・ミンが、実習生としてやってきます。教授はなかなか上手く仕事をこなせなかったり、常識がかけているリー・ミンに、とても厳しく接する。彼女は反発心が強く、徹底的な間違いをしても、自分を責めたりあんまりしないのが、ちょっと、私は好きじゃなかったけど。不貞腐れてしまうところがあるみたいで。教授が怒って当然なところもあったし。ただ、教授も、意識的に苛めてるわけじゃないにしても、アンにもリー・ミンにも、人として優しく接するようなところは皆無だったけど。
アンは、優しい性質の良い子なので、リー・ミンに同情し、慰め、仕事を教えていくうちに、ふたりの間に親密さが生まれてくる。。。アンの美しさに心奪われていくリー・ミン。無邪気に戯れるふたり。。。しかし、薬草の幻覚作用を利用したにしても、同性愛にまで関係が深くなってしまうのは、違和感がありました((+_+))アンには、彼女しか見えなくなってしまっていたし(他に接触する他者がいない。)リー・ミンは元々、そういう資質があったのかもしれないのですが。アンは綺麗で純粋な心の優しい子なので、好きになるのはわかるけど、一線を越えるって、男性どうしや女性どうしだと、勇気ときっかけが相当なんだなーと思ってしまうので、なかなか現実味がないです。女性だと特に、そういう気持ちになったことないなーと観ながらあらためて思ってしまいました^_^;
軍人の兄の帰還で、リー・ミンを嫁にって思う教授の気持ちが?だったり(リー・ミンのこと、気に入ってたのかしら?)、強引な兄とはいえ気持ちを全く考えずにふたりのために兄を利用するあさはかさも?だったり、いくらふたりしか見えないからって教授のことや仕事をだんだん平気でおろそかにしていくのは、嫌なところもあったりもしたのですが、ふたりが中国社会ではタブー視されている同性愛を貫いたというところが、中国の抑圧された社会への抵抗の隠喩でもあったのでしょうね。
リー・ミンに共感しづらかったのもあり(彼女はだんだん大胆に不敵になっていって、なんだか不愉快なところもあり。魔性の女性でもあったのか、それとも単なる我侭か。どうにも自分では動かせない環境にいつももがいていたのかもしれないですが。。。)ふたりの愛を応援しながらは私は見れなかったのですが、ただ、同性愛というだけで、ここまでの悲劇にならなくても。。。そこが違う自由な社会だったら、他の出会いもあったりしただろうし、または、アンに父への優しさがあって早く見捨てて出て行けなかったのも、この結果になってしまって、可哀想だった・・・とも思えてしかたがなかったです。父には、結局、娘への自分よりも深い愛情はなかったのかも。そこがアンが孤独だった原因なんでしょうね。
リー・シャオランは、本当に純な心の美しいアンを好演。ミレーヌ・ジャンパノイは、私はあんまり好きじゃなかったのですが、これがジョウ・シュンだったら、どうだったんでしょう?リー・シャオランとジョウ・シュンって、顔が似てるような気もしますが。。。演技力があるので、もっとふたりに感情移入できる話になってたかもなーと、惜しい気もしました。ただ、エキゾティックさ妖艶さはミレーヌ・ジャンパノイの方があるので、映画の雰囲気はしっとりとして、良くなっているのかな?
「ブロークバック・マウンテン」「花蓮の夏」のタブーでもどこか感情移入できて切ない映画よりは、ちょっと私には距離がある映画でした。雰囲気に流されて、相手への'強い思い'みたいなところが観る側に伝わりにくかったのでしょうか。でも、愛情が自然な感じに描かれていたのは、ふたりにはタブーとしての認識がまるでなかったからなんでしょうね。
美しく素晴らしい映像と美術には浸れました!!!
植物園の中の家での暮らしぶりや、その土地独特の結婚式の様子なども、興味深く観ることができました。薬草を採りに出かけたり、ドロドロになったふたりが水浴びしたり、日常のシーンでも綺麗な絵が多かったです。
ふたりが気持ちの拠り所にしていたお寺での鳩を飛ばす風習も、哀しいけど浪漫がありましたね。
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