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フランソワ・オゾン監督の「エンジェル」を新宿武蔵野館で観賞。フランス人の監督ですが、原作がイギリスの女流作家なので、英語でイギリス人の俳優を主にして撮影した新作です。 解説: 1900年代初頭のイギリスを舞台に、幼いころから上流階級にあこがれ、16歳で人気作家としてセレブの仲間入りを果たした女性の夢と現実を描く人生ドラマ。監督は『スイミング・プール』の鬼才フランソワ・オゾン。思い描いた人生を手に入れるヒロイン、エンジェルを『ダンシング・ハバナ』のロモーラ・ガライが演じる。ゴージャスな作品世界の中に、女性ならではのたくましさやしたたかさ、さらには悲哀を浮かび上がらせるオゾン流女性映画。(シネマトゥデイ) あらすじ: 1900年代初頭のイギリスの下町で、母親とともにほそぼそと暮らすエンジェル(ロモーラ・ガライ)は、あふれんばかりの想像力と文才が認められ、16歳にして文壇デビューを果たす。幼いころからあこがれていた豪邸“パラダイス”を購入し、ぜいたくで華美な暮らしを始める。そんな中、彼女は画家のエスメ(ミヒャエル・ファスベンダー)と恋に落ちるが……。(シネマトゥデイ) もっと嫌味な女性なのかな?と思って観賞したのですが、そんなことはありませんでした。ただ、自分大好き妄想好きの思い込みの激しい夢見るお嬢ちゃん・・・その夢が、人よりも秀でた文才と夢を実現しようとする情熱と人並みはずれた集中力で、現実になってしまった・・・そんな女性でした。自分が作家になると信じて小説を書いていく力は凄まじいものがありました。このぐらいの思い込みがないと、夢を実現することはできないんだろうなーと、感心してしまいました。 流行小説家になって彼女がしたことは、自分の実人生も、彼女の妄想と同じように飾り立てたこと。本当の現実を全く見ようとしなかったところに、後の悲劇があるわけですが、こういった人は、周囲で完全に守ってあげなければいけなかったんじゃないかなーと、彼女をとても可哀想に思ってしまいました。 結婚したエスメは、画家だったけれど、同じ芸術家。彼女とは作風も芸術への考え方も違っていて、おまけに皮肉屋。ハンサムだったけれど、彼女のことを守ってあげられるような人ではありませんでした。彼女もハンサムなエスメをペットの猫のように、ハンサムで上流階級の男性だから、側に置くと見栄えがいい・・・そんな気持ちが心の奥にあったのかも。物語の主人公のように、ドラマチックに自分から雨の中で求婚して、新婚旅行は世界旅行、豪邸に素敵なアトリエ・・・エスメとエンジェルのすれ違いは仕方なかったのかもしれません。でも、彼女を崇拝し愛し個人秘書となったエスメの姉の手前、真実を突きつけるほどエスメは残酷でなかったのが、彼女の救いだったのに・・・。(この姉が結婚相手だったら、良かったのかしら?でも、自分にこんなにも尽くしてくれる人だと、かえって物足りなくなるのかしら?むずかしいですね・・・。)恋愛小説を想像だけで書いていたように、彼女には恋愛といえるのは、エスメとの恋だけでした。。。完全に自分のものにしたかに見えたエスメ。。。その真実を知りさえしなければ、彼女は幸せのままだったのになーと、エンジェルがとても可哀想でした。。。そして、第一次世界大戦の真っ只中に、自分のことしか考えてないエンジェルが、時代に取り残されていってしまったのも、悲劇だったのでしょうか。 私は、そんなふうに思ってしまったのですが、オゾン監督は、エンジェルに自分を投影して、もっと冷めた視線で、自分への自戒もこめて、この映画を撮ったようでした。 「エンジェルは作品よりも成功することのほうが重要になり、本末転倒な生き方をしてしまった。僕自身は、成功そのものに価値をおいていないよ。作品が成功すると次回作を撮るための助けになるから、そういう意味で成功することはありがたいけどね(笑)」 そして、大衆の要求に答えながらも、大衆に飽きられてしまったエンジェルとは違い、クリエイターとして、常にリスクを恐れずに、挑戦し、変化し続けたいというオゾン監督。。。 オゾン監督は、エンジェルを愛しながらも、随分客観的に冷静に彼女を描いたのだなーと、思いました。クリエイターの道は厳しいですね・・・。エンジェルも、自分の周りの過酷な現実を受け入れて、作品に取り入れてしまうくらいの強さやしたたかさがあったなら。。。エスメの絶望を受け入れられる度量があったなら。。。人生がまた違ったものになっていたのでしょうね。 いつものオゾン監督ほど毒はないのですが、エンジェルの人生を、ビクトリア王朝後のイギリスの雰囲気と、エンジェルの現実離れした美しいファッションや美術品などで華麗に彩った、飽きさせることのない美しい映画でした。彼女の人生にあわせて変化していく装飾過多のファッションも見どころのひとつです。茶色の女学生時代、成功後のスカーレット・オハラのようなドレス、黒の芝居がかった喪服、落ちぶれていくすすけた魔女のような服装・・・どれも素敵でした。魔女のような服装は、ジャニス・ジョプリンみたいだなーとも思って、私はけっこう好きです! エンジェルを演じたロモーラ・ガライは、本当は金髪なのですが、黒髪に染めて演じたそう。黒髪、白い肌、青い目で、白雪姫のようなビジュアルになり、夢見るお嬢さんのエンジェルにぴったりでした。 ロイヤル・シェークスピア・カンパニーで、様々な舞台に立っている彼女は、エンジェルのテンションの高さを途切れることなく緻密に演じて、素晴らしかったです!オゾン監督は、プロに徹しているイギリスの俳優たちと良い仕事が出来たと喜んでいるみたいでした。 オゾン監督常連のシャーロット・ランプリングも、編集者の妻として、エンジェルの傍若無人な態度に怒りながらも、その情熱に感心する女性を、オゾンの代理のような立場で演じています。編集長はサム・ニール。エンジェルを認め、支えた、秘かに彼女に恋するような優しい男性を演じて嵌ってました。 やはり、オゾン映画は、観る側がいろいろ自分なりに受け止めるような映画になっていたのではないでしょうか。私は、甘い人間なのか、ラストは真実を知って追い詰められてしまうエンジェルに涙、涙でした・・・。
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