物語3

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ワタシブネと名乗った男が言った言葉に僕はなんともピンとこなかった。


交換屋・・・それは一体どんな仕事なんだ?


僕の頭の中ではその言葉がぐるぐると回っていた。

魂を導くとか言っているし、誰かと魂を交換するみたいな仕事だろうか・・・。

でも、そんな単純な仕事だろうか?もっと意味のある仕事なのではないか?

僕がそんなことを模索していると、ワタシブネは付け加えるように言った。

「簡単に説明いたしますと、魂を交換して差し上げるお仕事です!!」

そのまんまだった・・・。

さらにワタシブネは言った。

「つまり交換屋とは迷える魂に希望を与えて差し上げるサービス業なのです!!」

サービス業なんだ・・・・。

「どうです!わかっていただけましたか!!」

ワタシブネのキラキラと輝く目が僕を直視した。

正直そんなキラキラした目で見られても気持ち悪いだけだったので、僕は適当に答えた。

「ハァーだいたいは・・・」

こうは答えたが本当になんとなくしかわからなかった。

わかったことは交換屋という仕事とは誰かと魂を交換してあげる仕事だということとサービス業ということぐらい。

そもそも、なぜワタシブネは僕の前に現れたんだ?

僕は魂の交換なんて望んでいない。

それにどうやらここは黄泉の世界ではなさそうだし、そうなると僕はまだあの世界に存在するのか?

でも、消えていないのならなぜ僕はこんなところにいるんだ?

やっぱりあの日僕は何かしたのか?

僕が色々と悩んでいると、ワタシブネが予想もしていなかったことを言い出した。

「仕事の説明も終わりましたし、さっそく魂の交換についての契約といきますか〜。」

えっ!?契約!?

「いや〜こんなに順調に進むの久しぶりですよ〜♪」

待って!僕は別に誰とも魂の交換なんて望んでいないぞ!?

「あの・・・すみません。別に魂の交換したいなんて一度も言って・・・」

「まずですね〜!魂の交換につきましての注意事項からですが・・・おっと!その前にお名前の確認からでしたね♪」


人の話を聞け!!


「いや〜忘れるところでした、お名前の確認しとかないと上司がうるさいんですよ〜」

こいつ・・・人の話まともに聞かず、話を進めるつもりだな。

「あのちょっと人の話を・・・。」

僕がワタシブネに言い寄ろうとした時、ワタシブネのポケットから着信ベルが鳴った。

・・・・携帯?

「もしもし〜ウキブネ先輩?」

どうやら仕事仲間からの電話のようだ。

「どうかしましたか〜?こっちめちゃくちゃ順調に進んでいますよ〜♪」

どこが順調!?全然順調どころか、あんたがかってに話を進めてるだけじゃないか!!

「そっちはどうですか?うまくいっていますか?」

ワタシブネが電話していると、するとワタシブネが急に叫んだ。

「え〜!!逃げられた!?それどういうことですかウキブネ先輩!!」

どうやら電話の相手の方でトラブルがあったようだ。

逃げられたって一体何に逃げられたんだ?

「ちょっとそれ困りますよ先輩〜ここがどういう世界わかっていますよね。何かあったらどうするんですかぁ〜!」

よっぽどしちゃいけないことだったのか、ワタシブネがやたらとおろおろしていた。

「知らないって・・・先輩お願いですからもう少し仕事に意欲をみせてください。後で上の方に怒られるの僕の方なんですからね!」

その上やたらと電話の相手にワタシブネは怒っていた。

「先輩!!私の話ちょんと聞いてますよね先輩!?あっ・・・・切られた。」

真っ白な空間の中に電話の切れる音が響き渡った。

ワタシブネは数秒ほど固まったあと、急に叫びだした。

「上司なんて・・・・上司なんて大嫌いだ――!!!」

そしてそのまま持っていた携帯を真っ白な空間に投げ捨てた。

僕はその光景を見て思う。

なんて・・・惨めなやつ。

だがこれはチャンスだ、これで僕の話の聞くはずだ、さっきの上司には感謝しなければ。

「あのワタシブネさんでしたっけ?ちょんと人の話を聞いてください。」

ワタシブネはまだ立ち直れていないのか惨めな声で「・・・はい?」と答えた。

「僕は魂の交換なんて全然望んでいないんです!」

「えっ!そうなんですか!?」

そうだよ!僕はただあの世界から消えたいだけだ!!

「えーそんなこといわれても困るのこっちなんですけど〜崎谷光(さきたにこう)さん?」

なっ・・・なんでこいつ僕の名前を知ってるんだ?

僕は一度も名前を名乗っていないぞ。

「なんで・・・・なんであなたが僕の名前を知ってるんだ!?」

ワタシブネはくすくすと笑った。

「簡単なことですよ〜私があなたについてのリストを持っているただそれだけですよ?」

リスト・・・?左手に持っているあれか?

「先ほども説明したとおり、交換屋とは魂を交換して差し上げるお仕事です。それゆえ魂の交換に当たりましては個人的な情報も必要となりますので、これはそのための資料といったところです。」

ワタシブネは左手の持っているリストをペラペラとめくった。

「あなたはどうやら自分が生きている世界お嫌いだったみたいですね〜」

そんなことまであのリストには書いてあるのか・・・・。

「でも残念でしたね〜あなたはまだその世界から消えていない。」

えっ・・・・・?


「あなたはまだ生きていらっしゃいます。」


そうか僕はまだ・・・・。

まだあの世界から消えていないのか・・・。

「で・す・が!!あなたの魂は今この狭間の世界に来ています。つまりあなたは今死を彷徨っている最中なのです!」

狭間の世界・・・・?僕が死を彷徨っている・・・・?

「ですから、このままではあなたは一生この狭間の世界からでられなくなるかもしれません。それよりも私と魂の交換の契約をして新たな人生を歩んでみませんか〜?」

新たな人生を歩む?・・・・・・なんだれ?

僕はそんなこと・・・・・・。

「そんなことどうでもいいんです・・・・。」

「はい?」

ワタシブネは僕の言葉にキョトンとしていた。

「僕は・・・本当にただあの世界から消えたかっただけだ。魂の交換なんてどうでもいい。ただ僕はあの世界から消えたいんだ!!」

それの何がいけないっていうんだ・・・・。

僕はそういうとその場にうずくまってしまった。

すると、僕の言葉を聞いたワタシブネは急に目つきを変えた。

さっきとはまるで別人のように僕の方を見ていた。

「あなたは可能性というものを信じないのですか?」

・・・・・可能性?

「たとえその世界からあなたという存在が消えなくとも、今あなたの魂は狭間の世界いて、私という交換屋と出会い、今あなたは魂の交換できるといという立場にいるのです。」

「魂の交換をすれば100パーセントあなたの望む世界にいけると言いません。でも、あなたが消えたいと願う世界よりはマシかもしれません。」

「決めるのはあなただ。だが、あなたはこの可能性を無にするおつもりですか?」


決めるのは・・・・僕。


僕はうずくまっていた顔をあげた。

そして、ワタシブネに最も聞きたかった事を聞いた。


「・・・・それで何かが変わるでしょうか?」


僕がそう問うと、ワタシブネは少し微笑んで答えた。


「それはあなた次第だ。」


僕・・・次第。


僕にこう告げたワタシブネはいつの間にか元の顔に戻っていた。

「で、どうします〜?私と契約するんですか?しないんですか?」

僕は立ち上がって、ワタシブネの方をしっかりと見た。

僕は本当にただあの世界から消えたいだけだ・・・。でも、もし本当に僕が望む世界があるんだったら、僕は・・・僕は・・・!!


「僕は魂を交換をしたいです!!」


そして、それで何かがかわるのなら確かめたい!

ワタシブネは僕の方を見てにっこりと笑った。


「そうですか〜、では契約と参りましょう。」





この決断は僕にとっては始まりに過ぎなかった。


ここは・・・・どこだ?

僕が目を覚ましたとき、僕は変な場所にいた。

ただひたすら白く、でもどこか暗い場所に僕はいた。

僕はどうなったんだ?

僕はあの世界から消えることが出来たのか?それともまだ消えていないのか?

あの日いったい何があったんだ。


わからない・・・・・。


あの日僕は何をしたんだっけ?


「あのもしもし〜起きてますか?」

突然誰かの声がした。

・・・・誰だ?

「あっ、起きてますね、よかった〜目開けたまま死んでるのかと思いましたよ。」

目の前に見えたのは白い服を着た男だった。

男は全身真っ白な服を着ていて、左手に何かのリストを持っていた。

「こんなところにいるということはあなたで合ってるのかな?」

男は僕の顔をジロジロ見ながら左手で持っているリストと比べていた。

こいつは一体誰なんだ?何で僕のことをジロジロ見るんだ。

「あのーできれば確認のために、お名前と年齢と血液型と好きな食べ物など教えていただけるとうれしいんですが・・・。」

なぜそんなことを見ず知らずの男に教えなければならない!!

それに・・・確認っていったいなんだ?


「・・・・・あなたは誰だ。」


僕は今一番聞きたいことをその男に聞いた。

「えっ、私ですか?私はワタシブネと申します。」

ワタシブネ?

「えっとー趣味は昼寝で好き食べものはチョコレートで夢は遊んで暮らせる人生を送ることです!」

そんな個人情報なんて聞いていないのだが・・・。

それに僕が一番聞きたいのは・・・・。

「ここは一体どこだ、それにあなたは・・・・もしかして死神?」

男は僕の唐突な質問にポカンとしていた。

それもそうだろ、急にあなたは死神ですか?なんて聞いて呆けないほうがおかしい。

でも、もし死神なら僕がこんな変なところにいるのも納得がいく。

ここは黄泉の世界か何かで僕は完全にあの世界から消えたことになるだったら僕は・・・。

「そんな違いますよ!ここは黄泉の世界でもないし、それに私が死神なんてたいそうな仕事に就けるわけがないですよ!」

男は僕のした質問を完全に否定した。


・・・・・やっぱりか、少し期待していたのだが。


「それにこんな白い格好をした死神なんていると思います?」

確かにどちらかというと黒い格好をして鎌を持っているイメージがある・・・・。

「そりゃー私だって死神になってみたいですよ!死神なれたらどれだけ良い暮らしが送れるか・・・・。」

そんなに死神はお金がもらえる仕事なのか。

「毎日カップラーメンの生活は送らずにすむし、毎日上司のわがままにつき合わされないし、それにどれだけ女子にモテるか・・・・そんな生活一度くらい送ってみたいですよ。」

そういうと男はため息をついて落ち込んでいた。

そんな落ち込まれても、困るのは僕なんだが。

でも、死神じゃないんだとしたら・・・・。

「じゃあ、あなたは一体何なんだ。」

僕がそういうと、男は少し考え込んだ。

「そうですね・・・・。」

男は少し考え込んだ後、僕に笑ってこう言った。



「魂を導く交換屋とでも申しましょうか。」



交換屋・・・・・?




この交換屋との出会いにより―――。


僕の人生の歯車は少しずつ狂っていくのだった。






当たり前な日常にいつも僕は物足りなさを感じていた。

ただ当たり前に毎日が終わり、何も変わらない一日がまた始まってしまう。

そんなことをずっと繰り返しているうちに僕は気付いたんだ。

このままただ当たり前に日常を送っていても、僕のこの心の中の物足りなさを埋めることはできないんだと・・・・。


だから僕はあの日決めたんだ。



こんな当たり前な日常しかない世界から消えてしまおうと――――。















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