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構造改革は府の側面を直視せよ
(産経 正論 2006/1/25 佐伯啓思 京都大学教授)
「ライブドア事件」の衝撃
ライブドアに証券取引法違反の疑いがかかり堀江社長が逮捕された。
一時、株式市場は大暴落となり取引停止にいたった。
たかがIT関連の一企業の不正疑惑で、株式市場がかくも
混乱に陥ったこと自体が以上というほかない。
今日の、株式市場が、企業収益の合理的基礎に基づいているというより、
いかに集団心理の根拠亡きムードや風説に左右される不安定なもので
あるかを如実に示したといってよいだろう。
一介のベンチャー企業の不正疑惑が、かくも大きな市場の混乱を
引き起こしたのは、株式分割や風評操作による株価のつり上げと、
時価総額の上昇を利用した企業買収というライブドアの手法が、
この数年のITベンチャー型の成功企業の象徴とみなされきたからである。
また、昨年末には、建築施工業者ヒューザーや姉歯建築士
によるマンション、ホテルの建築強度偽装事件が発覚した。
この事件においては姉歯建築士による偽造設計のみならず、偽装を
見抜くことのできなかったイーホームズの検査も問題とされた。
官庁による建築認可にかかる時間のムダや手続きの煩雑を解消するという、
「管から民へ」流れに即して建築検査を民間に委託した結果がこれなのである。
この二つの事件は、ともに不法行為(の疑いが濃厚)あることを除けば特に
関連はない。しかし、両者の背後にこの十数年に及ぶ「構造改革」がある事は
疑えまい。無論、「構造改革」がこれらの事件を生みだしたいうわけではないが、
「構造改革」に伴う、規制緩和、市場競争、金融取引の自由化、株主中心の
企業経営への転換といった一連の事態がその背景をなしている。
概括的にいえば、「官」から「民」へ資本と権限を移転するという
市場競争中心社会への転換、および情報・金融中心のシンボル経済
への転換というこの数年におよぶ経済政策が背景にある。
だが、「構造改革」が引き起こした最大の「成果」は何かといえば、
私は、人々のマインドの変化ではないかと思う。「こころ」といっても
よいし、あるいは「エートス」といってもよいし、また「倫理観」と
いってもよいが、経済構造の変化は、たが経済合理性の領域に留まる
ものではない、人々の精神のありように大きな影響を与える。
ライブドアがこの二、三年の間に人々の耳目を引き付けたのは、
ライブドアの事業の社会的意味が評価されたわけではなく、
「ホリエモン」というキャラクターが斬新な成功者のイメージ
とともにメディアにおいて広く露呈したからである。
ベンチャー事業家としての成功者とメディア的人気者というイメージが
社会的なインパクトをもち、小泉政権は、彼を構造改革の成功者の
モデルに見立てようとしたのであった。
無条件に賛美される勝者
恐ろしいことは、「ホリエモン」に象徴される社会的なキャラクター形成に
示されるように、競争社会における勝者がほぼ無条件に賛美され、評価される
風潮ができあがったことである。市場競争は能力を試すゲームであり、ゲームの
勝者は富と名声と人気を一手に獲得することができる、という領海ができた。
しかも、規制緩和や官の排除によって競争の公正さが確保されれば(実際には
そんあことはありえないのだが)、ゲームの勝者は、「ウイナー・テイクス・オール」
(勝者は全てを手に入れる)として称賛の対象となると言う風潮が出来上がった。
勝つ以上に尊い価値とは
もともと、日本人の「こころ」には、弱者への配慮や、
競争で敗れたものへの同情や共感、それにただ勝つこと
より以上の価値があったはずである。
経済は自己利益やマネーゲームに勝つだけではなく、
社会への貢献でもあった。それが自己責任や公正や
競争の名の下で切り捨てられ、「勝ち馬に乗る」
ことだけが全てになっていった。
構造改革の推進を唱えていた政治家や評論家が、
いまさらのように、「マネーゲームはおかしい」
「経済には論理が必要だ」などと言っても虚しく響く。
「法」とは違い、「論理」を生みだすのは、
競争における勝利より以上の何らかの
価値を信じる「こころ」だけである。
「構造改革」が破壊したのは、
この「こころ」であったと言わねばならない。
堀江氏は「金でこころが買える」と言ったが、
金で「こころ」は買えないのである。
■コメント■
小泉・竹中改革の負の遺産を痛烈に批判した素晴らしい内容の世論である。
特に太字の所は注目に値する。マスゴミの性格の悪さや経済市場原理主義の
問題点を分かりやすく説明し、失ってしまった嘗ての日本的道徳心の価値の
必要性・重要性を改めて感じた正論だと感じた。
規制緩和で大迷惑被ったのがタクシー業界である。
悲惨な現状なのは新聞やテレビでも報道されているので、
詳しくは書かないが、これなど典型的な失敗例である。
小泉・竹中の規制緩和・構造改革・は無差別な秩序破壊でしかない。
もちろん規制緩和・構造改革は必要である。だがデタラメは駄目だ。
彼等のアメリカ的なグローバリズム・新自由主義は断固反対する。
守るべきものは守り、残すべきものは残さなければならない。
カネの切れ目は縁の切れ目、堀江貴文は嘗ての部下にこの事実を突きつけられた。
拝金主義者の憐れな末路を反面教師として日本人に教えてくれた事は彼に感謝したい。
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以前とある経済誌で「バブル経済の崩壊で一番ダメージを受けたのは、日本経済システムではなく日本人の『心』だ」という話を読んだんですけど、そのときに生まれた「拝金主義」が小泉総理の構造改革で一層強まったのかなぁと思いますね。
2006/1/31(火) 午前 1:39 [ gol*t*to*t2006 ]
あの総選挙の前に、国民には気がついてほしかったですね。 まだ気がついていない人も大勢いるんでしょうけど・・。
2006/1/31(火) 午前 2:11 [ - ]
goletitoutさん、成る程〜その通りですよね。この構造改革を安部さんが支持しているのが気になるところです。弱者にもチャンスが与えられるシステムを作るなんて言ってますがどうやってやるんでしょうね・・・?
2006/1/31(火) 午前 2:37
umareteさん、そうですよね。自民党が勝って良かったんですが、勝ちすぎました。造反組の保守派がキャスティングボードを握れるのが望ましかったです。日本国民の財産である郵政資金を外資規制なしで解放するのは非常に危険。政府が51%の株式を保有するか、外資が20%以上株式を持てないようにすべきだった。親米ポチ小泉と米国エージェント竹中は拒否したんですよね。今後見直しはあるんですが、非常に心配ですね。
2006/1/31(火) 午前 2:48
規制緩和される前から派遣社員でしたが、最近の派遣業種は酷い、いろんな面から何でも民でやればいい、規制緩和すればいいとは思わない。日本人にあった経営方法があったと思う。これから益々アメリカ型になっていくんでしょうね。だから、弱者には徹底的に冷たいです。
2006/2/1(水) 午前 9:49 [ jul*a*y5* ]
派遣会社は30%もピンハネだけしてロクに何もしないですからね。そう何でも民で良いわけはありません。アメリカ化しない為にはそのアメリカにNOを突きつけるのは我々日本国民が意識して対応すべきです。私は米の得意分野である金融業(銀行・保険・証券)は断固拒否しています。
2006/2/1(水) 午後 3:56
勝ちすぎかあ。私は岡田・民主自滅とも解釈していますが、確かにこの高支持を今後どうつなぎとめていけるか。 今は専ら民主党に逆風が吹いているようですが、安全保障・外交だけでなく多くの有権者が経済を主眼にした時、自民党も正念場となるかもしれませんね。
2006/3/16(木) 午後 8:54 [ y_n**atani6*6 ]
考えさせられますね・・・
2008/12/7(日) 午前 11:46 [ やんま ]