出逢える場所

もっと焦がれるほどに・・・

花でないもの

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全1ページ

[1]

天窓4


いま この歳になって (といっても 私は自分が何歳なのか知りません。)
ようやく わかってきたことなのですが

私は 生まれてはいけませんでした。

この家にとって 私の「生」は 迷惑なものであったらしく
生まれてすぐに 屋敷の隅にある 蔵に入れられていたのです。

それが乳を飲む頃からなのか どうか
記憶という概念のない私は 何も 何も わからないのです。

なぜ 死ななかったのかと 聞かれたら
時折来る 黒い影が カチャカチャと運んでくるものを 口に入れていたからだと思います。
(本能のしたことです。)

すぐに口に入れたいときもあれば 全く口にしないときもありました。
いまとなっては 口にしていたものが 何だったのか 知りたい気持ちになります。



天窓は 高いところにあったので 光の具合を見るだけでした。
せめて 空や鳥がみえていたなら。。。。

・・・・いいえ、見えなくてよかったのかも知れませんね。


私が暗いそこから出られた理由は
どうやら屋敷が火事になり 蔵のほうまで火の手が回り
黒い影が 私を運び出したからです。

どうして私を助けたのでしょう・・・

このときだけではありません。

生まれていらない子どもなら どうしてすぐに 殺さなかったのでしょう。
どうして食事を与えたのでしょう。
どうして私は 生かされているのでしょう。


こんなことを考えられるようになるまでに 
蔵の中にいたときよりも もっとおびえた毎日がありましたが。



私は まだ 生きていて そのことに 何の意味があるのかも わからない。
うれしいとか かなしいとか そんなような感情も うすっぺらく
肉の塊として ここに いる。

次の様子も 数えられず 
あの頃見ていた 天窓の光の傾きが やたらと いつもある。



ああ、 私が 男か女か 聞いてくる人がおりますが
それが どちらでも 
だから どうとも ないようなので 答えていません。





              


天窓 3

瞼がピクリと動いたのと同時に
両腕が痛んだ

一方をいつも食事を運んでくるものが
もう一方を黒くて大きなものが抱えている

閉じた瞼でも周りが明るいことは容易くわかった

次に感じたものは
髪や着物のすそが勝手に動いていること
(私は風を知らない)

胸に刺さるような匂い
鼻がむずがゆい

あまりに近く多くの音に
鼓膜がゆがむ

あまりの恐怖に無理やりに瞼を開けた


私は焦げた天窓の外にいた
ここから見える天窓は真っ暗だった


私の本当の暗闇はここから始まる
この天窓の外から。。。

天窓 2

天窓が白く光る日だった

なにやら外が騒がしく
いつもと違う様子を感じる

高い音が長くのびる
私が「狂う」ときに出す声に似ている

そのうち灰色の煙が天窓からうっすら入ってきたので
しばらく眺めていたら
その煙は私の目を開かなくした

さっきからパチパチと聞こえていた音は
いつのまにかゴウゴウと大きな音に変わっていた

身が焼けるように熱い
激しく咳をしながら
私は叫びたいのをこらえた
叫べばまた縛りにくることを知らぬまに覚えている

本能しかなくなってゆく
いつも本能でしかないのだが
意味もなくウロウロしてしまうのは久しぶりだった

だんだん気が遠のいていった



気がつくと
白い手だった
すらりとした細くて白い指が
私の頭を撫でる
薄い唇が微かに動く

何かを伝えたいようだけど
私にはわからない

わからないままに
その唇から発せられる心地よい流れに
力は抜けていく

目の淵が痛い
唇が震える
喉の奥が熱くなったとき

白い指が私の頬を拭った
その白い指は濡れていた

それを見た瞬間
私は目の前にある柔らかいふくらみに
顔をうずめて叫んだ

叫んではいけない
叫んだら縛られる

そう言い聞かせながら
声を殺して叫び続けた

天窓

天窓の斜めの明かりで 一日の始まりを知る
真暗な闇の中 ねずみだけが外の世界を知っている
私はまだ 人を見たことがない
うとうとした頃に 差し出される食事
それを運ぶものが 人間なのか

暑さや寒さは感じるが それが繰り返されるということを
知ったのはいつからか
ありとあらゆる感情は 生まれるのをやめ
私の五感は 死んでゆく

時折聞こえる鳴き声が 唯一私のともだち
姿が見たいと思うけど 窓はあまりに小さくて
光に眼が眩むだけ
目から何かが溢れても こぼれ落ちることはなく
込み上げる胸の痛みも 黒に塗りつぶされる

一番嬉しかったのは 嵐の夜だった
小さな枠いっぱいに 激しく光る青い影に胸が鳴った
つんざくような音が体中をたたき 初めて生きていることを感じた

いつまでここにいるのか それを考えることが たまにある
そんな時 どこから沸いてくるのか 自分でも驚くほどの声が出る
狭い部屋のあちこちに 全身を打ちつけたくなる
「狂う」という言葉で 私は縛りつけられる
縛りにくるものが 人間なのか

私は人間なのか
天窓の外は 生きているのか









                           

全1ページ

[1]


よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事